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海上自衛隊の幹部中級課程教育における図上演習は、今後の幕僚勤務に役立つものです。
そのため、非常に力を入れて教育が行われます。
東京の幹部学校での本番前に、江田島にて事前演習を行い精度を高めます。
第1回事前演習は、演習の難しさを体感するボロボロな結果に・・・
(前回記事):『【図演準備C】TG21.1の戦闘準備!激しい防空戦になるぞ!』
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(1)第1回事前演習開始!
今までじっくりと準備をしてきた図上演習ですが、効果を確かめるために事前演習が何度か行われます。
図1 演習
引用URL:https://www.mod.go.jp/msdf/formal/operation/img/27g/photo01_24.jpg
本当に艦船を動かすわけではありませんが、そのつもりで真剣に演習に取り組みます。
1.1 演習開始!あれ?防衛出動は?
江田島での事前演習は、各TGは作業用に割り当てられている部屋にて演習を行います。
教官たちの統裁部は、別の場所でPCをつないで演習行動を行います。
『第1回事前演習はじめ!』
統裁部からの事前演習開始の号令と共に、各種状況報告の模擬電報電報が入り始めます。
図2 初期配置
各TGについても、初期配置の位置から行動を開始いたします。
わがTG21.1も自港α港から、予定配置の離島北東を目指します。
『(訓練)防衛出動待機命令発令、X国の攻撃が切迫している!』
全速力で配置場所をめざす各TGに対して、「(訓練)防衛出動待機命令」が発令されました。
『えっ?防衛出動命令じゃないの?どうなってんだ?!』
TG内部で、困惑する声が上がり始めます。
図3 図上演習例
引用URL:https://pbs.twimg.com/media/EN1Hwp9UcAQq1qE.jpg
1.2 SFでも味わった法的根拠のずれ!
SF司令部にて後方幕僚を経験した私には、今回の事前演習の意図が読めてきました。
『本格的に、防衛出動発令のタイミングのずれを体験させるつもりだな?』
(参考記事): 『【幕僚編A】実動演習事前準備!任務離島奪還作戦!』
防衛関係法の教務でも、防衛出動待機命令・防衛出動命令・武力行使命令の違いを説明されていました。
しかし実際に味わって見ないと、状況悪化と法的命令のずれを体感できません。
(ペンギン)
『TG長、これが前に話した状況と法的根拠のタイムラグですよ!』
『まだ自衛権発動前ですから、正当防衛以外では攻撃できませんよ。』
(TG21.1司令役の学生)
『マジかよ!これが今の日本の現実かよ!』
TG長を強める学生の叫びは、現場の苦悩を表しているといえます。
防衛出動が出ると思っていたら、防衛出動待機命令の発令でありまだ戦闘行動がとれません。
ジレンマを抱えながら、行動が進んでいきます。
1.3 防衛出動命令発令!だけどまだ撃てない!
状況が進み、TG21.1とTG21.2が先行して、離島東側の海域に到達したころ、
『(訓練)防衛出動命令発令!防衛出動命令発令!』
との状況付与が行われました。
防衛出動命令(自衛隊法第76条)が発令されましたので、これで戦闘開始か?というとまだ違います。
防衛出動命令のみでは、まだ武力行使はできません。
(自衛隊法第76条)
第七十六条 内閣総理大臣は、次に掲げる事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。この場合においては、武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成十五年法律第七十九号)第九条の定めるところにより、国会の承認を得なければならない。
一 我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態
二 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態
2 内閣総理大臣は、出動の必要がなくなつたときは、直ちに、自衛隊の撤収を命じなければならない。
自衛隊の出動のみであり、実際に自衛権行使のための武力使用は自衛隊法第88条の発令が必要です。
防衛出動が出たけど、まだ攻撃ができないグレーゾーンが存在します。
『まだかよ!まだ武力行使命令が出ないのか!』
作戦行動が進む中、学生たちに焦りが出てきます。
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(2)敵空母から航空機発進!南に向かう!
