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2021年06月09日

大統領失格(六月五日)



 日本の参議院と同じで、しばしば不要論が登場するチェコの上院だが、下院や政府から独立して機能しているので、特に議員の構成が下院と大きく異なっている場合に、独自の活動で存在感を示すという点では、廃止しても何の問題もなさそうな参議院とは違っている。去年の夏のビストルチル上院議長を代表とする議員団の、政府の反対を押し切っての台湾訪問も、その活動の一つである。

 そんなしばしば独自の活動でチェコの政界を揺るがす上院がまたやってくれた。上院の安全保障委員会が、ミロシュ・ゼマン大統領について、大統領の職責を果たせる状態にないと言う決議を出したのである。一番の理由はロシアの特殊部隊の工作員がかかわっていたとされるブルビェティツェの弾薬倉庫爆発事件についての反応だろうが、チェコの大統領としてそれでいいのかといいたくなるような言動が増えているのは確かである。
 この上院の安全保障委員会の決定が、どれだけの法的な拘束力を持っているのかは不明だが、おそらく何の拘束力も持っていない、つまりはこの決定でゼマン大統領が辞職に追い込まれるようなことはないだろう。例によって大統領府の広報官は、選挙に向けた政治的なパフォーマンスにすぎないとか、大統領に対する個人攻撃だとか言って強く批判していた。

 実は側近たちがゼマン大統領の衰えをいいことに、自分たちの都合のいいように操っているという説もあるのだけど、最近の本来は立って望むべき儀式にも座ったままだったり、テープカットの際に右利きのはずなのに左手にハサミを持たされたりしているのを見ると、一期目と比べても衰えたという印象は否定できず、激務であるはずの大統領の職務を果たせないという上院の判断には一理ある。政治的なライバルだったクラウス元大統領は未だ矍鑠としているだけに、衰え振りが目立つという面もある。
 辞任なんかするわけのない大統領を解任する方法があるのかというと、どうなのだろう。法的な規定がないから、上院の反大統領派が大統領の立場をなくして辞任に向けて追い詰めようとしているような印象も受ける。その意味では、大統領側の政治的なパフォーマンスだという上院に対する批判もあながち的外れではない。特に前回の上院議員選挙で野党側、つまりは反ゼマンを標榜する政党の議員が増えて以降、上院は大統領との対立姿勢を強めているわけだし。いや、どちらかと言うと大統領が対立姿勢を強めているといったほうがいいかな。

 ゼマン大統領は、しばしば自分は有権者による直接選挙で選出された大統領だから、これまでの国会議員による選挙で、有権者から見れば間接選挙で選ばれた大統領よりも権限が強いのだと主張している。憲法などにそんな規定はないはずだけれども、大統領選挙の投票率の高さと、国会議員選挙、特に上院議員選挙の投票率の低さ、国会議員により投票では有権者の意向よりも党利党略が優先されたことを考えると、ゼマン大統領の選出にこれまでの大統領の選出よりも有権者の考えが大きく反映されているとは言えそうである。
 問題は、直接選挙で選出された大統領が、投票した有権者たちの支持を失った場合にどうするのかということである。二期目に入って問題を引き起こすような言動の増えたゼマン大統領は、選挙のときに比べると確実に支持者を減らしている。三期目があるなら、その支持者の減少は選挙の敗北となって現れるのだろうが、次の大統領選挙には立候補できないから、怖いものなしである。

 ゼマン大統領の支持によって何とか生きながらえているバビシュ首相の政府と、与党と共産党で過半数を占める下院にゼマン大統領の首に鈴をつけるようなことができるとは思えないから、上院の存在意義が大きくなっている印象である。結局はゼマン大統領は任期を全うして引退ということになるのだろうけれども、野放しにしておくとチェコにとってはろくでもないことになりそうである。
2021年6月6日18時30分。











2021年06月08日

推理小説三昧(六月四日)



 時代小説、歴史小説を濫読して飽きた後は、推理小説に手を伸ばした。赤川次郎の『三毛猫ホームズの推理』があるのを思い出して、久しぶりに読んだのが、推理小説に移ったきっかけである。中学時代に、確かシリーズの十冊目ぐらいまでは読んだと思うのだけど、一冊目の時点ではシリーズ化はあまり考えていなかったような印象を持った。一冊目が売れたから、出版社の要請で続編を出してシリーズ化したということなのだろう。

 推理小説の場合には、続編とはいっても、探偵役が同じだけで、ストーリーは一から新しく始まるわけだから、継続しようが、終了しようが、作品の質にはあまり影響しなさそうだけど、小説よりもマンガ、特に少年マンガの場合に顕著な、売れなければ話の途中でもむりやり打ち切り、売れれば無理やり話を引き伸ばすというやり口は、作品の質を落とすだけでなく、全体の売り上げも落とすことにつながるような気がする。そういえば、池波正太郎の『鬼平犯科帳』も、当初は鬼平の火盗改め在任期間に合わせて書かれていたのが、人気のせいで終われなくなって、年代不詳の作品になってしまったなんて言われていたなあ。原則として短編だから個々の作品の質には影響しないのだろうけど。
 赤川次郎は、出版社ごとにシリーズというか、探偵役の登場人物を持ち、それを頻繁に書き継ぐという特異な作家だけれども、それぞれのシリーズの中でも第一作が、作品としては一番面白かったような記憶もある。短編中心のシリーズはそうでもないかな。今回は「三毛猫ホームズ」の一作目以外は、シリーズになっていない作品を何作か読んだだけなので、何ともいえないけどさ。

