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2021年05月05日

進撃の巨人A

グリシャ・イェーガーの日記。

エルヴィン・スミスを犠牲とし、獣と車輪の巨人の襲撃後、当初の目的であった地下室に到達することになる。
地下室は一見、医療器具だけが並べられ中央兵団が怪しむものはないものばかりと思われたがミカサがグリシャから託された鍵穴の真の使い道を発見することになる。
鍵穴を捻って引き出しも開くものの、その中身は空っぽかと重きやリヴァイにより二重底の構造になっていたことを知る。
引き出しの底を調べるとその中にあるのは日記で、エレン・ミカサ・ハンジ・リヴァイが見守る中、その中身をめくると中にあったのは絵よりも精巧な一枚絵が入っていた。

そこで思い出されるのはエルヴィンが常識を覆すように、教師であり、自身の父親に質問した

「壁の外に人類がいないって どうやって調べたんですか」


との質問が、精巧な絵の裏付けとなるものとなっている。

エルヴィンいわく「壁の外に人類がいないと断言するには壁内の歴史の教科書を鑑みるに証拠不足な上に、人類に滅ぼさせかけられた人類が最大限の荷物を持ちこんで壁の内側に逃げ込んだとしても、壁内の文明は発展している。それに確かめようのない事実(巨人がうろついていて壁外は危険)ならば、断言ではなく推測である『人類は滅びたと“思われる”』が正しい」

と主張するものであった。

そのエルヴィンの過去話を「そうかもしれない。英雄の凱旋。詫びなくてはいけない」とピクシスが謝罪する中、ウォールマリア奪還のために壁外に出ていたエレンたちが帰還したのち、本書では前後するかたちで、グリシャ・イェーガーの託した日記の内容が明らかになっていくのであった。

日記の内容を開いて1ページ目。
そこにあるのは「若きグリシャ(進撃の巨人)・ダイナ(無知巨人)、幼きジーク(獣の巨人)」が一枚絵に写された姿であった。

次いであるのは、父の文字で記された

「これは絵ではない」


「これは被写体の光を特殊な紙に焼き付けたもの

写真という

私は人類が優雅に暮らす壁の外から来た

人類は滅んでなどいない」


という一文でのあと、

「この本を最初に手にするものが同胞であることを願う」

との言葉で、「お前が始めた物語だろう」のグリシャのストーリーが始まるのであった。


グリシャの過去は、彼の母親から「壁の外に出るんじゃないよ」との一言から始まる。

まるで幼きエレンたちと同じような境遇だが、マリア等といた巨人の壁ではなく「区別」と「差別」という名の険しき関門を強く意味する。
その証拠に、リヴァイとハンジが拷問していた憲兵団が、かつて過去気球に乗ろうとしていた夫婦を阻止していたとなどと自白していたが、グリシャの過去――何であるのかを一目でわかるように、腕章をつけると同時にこれまでエレンたちのいるパラディ島では見られなかった気球が堂々と描かれている。

どうやら偽ユミル同様、パラディ島の壁内に来る以前のグリシャの境遇は海岸沿いの環境で、しかも彼の母親のいう壁というものは40m級で内部に大型巨人が入っているものなどではなく、普通の意味での関所である。

どうやらユミルの血を引く巨人化が可能な人物は収容区ごとに住処が隔てられ、無断で関所を超えてはいけないのだが、飛行船を見たいグリシャの妹の願望を叶えるべく彼は禁忌を犯した。

妹・フェイの望みとしては遠目に飛行船を見たいといったささやかなものだが、壁の外に出るには外出許可書が必要。運悪く無許可で市内に入ったことが二名の保安官にバレた二人は、「労働」か「制裁」かの二択を迫られる。

親とそうして妹・フェイを守りたかったグリシャは「制裁」を選び、親への迷惑を免れ、妹の分を受けようとするものの、それはまったく無駄な結果に終わってしまう。いや……無駄どころか、最悪の結末を迎えた。

幼きグリシャは「制裁」と言う名の暴力を妹の分を受け、飛行船を眺めたのも束の間、本来無傷で帰宅するはずであった妹はついぞ戻ることはなかった。

野犬に食い殺されたのである。


グリシャが妹の分を含んだ制裁を受けたあと、のんびり飛行船を眺めた後帰宅し、発覚した事実である。

あまりにも不自然な妹の死。
妹の死を報せた人物が罰を加えた一命の保安官と妹を送った人は同一人物。
そもそもグリシャが飛行船を見たいわけではなかった。
母は悲しみに暮れ、報告者たる顔見知りの保安官二名にへりくだる父親に失望を覚える。

