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2020年05月13日

魅力的なお兄ちゃん系キャラクター 3

最後に紹介するキャラクターは、鬼滅の刃の登場人物である黒死牟こと継国巌勝について紹介していく。

黒死牟(鬼時代)というより、巌勝(人間時代)をはじめに説明をつらつら書いていくことになるのだが、巌勝とは戦国時代の武家の家系で生まれた縁壱の双子の兄である。
武家などの跡継ぎ問題で双子が忌まれていたのは史実上でもあるように、弟である縁壱は、生まれつき額に痣があったことを含め父親に殺されそうになるも、母親の猛反発により、「10歳になれば僧侶にさせる」ことを条件に、半ば軟禁に近い三畳間といった部屋に幽閉されるような形で過ごす事になる。

縁壱の境遇を哀れんだ巌勝は(この憐憫の感情は後の黒死牟に度々散見される傲慢な態度に繋がるのだろうか?)、本来口が利けるのに一言も発さない弟に笛を渡し「何かあったら吹くように」と伝えるだけではなく、縁壱に密通していた事実がバレ、父親に殴られても会いに行くなど、それなりの兄弟愛は見せていた。

縁壱は常に母親の傍を離れずしがみつくなどの生活を送っていたが、巌勝がいくら挑んでも勝てなかった師範を、棒切れさえ振ったこともない剣道の超未経験者であるにも関わらず瞬殺し、自分とは次元の違う才覚に全身が焦げ付くほどの嫉妬心を覚えた。
更に追い打ちをかけるように、家の中の雰囲気は「巌勝ではなく縁壱に家を継がせる」などの雰囲気が出来上がっていたが、縁壱は兄の境遇を思ってか、継国家を出るも僧侶として出家することなく、後に妻となるうたとの生活を始める。
縁壱が鬼殺隊入ったのは、子を身ごもったうたを殺されたことがキッカケ。
そして話を先取る形になるが、縁壱は花札の耳飾りを付けており、一見、炭治郎の祖先だと思われがちであるが、血縁関係はない。むしろ、霞柱の無一郎と有一郎の双子が黒死牟の遠い子孫であり、竈門家が縁壱から継承したのは、耳飾りとヒノカミ神楽。

縁壱に対して激しい嫉妬の念を覚える巌勝であるが、縁壱が家を出ていた後、発覚した事実――縁壱は常に母にしがみついていたのだが、それは「透き通る世界」という、痣同様、相当な鍛錬と研鑽がなければ習得できないはずの能力を生まれた時点から習得していた。
「透き通る世界」は人間の筋肉や血液の流れなどを可視化できるもので、透視能力を通じて、縁壱はいち早く母の肉体の不調に気が付いていた。巌勝はその事実を亡き母の日記から知ることになるのだが、本来生真面目で責任感が強い性格ゆえか、母の病気に気付けなかった己に対して不甲斐なさと、そうして更に縁壱に対して不快感と嫉妬の念を募らせていくのである。

だが、怨毒の対象者である縁壱はすでに家出をしており、巌勝の周囲にはいないため、妻を娶り子を成すまで穏やかな日々が続いていたが、ある日、継国領に鬼が現れ、鬼殺隊の一員になっていた縁壱が鬼退治に向かい、偶発的に邂逅することになる。
幼い頃からもそうであったが、成人してもなお己の力量を更に超越した縁壱に、巌勝は忘れかけていた嫌悪と嫉妬、劣等感の感情を再発。
巌勝は弟を超えることで強固なほど燻ぶっていた劣等感を克服するために、妻と子、そうして本来自身が統治すべき領地を捨て鬼殺隊に入ることになるのだが、ここでもいくら鍛錬を重ねても、そして後に鬼化して老人となった縁壱に出会っても、兄が弟を超えることは、ついぞなかった。

鬼殺隊入籍時代、縁壱に対して「気味が悪い」と思いながらも教えを乞うなど柔軟な姿勢を示し、元々努力家なのか剣技を研鑽する努力を重ね、僅かな期間で月の呼吸と透き通る世界を会得。
しかし、あらゆる呼吸の始祖的存在である縁壱が習得しているのは日の呼吸であり、「日の呼吸以外のソレは単なる派生物であり、オリジナルではない。劣化コピー」であった。日の呼吸以外は、個々人に合わせて適切なものが発生している可能性があるかもしれないが、巌勝はそう思わなかった模様。

縁壱との超えられない力量の差と、日の呼吸を会得できなかったこと、そうして人格者といえるほどの弟の様子に、巌勝は更に深い嫉妬を覚えることになる。
更に悪感情に拍車を掛けるように、「呼吸法を会得して痣が出てきたものは25歳で死亡する」というリスクが存在していた。ちなみに縁壱は、何事においても例外的な存在であるため、老体するほど長生きしている。
既に成人し、残り少ない寿命の中、巌勝は縁壱を超えることが出来ないと焦燥に駆られる中、鬼舞辻無残と遭遇し「鬼となれば永遠の時を過ごせる」と鬼化の勧誘を受け、完全に敵側に回る。
人間(巌勝)から鬼(黒死牟)となった彼は、鬼舞辻の命令により細胞レベルでトラウマが刻まれた縁壱の呼吸法である「日の呼吸」を習得した鬼狩り(無残いわく異常者)の殲滅と、青い彼岸花の捜索、鬼狩りの本拠地の発見など様々な命令を下している。