 逆にどの出版社からの刊行でも探偵役は変わらないというタイプの作家もいて、西村京太郎とか内田康男なんかが代表的な存在になるのだろうか。西村京太郎の場合には私立探偵の左文字なんてキャラクターもいたはずなのだが、いつの間にか十津川警部の登場する作品ばかりになっていた。当時の、確か1970年代の日本では私立探偵が殺人事件の捜査にかかわるというのが現実的ではなくて受け入れられなかったのだろうか。私立探偵が捜査に介入する状況を設定するのが大変だったのかもしれない。
 十津川警部ものでは、登場する部下の名前が違っていることが多いのだけど、出版社によって、部下の刑事を使い分けるなんてことをしていたのかなあ。今回は出版社のわからない形で何冊か読んだのだけど、部下の入れ替わりは出版社の違いというよりは、書かれた時代の違いのようにも思われた。部下ではないけれども、三浦という刑事が、事件の起きた都道府県の警察の担当者として登場することが多いのが気になった。そんなによくある苗字ではないと思うのだけどなあ。
 西村京太郎の代名詞とも言うべき「トラベル・ミステリー」は、電車がめったに遅れない日本だからこそのジャンルだと思う。鉄道の遅延が日常茶飯事で、5分までは遅れとはみなさないというチェコだと、あの時刻表をもとにしたアリバイ作りとか、実現は不可能である。毎日のように遅れて、その遅れの時間も日替わりで違うから、実際にやったら、逆に捜査も大変そうだけど、推理小説としてはどうなのかということになってしまう。

 今回次々に大抵は連続殺人事件を扱った推理小説を読んで思ったのは、実際にこんなにたくさん事件が起こったら警察も対応しきれないだろうというものだった。実際に日本で毎年どのくらいの人が殺人事件の犠牲車内っているのかは知らないが、その年に刊行された推理小説の中で殺された人の数より多いということはあるまい。まあ、刑事ドラマだと毎週一回以上は必ず事件が起こるわけだけどさ。
 森雅裕が、確か推理小説は読者の殺人願望をかなえるカタルシスであるという考えに対して、疑問を呈した上で、作者のほうが実在の人物をモデルにした登場人物を殺せるから、こちらのほうがカタルシスと呼ぶにふさわしいなんて危ないことを書いていたけれども、寡作で、人の死なない推理小説を書くことも多かった森雅裕ならともかく、赤川次郎や西村京太郎のような多作で、それぞれの作品で何人も人が死んでいく作家の場合には、いちいちカタルシスなんて感じていられないだろうなあ。読者の側も人死によりも、推理を楽しむわけだし。

 とまれ、人の死に過ぎる小説を立て続けに数十冊読んで、流石に食傷したのも、読書三昧の生活をやめて、もの書く生活に復帰した理由の一つである。活字中毒者が完全に読むのを停止するわけもなく、その後もあれこれ読んではいるのだけど、推理小説はぱったり読むのをやめてしまった。
2021年6月6日18時30分。








posted by olomoučan at 06:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 本関係

2021年06月07日

内閣不信任案否決(六月三日)



 すったもんだの果てに、野党の二つのグループ、海賊党と市長連合のグループと、市民民主党、TOP09、キリスト教民主同盟のグループが合意に達し、下院議員の署名を集めて提出したバビシュ内閣に対する4回目だったかの内閣不信任案の審議が今日行われた。選挙まで半年をきったこの時期に不信任決議が可決されても、大統領はゼマン大統領だし何も変わらないとは思うのだが、バビシュ氏を追い落とす姿勢を見せ続けることが大切だと考えているのだろうか。

 日本だと内閣不信任案がどの程度頻繁に出されるのかは知らないが、チェコでは日常茶飯事である。いや平均すると年に一回ぐらいの割合になるから、年中行事のようなものだといったほうがいいかもしれない。2000年以降の政権で不信任案を一回も出されなかったのは、野党の市民民主党と閣外協力協定を結んでいた社会民主党のゼマン政権ぐらいのものじゃないだろうか。
 これまでの数ある不信任決議の中で、実際に可決されたのは、トポラーネク内閣に対して出された2009年のEU議長国を務めていたときのものだけである。あのときは、EU議長国の首相として舞い上がっていたトポラーネク氏に対する嫌がらせとして、可決される可能性はないことを承知の上で提出したら、身内の市民民主党から造反者が出て可決されたのだった。野党側も予想外の結果に、可決を喜ぶよりも当惑していたような記憶がある。

 当時と同様に、今回も事前に各政党所属議員がどのように票を投じるか予想されたのだが、これまでのバビシュ政権に対する不信任決議案と同様、キャスティングボードを握るのは共産党だとされていた。ANOと社会民主党の与党側も、野党側もオカムラ党などの決議案の提出にかかわっていない党の議員の数を合わせても、可決に必要な過半数は確保できていないのである。
 これまでは、バビシュ政権と閣外協力協定を結んでいた共産党が、可決されないように協力してきたことで否決されてきたが、共産党はすでに閣外協力協定を破棄しており、賛成と反対の土地らに手を挙げるか注目されていた。珍しくメディアの注目を集めた共産党は、審議の前日の昨日の時点では方針を明かさず党員全体の意見を集めて決めるなんてことをいっていた。

