ネコと贅沢　ボンビーライフ

オリンピックのエンブレム問題以来
「パクリ」に関する事柄が話題になっている。

昨日見たフェイスブックの投稿に
それに乗っかったようなトンチンカンなものがあった。

投稿者いわく、

『６年前に「砂肝のサラダ」というものを考えた。
砂肝をサラダに乗せるなどという料理は
その当時存在しておらず、
クックパッドにも載っていなかった。
だからこれは私のオリジナル料理である。
そのオリジナル料理を勝手に出している店があった。
これは私の料理だからパクリだ。』

というものだ。

バカバカしい。

砂肝のサラダというのは
フランスでは「ジェジェサラダ」といって
ビストロなどでは定番の伝統料理である。
私も２０年前にはよく作ったものだ。

自分の不勉強を棚に上げて
よく他人を非難できたものだ。
呆れてしまう。

他のものもそうかもしれないが
料理に関して言えば「オリジナル」などというものは存在しない。

食材を見てみると
古代ギリシャやローマでは
エピキュリアンたちがありとあらゆる動物を食べ尽くした。
ライオンや象、鶴の舌や豚の乳房、
とにかく何でも食べた。

中国にしてもそうだ。
不老不死を求めてあらゆる食材を試している。
なまこ・蛇・ツバメの巣、
果ては蚊の目玉まで集めてスープにしている。
四本足は机以外、飛ぶものは飛行機以外、
と言われるほどである。

食材の種類などたかが知れているから、
後は組み合わせだ。
おそらくありとあらゆる組み合わせを考え試したはずだ。

調理法というのはあまりバリエーションがない。
生のまま、発酵させる、漬ける、乾燥させる、
焼く、煮る、蒸す、揚げる、凍らせる位のもので、
ほとんどのものは古代にすでに確立している技術である。

例えば近年開発された真空調理と言っても
煮ると漬けるの合わせ技みたいなもので
先の技術の範疇を超えるものではない。

調味料は中世に大きく変動をした。
大航海時代によって食材が大移動し、
香辛料が世界中に出回るようになった。

イタリアにトマトが、
ドイツにじゃが芋が、
中国朝鮮料理に唐辛子が使われるようになったのも
その頃のことである。

この様に古今東西世界中の人々は食に関して貪欲なのだ。
砂肝をサラダに・・・・
そんなものとっくの昔にやっているに決まっているだろう。

「これが当店のオリジナルです」
などという店は信用しない方がいい。
間違えなく不勉強だし、
謙虚さがないから向上心もない。
この世にオリジナルの食材は存在しないし、
オリジナルの組み合わせも調理法も存在しないのだから。

料理の世界はパクられてなんぼである。
ラーメン屋だってパクられたからこそ
これだけたくさんの店が誕生している。
より美味しいものを、と切磋琢磨することにより
業界全体が盛り上がるのだ。

たとえレシピ自体をパクられたとしても
使う材料は同じでもメーカーによって味は違うし、
微妙な味付けで味は変わるので
まったく同じものは出来上がらない。

そういう意味で言えば逆説的に
ありとあらゆるこの世のすべての料理は
オリジナルといえるかもしれない。
だからわざわざ「オリジナル」という店は
信用出来ないことになる。

それにしても
クックパッドにも載っていないから
という理由が笑える。
クックパッドを料理の基準にしていることに
その人の底の浅さがよく現れている。