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2017年08月11日

漫画『三十路飯』1巻の感想とあらすじ 三十路女性による外食グルメガイド

『三十路飯』1巻の感想。


三十路飯
著者:伊藤 静
掲載:ヒバナ
1巻発売日:2016年2月12日


あらすじ・概要

建築事務所で働く高山日向(たかやま ひなた)、気づけば既に32歳、人生の曲がり角にさしかかった独身女。毎日頑張ってるはずの仕事はどうにも上手く噛み合わず、遠距離になってしまった彼氏との関係はちょっと微妙で、同じことを繰り返す日々に焦りを感じながら過ごしていた。
でも、どんなに悩んでいてもごはんは必要。ひとりぼっちでさびしい夜も、心が折れそうになったときも、恋人とうまくいかなかった日も、いつも心と体に癒しを与えてくれるのは美味しいごはん。
何歳になろうと疲れてしまう時は当然ある。そんなときは、足を運んだお店の料理を食べ、心と体の元気を取り戻していく高山だった。

人生の曲がり角に立った独身アラサー女性が、仕事や遠距離恋愛に追われて心身共に疲れつつも、立ち寄った様々な飲食店の美味しいごはんで元気と生活のハリをちょっと取り戻すお話。
三十路女が実在の料理店を巡る東京ナイトグルメガイド。帯での謳い文句は「三十路には、飯を食うしかない、夜がある。」。月刊漫画誌「ヒバナ」にて2015年から連載されていた作品。
作者は第45回ちばてつや賞一般部門にて大賞を受賞している女性漫画家・伊藤静(いとう しずか)先生。現在は漫画ゴラクのwebエッグにて『山田飯』を連載中。

感想

もうかなり長いことグルメ漫画を追い続けていますが、人の「食」へ対する欲求に底がないように、ちょっと氾濫してる感はありながらも一向にその熱が冷める気配は見えませんね。食への需要の高さはもちろんのこと、多様性のあるジャンルなので読者層をあまり選ばない点も、高い人気を維持してる理由としては大きいかと。
そして、増えてる傾向の1つとして、大人女性を主人公に据えたグルメ漫画があげられると思います。『忘却のサチコ』をはじめ、『ワカコ酒』や『ごほうびごはん』など、大なり小なり女性に共感を抱かせながら読ませると同時に、男性にも興味深い内容とあって、なかなか楽しませてもらえる作品ばかり。
今回紹介させていただく漫画『三十路飯』も、その名の通りアラサー女性が主人公のグルメ漫画になってます。

はい、今回はこのブログでも定期的に紹介してるメシ漫画です。もしかしたら食傷気味かもしれませんけどよければお付き合いください。
ざっくり説明しますと、独身アラサー女性の主人公が、行き詰まった日常の中で恋や仕事に悩みながらも、立ち寄った料理店のごはんで癒しと活力を得ていく話。
タイトルと作品の謳い文句から受ける印象そのままの内容でして、グルメに関してはお家ごはんではなく「外食グルメ」。そして、主人公なかなか崖っぷちに立っている女性でした。

主人公は建築事務所で設計のお仕事をしている女性・高山日向(たかやま ひなた)。気づけば人生の曲がり角である32歳、気合を入れてがむしゃらに仕事をがんばってる風だけど、本当は今の自分に焦ってるだけ。
恋人はいます。でも、その彼氏は大阪へ赴任してしまったために、現在は遠距離恋愛中、しかも・・・。その一方で、何かと気づかってくれる幼馴染の男友達・景ちゃんもいます。
このように、仕事も恋も噛み合わなくて足はむくみでパンパンの、浮いたり沈んだりしている悩み多き女性が主人公です。