 それで、今日の午前中にセズナムを見たら、「共産党は足でバビシュ支持に投じる」なんて見出しが目に飛び込んできた。最初は、この不信任決議の不毛さに抗議して、採決に際して、反対の意見を表明するのに手ではなくて、足を挙げることにしたのかと思った。それで、ちょっと共産党を見直す気になったのだけど実際は違った。
 見出しの「足」が単数ではなく、双数になっていた時点で気づけばよかったのだ。手をあげるときに普通は片手を挙げるのだから、足の場合にも片足しかあげないはずで、こちらの理解したことが正しければ、「足」は単数になるはずなのに、双数の7格が使われているということは、両足でバビシュ政権を支持する行動を取るということである。つまりは、審議採決に参加せずに、両足で歩いて会議場を出て行くということを意味していたのである。

 チェコの下院でも重要な議案に関しては、出席議員の過半数ではなく、全議員の過半数、つまり200議席あるから、101人の議員が賛成しない限り可決されないことになっている。だから共産党が退場した時点で、賛成も反対も過半数を上回らないことは明らかだった。この場合は内閣不信任案が可決されないことは明らかだったのだが、そこから延々、与野党の議員たちの演説が続き、十数時間もの時間を浪費した挙句に採決が行われ、予想、いや予定通り否決された。
 なんともまあご苦労なことである。共産党の議員たちの決定をうらやましいと思っていた他党の議員もいたに違いない。マスコミ関係者も、仕事として審議の様子を見守っていただろうけれども、いい加減に終わってくれと思っていた人が多かったはずだ。以前何かの件で、この手のマラソン審議をテレビで流しながら仕事をしていたことがあるけれども、たまに注意を向けるだけでも同じ発言の繰り返しばかりでうんざりしたのを覚えている。
2021年6月4日21時。











2021年06月06日

アイスホッケー世界選手権異変グループA(六月二日)



 チェコが入っていたグループAは、さらに大きな驚きが待っていた。こちらのグループに入っていたのは、ロシア、スウェーデン、チェコの準々決勝常連国に、最近安定して結果を出してい印象のあるスイス、不安定だけど強いときには強いスロバキア、さらにはデンマークと元開催国のベラルーシ、イギリスという組み合わせだった。

 そもそも、イギリスがアイスホッケーの世界選手権に出場しているというのが大きな驚きなのだが、大健闘を見せていた。イギリスにもアイスホッケーリーグがあるのは、サッカーのペトル・チェフが引退後にアイスホッケーの試合にGKとして出場していたから知っていたけれども、世界選手権に出て試合に勝てるレベルにあるとは思ってもいなかった。
 初戦のロシア相手には、1−7と完敗だったが、次のスロバキアとの試合で1−2と善戦すると、デンマークを相手に延長戦に持ち込み負けたものの勝ち点1を獲得。次のチェコが延長でやっと勝ったベラルーシとの試合では4−3で勝利を挙げた。この時点で勝ち点4で、チェコとスウェーデンよりも順位が上だったのである。その後は勝ち点を増やせなかったけれども、完封負けは一試合もなく、最終順位も勝ち点で並んだベラルーシに直接対決で勝っていたおかげで、7位となった。これはもう驚き以外の何物でもない。

 最下位に終わったとはいえ、ベラルーシも驚きの結果をもたらしグループの波乱の結果に貢献した。二試合目でスウェーデンと対戦して、1−0で勝ってしまったのである。これでスウェーデンは、デンマークに3−4で負けた初戦に続いて二試合連続で番狂わせの敗戦となった。次のスイスとの試合には7−0で勝ったものの、同じくスタートに失敗したチェコとの直接対戦で2−4で負けて、準々決勝進出の望みが小さくなった。
 チェコとの試合も、第二ピリオドが終わった時点で2−0でスウェーデンがリードしていたから、これはチェコの敗退は決定的だと思っていたら、テレビを見ていない間に逆転されていた。最後の望みをかけたロシアとの試合も終了間際に追いついて延長に持ち込んだものの負けてしまい、この時点で勝ち点10で敗退が最終的に決定した。スウェーデンが準々決勝に進出できないのは、史上初めてのことらしい。

 我等がチェコはと言うと、出だしは二連敗と最悪だった。そもそもロシアとスイスといきなり連戦というスケジュールがついていなかったと言えなくもないのだが、それにしても負け方が、特に失点のしかたがひどく批判されていた。確か、選手交代にもたついている間に、攻撃を受けて守備の人数が足りなくなって失点というシーンがあったのかな。それでロシア戦は、せっかく同点に追いついたのに延長に持ち込めずに負けた。スイスに負けたのを番狂わせと言う人もいたけれども、最近スイスは安定して強くなっているのでそこまで驚きはなかった。
 三試合目のベラルーシとの試合も延長に持ち込まれずに勝てるはずだったのに、終了間際に同点に追いつかれて勝ち点を失った。とにかく逆転勝ちした四戦目のスウェーデンとの試合の第二ピリオドまでは、チェコチームは低調で、あちこちから監督に対して批判が飛んでいた。スウェーデンに負けていたら、スロバキアやデンマークにも負けてグループ六位に沈むなんてこともあったかもしれない。