痣者は25歳で死亡するなど短命であるため、怨毒の対象者である縁壱のいない(と思っていた)世界を過ごしていたのであるが、ある日突然、年老いた縁壱が黒死牟の前に現れた。
「お労わしや兄上」と涙ながらに黒死牟を殺そうとする縁壱であったが、老体であっても一切衰えることのない戦闘力に一方的に追い詰められる。死を覚悟した黒死牟であるが、首を斬られる寸前で、縁壱は寿命により死亡。
このまま縁壱の手によって斬首され死亡していれば、救いがあったかもしれないが、更に嫌悪の感情を募らせ、黒死牟からすれば勝手な結末を迎えた縁壱の肉体を斬りつける。その際、縁壱から幼い頃、黒死牟が幼い時に手作りで渡していた笛が出てくるのだが、笛を見た黒死牟は涙を流す。
黒死牟がこの時、何を思ったのか分からないが、恐らく強い後悔の念だと思われる。

そして、月日はながれ黒死牟はあのパワハラ上司・下弦の鬼を多く葬って来た鬼柱こと無残にビジネスパートナーなどと認識されるぐらい、信頼を置かれるほどの関係性を築いている。
後に無残は「日光克服のため増やしたくもなかった鬼」などとほざいているが、黒死牟は縁壱に対するコンプレックスを払拭してくれた存在として、敬愛の感情を抱いていた模様。

本作での本格的な登場は無限城であるが、鳴柱の一員である善逸の兄弟子である、桃先輩こと獪岳と遭遇している。獪岳は上弦の中でも数百年「壱」と君臨していたためか、規格外の強さを感じ取り、命乞いをする。黒死牟は獪岳に対して、一種のシンパシー(雷の呼吸・壱の型だけが使えなかったのに対して、善逸は壱の型だけしか使用できないなどの拗らせ)を感じ取ったのか、無残の元へ連れて行き、鬼化させるなどの行動を行っている。
獪岳は善逸の手により討伐されたものの、二人の師匠であった桑島慈悟郎は事前に弟子が鬼化したことを鴉の報せで知っていたのか、単独で切腹をし、相当な苦しみを味わって自害させている他、岩柱との因縁があるなど、獪岳は鬼殺隊に入る前からあまり褒められた性根ではない。

黒死牟が明確に姿を現した際、不死川兄弟、岩柱・悲鳴嶼行冥、霜柱・時透無一郎が退治することになる。黒死牟はこの時、獪岳同様、無一郎が遠い子孫であること理由に無残の元へ向かわせて、鬼化させようとしていた。
その際、本当に生真面目なのか、わざわざ止血してやるなどの面倒の良さを見せている。人間の身体は鬼と比べて脆いので当然といえば当然の処置であるが、縁壱や鬼関係を除けば人の好さがあるような気がする……。

その後の激闘で不死川弟は「対して強くない存在は注視されない隙」をついて、黒死牟の動きを封じるも、胴体を真っ二つに切断され死亡。不死川兄は稀血という特異体質による酩酊のカウンターを発動させ動きを鈍らせ、悲鳴嶼と無一郎などの総攻撃により、どうにか勝利することができた。

無限城の戦闘中、黒死牟は不死川兄弟や無一郎についてどこか思うところがあったのか、過去を思い出しながら戦っている。追い込まれていく中、身体から刃を生やすなど肉体変化させるものの、最終形態である鬼らしい――とはいっても、鬼の中でも異形というより単純に醜悪な姿になっている。目がいっぱいある時点で気付けよ、目玉のおじさん。その容姿を不死川兄の刀身に映った自分の肉体を視認した黒死牟は、こう思うのであった。

「これが侍の姿か?」

「鬼になって何百年も負けを認めず執着する姿は生き恥」

「生まれた時から、敗北者」


「縁壱のようになりたかった」と後悔の念を抱きながら、死亡する。
その時、縁壱が老人になっても後生大事に所持していた、かつて自分が造った、二つに切断された笛が転がるという何とも空しい最後を迎えたのであった。


まとめとして、黒死牟もとい巌勝は何かと自己責任と卑下の感情が強いキャラクターである。縁壱と比べて唯一勝っている点はコミュニケーションの能力であり、双方持っている天賦の才が違っていたのではないかと思われる。
劣等感ゆえ嫉妬と後悔の感情の果てに地獄に落ちた黒死牟であるが、縁壱という全てにおいて規格外で例外的な存在と競うことなく、諦めの感情を抱いていれば、兄としてかなり楽な人生を送っていただろう。
巌勝に対して、「長男だから耐えられる」は禁句。

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