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2018年12月07日

習一篇草稿−*

*
 街灯が照らす夜道に男がいた。彼の足元には地に伏す少年もいる。少年はほんの少し前、男と一悶着を起こした。おもな非は少年にあったが、男の要求が正当だとは言えなかった。
 男が少年の口に手をあてる。規則正しい呼吸を手のひらに感じた。──彼も生き残った。
「『外野は黙ってろ』と言ったな。それはこちらのセリフだ」
 男には長年さがし求めてきた人物がいる。少年はそれに手を出そうとした。男の勧告を無視したために現在眠り続けることになった。何時間も、何日も、何週間も。何ヶ月、と続くか男は知らない。二ヶ月を立たずして、少年と同じ状態にあった子を回復させた存在がいる。その者はきっと、この少年を助ける。罪深き男を排除したあとに。
 少年の衣服から震動音が鳴った。男は電子機器を探す。ズボンのポケットに長方形の携帯電話があった。その画面には着信が表示され、震動がなおも続く。男は電話を繋いだ。
『オダさん、さっきヤバそうな男が部屋に現れたんスよ! オダさんのところにも出るかもしれないんで、気をつけてください!』
 電話主は通話相手の返答がないのを不審に思い、『オダさん? 聞いてるんスか?』と尋ねてきた。男は電話の画面を口に寄せる。
「遅かったな」
『へ……?』
 電話越しの少年は悲鳴をあげる。電話の向こうでガタンという音がした。電話を落としたか話者がなにかにぶつかったかしたのだ。男は薄く笑い、通話を切る。機器はもとあったポケットにもどした。男の眼中には昏倒する少年はもう存在しない。あるのは一人の少女と一人の男性。とりわけ後者に関心が集まる。
「ツユキ……」
 彼はもっとも厄介な人物だ。男は彼の招待方法を再考し、音を立てずに歩いた。

タグ:習一
posted by 三利実巳 at 15:03 | Comment(0) | 習一篇草稿
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