 スロバキアは大体予想通りの結果だったのだが、一試合だけロシアに3−1で勝ったのには驚かされた。チェコ、スイス、スウェーデンという上位を争う3チームに負けていながら準々決勝に進出できたのは、このロシアとの試合での勝利のおかげである。相変わらずいいときと悪いときの差のあるチームで、ロシアに勝っていながら、スイスには1−8、チェコには3−7と多くの失点で負けてしまうのだからよくわからない。

 とまれ、最終順位は、ロシア、スイス、チェコ、スロバキア、スウェーデン、デンマーク、イギリス、ベラルーシの順。やはりロシアは強い。準々決勝の対戦は、ロシア―カナダ、スイス―ドイツ、スロバキア―アメリカの対戦となった。この時点では、こちらのグループから準決勝に進出するチームが多くなると思っていたのだけど……。スロバキアの試合を除いて、大接戦だったとはいえ、4チームとも敗退するとは思っても見なかった。うーん残念。
 残念といえば、国を挙げてのドーピングに対する制裁で、ロシアがロシアの国としては出場できないけれども、オリンピック委員会の名の下でなら参加できるという茶番が続いているのが残念でならない。最初はテレビでもロシアではなくてという説明をしていたが、面倒になったのかみんなロシアで済ませるようになっている。東京オリンピックが大失敗に終わるのは確実だから、この手の組織の存在意義とか再検討されないかな。利権まみれで腐り果てているから無理か。
2021年6月3日24時。









2021年06月05日

アイスホッケー世界選手権の異変グループB(六月朔日)



 ラトビアで開催されているアイスホッケーの世界選手権で、自分の目を疑ってしまうような異例の結果が相次いでいる。そもそもベラルーシとラトビアで共同開催だったのが、政治的な圧力でベラルーシの開催権が剥奪されてラトビア単独開催になったこと自体が異例だし、観客なしでの開催も異例なので、異例の結果が出るのも当然なのかもしれない。
 アイスホッケーの世界選手権には、以前は世界に向けた普及のためにアジア枠なんてのがあって、アジアのチームも、大抵は日本だったけど、出場していたのだが、廃止されて以降、日本は出場さえしたことがないはずだ。今回はアジアと呼んでいいのかどうかわからないけれども、旧ソ連のアイスホッケー圏であるカザフスタンが出場している。

 そのカザフスタンも、今大会の衝撃の一翼をになっている。グループBに入ったカザフスタンは、初戦で開催国のラトビアに、延長でも決着がつかずシュートアウトの末に2−3で勝利した。ここまではまだたいした驚きではなかったのだが、続くフィンランドとの試合でも同様の経過で2−1で勝ったのである。その後アメリカとカナダには負けたものの、ドイツとイタリアに勝って、最終戦を前に勝ち点10で、グループ8チームのうち3位につけていた。
 グループ下位に沈むノルウェーに勝っていれば文句なく準々決勝進出だったのだが、最終戦で体力の限界だったのか、1−3で負けてしまう。そして、フィンランドがカナダに勝ちはしたものの延長までもつれ込んだことで、カナダが勝ち点1を獲得して、10で並んでしまった。直接対決で負けているカザフスタンの望みは消えたのである。この時点では、グループ4位だったけど、勝ち点9でならぶドイツとラトビアの試合が控えていたので、敗退が決定してしまった。

 二つ目のグループBの驚きは、カザフスタンと最後まで準々決勝進出を争ったカナダである。正確にはカナダの不調である。初戦で開催国のラトビアに0−2で負けたのは、いやラトビアがカナダに勝ったのは、今大会の衝撃の中でも一番大きいものの一つだった。二試合目もアメリカに負けたのはともかく、1−5という大差がついたのには驚かされた。解説者たちもこの二試合全然いいところがなかったと言っていた。さらに三試合目にドイツに1−3で三連敗となったときには、準々決勝進出の可能性はほぼなくなったように見えた。
 その後、カザフスタンに勝ってカザフスタンがノルウェーに負けてくれたおかげで、可能性が復活したのだが、フィンランドとの最終戦が終わった時点で勝ち点10。その下に勝ち点9でドイツとラトビアというカナダが負けたチームが並んでいて、準々決勝進出をかけて直接対決することになっていた。つまり、試合が60分で終了すればカナダの準々決勝進出が決まり、延長に入った時点で敗退が決まるという状況だったのである。残念ながらドイツが延長なしで2−1で勝利したためカナダのグループ4位が決まった。