といった事実要素が加わり、グリシャはかつての幼きエレン同様(巨人の駆逐)に、あらゆる出来事に失望した濁った眼をし、ひたすらに思うのは

「私は
 父に
 この男に
 目眩のするような憎しみを覚え
 それ以上に――
 自分の愚かさを呪った」

と、語っている。

そして教えられるのは始祖・ユミルの歴史を教わることになる。
グリシャの父親曰く

「今から1820年前 我々の祖先「ユミル・フリッツ」
 「大地の悪魔」と契約し力を手に入れる
 ユミルの死後も「九つの巨人」に魂を分け
 エルディア帝国を築いた
 エルディアは古代の大国のマーレを滅ぼし
 この大陸の支配者となる

 巨人の力を持った「ユミルの民」は
 他の民族を下等人種と決めつけ弾圧を始めた

 だがかつての大国マーレは増長を極めたエルディアに内部工作を挑み
 エルディアの弱体化に成功した
 さらには「九つの巨人」の内七つを手駒に従え80年前の「巨人対戦」に勝利したのだ

 フリッツ王は残された国土「パラディ島」に
 三重の壁を築き国民と共にそこへ逃げ込んだ
 だが全員ではない
 我々非マーレ派のエルディア人残党は奴らに見捨てられ
 この大陸に取り残された」

と、グリシャの父親が「本来ならば大陸に残された民族弾圧を行っていたエルディア人が滅ぼされてもおかしくはないのに生かされているのは温情だ」と語る表情は、幼きグリシャからすれば、「娘を亡くしたにしては饒舌でご主人の言いつけを守り、祖先を卑下する姿はさながら犬のようだった」と語られている。

だがしかしグリシャは妹の死に対して「ただ街を歩いていただけだ」と大声で主張する中で、両親を「楽園送り(パラディ島にいる知性のない巨人)にさせたいのか」と言われ、つつましく沈黙すると約束する中、世界が狂っていることを悟る。

年嵩になるにつれ、グリシャは何の感慨もなく親の診療所を受け継ぐことになるのだが、その中で奇妙な患者が現れることになる。その患者は明らかに故意としかいえない十字傷を負った人物であるが、妹の死の真相を知る代わりにエルディア復権派の勧誘を受けることになる。

グリシャはかつて妹を見送った人物の飼い犬により直々に食い殺されたことを知り、肉体にエルディア復権派の証である十字を肉体に刻む。

始祖・ユミルの調査により(スパイのフクロウの歴史調査)

「始祖ユミルは巨人の力に目覚め
 荒れ地を耕し 道を造り
 峠には橋をかけた」

と、かつて教えられていた歴史内容がマーレ側にとって都合の良いものだと知るや否や盛り上がった。
その最中、グリシャは仲間の一人に「よくこの古代語を読めたもの」だと指摘されつつも、「何となくわかるだけだ」と、正しい歴史を証明するには曖昧過ぎる言葉を出している。

実はこれには一種のからくりがあり、始祖の巨人には未来と過去を通じて記憶巡りの能力がある。
その証拠にグリシャはフクロウから、本来みんなを救いたいのなら使命を全うしろ」と言い、グリシャからミカサとアルミンは誰なのかを尋ねるのだが、『記憶巡り』の影響が無意識に出たためか、「誰の事なのか分からない」と述べている。

そうして、エレンの記憶巡り同様、第一話で「地下室を見せてやる」と述べた大人グリシャは無意識ながらの始祖・ユミルの持つ記憶巡りの旅の影響を受けていただけである。

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そしてちなみにいうなら、ユミルによる民族浄化と国の発展のそれぞれは真実であり、一方が正しいだけではなく、二つの真実を合わせると正しい回答が出るのである。
何せ始祖ユミルは元々舌を切られた奴隷で、悪魔(有機生物の期限)に出会った。その後、フリッツ王の命令で開拓を行っていたのである。
しかしそれはフリッツ王から奴隷として命令された内容の一部でしかなく、ユミルは開拓の他に王指揮の元、王家に逆らう民族を浄化していったのであった。

初代フリッツ王を身を挺して守った始祖ユミルであるが、その亡骸は三人の娘であるマリア・ローゼ・シーナの三人の捕食された(これが巨人が人間を捕食する要因との考察がある)。
ハンジが巨人が、口の構造がそもそも発話することに向かないと述べていたのは、始祖ユミルが巨人の能力を得る前に舌を切断されていた可能性が影響している可能性がある。


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