そんな高山さんが、疲れたときに外食で寂しいお腹と心を満たし、癒され、元気を貰い、沈んでいた顔を綻ばせていく・・・という内容。
高山さんはおひとりであることにためらいながらも勇気を出して入店し、そのお店で「美味しいごはん」と「人」と出会い、ほっこり気分にひたひたと浸っています。
分かる。私はまだそこには乗っていないとはいえ、片手の指を何本か数えればいよいよアラサーの仲間入り。まあ、男と女でもだいぶ違うんでしょうが、どちらの性別でもどんな年代でもその時の悩みはあるもの。嫌なことあった日でも、試しに立ち寄ってみたお店で美味しいごはんに出会えると、不思議と悩みも和らいで気持ちを改めることができ、年齢を重ねるごとに食べることへの楽しさが増してるようにも感じますね。
高山さんが本当に美味しそうに食べるので気持ちよく、主人公の脳内でキャラクターにされた食材が色々語りかけてくるという演出も面白かったです。

この作品の大きな特徴としましては、高山さんが訪れるお店は東京に実在している料理店であるということ。グルメガイドとしてもお役立ちの作品になってます。
1話で登場した中野にある立ち飲み居酒屋「おかやん」をはじめ、主人公の幼馴染である景ちゃんが働いてる設定の江古田にある居酒屋「竹山(たけさん)」や、神田にあるジビエ肉を堪能できる焼肉店「焼ジビエ 罠 神田」などなど。
このように、実際に行ってみる楽しみもあるにはあるのですが、こういうのって地方にいる人間からするとちょっと拷問だったりもするわけですよね。江古田「南湖(なんご)」の餃子は美味しそうですし、自分モツが好きなので人形町「もつ鍋 やましょう」にも是非行ってみたい。
東京在住の方や、遊びでも出張でも訪れる機会のある人は、試しに行ってみるのも良いかも。

本日は、にっちもさっちもいかないアラサー女性が外食グルメで癒される漫画『三十路』1巻の紹介でした。特に大人読者に共感を得られる内容だったと思います。
おひとりで気ままに料理とお酒を嗜む『ワカコ酒』に、ドラマ性を加えたような作品とも言えそう。この作品はもちろんグルメが一番の見所ではあるのですが、ただ美味しいものを食べさせているだけの話ではなく、高山という女性の人間ドラマも大いに楽しめる漫画です。そして、そのドラマが飯の旨さをより引き立ている内容でもありました。
1巻でちゃんとまとまってるんですけど、好評を得て連載再開して2巻も発売され、秋には完結の3巻も発売されるとのことなので、とても楽しみにしてます。

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2017年08月09日

【憂国のモリアーティ】マンガ 感想&あらすじ ホームズの宿敵・モリアーティ教授が犯罪をもって悪を断罪するクライムミステリー

ジャンプスクエア。2016年9月号から連載中。既刊3巻
原案:コナン・ドイル
構成:竹内良輔
漫画:三好 輝



あらすじ

19世紀末――。

世界の4分の1を支配していた大英帝国は、古くから根付く完全階級制度により、全人口の3%にしか満たない上流階級の人間たちによって統治されていた。
生まれによって一生涯の身分は決まり、必然的に差別を生み出してしまう社会制度。

そんな中、人の運命を縛る“身分”という呪いを、それを強いるこの国を憎み、貴族に、階級制度に、そして巨大な大英帝国に喧嘩を売ろうとする青年がいた。

その名は、ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ。
彼の目的は、悪を排除し美しい国を作ること。

ウィリアムは弟のルイスと兄のアルバート、その想いに賛同する仲間たちと共に、理想の国を実現させるため、壮大な計画に乗り出していく。

これはジェームズ・モリアーティの、或いはシャーロックホームズの敵の話――。

登場人物

ネタバレも含まれているので注意

・ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ
主人公。孤児院で暮らす最下層(アンダークラス)身分の少年でしたが、孤児では珍しく字の読み書きができ、博識で非常に知能が高い。アルバートと同じ志を持っていたことで彼に見出され、弟のルイスと一緒にモリアーティ伯爵家へ養子として引き取られました。身分で人生を決められてしまう階級制度と、腐った貴族を憎んでいますが、人間そのものには希望を持っている模様。
アルバートとルイスと共に悪を取り除き理想の国を作るため、伯爵家の人間と使用人を火事に見せ掛けて屋敷もろとも殺害。その際、本物のウィリアムの遺体を用いて自分も火事に巻き込まれて死んだと偽装し、ウィリアムに成り代わることに成功。
その後は、16歳で大学に入り21歳で大学教授。現在はダラム大学で数学教授として勤め、その傍らで「市立相談役(コンサルタント)」として問題解決に協力しながら、「犯罪相談役(クライムコンサルタント)」として腐敗した貴族を粛正しています。人々の目を覚まさせるため、「死こそが人の心を動かす」とし、ロンドンを犯罪都市に仕立てようと暗躍。