 グループBの順位は結局上から、アメリカ、フィンランド、ドイツ、カナダ、カザフスタン、ラトビア、ノルウェー、イタリアの順番となった。番狂わせと言いたくなるような試合をしなかったのは、フィンランドに負けた以外は全勝のアメリカと、全敗のイタリアぐらいだろうか。アメリカも予想外の接戦に持ち込まれることは多かったけれども、きっちり勝ちきっていた。反対にイタリアは善戦はしてもそれを勝ち点にはつなげられなかった。
 毎回毎回上位に進出するチームが同じではつまらないので、カナダが落ちて、カザフスタンかラトビアが進出することを期待していたのだが、残念ながらそうはならなかった。準々決勝の常連とはいえないドイツが、しかも3位で進出したのだからよしとするか。よく考えると、こちらのグループでは、ラトビアとドイツが最後の4つめの席を占めると予想されていたのだから、経過はともかく結果に関しては番狂わせはなかったと言ってもいいのかもしれない。
2021年6月2日24時30分。




木曜日の準々決勝でグループBの4チームがすべて準決勝進出を決めた。これもまた驚きの結果である。







2021年06月04日

フォルトルナリガも終了1(五月卅一日)



 昨シーズンが完了しなかった関係で、降格するチームがなく昇格するチームを受け入れて全18チームで行われたチェコサッカーの一部リーグ、フォルトナリガも土曜日に最終節が行われて全日程を終了した。最終の2節は全試合同時開催になっていて、以前はチェコテレビで一試合中継しながら、大会上でスコアが変化するたびに割り込みでその様子が伝えられたのだけど、今年の最終節の中継ではそんなことはしていなかった。順位がほぼ確定していたのが理由だろうか。

 とまれ、優勝したのはスラビア・プラハ。無敗での優勝である。昨シーズンからの通算だと、国内の公式戦での無敗記録は50試合に近づきつつある。去年のほとんど最後まで終了したシーズンを含めばこれで三連覇で、チェコリーグになってからでは7回目の優勝となる。今シーズンの様子を見ているとしばらくはスラビアの時代が続きそうである。
 最近のスラビアは移籍期間のたびに国外のチームに中心選手を引き抜かれているが、トロピショフスキー監督の育成手段が優れているのか、代役の選手が成長して穴を埋めている。ここ2年ほどでも、クラール、ソウチェク、ツォウファル、ヌガデウ、デリなど数人の中心選手が移籍して行ったが、プロボット、ジマ、シマなどの若手選手が次々に登場してきた。ジマなんて、去年の冬に移籍したときには、オロモウツでリーグデビューしたばかりだったのに、今やA代表でヨーロッパ選手権に呼ばれるまでになっている。

 二位に入ったのは、スパルタ・プラハ。最近はスラビア、プルゼニュの後塵を拝することが多く、2010年代に入ってからは優勝は2013/14シーズンの一回だけ、二位も2015/16以来となる。このチームは監督選びで迷走して、厚生大臣と比較されるぐらい頻繁に監督を代えるのが一番の問題なのだが、この冬に就任して、攻撃だけは建て直したブルバ監督にどれだけ時間が与えられるかに注目である。オーナーのクシェティンスキーの悲願とも言うべきチャンピオンズリーグの本戦出場は、今年も予選には出られるとは言え、非優勝チーム部門だし、難しそうである。
 スパルタは、最近、フロジェクを初めとして自前で育てた十代の選手をリーグ戦に起用して経験を積ませている。以前は自前の選手が台頭しかけても、次々に同じポジションの選手を取ってきて、出場できないまま他所のチームに移籍して行くということが多かった。今や代表のエースとなったシクもスパルタではほとんど試合に出られず、レンタルで出たボヘミアンズで活躍したことがイタリア移籍につながったのだった。プルゼニュではベテランに頼ることが多かったブルバ監督がどこまで若手に機会を与えるかにも注目である。

 三位は教育相のスポーツ関係の助成金にまつわる汚職疑惑で逮捕されて協会長を引退することになったペルタ氏がオーナーのヤブロネツである。代表では全く結果を出せなかったラダ監督だが、クラブチームの監督になると安定して上位の成績を残すのだから不思議である。向き不向きというのがあるのだろうなあ。うちのブリュックネル爺さまは代表でもクラブでも結果を出しているけどさ。
 ヤブロネツは三位に入ったことでヨーロッパリーグの予選の出場権を獲得したのだが、このチームヨーロッパリーグの予選で勝てないのである。以前一度だけ予選なしてヨーロッパリーグの本戦に出場したことが一度あるだけで、大抵は予選の初戦で敗退するので、ペルタ氏がヨーロッパリーグに出ることを目標に補強して十分に戦力を揃えてもなぜか勝てないと愚痴っていたことがある。今年も駄目だろうなあ。せめて初戦ぐらいは勝ちぬけてほしいとは思うけど。

 四位は過去最高の順位となるスロバーツコ。かつて前身のシノット時代に一度五位に入ったことがあるが、その後審判買収のスキャンダルで、オーナ企業のシノットが撤退して二部に落ちるなどぱっとしなかったのだが、今シーズンは強かった。中心になるのは元スパルタのカドレツや元プルゼニュのペトルジェラなど全盛期を過ぎたベテラン選手だが、若手でもクリメントなど一度国外に出てチェコに戻ってきた選手たちが活躍していた。新しく始まるヨーロッパのカップ戦の予選から出場できるようだけど、どうかな。そういえば、今年は勝てなかったけど、昨シーズン最後にスラビアに勝ったのもこのチームじゃなかったかな。

