2021年12月03日
リゾートバイト(洒落怖) 5
目を開けて周りを見回すと、おんどうの中は真っ暗で、ほぼ何も見えない状態だった。
そしてさっきまでのあの音は、消えていた。
恐怖の波が去ったのか、それともまだ周りにいるのか、判断がつかず動けなかった。
そして目の前に広がる深い闇が、また別の恐怖を連れて来たんだ。
目を凝らすが何も見えない。
「いるか?」「大丈夫か?」の掛け声さえ出せない。
そしてさっきまでのあの音は、消えていた。
恐怖の波が去ったのか、それともまだ周りにいるのか、判断がつかず動けなかった。
そして目の前に広がる深い闇が、また別の恐怖を連れて来たんだ。
目を凝らすが何も見えない。
「いるか?」「大丈夫か?」の掛け声さえ出せない。
書き手の傍にAはいるのだが、Bは室内のどこにいるのか分からない。Bのことが猛烈に心配になり、暗がりの中どうにかBを探し出し、三人は手をつないだままその場でじっと固まることにする。
Aが催してあらかじめ手渡されていた袋の中で用を足す中、「Bくん」と呼ぶ声が聞こえる。その声はおんどうの出入り口のすぐ近くから発せられたものであるが、旅館の美咲と同じ声をしている。
「おにぎりを作ってきたよ」といいながらも、その声調には抑揚がない。
しばらくの沈黙の後、堰を切ったように、
「Bくんおにぎり作ってきたよ」
「いらっしゃいませ〜」
「おにぎり作って来たよ」
「Bくん」
「いらっしゃいませ〜」
「おにぎり作ってきたよ」
と同じ言葉を何度も何度も繰り返すようになった。
尋常じゃないと思った。
怖かった。美咲ちゃんの声なのに、すげー怖かった。
坊さんはおんどうには誰も来ないと俺達に言っていた。
そしてこの無機質な喋り方だ。
扉の外にいるのは、絶対に美咲ちゃんじゃないと思った。
「Bくんおにぎり作ってきたよ」
「いらっしゃいませ〜」
「おにぎり作って来たよ」
「Bくん」
「いらっしゃいませ〜」
「おにぎり作ってきたよ」
と同じ言葉を何度も何度も繰り返すようになった。
尋常じゃないと思った。
怖かった。美咲ちゃんの声なのに、すげー怖かった。
坊さんはおんどうには誰も来ないと俺達に言っていた。
そしてこの無機質な喋り方だ。
扉の外にいるのは、絶対に美咲ちゃんじゃないと思った。
その無機質な声は何度も続くだけではなく、扉をガタガタと揺らし始めた。
扉を開き中に入ろうとしていることを察知した書き手は若干焦るものの、扉が無理矢理こじ開けられることなく、異様な声で喋りながらガンガンと体当たりするような状態へと変化していく。
一定時間その行動を行った後、人外のモノは左側へ移動しているのだが、どうやらわずかな隙間から侵入しようとしているらしかった。扉が開かないので、どうやら別の入り口を探しているらしい。
ヤツに気づかれたくない。
いや、ここにいることはもう気づかれているのかもしれないけど。
恐怖で歯がガチガチといい始めた俺は、自分の指を思いっきり噛んだ。
そして俺は、隙間のある場所に差し掛かったそいつを見た。
見えたんだ。月の光に照らされたそいつの顔を、今まで音でしか感じられなかったそいつの姿を。
真っ黒い顔に、細長い白目だけが妙に浮き上がっていた。
そして体当たりだと思っていたあの音は、そいつが頭を壁に打ち付けている音だと知った。
そいつの顔が、一瞬壁の隙間から消える。
そしてその後すぐ、ものすごい勢いで壁にぶち当たるんだ。
いや、ここにいることはもう気づかれているのかもしれないけど。
恐怖で歯がガチガチといい始めた俺は、自分の指を思いっきり噛んだ。
そして俺は、隙間のある場所に差し掛かったそいつを見た。
見えたんだ。月の光に照らされたそいつの顔を、今まで音でしか感じられなかったそいつの姿を。
真っ黒い顔に、細長い白目だけが妙に浮き上がっていた。
そして体当たりだと思っていたあの音は、そいつが頭を壁に打ち付けている音だと知った。
そいつの顔が、一瞬壁の隙間から消える。
そしてその後すぐ、ものすごい勢いで壁にぶち当たるんだ。
異常な光景に目を奪われながら、淡々と同じセリフを繰り返し身体をのけぞらせては壁にぶつかってくる人外の存在は、建物を左側へぐるっと一周するように移動し始める。
やがて朝を迎えてお坊さんがやってくるのだが、おんどうから移動する途中、奇妙な叫び声を聞くことになるのだが、その声は女将さんではないかとAに指摘されている。
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