2022年05月18日
危険な好奇心16
俺は息を止め、動きを止め、気配を消した。
いや、むしろ身動きが出来なかった。まるで金縛り状態…『蛇に睨まれた蛙』とはこのような状態の事を言うのだろうか。
曇り硝子越しに見える『中年女』の影をただ見つめるしか出来なかった。
しばらく『中年女』はじっと玄関越しに立っていた。微動すらせず。
ここに『俺』がいることがわかっているのだろうか?‥。
その時、硝子越しに『中年女』の左腕がゆっくりと動き出した。
そして、ゆっくりと扉の取手部分に伸びていき、『キシッ!』と扉が軋んだ。
俺の鼓動は生まれて始めてといっていいほどスピードを上げた。
『中年女』は扉が施錠されている事を確認するとゆっくりと左腕を戻し、再びその場にとどまっていた。
俺は依然、硬直状態。。
すると『中年女』は玄関扉に更に近づき、その場にしゃがみ込んだ。そしれ硝子に左耳をピッタリと付けた。
室内の様子を窺っている!
鮮明に目の前の曇り硝子に『中年女』の耳が映った。
もう俺は緊張のあまり吐きそうだった。鼓動はピークに達し、心臓が破裂しそうになった。
『中年女』に鼓動音がばれる!と思う程だった。
『中年女』は二、三分間、扉に耳を当てがうと再び立ち上がり、こちら側を向いたまま、ゆっくりと、一歩ずつ後ろにさがって行った。
少しずつ硝子に映る『中年女』の影が薄れ、やがて消えた。
『行ったのか…?』
俺は全く安堵出来なかった。何故なら
『中年女』は去ったのか?
俺がここ(玄関)にいることを知っていたのか?
まだ家の周りをうろついているのか?
もし、『中年女』に俺がこの家に入る姿を見られていて、『俺の存在』を確信した上で、さっきの行動を取っていたのだとしたら、間違いなく『中年女』は家の周囲にいるだろう。。
俺はゆっくりと、細心の注意を払いながら靴を脱ぎ、居間に移動した。
一切、部屋の明かりは点けない。明かりを燈せば『俺の存在』を知られることになりかねない。
俺は居間に入ると真っすぐに電話の受話器を持ち、手探りで暗記している慎の家に電話をかけた。
3コールで慎本人が出た。
『慎か?!やばい!来た!中年女が来た!バレた!バレたんだ!』
俺は小声で焦りながら慎に伝えた。
『え?どーした?何があった?』
と慎
『家に中年女が来た!早く何とかして!』
俺は慎にすがった。
慎『落ち着け!家に誰もいないのか?』
俺『いない!早く助けて』
慎『といあず、戸締り確認しろ!中年女は今どこにいる?』
俺『わからない!でも家の前までさっきいたんだ』
慎『パニクるな!とりあえず戸締り確認だ!いいな!』
俺『わかった!戸締り見てくるから早く来てくれ!』
俺は電話を切ると、戸締りを確認しにまずは便所に向かった。
もちろん家の電気は一切つけず、五感を研ぎ澄まし、暗い室内を壁づたいに便所に向かった。
まずは便所の窓をそっと音を立てず閉めた。次は隣の風呂。
風呂の扉もゆっくり閉め、鍵をかけた。
そして風呂を出て縁側の窓を確認に向かった。廊下を壁づたいに歩き縁側のある和室に入った。縁側の窓を見て違和感を覚えた。
いや、いつもと変わらず窓は閉まってレースのカーテンをしてあるのだが、左端。。。
人影が映っている。
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