 五位に入ってなんとかヨーロッパのカップ戦の予選出場権を獲得したのがプルゼニュである。2010/11のシーズンに初優勝して以来、最悪の結果となった。一時はスパルタの監督に招聘されるという噂もあったスロバキア人のグリャ監督も、監督が連れてきたスロバキア人の選手たちも、期待はずれと言うほどひどくはなかったけれども、期待に応えたとも言いづらい。結局監督交代と言うことになって後任にはチェコ代表の監督を務めたこともあるビーレク監督が選ばれた。カザフスタンの代表監督を務めていたはずだけど、やめたのかな。監督交代後も劇的に状態がよくなったわけではないが、リベレツがお付き合いで失速してくれたおかげで五位に入れたという印象である。
 予定よりも長くなったので、この辺で一度切ることにする。
2021年5月1日24時30分。









2021年06月03日

エクストラリガも終了(五月卅日)



 女子のインテルリガに続いて、男子のエクストラリガも、日曜日の午後の決勝の最終戦で、終了し最終順位が決定した。

 優勝と準優勝以外はすでに決まっていて、下から紹介すると、9位から12位の4チームで行われたプレーアウトと呼ばれる追加のリーグ戦は、レギュラーシーズンの勝ち点をそのまま持ち越すこともあって、順位に変動はなかった。つまり、9位ブルノ、10位フラニツェ、11位ノベー・ベセリーで、最下位に終わったのはブルノの一地区であるマロムニェジツェ。例年なら最下位のチームは降格、年によっては2部の優勝チームと入れ替え戦ということになるのだが、男子も2部リーグが4節で中断して、そのまま再開されなかったので、降格と昇格があるのかどうかは不明。

 プレーオフの初戦、準々決勝で負けた4チームの順位決定戦は、女子のプレーオフ同様、それぞれのホームで1試合ずつ行う。レギュラーシーズンを5位で終えたフリーデク・ミーステクと8位のズブジーの対戦は、二試合ともホームのチームが1点差でまけたのだが、アウェーゴールの差でズブジーが5位決定戦に進出、6位のイチーンと7位のコプシブニツェは、ホームでの初戦を引き分けたコプシブニツェが、二試合目に勝って勝ち抜け決定となった。どちらも下位のチームが勝ちぬけた形になるけど、もともと5位から8位までは勝ち点1しか差がなかったのである。
 7位決定戦は、イチーンが二連勝、5位決定戦もズブジーが二連勝で、最終的な順位は5位ズブジー、6位コプシブニツェ、7位イチーン、8位フリーデク・ミーステクとなった。

 ドゥクラとロボシツェの対戦となった三位決定戦は、ドゥクラが圧倒して三連勝した。特にロボシツェでの第二戦では、14点差という大差での勝利だった。ロボシツェもカルビナーとの準決勝では予想以上に善戦していたけれども、選手層の薄さはどうしようもなく最後に力尽きたということころだろうか。長年チェコリーグの得点王争いを続けてきたモトルも大ベテランになって、そこまで頼れないし、スウェーデンから読んできたヨンソンもシーズン終盤でお疲れ気味だった。トルコフスキーの成長が期待といいたいところだけど、そのうちドイツに買われていくんだろうなあ。

 最後は、カルビナーとプルゼニュの決勝である。カルビナーで行われた初戦は、27−26でカルビナーが1点差の勝利。前半はカルビナーが優勢で、このまま押し切るかと思って見ていたのだが、前半終了間際に交代したキーパーにパツルの7mスローを止められたあたりから雲行きが怪しくなった。前半は得点を重ねていたパツルのシュートが、ことごとく止められるようになってしまい、逆転されて何度も2点差をつけられてしまうのである。最後は再度逆転して何とか逃げ切ったけれども、怪我で二度も試合を離れたソラークが10点得点の活躍だった。

 プルゼニュでの二試合目は、チェコテレビで放送がなかったため見ていないのだが、初戦で、特に後半はほぼシャットアウトされていたパツルが、レギュラーシーズン得点王の実力を発揮して14得点を挙げたものの、引き分けに終わった。後半に入ってカルビナーがリードする展開が続いていたようだが、守りきれなかった。プレーオフでは引き分けはなく7mスロー合戦を行うのだが、カルビナーの弱点が7mスローなのである。プルゼニュのキーパーの準備が上だったというべきかも知れないが、7mスロー合戦でプルゼニュの勝ちが決まった。

 三試合目も7mスロー合戦の末にプルゼニュが勝った。この試合前半からどちらもミスの多いロースコアの試合で、20−20で引き分けたのだが、7mスロー対策はプルゼニュのほうが上だった。この試合でカルビナーにとって痛かったのは、ゲームメーカーであるムロテクが怪我で途中から欠場したことだった。代役のルージャはまだ経験が足りておらず、かつての空回りしていたムロテクを見るような気がした。サイドのスカリツキーのシュートが全部止めれらたのも痛かったなあ。

 四戦目はホームのプルゼニュが終始優勢に試合を進めていて、残り5分で3点リードしていたときにはこれで決まりだと思われた。観客も一部入場が許可されていて応援する側のこれで優勝は決まりだという雰囲気が選手たちにも影響を与えたのか、シュートが決まらなくなり、カルビナーが4連続得点で終了間際に逆転に成功した。

