2021年12月06日
リゾートバイト(洒落怖) 6
おんどうから一軒家で一晩過ごした三人は、旅館の二階からついてきた化け物の正体は何だったのかを聞かされる。
お坊さんの口から直々にお祓いは済んだことを知らされ、本堂で木箱を渡されるのであるが、その箱の中にあるのは、「臍の緒」である。
お坊さんの話いわく臍の緒は母親と子のつながりが強いもので、様々な言い伝えがある。
この土地にまつわる話で、かつて漁村で漁が盛んであったのだが、この村で生まれた子供は物心つく前から漁に出ることになる。
しかし海は非常に危険なもので、子供の命が奪われることがあり、子を心配する母親はお守り代わりとして臍の緒を我が子に持たせて安全を願うと同時に、自分の元へ戻ってくるように祈った。
この「戻ってくる」は通常の意味合いも勿論あるが、旅館の影の化け物のように得体の知れない状態で戻ってくる場合もあるという。
そんなある日、三年も前に海で子供をなくした母親が我が子が戻って来たという。
子供の姿を見せて欲しいと頼むと、「もう少ししたら見せられるから待っていてくれ」との意味深な返事を受ける。
子供が戻って来た報告は村中で別の母親が口にするなど連鎖的な反応を見せ、見せて欲しいと頼んだ場合、一番最初の母親のように「まだ見せられない」と必ず決まった返事が返って来る。
やがて、母親と手を繋いで散歩する姿が目撃され非礼を詫びながらも、子の姿を見せてもらうことになるのだが……。
坊「その子の肌は、全身が青紫色だったそうです。そして体はあり得ないほどに膨らみ、腫れあがった瞼の隙間から白目が覗き、辛うじて見える黒目は左右別々の方向を向いていたそうです。そして口から何か泡のようなものを吹きながら母親の話しかける声に奇声を発していたそうです。それはまるでカラスの鳴き声のようだったと聞きます。村の者たちは、子供の奇声に優しく笑いかけ、髪の抜け落ちた頭を愛おしそうに撫でる母親の姿を見て、恐怖で皆その場から逃げ出してしまったのだそうです」
その後、事の重大さを知った寺の住職は母親と化け物になった子を引き離したものの、母親は異様な力で住職を投げ飛ばし、寺から逃走。
後日、母親の家から旅館の二階で見た札と腐った残飯が発見されている。
また、子供が見つかったと報告した別の母親ももうすでに手遅れの状態であったが、何とか寺に連れていき、子と離れ離れになり叫ぶ母親の声を追いかけて来る異形の子供に聞かせないために、大勢の人数が大掛かりでお経を唱え叫び声をかき消したのだという。
やがて母親と離れた子供は、次第に歩くことができず四つん這いになり、四肢の関節をありえない方向に捻じ曲げ蜘蛛のように徘徊したそうだ。最終的には芋虫のような姿になってしまい、最後に残ったのが臍の緒であった。ちなみに母親は完全に正気を失っていたのだという。
また別の母親は、近隣の海辺で死亡しておりなぜか食い荒らされたような跡があったのだが、その表情は笑顔だったという。
食い殺された母親の家を解体したとき、一枚のメモが見つかったらしいのだが、以下のように記されていたらしい。
〇月?日 堂の作成を開始する
×月?日 変化なし
・・・
△月?日 △△(この名前)が帰って来る
△月?日 移動が困難な状態
△月?日 手足が生える
△月?日 はいはいを始める
△月?日 四つ足で動き回る
△月?日 言葉を発する
△月?日 立つ
×月?日 変化なし
・・・
△月?日 △△(この名前)が帰って来る
△月?日 移動が困難な状態
△月?日 手足が生える
△月?日 はいはいを始める
△月?日 四つ足で動き回る
△月?日 言葉を発する
△月?日 立つ
本来、堂で復活させられた子供は本来、家族内でも存在が気付かれないもので、何故Bに見えていたのか不明だと説明される。
民宿の女将さんは、どこで子を復活させる噂を聞いたのか分からないが、唯一製造法の相違点があるならば、臍の緒がキーとなっているのではないかと推測されている。どうやら女将さんは息子の臍の緒を持たせず、繋がりが薄くなっていたものだと思われる。
奇妙な話として、民宿の二階で儀式を繰り返していた女将さんであるが、奇妙な発言として「同世代の年齢のバイトが欲しい」と述べていたらしい。
Bとお坊さんとの間で一悶着あったものの、「見せたいものがある」と言われ案内された先に在ったのは女将さんの元であった。
ただし、異常な暴れ方をしており今朝からそのような様子がずっと続いているのだという。
表面した女将さんの元から離れた一行は、「祓われたのかどうか」を問う。お坊さんは「祓うことはできた」といいつつも、Bは「影を見たのは一体だけではなかった」といい、急遽鳥居に案内され、一晩過ごすも、後日女将さんは救うことが出来なかったと知らされる。
その後は完全に祓われたか曖昧に濁されるだけではなく、この儀式にはもっと重大な真相があるらしいのだが、誰も教えてくれることはなかった。
やきもきしたまま帰宅し、やがて数年後、この一連の出来事を話した一人の友人が旅館に電話をしたらしいのだが、電話口の背後で異様にカラスの鳴き声が鳴り響いていたらしい。電話に出た人物は女性であったものの、あの女将さんかどうか確かめろと進言を受けるも行っていないらしい。
所感:
リゾートバイト、この話のクライマックスはおんどうの中で得体の知れない存在が身体をのけぞらせ壁にぶつかってきたり、暗闇の中で手を繋いでいる三人が本当に仲間なのかどうか疑心暗鬼になるところだと思う。
話に統合性を持たせるため仕方なかったのだろうが、後の後日談は「亡くした子を追い求める母親」という非常にありがちな話になっている点が残念である。リゾートバイトに限らず、洒落怖などで女性が人形を子に見立てる話は結構多い。
また、内容もだらだらと長く関係のない箇所の記載も多く見受けられ、極端に内容を縮めるのであれば、原稿用紙2〜3枚程度に収まっていたのではないだろうか。
個人的に、創作臭が強すぎるのが難点である。
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