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2022年05月17日

危険な好奇心15


『そーだよな‥慎の言う通り、中年女はもう俺達の事なんて忘れてるよな‥』と。
まるで自己暗示のように言い聞かせた。
足取りも軽く、石を蹴りながら家に向かった。
空を見上げると雲も無く、無数の星がキラキラ輝き、とても清々しい夜空だった。
今まで『中年女』の事でウジウジ悩んでいたのが馬鹿らしく思えた。
自宅に近づき、その日は見たいアニメがあるのに気付き、俺は小走りで家に向かった。

『タッタッタッタッ』

夜の町内に俺の足音が響く。

『タッタッタッタッ』

静かな夜だった。

『タッタッタッタッ』

ん?

『タッタッタッタッ』

俺の足音以外に違う足音が聞こえる。後ろを振り向いた。
暗くて見えないが誰もいない。気のせいか。
ナンダカンダ言って俺は小心者だなと思いながら再び走った。

『タッタッタッタッ』『タッタッタッタッ』

‥ん?誰かいる。
俺はもう一度立ち止まり、目を凝らして後ろを眺めた。
…やはり誰もいない…
確かに俺の足音にマジって後ろから誰かが走ってくる足音が聞こえたのだが?!
俺も淳のように自分でも気付かないうちに精神的に『中年女』に追い詰められているのか?ビビり過ぎているのか?
しばらく立ち止まり、ずーっと後ろを眺めた。
ドックンドックン鼓動を打っていた心臓が、一瞬止まりかけた。
15メートル程後方、民家の玄関先に停めてある原付きバイクの陰に誰かがしゃがんでいる。
いや、隠れている。
月明かりでハッキリ目視できないが一つだけハッキリと見えたものがある。

『コートを着ている!』

しばらく俺は固まった。
隠れてる奴は俺に見付かっていないと思っているようだが、シルエットがハッキリ見える!俺は一瞬混乱した。

『中年女だ!中年女だ!中年女だ!中年女!中年女!』

腰が抜けそうになったが、本能だろうか、次の瞬間

『逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ逃げなきゃ!』

ともう一人の俺が、俺に命令する。
俺は思いッキリ走った!運動会の時よりも必死に走った。もう風を切る音以外に聞こえない程、無呼吸で走った。
無我夢中で家に向かって走った。家まであと10メートル。

『!』

一瞬、頭にあることがよぎった。

【このまま家に逃げ込めば間違いなく家がバレる!】

俺はとっさに自宅前を通過し、そのまま住宅街の細い路地を走り続けた。
当てもなく、ただ俺の後方を着いて来ているであろう『中年女』を撒く為に。。。
5分ほど、でたらめな道を走り続けた。
さすがに息がキレて来て歩き出し、後ろを振り向いた。
もう、『中年女』らしき人影も足音も聞こえて来ない。
俺は周囲を警戒しつつ、自宅方面へ歩き始めた。
再び自宅の10メートル程手前に差し掛かり、俺はもう一度首周囲を警戒し、玄関にダッシュした。
両親が共働きで鍵っ子だった俺はすばやく玄関の鍵を開け、中に入り、すばやく施錠した。

『。。。フー。。。』

安堵感で自然とため息が出た。
とりあえず慎に報告しなければと思い、部屋に上がろうと靴を脱ごうとした時、玄関先で物音がした。

『!?』

俺は靴を脱ぐ体制のまま固まり、玄関先を凝視した。
俺の家の玄関は曇りガラスにアルミ冊子がしてある引き戸タイプなのだが、曇りガラスの向こう側に。。。
玄関先に誰かが立っている影が映っていた。
玄関を挟んで1メートル程の距離に『中年女』がいる!


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