 そして、今日の最終戦では、許可された観客の数も増えて、例年通りとは行かないもののかなりの声援の中で試合が行われた。そのせいかどうかはともかく、前半のカルビナーは最悪だった。ミスを連発した上にシュートを外すことも多く前半は16−9とプルゼニュの7点リードで終了。後半開始直後も悪い流れは変わらず、最大で9点差つけられたのだ。そこから盛り返して2点差にまでつめよったものの、肝心のところでミスが出て、最終的には27−24でプルゼニュが勝ち、エクストラリガ優勝を決めた。
 個人的にはカルビナーを応援していただけに残念な結果だったが、プルゼニュのゴールキーパーたちの徹底したカルビナー対策が成功した結果だとも言えそうだ。選手としてはカルビナーのキーパーもプルゼニュに負けてはいないのだろうけど、7mスローをはじめ相手の中心選手のシュートに対する対策ではプルゼニュのほうがずっと上を行っていた。この辺は監督の元代表GKシュトフルの果たした役割が大きいんだろうなあ。カルビナーのシュクバジル対策はうまく行っていなかったし。
 とまれ、上位4チームノ順位は、1位プルゼニュ、2位カルビナー、3位ドゥクラ、4位ロボシツェとなった。

 それよりも何よりも、今シーズンが無事に最後まで終わったことを寿がなければなるまい。去年は中断したまま再開できなかったし、今年も一度は中断したわけだから。世界的なパンデミックで日常性の崩壊した現在、非日常の局地であるオリンピックは開催する必要はないと思うが、日常を構成するスポーツは多少のリスクは承知で開催し続けるべきであろう。
2021年5月31日24時30分。










2021年06月02日

インテルリガ終了(五月廿九日)



 テレビでは全く放送されず、存在を忘れてしまいそうになるハンドボール女子のインテルリガのレギュラーシーズンが終わり、いつの間にかプレーオフが始まっていた。スロバキアのほうは知らないが、チェコ側のプレーオフは終了して最終的な順位が決定した。予想通り今年もまたモストが優勝。これで八回目だというが、来シーズンはコレショバーがドイツから帰ってくるからさらに強くなりそうである。
 ハンドボール女子のインテルリガは、チェコとスロバキアの二カ国共同で開催されているが、最終的にはそれぞれの国のチームだけでプレーオフを行って、優勝チームを決めることになっている。出場チームはチェコが8チーム、スロバキアが4チームの計12チーム。チェコ側では上位4チームが優勝を争うプレーオフに進出し、下位4チームは最終順位を決める追加のリーグ戦を行う。例年は再開のチームが降格するのだが、今シーズンはどうなるかわからない。二部リーグが感染症対策で中断して再開されなかったため順位が決まっていないのである。

 とまれ、レギュラーシーズンの順位は、上から、モスト、ミハロフツェ、ドゥナイスカー・ストレダ、オロモウツ、スラビア、シャリャ、ポルバ、ズリーン、ピーセク、プルゼニュ、プレショウ、ホドニーンの順番。チェコ側のプレーオフは、モスト対ポルバ、オロモウツ対スラビアの準決勝で始まった。
 女子のプレーオフはそれぞのれホームで1試合ずつ行って、一勝一敗の場合は二試合合計の得失点差で勝ち抜けチームを決めることになっている。引き分けの場合も男子とは違って、7mスロー合戦は行わない。以前は先に二勝したチームが勝ち抜けとかやっていたような気もするのだが、この辺のルールはころころ変わるので、今年だけの特別ルールかもしれない。

 モストとオストラバの一地区であるポルバの対戦は、ポルバでの初戦が23−21、モストでの第二戦が26−18でどちらもモストの勝利。予想通り最近のチェコ最強チーム、モストがあっさり決勝進出を決めた。思い返せば、ポルバもそうだけど、モストもこちらに来たばかりのころは、一部リーグには存在しなかったんだよなあ。
 もう一つの、こちらに来たばかりのころも優勝争いをしていたオロモウツとスラビアの対戦は、プラハでは24−22でスラビアが、オロモウツでは27−25でオロモウツが、どちらも二点差で勝って、対戦成績だけでなく得失点差でも並ぶという結果になった。ただし、いわゆるアウェーゴールの差というやつでスラビアが決勝に進出。このルールも正直意味不明で、無理にサッカーなんぞに合わせずに延長するなり、7mスロー合戦をするなりすればいいと思うのだけどなあ。

 スラビアとモストの対戦となった決勝は、25−21、33−21でモストが圧勝。中断したまま終了した昨シーズンを除けば、初優勝だった2012/13年のシーズン以来、これで八連覇である。スラビアは5シーズン連続の5位とここ数年毎年上位は同じ結果になっている印象である。だからこそスラビアを応援していたのだけど、オロモウツに勝ったチームだし。

 3位決定戦は、ポルバでの試合はポルバが22−20で勝ち、オロモウツでの試合は17−17という極端なロースコアで引き分けに終わった。それで、ポルバが3位、オロモウツが4位ということになった。今年はレギュラーシーズンが終了した時点で、チェコ側で2位だったから、メダルも期待できるかと思っていたのだけど、ジャガイモメダルに終わってしまった。以前は毎年のように優勝を争い、3位以内に入っていたのだけど、ポルバとそれに続くモストの台頭でオロモウツの成績は下降気味である。最後の入賞したのはもう十年以上前になるのかなあ。