・アルバート・ジェームズ・モリアーティ
モリアーティ伯爵家の長男。ノブリス・オブ・リージュの一環で行っていた孤児院への慈善活動の際、そこで字の読み書きが出来るウィリアムに興味を持ち、孤児たちに正しく悪の道を説く彼の志に共感したことで伯爵家の養子として迎え入れました。
身分ばかりに拘る人々や階級制度を嫌い、その権化のような実の家族を「汚くて気持ち悪い」と軽蔑し憎んでいます。ウィリアムと理想の世界を作るため、両親と“本物”のウィリアムに加え、9人の使用人を屋敷ごと不始末で起こった火事に見せ掛けて殺害し、モリアーティ家の伯爵位と財産を手に入れました。
現在はダラム市に屋敷を移し、普段は陸軍中佐としてロンドン勤務。公には陸軍を退役したことになっていますが、実際は莫大な資金確保の功績によって大佐へ昇進し、軍情報部が設立した公には存在しない特務機関「MI6」の指揮官“M”になりました。ユニバーサル貿易という会社を経営。

・ルイス・ジェームズ・モリアーティ
ウィリアムの実弟。孤児だった時は病を患っていましたが、モリアーティ家に引き取られた際に手術を受けさせてもらい完治。火事の際には、ウィリアムの計画をより確かなものにするため、自ら右頬に火傷を作りました。
現在は兄2人に代わって領地の管理と屋敷の執務を担当。右側だけ伸ばした前髪を垂らして火傷跡を隠し、メガネを掛けています。
ウィリアムのことを何よりも大切に想い、兄としても慕っています。

・セバスチャン・モラン
普段はモリアーティ家の使用人を勤めている大柄の男性。屋敷ではルイスの手伝いが主な仕事。酒とカードを好み、腕っ節が強くて狙撃の名手。「消音銃」という音の出ないライフルを使用しています。荒っぽい性格ですが、忠誠を誓っているウィリアムのためなら命も捧げる覚悟です。アフガン戦争に従軍して死んだことになっているようです。

・フレッド・ポーロック
普段はモリアーティ家の使用人を勤めている無表情で細身の男性。屋敷での仕事は庭の手入れ。密偵活動を主に担い、変装術にも長けています。犯罪ネットワークに通じるイギリス随一の情報屋で、ウィリアムへの窓口。

・シャーロック・ホームズ
自称、世界で唯一の「諮問探偵(コンサルティングディテクティブ)」。ノアティック号での事件の折にウィリアムと出会い、裏で何者かが暗躍していたことにただ1人気づきました。鋭い観察眼と抜群の推理力だけではなく、格闘術といった身体能力にも長け、化学にも精通しています。オックスビリッジ出身者ですが、母方の出自に誇りを持ち労働者階級の訛った話し方をしています。
裏でウィリアムが仕掛けていた犯罪を解決するが、実はそれもウィリアムの計画の内であり、ホームズに探偵役として事件を解決させることで、世間に貴族の腐敗を知らしめる主人公(ヒーロー)としての役割を本人の与り知らぬところで担わせています。

・ジョン・H・ワトソン
ホームズの相棒。アフガン戦争で負傷して本国へ送還された元軍医。家賃を払えないホームズとルームシェアをすることになりました。
ホームズが犯人扱いされた事件を彼本人で解決したにも関わらず、功績がヤード(警察)のものになったことを不満に思い、その事件を基に「コナン・ドイル」のペンネームで『緋色の研究』を執筆し発行。それによってホームズの名がロンドンに知れ渡るという、。

