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2021年12月01日

リゾートバイト(洒落怖) 3


足の裏にあった爪を目撃した時、書き手は二階で耳にしたパキパキという音は床に大量に散らばった爪が割れる音であると分析している。
そうして、その爪の持ち主はガリガリと音を立ててドアや壁などをひっかいていた存在ではないかと推測。

明らかにおかしい旅館でバイトすることになった3人だが、もうこの場所にはいられないと判断して、辞めることを決意する。

翌朝、目を覚ますとBが異常におびえながら、書き手が立てる音一つひとつに反応したり、爪が突き刺さった足の裏を凝視しており、明らかに様子がおかしかった。
無論、AもBの異変に気付いているのか心配の声をかけるも「心配したフリをするな!」などと激高されてしまう。
更には「ダ異常なわけがない。死ぬような思いをしている」と述べており、訳の分からない状態だった。
書き手の主観からすれば、一番怖い思いをしたのは実際2階に行った本人であり、AとBは下から見守っていただけでしかないからである。


俺は疑問に思っていたことをBに問いかけた。

俺「死ぬ思いってなんだ?お前ずっと下にいたろ?」
B「いたよ。ずっと下から見てた」

そして少し黙ってから下を向いて言った。

B「今も見てる」
俺「・・」

今も?
え、何を?



決定的な話の食い違いの中、書き手はBがおかしくなったと思っていた。
しかすBは恐怖に怯えながらも事の詳細を伝えるのである。


B「あの時、俺は下にいたけど、でもずっと見てたんだ」
俺「上っていく俺だよな?」
B「違うんだ・・いや、初めはそうだったんだけど。お前が階段を上がり切ったくらいから、見え出したんだ」



何が見えたのか聞きたくない気持ちはありつつも、2階から逃げ出して二人がキチンと話を聞き、否定すらしなかった優しさに救われていた書き手はBに対して「何が見えた」のか詳細を尋ねると、「影らしきものを見た」と言われる。
しかも腐った残飯を食う書き手の傍にもいたと告げられる。
どうやらその影は、動き回っているらしい。


俺「あそこには、俺しかいなかった」
B「わかってる」
俺「そもそも、あのスペースに人が4.5人も入って動き回れるはずない」

あの階段は人が一人通れる位のスペースだったんだ。

B「あれは人じゃない。それ位わかるだろう」
俺「…」
B「それに、どう考えても人じゃ無理だ」

Bはポツリと言った。

俺「どういうことだ」
B「全部、壁に張り付いてた」
俺「え?」
B「蜘蛛みたいに、全部の壁の横とか上に張り付いてたんだ。それで、もぞもぞ動いてて、それで、それで…」


錯乱していくBは「影は人の形をしているが、元が人間ではない」と言い、書き手は影らしきものがそこら中いる中で腐った残飯を食べ、壁をひっかく音、そうして呼吸音は壁やドア1枚隔てた向こう側から聞こえていたのではなく、すぐ耳元で発せられていたのではないかと思い至る。


その日、即日で辞めることが決定されているのだが、朝食の場で女将さんは書き手の足を見て、何気ない普通の調子で「よく眠れた」と聞いてくる様子に不気味さを覚える。
しかも女将さんの不審な点はそれだけではなく、ニコニコとした笑顔で箸を長い時間止めながら、書き手の顔を見る異様な食事だったらしい。

Bが誰かに連絡を取っているのを見ながら、女将さんを待っているとまるでこうなることを予想していたかのように表情には変化はなく、まるで能面のような顔だったらしい。バイトを辞めること自体、つつがなく話が進んだのだが、これまでの給金なのか茶封筒と、そうして巾着袋を受け取ることになる。


タクシーで帰路につくはずが、Bが突然予定変更して別の場所へ向かうことになる。その道中、軽トラでつけられていることに運転手の指摘により気が付く。
タクシーから降りると軽トラでつけていたのは旅館の旦那さんで「このまま帰ってはいけない」、「あそこ(2階)に行ったな」と告げられる。

Bと旦那、二人の話は何故か通じ合い、Aと書き手は訳の分からない状態だった。
Bはこのままお祓いに行く予定だったらしいのだが、旦那さん曰く「見え始めてから早い。一番危険なのはB」と言われる。

話し合いの結果、その筋の人間に頼んで「影」と思しきものを対処することが決まりタクシーから軽トラへと乗り物が変わる。
荷台に乗せられ猛スピードで向かった場所は普通の一軒家のような場所で、案内された場所でお坊さんが出てきて、Bに対して見えているのか聞いた後、このまま確実に放置すれば死ぬことが判明する。


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