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2021年01月17日

「魔術師」本文 vol,11

「魔術師」VOL,11


どんな喧囂(けんごう)の巷に這入っても、どんな乱脈な境地にあっても、常に持ち前の心憎い沈着と、純潔な情熱とを失わない彼女は、悪魔の一団に囲まれたたった一人の女神のように、清く貴く私の眼に映じたのです。

私は彼女の冴え冴えとした瞳を見ると、吹きすさぶ嵐の中に玲瓏と澄み渡った、鏡のような秋の空を連想せずにはいられませんでした。二人は人並みに揉まれ揉まれて、一尺の地を一寸ずつ歩く程にして、つい鼻先に控えている公園の入り口へ、ようやくたどり着くまでに、一時間以上も費やしたようでした。

其処までぎっしりと密集して、巨大な蜈蚣の(むかで)の這う如く詰め駆けて来た人々は、門内の広場へ達すると、やがて三三五五に別れて、思い思いの方面へ散らばって行くのです。


公園と云っても、見渡す限り丘もなく森もなく、人工の極致をつくした奇怪な形の大廈高楼が、フェアリー、ランドの都のように甍を連ね、幾百万粒の燭(ともしび)を点じて、巍巍(ぎぎ)として聳えているのでした。



広場の中心に茫然と彳立(てきりつ)したまま、その壮観を見渡した私は、先ず何よりも、天の半ばに光っているGrand Circus toiu という広告塔のイルミネイションに肝を奪われました。

それは直径何十丈あるか分からない極めて厖大な観覧車の如きもので、ちょうど車の軸のところに、グランド、サアカスの二字が現れているのです。





そうして、数十本の車の輻(や)には、一面の電球が矍鑠(かくしゃく)たる光箭(こうせん)を放ち、さながら虚空に巨人の花笠を拡げたような環(わ)を描いて、徐々に雄大に回転を続けています。


引用書籍
谷崎潤一郎著「魔術師」中央公論社刊



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