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2016年04月27日

新規開業時の落とし穴B

「カフェ」という業種に憧れをもつ人は多い。
専門料理の店はハードルが高いが
カフェメニュー程度ならできそうに思うのだろう。
料理の腕に自信があって
家族や友人に料理を振る舞った際に
「もったいないよ、お店開けるって」などと褒められて
その気になって何の準備もないまま実際に店を開いてしまう。

雑誌やテレビで目にするカフェオーナーは
自分の好きなことをして優雅に生活しているように見え
あんな風に暮らせたら、と
良いことばかり想像してしまう。

「カフェ」というのは誰にでもできそうに思える。
車の整備士や医者・弁護士、システムエンジニアなどは
専門的な知識を学ばなければなれる職種ではないが、
料理や飲物を作って客に出す、だけなら
誰にでもできると勘違いしがちだ。

私がホテルに勤めていた頃、
レストランや宴会部門のスタイルには口出ししない経営陣が
やたらと喫茶部門には口出ししてきた。
レストランや宴会部門などの専門職に対して
ろくに知識もないのに下手に口出しすると
言い負かされて恥をかく可能性があるが、
喫茶部門なら誰でもできる職種だから
そんなことにはならないだろうと思っていたようである。

実際学生がアルバイトを始めるというと
経験がなくても始められそうなのは
ファミレスやファーストフードの店員だから
誰でもできると思われても不思議ではない。
事実運営自体は誰でもできる。

だが運営と違い経営はそう簡単に
誰にでもできるものではない。

カフェなら自分にもできるかもしれないと考えるのであれば、
世の中には同じように考える人が山のようにいる。
ここ数年カフェなる店は
雨後の筍のごとくあちこちにできて
石を投げればカフェに当たるほどである。
その中で独自の色を出して生き残るのには
相当の努力が必要となる。

人の印象を左右するのが第一印象であるように
開店当初の店のあり方というのはその店の印象を決めてしまう。
それゆえ開店時にすべきこと、すべきではないことがあり、
これは士(サムライ)商売と同じように
その業務を行うために必要な知識を習得すべき専門の技術なのだ。

中にはそのような技術を持たないまま開業して
軌道に乗せることができた店もあるだろう。
だが、それはたまたま運が良かっただけ。
開業して10年生き残る店が殆ど無いという統計が
運だけでは店は存続できないことを示している。

あなたがもしカフェを始めようと計画して内装業者に相談に行けば
「いいですねぇ、素敵ですねぇ」と
内装業者はあなたをきっと持ち上げてくれるはずだ。
それもそのはず、
内装業者は新規開店が多ければ多いほど儲かるのだから
是非ともあなたに失敗して欲しいはずである。
だからオペレーション的に無理のある内装計画でも
喜んで言われたままに作るだろう。
そしてアドバイスを求められても
親身になって答えたりはしないはずだ。

メディアも同様だ。
彼らは常に新しい情報を求めている。
新しい店、新しい業態を取材して記事にできなければ
それは死活問題である。
だからできれば新陳代謝が活発であることを望んでいる。

開店当初訪れる客達はみな口をそろえて
いい店ができたと言ってくれるはずである。
面と向かって悪口を言う人はまずいないのだから当然だろう。

開店する前、そして回転してからしばらくは
耳に入ってくるのは耳障りの良い話ばかりだろう。
しかし開店して数ヶ月経ってお祭り騒ぎが終わると
状況はガラッと変わる。

あれだけ押し寄せていた客足はすっかり遠のき、
また来ると言っていた友人知人も来なくなる。
新しい店に来る客というのは
また別に新しい店ができるとそっちに行くものだ。
友人知人も暇ではないのだから
そう度々来てくれるものではない。
そうなった時に何をすべきか。
それも覚悟の上で経営に乗り出さなければいけない。

この様に本来「カフェ」といえども
専門的に学ばなければならない職種である。
開業するだけならお金さえあれば誰にでもできる。
だが、開業して何年もその店を続けることは
誰にでもできるものではない。

まあそうやって失敗して散財してくれれば
それだけ経済が潤うということだから
無関係な人間にとってはありがたいことではある。








posted by 黒豚猫 at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 生業
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