TG21.1は、敵X国空母機動部隊に接敵していつでも戦闘に入れる状態になりました。
しかし、武力行使命令が出ない以上先制攻撃ができません。
そんなな中でさらに状況を混乱させることが発生します。
2.1 X国商船発見!潜水艦の行動も探知!
『敵X国の漁船がTG21.1に並走しています!』
恐れていたX国商船などの民間目標が、TG21.1の近くに接近してきました。
武力行使命令のない状態では、退去勧告しか手段がありません。
図4 スパイ船
引用URL:https://www.cnn.co.jp/storage/2019/12/19/625ee5ca22df66b6f340ad24de746118/russian-ship-sailing-off-us-coast.jpg
どう見てもスパイ船ですが、武力行使ができないため退去勧告のみでやり過ごすしかありません。
さらに、
『敵X国と思われる潜水艦探知!TG21.1を射程内に収めている!』
今度は潜水艦まで探知する状況です。
TG21.1は、戦闘行動の前にいろいろな状況が同時に発生して混乱の極みになりました。
そして予想外の行動が発生します。
2.2 空母より艦載機発進!
『緊急!敵空母より艦載機発進!』
ついに敵空母から艦載機が発進するのを探知しました。
図5 艦載機発進
引用URL:https://assets.media-platform.com/bi/dist/images/2017/01/29/5824a999691e88284e8b5321-1900-w640.jpeg
(TG21.1)
『ついに来たか!対空戦闘用意!対艦ミサイル迎撃を優先する!』
ついにTG21.1に向けて、攻撃の第一歩として空母艦載機の発艦が始まったと思われました。
しかし、
『敵艦載機8機南下していきます!TG21.1に向かってきません!』
まさかの、TG21.1を無視して南下する飛行を行いました。
『まさかTG21.2攻撃をするんじゃないのか?』
図6 艦載機
引用URL:https://pbs.twimg.com/media/D1hZC-6XcAA-vMm.jpg
悪い感は当たり、敵航空機はTG21.2に向けて対艦ミサイルを発射しました!
『敵艦載機TG21.2に向けて対艦ミサイル攻撃開始!』
(TG21.1)
『まじかよ!こっちじゃ無かったのか?!』
さらに、TG21.1にも潜水艦の攻撃が開始されます。
(TG21.1)
『正当防衛にて潜水艦を撃沈する!』
TG21.1とTG21.2が戦闘に入った時に合わせるように、
『自衛隊法第88条による武力行使命令発令!』
との状況付与が行われます。
しかし、予想外の戦闘開始により2個TGは大混乱に陥りました。
2.3 混乱の結果・・・
想定外の攻撃により、2個TGは大混乱の中で次々に撃沈される状況となりました。
TG21.1は、立て直しができないまま敵航空機の第2波攻撃の標的となり8隻中5隻が撃沈の状態です。
第1回事前演習はさんざんな結果となりました。
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(3)戦闘分析が甘すぎる!
第1回事前演習は、ボロボロの成果により任務達成できずの状態となりました。
反省を兼ねた事後研究会では、判断の甘さを厳しく指摘されました。
3.1 戦闘予測が甘い!
大きな指摘として挙げられたのは、
『航空攻撃は、TG21.1に向けて行われる』
との思い込みが、各TGの誤った共通認識が浸透していたことを指摘されました。
図7 対空戦闘
引用URL:https://i.ytimg.com/vi/cgLBDxnthEg/maxresdefault.jpg
戦闘予測として、孤立状態になるTG21.2への攻撃を予測できなかったこが問題点として挙げられました。
3.2 TG21.1の行動は適切か?
TG21.1についても、待機場所の選定や戦闘開始判断の甘さが指摘されました。
武力行使命令前に戦闘開始をした判断についても、さらに東に移動しておくことで航空攻撃を阻止できたのでは?と判断ミスを指摘されました。
待機位置にこだわりすぎて、戦闘に不利な状況を招いたのです。
かなりキツイ事前演習でしたが、次回の事前演習に向けて再検討です!
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