2022年06月24日
邪霊の巣窟 8
「あのお兄ちゃん、どうして体が真っ黒でお目々がないの?」
と娘が言い出したのです。
そしてMを再び見てみると全身がどす黒いオーラのように包まれていました。目もないのではなく、真っ黒な目だったのです。
そして此処にいるだけで気を失いそうになるぐらいの憎悪、怨念、殺意などの波動が溢れ出ていました。
魔物。
兄が言った事を思い出しました。まさに魔物でした。どうやったら人間だったものがこんな風になれるのか…。自分は家族を守る使命感と目の前の存在に対する恐怖心に震えあがりました。
自分たちとMはしばらく睨み合ったままでした。
おそらくMは自分たちに襲い掛かろうにもご神体が邪魔して入る事は出来ないのだろうと思いました。
自分は二人の盾になるように前に出て、AはEをしっかりと抱きしめていました。そして朝になればMの力も弱まり、駆け付ける退魔士たちに今度こそ浄化される…。
Mはそれを解っているかの様に自分たちとご神体を凄い形相で睨みつけていました。そして何かを口走り、真っ黒な目で自分とA、Eを交互に睨みながら消えていきました…。
朝日が昇っていたのです。自分は終わった…と安堵しました。Aは泣いていました。Eは…寝ていました。
しばらくして兄たちが駆け付けて来て改めて浄化を行う事になりました。
相手が相手なだけにかなり手こずっていたみたいですが無事浄化が終わったと告げられました。
そして自分たちはご神体の部屋に呼ばれて今回の事、そして前回の事件の発端と真相を語られる事になりました。
まずMですがあそこまで魔物化してしまうと浄化や除霊は不可能との事で消し去るしかなかったと言われました。魂の消滅。
それは前世から続いている魂をなかった事にされあの世にいく事はおろか、生まれ変わる事も出来ない、本当の死。
これ程怖ろしい事はないと思いました。
そして前回の事件でMは変死だと聞かされていましたが真相は自殺だったそうです。
クラスメイトの怪我もMの仕業だったと言われました。あの悪霊たちをあの時操っていたのがMだった事も初めから自分をAを標的に計画された肝試しだったらしいという事も告げられました。
Mを浄化した時に全て解ったと兄は言っていました。
Mは自分に些細な事から恨み(この時はまだ小さなものだったらしいです)始めたという事でした。
それからは何かと自分とMを比べて殆ど逆恨みに等しい恨みになっていき‥腹いせに自分の彼女(A)を取ってやろうと思い、言い寄った事があると言う事でした。
これについてはAからも聞かされた事があります。
しかしAは全く振り返らず、次第にMはAに本気になっていったらしいのです。
でもAが全く振り向かない為、段々と憎しみに変わりやはり恨みの矛先を自分に向けたという事でした。
そんな時にあの神社の事件に自分が関わっている事を知ったMは(おそらく大人たちが騙っているのを偶然聞いたのだろうと言っていました)あの神社へ行き、あの大木に「Tを呪い殺せ」と叫びながら藁人形に釘を打ち込んでいたと言うのです。
神社の悪霊たちはMを取り込もうとしたけどあまりの怨念の凄まじさに逆に利用される形になってしまったと…。
そしてMは自分自身が悪霊になって俺を取り殺し、Aを自分の元に引きずり込もうと最悪の決断をしたのだそうです。
他のメンバーはただの生贄程度にしか考えていなかったそうです。最初はAも他の人もろとも殺そうと考えましたがお守りや兄の友人に邪魔されて急遽自分を偽の電話で呼び出す事にしたそうです。
あ、重要な事を言っていませんでした。肝試しが始まった時はMはすでに死んでいたそうです。
大木に打ち付けてある自分に見立てた藁人形を睨みつけている様に首を吊っていたとの事でした。(だからあの時自分だけが見えない方がいいと言われたのでしょう)
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