・ハドソン
ホームズとワトソンが借りているベーカー街の221Bの家主。家賃を払ってくれないホームズには手を焼いていますが、危なっかしい彼を心配もしています。


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感想・見所

みなさんはコナン・ドイルの『シャーロック・ホームズ』シリーズは読んだことありますか?作品を愛するシャーロキアンたちからは「正典」もしくは「聖典」とまで呼ばれている世界的に知名度が高い推理小説です。
私は小学生低学年だったかな?そのぐらいの頃に図書館で『緋色の研究』に出会ったと記憶してます。ちょっとあやふやな記憶ですけど、それでだいぶハマっていましたね。
日本でも知らぬ者はいないほど有名な作品なので、色々なマンガ・アニメでもその名前を目にすることはよくあります。特に、擬人化させた犬を原案のキャラクターに置き換えた子供向けアニメ『名探偵ホームズ』は、何度も再放送されてるので観たことある人は結構いるのではないかと。あと、『名探偵コナン』でも主人公がホームズの大ファンということからその名前がよく取り上げられています。

今回紹介させていただく『憂国のモリアーティ』は、コナン・ドイルの『シャーロック・ホームズ』を原案にしたパスティーシュ漫画。あのモリアーティ教授をまさかの主人公に抜擢した珍しい作品になってます。

かの有名なシャーロック・ホームズの宿敵であるモリアーティ教授が、貴族の支配する腐敗した階級社会に対し、知恵と知識、勇気と志を共にする仲間の力を用い、華麗なる犯罪計画によって世界を正そうとする物語。
ダークヒーローによるクライムサスペンス。帯での謳い文句は「シャーロック・ホームズ最大の宿敵・モリアーティ教授の語られざる物語――。」「謎を生み出す者と暴く者――訪れる宿命の出会い!!」など。
原案は医師でもあった作家・コナン・ドイル氏。構成は第60回「手塚賞」において『47th dreaming』で佳作を受賞した漫画家・漫画原作者の竹内良輔(たけうち りょうすけ)先生。漫画担当は『監視官 常守朱』で知られる漫画家・三好輝(みよし ひかる)先生。

謎多きモリアーティ教授と仲間たちの、未だ語られることのなかった物語

舞台は19世紀末の大英帝国。イギリスにとっては世界の4分の1を支配した最盛期の時代と言えますが、同時に階級制度によって身分差別が激しかった社会でもあります。人口僅か数%の上流階級に属する貴族様の為に、平民階級の人たちは奴隷のように酷使され、不当に搾取される日々を送っていました。
そんな呪われた社会を正すため、腐敗した階級制度に、穢れた貴族に対し、闘いを挑むため動き出した青年が――。

はい、その青年こそがこの作品の主人公・ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ。
世界中に多くのファンを持つ探偵「シャーロック・ホームズ」の仇敵「モリアーティ教授」その人です。ホームズの前に立ちはだかる悪党一味のボス。

原作では結構いい年したおじいちゃんだったはずが、表紙イラストの通りこの作品内ではイケメン。それもモリアーティ教授だけではなく、あのモラン大佐を含んだ登場人物たちも軒並みイケメンとして描かれています。
商業目的という点で仕方ないところはあるのでしょうけど最初はちょっと違和感半端なかったです。まあ、すぐに慣れますし、なんだかんだでカッコイイ。

有名作品の悪党キャラ・敵キャラにスポットを当て、「実は・・・だったかも」という作品は別段珍しいわけではないのですが、それをモリアーティ教授でやるのは意外過ぎて面白い。
誰もが知るホームズのライバルでありながら、実は原作での登場はそれほど多くない人物。なので、謎とされてる部分が非常に多く、彼の過去はもちろんのこと、兄と弟についても少し触れられてる程度でした。まあ、謎だらけだからこそ、このような漫画も作ることができ、想像する楽しみも増えるというもの。

物語は知られざる教授の子ども時代から始まります――。

“犯罪”をもって“正義”を成す!教授がまさかのダークヒーロー!?

