2022年05月27日
危険な好奇心23
俺は視線を部屋の入口に向けた。
『ガラガラガラ。』
台車は扉の前に止まったようだ。そして、扉が開いた。
そこには上下紺色の作業着を着たオバさんが居た。
俺は『何だよ!脅かすなよ!ゴミ回収のオバさんじゃねーか。』
と、少し胸を撫でおろした。
そのオバさんは患者個人個人のごみ箱のゴミを回収しだし、最後に淳のベットに近づいてきた。
淳が小声で『みてくれよ!』
俺はそのオバさんの顔をチラッと見た。
『・・・・!』
俺は息を呑んだ。
似ている…いや、『中年女』なのか?
俺は目が点になり、しばらく、その人を眺めていると、そのオバさんはこちらを向き、ペコリと頭を下げて部屋を出て行った。
淳が『どう?!やっぱ違うか?!俺ってビビりすぎ?』と聞いてきた。
俺は『全然ちげーよ!ただの掃除のオバちゃんぢゃん!』と答えた。
いや、しかし似ていた。他人の奏楽になのか。。。?
『…んぢゃそろそろ帰るわ!あんま変な事考えてねーで、さっさと退院しろよ!』
と俺が言うと、淳は
『そだな。。あの女が病院にいるわけねーよな。お前が違うって言うの聞いて安心したよ。また来てくれよ!暇だし!』
と元気よく言った。
俺は個室を出ると、早足に階段を駆け降りた。頭の中からさっきの『オバさん』の顔が離れない。
『中年女』の顔は鮮明に覚えている。しかし、中年女の一番の特徴といえば『イッちゃってる感』だ。さっきのオバさんは穏やかな表情だった。
もし、さっきの『オバさん』=『中年女』なら、俺の顔を見た瞬間にでも奇声をあげ、遅い掛かって来てもおかしくはない。
そうだ。やっぱり他人の空似なんだ。
と考えつつ、なぜか病院にいるのが怖く、早々に家路についた。
家に帰ってからも『中年女』=『清掃おばさん』の考えは払拭しきれなかった。
やはり気になる・・・
その日は眠りに落ちるまでその事ばかり考えていた。
次の日、『清掃おばさん』の事が気になり、俺はバイトを早めに切り上げ病院に行くことにした。
俺のバイト先からチャリで30分。病院に着いたときには20時を回っていて面会時間も過ぎていた。
もう、『清掃おばさん』もかえっている事は明白だったが、臨時入口から病院に入り、とりあえず淳の病室に向かった。
こっそり淳の病室に入ると淳のベットはカーテンを閉めきってあった。
『寝たのか?』
と思い、そーっとカーテンを開けて隙間から中を覗いた。
『うわっ!』
淳が慌てて飛び起き、『ビックリさせんなよ!』と言いながら、何かを枕の下に隠した。
淳はエロ本を熟読していたようだ。
俺は敢えてエロ本の事は触れずに
『暇だろーと思って来てやったんだよ!』
と淳の肩を叩いた。
淳は少し気まずそうに
『おう!この時間帯は暇なんだよ!ロビーでも行って茶でもしようか?』
と言った。
俺は車椅子をベットの横に持って来て、淳の両脇を抱え、淳を車椅子に乗せてやった。
淳が
『ロビー一階だからナースに見つからんよーに行かんとな!』
と小声で言った。
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