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2022年05月30日

危険な好奇心24


俺達はコソコソと、まるで泥棒のように一階ロビーに向かった。
途中、何人かのナースに見つかりそうになる度、気配を消し、物陰に隠れ、やっとの思いでロビーに着いた。
昼間とは違い、ロビーは真っ暗で、明かりといえば自販機と非常灯の明かりしかなく、淳が

『何か暗闇の中をお前とコソコソするの、あの夜を思い出すよなぁ』

と言った。

『そだな。何であの時、アイツの事を備考しちまったんだろーな。。』

と俺が言うと淳は黙り込んだ。
俺が今日病院に来た理由、すなわち『清掃おばさん』の事について‥淳に言おうと思ったが、躊躇していた。淳はこの先、一ヵ月近く此処に入院するのにそのような事を言うのは…と。
またあの時のように『原因不明のジンマシン』が出るかもしれない。
すると淳が

『お前、あのおばさんの事できたんじゃないのか?』

と。
俺はとっさに

『え?何が?』

ととぼけたが、淳は

『そーなんだろ?やっぱり似てる‥いや、【中年女】かもしれないんだろ』

と真顔で詰め寄って来た。
俺はその淳の迫力におされ

『たしかに似てた‥雰囲気は全然違うけど‥似てる。』

淳はうつむき

『やっぱり。。。前にも電話で言ったけど。。。』

と語り始めた。
淳は少し、声のトーンを下げ

『俺が入院して二日目の夜、足と腰が痛くて痛くてなかなか眠れなかったんだ。寝返りもうてないし、消灯時間だったし、仕方ないから、目をつむって眠る努力をしていたんだ。そして少し睡魔が襲ってきたウトウトし始めたとき、【視線】を感じたんだ。。。見回りの看護婦だろうと思って虫したんだけど、なんかハァ‥ハァ‥って息遣いが聞こえてきて‥何だろう?隣の患者の寝息かなぁ?って思って薄目を開けてみたんだよ。。そしたら俺のベットカーテンが3センチ程開いて、その隙間から誰かが俺を見ていたんだ。。その目は明らかに俺を見てニヤついている目だったんだ。。俺、恐くて恐くて、寝たふりしてたんだけど。。そしてそのまま寝てたらしく、気付いたら朝だったんだ。後から考えたんだ。【あのニヤついた目】どこかで見覚えが‥そーなんだよ。『清掃おばさん』の目にそっくりだったんだよ!』

【ニヤついた目】

俺はその目を知っている!
『中年女』にそのニヤついた目付きで見つめられた事のある俺はすぐに淳の言う光景が浮かんだ。
更に淳は話を続けた。

『それにあの清掃おばさん、ゴミ回収に来た時、ふと見ると、何かやたら目が合うんだ・。。俺がパッと見ると、俺の事をやたら見ているんだ。。。半ニヤけで。。。』

それを聞き、俺が抱いていた疑問、【中年女=清掃おばさん】は確信に変わった。
やっぱりそうなんだ。社会復帰してたんだ!
缶コーヒーを握る手が少し震えた。決して寒いからでは無い。体が反応してるんだ。
『あの恐怖』を体が覚えているんだ。。

その時、俺の後方から突如、光が照らされた。

『コラ!』

振り向くと、そこには見回りをしている看護婦が立っていた。

『ちょっと淳君!どこにもいないと思ったらこんなとこに!消灯時間過ぎてから勝手に出歩いちゃダメって言ってるでしょ!それに、お友達も面会時間はとっくに過ぎているでしょ!』

と、かなり起こっていた。
淳は『はいはい。。。んぢゃまた近いうちに来てくれよな!』と看護婦に車椅子を押され病室ん戻って行った。
『おぅ!とりあえず、気をつけろよ!』と言った。
俺もとりあえず帰るか。。。と思い、入って来た急患用出入口に向かった。
それにしても夜の病院は気味が悪い。さっきまで『あの女』の話をしていたからか?と思って歩いていると。。。
ん?
廊下の先に誰かがいる。
あれは。。。清掃おばさん。。?いや
『中年女』、、か、、?
『中年女』らしき女が何かしている。。。
間違いない!『中年女』だ!
この先の出入口付近で何かしている!


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