2019年04月28日
春は名のみの(四月廿六日)
今年の冬は寒かったので、これにあの懐かしい歌のように「風の寒さよ」とつなげれば、二月初めの立春の後、ずっと感じさせられていた気持ちになるのだが、暦の上での春の終わりも近づいた今日など、「気温の高さよ」とつなげたくなる。最高気温が25度を超えて30度に近づくというのである。これまでも、5月の時点で30度を越えることはあったから、4月末で30度近くという気温自体には、とやかく言うつもりはない。幸いまだ建物が熱を持っていないので、部屋の中はそれほど熱さを感じないし。
問題は気温の上がり下がりが例年以上に激しいことで、天気予報によれば明日の朝の最低気温は5度前後で、最高気温は今日の最低気温と同じぐらい15度前後までしか上がらないらしい。日本に比べて日ごとの寒暖の差の激しいチェコでも、ここまで急激に上がったり下がったりが繰り返されるのは珍しい。実は日本の気候を説明するものではなかったらしい四字熟語「三寒四温」の三寒と四温の間が最低でも10度以上あるというのが、これまで何度も繰り返されてきたのである。
その結果、慣れているはずのチェコ人でも、どの服を着ればいいかわからないとか、着る服を間違えるということがしばしばあるようである。今日も10時過ぎに街を歩いていたら、半袖半ズボンの完全に夏の格好をしている人もいれば、冬物と思しき上着を羽織ったり、抱えたりしている人もいて、季節感のないことこの上なしだった。長袖のワイシャツに上着なしという格好でも、暑くて汗をかいたから、上着を着ていた人は大変だったろうと思う。明日は逆に半袖半ズボンの人が寒さに震えることになりそうである。
チェコ人ですらこうなのだから、外国人が混乱するのも当然のことで、去年の終わりから上着の選択に失敗して寒さに震えたり、逆に歩いている途中で暑くなって上着を脱いで小脇に抱えるなんてことを繰り返してきた。天気予報で予想気温はチェックしているのだけど、風のせいで体感温度がぜんぜん違うことも多いし、ベランダに出て感じるのと、家を出て感じる寒さに大きな違いがあることもある。
春物の上着を着て震えていたのは、あちこちほつれ始めているので、新しい春物を買うぞと自分にプレッシャーをかけるためにあえて着ていた部分もある。だから自業自得ではあるのだけど、ワイシャツの上に春物の上着を重ねて快適という日がほとんどなかったため、買おうというモチベーションは完全にスポイルされて、ズボンとベルトは買えたけど、秋にも着られる春物、もしくは春にも着られる秋物の上着の買い物は、秋に持ち越しということになりそうである。この春で買い物の季節はおしまいにして、しばらく服には目を向けない生活をするつもりだったのに……。
そんな今年の春に、以前日本で会った韓国の日本研究者の言葉を思い出した。「最近韓国では秋が短くなった感じがするんですよ」と言われて、いわゆる地球温暖化の結果が、単に気温が上がるという単純なものではないことを改めて認識したのだった。極端な天候が増えて、春らしい、秋らしい、夏と冬の中間の過ごしやすい日々が減っているのが、温暖化というものの気候に与える一番の弊害なのである。その結果、暑さに疲れ、寒さに疲れ、一年中疲労が抜けないということになる。
昔は、「チェコには夏がない、本当の夏がない」と言っていたのだが、今年はチェコの春がなくなったと言いたくなる。そして「私の春はどこに行ったの、誰が盗んでいったの」なんてことをチェコ語で言ってしまうのである。
さて、日没も近い夕方、昼間の熱気の残る道をうちに向かって歩いていたら、フローラの展示会場の入り口近くで、妙に熱気を感じさせる集団がいるのに気づいた。春のフローラの開催期間中だから、植木を買って盛り上がった集団かとも思ったのだが、集団で写真を撮ったりしていてどうも毛色が違う。よく見たら、近くにオロモウツ事務所を構えるオカムラ党SPDの人たちが、EU議会選挙のための選挙運動の一環だったのか、テントの片づけをしていた。盛り上がりの中心にはオカムラ氏らしき人の姿もあるじゃないか。
暑過ぎたり、寒すぎたりして、春らしさはあまり感じられないけど、やっぱり春なんだなあ。うん。
2019年4月26日23時50分。
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