 チェコ側の5位から8位のチームで行われた追加のリーグ戦、いわゆるプレイアウトの結果、決まった順位は、5位ピーセク、6位ズリーン、7位プルゼニュ、8位ホドニーンである。以前1部で活躍していたベセリーやクノビツェの名前が消えている。スポンサーが撤退でもして強いチームを維持できなくなったのかなあ。時代の流れというのは残酷なものである。
2021年5月30日25時。










2021年06月01日

検査(五月廿八日)



 やんごとない事情で来週職場に出る必要が出てきた。現在のチェコでは、職場に出るためには、光の条件が課されている。感染したこともなければワクチン接種を受けたこともない人間には、検査を受けるしかない。職場が提供している定期検査は、金曜日の午前中というこちらに外せない用件がは言っている時間帯設定されていたため、受けることができず、ずっと自宅で仕事をしていたのだが、その用件がひとまず片付いたので、検査を受けに行く時間が取れるようになった。ということで久しぶりに引越し前の職場があった建物に出向くことになった。

 検査を受ける前に、検査字間を予約と言うか登録と言うかしなければならないのだが、連絡のメールが来てすぐに、指定のアドレスにアクセスしたのに、開始直後の9時台の予約は完全に埋まっていた。思い返せば、この検査が導入されたときも、9時すぐに検査を受けることができれば、外せない用件とは重ならなかったのだ。それができなかったから、諦めて再び自宅監禁生活に戻る破目に陥ったのである。一説によれば、事務系の仕事をしている人たちが優先的に検査の時間を選べるようになっているのだとか。
 結局、早めの時間も遅めの時間もすでに埋まっていたので、中間の10時ちょっとすぎに検査を受けることになった。仕事が一段落ついて気が抜けて以来、二週間ほどほとんど外に出ない生活を続けていて、以前と同じぐらいのスピードで歩けるか自信がなかったので、9時過ぎにはうちを出ることにした。普通に歩けば30分ほどで着くのだが、余った時間はちょっと足をのばして、街を見て回ることにする。コーヒー屋のコドーへの行き帰りで通る道以外は、最近通っていないのである。

 規制緩和のおかげか、街を行く人の数は以前より増えているのは確かである。ただ、前回街中を歩き回った一か月ほど前と比べても、営業をやめたと思われる店の数が増えていた。店内営業再開の近いレストランの中にも、持ち帰り用の窓口も設置しておらず、例年は出しているザフラートカも出してないところもあった。キキリキも以前は窓口があったのに、閉まっているように見えた。
 以前OPプロスチェヨフの直営店で、倒産後は後継ブランドのRVファッションの店になっていたところが閉店して店内が空っぽになっているのには驚いた。ここは他のOPプロスチェヨフの店が消えた後も生き残った店だったのである。集客力の大きいシャントフカの店に一本化したと言うことなのだろうけど、このチェコのブランドも先は長くないかもしれない。以前買ったのは、直営店のはずなのに別ブランドのものだったし。

 あちこち見て回りながら歩いていたら、余裕を持ってうちを出たはずなのに、会場に到着したのはぎりぎりだった。多少早く着いても遅くれても問題はないのだろうけれども、小心者なので時間を厳守してしまうのである。その結果、一分間隔で指定された時間通りに受付を済ませて会場へ。二か所で同時に検体の採取が行なわれているようで、待つことなく椅子に座らされた。
 頭をちょっと後ろに倒してねと言われたのが、一瞬わからなかった。動詞に接頭辞の「za」が着いていることに気づけば、「後ろに」だと理解できたはずなのだが、ちょっと緊張していたのである。それで、わくわくというよりはどきどきしながら、何をされるのか待ち受けていたら、綿棒を鼻に入れられて、特に何も感じないままに、お仕舞いと言われてしまった。あまりにあっさりと終わってしまって、両方の鼻の穴だったか片方だけだったかも思い出せないぐらいである。

 自宅から徒歩で往復一時間以上かけて出かけて、検査にかかった時間は10秒以内。楽だったといえばそれはその通りなのだけど、こんなんで検査できているのかという不安を覚えてしまった。誰かがめちゃくちゃ痛かったとか書いていたけどあれはPCR検査だったかな。同じアンチゲンではうちのはくすぐったかったと言っていたけど、くすぐったさどころか綿棒が鼻の中にあるのもほとんど感じられなかったのである。
 問題があったら10分以内に連絡が来ることになっていたので、会場を出てからしばらくは陽性の連絡があるんじゃないかと不安に思っていた。ほとんど外出しない生活をしていて、感染する可能性はゼロに近いとはいえ、何が起こるかわからないのが検査というものである。検査キットはどうせ中国製だろうしさ。三十分以上時間をかけて自宅に戻るまでには何の連絡もなく、結局午後二時か三時になってメールで陰性の連絡が来た。ふう。
 さて、問題は来週どうするかなあ。再来週は特に職場に出る必要はないはずだから、パスするかなあ。
2021年5月29日24時30分。








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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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