原作での教授はホームズ曰く、ロンドンの半分の悪事、ほぼ全ての迷宮入り事件は教授によるものとされ、「犯罪のナポレオン」や「暗黒街の支配者」と呼ばれる、まさに悪の権化。モラン大佐やボーロックなどの有能な犯罪者を部下にしていた超危険人物です。

彼が「犯罪コンサルタント」であることは変わりないのですが、この作品における教授の目的は、階級制度という呪いを廃して腐敗した社会を正すため、平等に生きる権利があるのに不当に苦しめられてる人を救うため。
その「正義」を成そうと用いた手段が「犯罪」であり、自分は光になることより闇の中から法では裁けない貴族を葬る道を選びました。

彼のしてることを善とするか悪と捉えるかは個人それぞれ異なるでしょうね。ただ、志を共にする仲間たちを率い、その天才的な知略を駆使して罠を仕掛け、悪徳貴族を次々と断罪していく様は痛快。

正直言いますと最初は、モリアーティというビッグネームを使ってるわりにやってることは小悪党を成敗していく世直しダークヒーローという様相だったので、ちょっとだけ物足りなさを感じていました。ですが、ストーリーが進むにつれ面白味は増し、当初は個人、そして個人から集団へ、さらにこの先は集団から社会そのもや制度へとスケールが大きく膨らみそうなので、今後の展開が気になって仕方ありません。

モリアーティ vs ホームズ

モリアーティと言えば、当然対と成すホームズという存在を忘れてはいけません。まだ現時点での直接対決はないのですが、実は1巻の冒頭1ページ目はあの有名な滝のシーンから始まることから、本作でも2人の対決が避けては通れぬことは示唆されていました。

ホームズはやはり一癖もふた癖もあるやっかいそうな人物でありましたね。頭はキレッキレに冴え渡り、格闘術にも長け、捉えどころがない性格。ふざけてるようでいて実はよく観察してる油断のなさは侮れません。
並外れた推理力・観察力・行動力で事件を見事解決に導き、さらに事件の裏に潜んでいる何者(ウィリアム)かの存在に気づくあたりはさすがの名探偵。

ただ、本作で面白いのは、ホームズというヒーローが、ウィリアムによって意図的に作られたヒーローであるかもしれないというところ。
社会の汚れを拭き取るには、まずウィリアムたちが行っている犯罪を、そして悪徳貴族について民衆に知ってもらわなければいけません。そのために必要であるとしたモノが、民衆がその境遇に賛同出来る“犯人”と、貴族の腐敗を世間に喧伝する“探偵”

犯罪を犯す者にとって邪魔者でしかない探偵(ヒーロー)という存在をあえて生み出し、ホームズに自分たちが裏で糸を引いている事件を解決させ、闇を照らす主人公に仕立て上げて社会の腐敗を世に喧伝させようとしています。
探偵漫画では主人公が死神かのように事件と遭遇していますが、実はそれを裏で糸を引いてる人がいるかも・・・という展開は面白かったですね。

最後に

こんなかんじで、ホームズの宿敵・モリアーティ教授の知られざる物語を描いた漫画『憂国のモリアーティ』の紹介でした。「これはこれで面白い」、そんな感じで楽しめば良い作品かと。

絵がとても綺麗なので見やすく、メインにイケメンしかいないのはちょっと考え物ですが、カッコイイのは認めるところであります。

ちなみに、作中には『007』でお馴染みの「MI6」が登場。原作ではなかった(・・・はず・・・たぶん・・・)設定なので、これからどうウィリアムの計画に関わってくるのか非常に楽しみ。

ホームズ好き、モリアーティ好き、ミステリー好き、あと主人公意外のキャラに感情移入してしまう人なら特に楽しめる作品だと思いますので、よければ読んでみてください。自信を持っておすすめさせていただきます。

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2017年08月07日

漫画『魔王の秘書』1巻の感想とあらすじ

『魔王の秘書』1巻の感想。


魔王の秘書
著者:鴨鍋かもつ
掲載:コミック アース・スター
1巻発売日:2017年4月12日

あらすじ・概要

光が射せば闇もまた生まれる世界――。
「光を呼ぶ勇者」が産声をあげたその時、歴史を繰り返すかのように永き封印から「闇を招く魔王」がついに目覚め・・・・ようとしたが、二度寝によってさらに14年の月日が流れ、ついに魔王は復活(起床)を遂げた。
さっそく世界を征服するため動き始めた魔王。まずは戦いの前に人間を知ることが肝要であるとし、知能が高く、なるべく女で、できれば愛嬌もあって胸が大きい・・・・とにかく有能な人間を攫って研究することに。
ところが、魔王の配下が「ちょっ・・・と人には言えない手で」攫うことに成功した女性は、とんでもなくデキ過ぎる、なぜか世界制服に積極的な「秘書」だった。
容赦なく次々と有効な侵略計画を練っていく魔王の秘書のせいで、人間世界マッハでヤバイ。

魔王の命令によって人類世界から攫われ、「秘書」として魔王軍に仕えることになった人間の女性が、残忍な魔物たちでさえ震え上がるエグい世界征服計画を次々と練り上げ、合理的かつ無慈悲にテキパキ「魔王の秘書」として仕事に勤しむ話。
JRPG風ファンタジーギャグコメディ。公式サイトでのキャッチコピーは「【悲報】世界征服、捗る。」。Twitterで2万RT以上の話題作。この作品は当初同人誌として公開され、それがSNSで話題になったことをきっかけに、2016年4月からコミック アース・スターにて商業連載を開始。
作者は漫画家・鴨鍋かもつ(かもなべ かもつ)先生。


感想

子供のころから今に至るまでファンタジーは私にとって何よりも好きなジャンル。小説、マンガ、アニメ、ゲームなど、様々な媒体で多くの作品にふれてきました。そんなファンタジー作品ですが、魔王・勇者がいる定番の世界設定は同じであっても、近年は何やら特にマンガや小説でちょっと風変わりな傾向の作品が増え出していますね。
大きな変化は『まおゆう』が人気出た辺りかな?あの頃からちょっと変わったファンタジー作品を目にする機会が増えたような。最近では、『魔王城でおやすみ』や『育てち魔おう!』といった、能力的には遥かに劣るはずの脆弱な人間に、魔王やその配下たちがハチャメチャに振り回されるファンタジーコメディも数を増やしてきました。
今回紹介させていただく漫画『魔王の秘書』もその一つに数えられるかと。魔王に攫われて来た秘書(人間)のエゲツ無さが凄すぎて、どっちが悪魔か分からなくなってしまう作品。

某人間の王国で秘書をしていた女性が魔王城へ連れ去られるも、今度はそこで魔王の秘書として仕え始め、あまりの優秀な働きぶりとエゲツなさに魔物たちをドン引きさせていく話。
「優秀な人間の秘書」と「残念魔王」の、ファンタジーを基調としてコメディ作品です。「世界から(私以外の)人間を根絶やしにしましょう」という強烈なインパクトを放つ表紙からして凄い。
RPG系のパロディも満載の内容でして、RPG世界の常識という名のお約束展開を、現実的な常識を用いて冷静かつ冷徹に改革していく作品。

光の勇者が誕生すれば闇の魔王が同時に封印から目覚める――その歴史を繰り返してきた世界。長らく平和が続いていた地に、だいたい300年ぶりにちょっと寝坊して魔王が封印から目覚め、世界制服へ動き出します。しかし、本作品の主人公はこのいきなり寝坊した闇の魔王でもなければ、世界を救う勇者ですらありません。
魔王が世界制服へ向けて打った第一手。人間を知り、人間の知能を得るため、人間を捉えてくるよう配下に命令。もちろん誰でも良いというわけではなく、その条件は・・・
「知能の高い学者など」「男はむさ苦しいからなるべく女」「容姿も重要」「愛嬌のあるタイプ」「年齢は若ければ若いほど良い」「できれば胸も大きめ」「常に三歩下がってついてくる慎ましさ」「奴隷生活を耐え抜ける生活力」「相手の言動に否定から入らない気遣い」という、思わず「婚活かよっ」とツッコミを入れそうになるめんどくさい条件。
で、配下の魔物がそれなりに条件とマッチして“そうな”人物としてさらってきたのが、某王国で国王秘書を勤めていたメガネがお似合いのクールビューティ。この人間の女性秘書が主人公です。

この秘書がとんでもなかった・・・。さらわれてきた他の女性たちとは違い、魔王や魔物を前にしても怯えや慌てる素振りは一切見せず、物分り良すぎるぐらい協力的かと思えば、奴隷ではなく秘書(部下)として雇用契約を要求(もちろんお給金付き)。
「どえらいのきたわぁ・・・」とドン引く魔王とは逆に、元職場の王様は「っしゃあーーー!!!ついにワシは自由じゃああああ!!!」と大喜び。女秘書のヤバさが伺えますね。
てっとり早く勇者の故郷を襲撃する「約三日での世界制服計画」や、農業地帯へ毒物・疫病を散布する魔王軍には低リスクの征服計画、罠と魔物のコンボで討伐対を壊滅させるなど、RPGのお約束を逆手にとった実現性の高い合理的なアイデアは実に面白い。それをテキパキと無慈悲にこなしていく秘書、出来る女、超有能、そして超怖い・・・。
人間側にとっては魔王以上にやっかいで恐ろしい存在が誕生してしまったようです。

また、いつもは勇者に倒されるばかりで、その内情が語られることはほとんどない魔王軍を、ひとつのカンパニーのように描いているところも面白い。
当初の魔王軍は過酷な労働体制を敷いていた超ブラック企業という様相。しかし、有能な秘書がこの魔王軍という職場に降臨したことで、苛酷だった労働環境は整えられ、従業員(魔物)たちには福利厚生をもたらし、強いれるのではなく自分にあった働き方を模索できるようにするなど、旧体制を刷新して組織改革を成していくことになりました。
それによって魔物たちから「秘書殿」「秘書さま」と呼ばれるまでに頼られる存在になった秘書に反し、やることなくてイジけたりスネてしまう魔王が可愛く、同時に面白くもあります。
あまりに優秀過ぎる秘書を抱えるのも考え物かも、なんて思ってしまったり。問題があるとみんなまずは秘書に意見を求めるため、魔王様の存在意義がどんどん薄れていますね。
しかし、そんな隅っこでイジけてる闇の魔王へ光を指すかのようにラストで現れたのは、宿敵・勇者。はたして、魔王は魔王としての威厳を取り戻せるのだろうか・・・。

こんなところで、世界制服を目論む魔王軍で人間の秘書が辣腕を振るいまくるコメディ漫画『魔王の秘書』の1巻紹介でした。
読み応えはあり過ぎるぐらい漫画にしては文字が若干多めではありますが、笑いのテンポとノリは素晴らしく、設定のアイデアも面白い。何より秘書が可愛いのはもちろんのこと、やることなすことエゲツないので見ている分には愉快。
2巻以降では魔王と勇者との戦いもあるのでしょうが、これはファンタジーであってもあくまでコメディ。それほど重苦しいシリアス展開にはならないと思います。
とても濃い内容の1巻で満足。これを今後も維持できるのかは不明ですが、それでもこれからの展開が非常に楽しみです。

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2017年08月06日

【紹介した作品の新刊発売情報】ちはやふる 第35巻 他11作品

2017年8月7日〜8月13日発売予定の新刊。
このブログで紹介した作品や関連作品の新刊情報と、試し読みした作品の感想。



ローカル女子の遠吠え 第3巻 2017年8月7日発売

ローカル女子の遠吠えの過去記事



AIの遺電子 第7巻 2017年8月8日発売

AIの遺電子の過去記事




>>限定版

寄宿学校のジュリエット 第5巻 2017年8月9日発売

寄宿学校のジュリエットの過去記事




>>特装版

はたらく細胞 第5巻 2017年8月9日発売

はたらく細胞の過去記事



将国のアルタイル公式ファンブック 将星の書  2017年8月9日発売

将国のアルタイルの過去記事



タイムスリップオタガール 第2巻 2017年8月9日発売

タイムスリップオタガールの過去記事



ちはやふる 第35巻 2017年8月10日発売

ちはやふるの過去記事



MASTERグレープ 第2巻 2017年8月10日発売

MASTERグレープの過去記事



味噌汁でカンパイ! 第4巻 2017年8月10日発売

味噌汁でカンパイ!の過去記事



勇者が死んだ! 第9巻 2017年8月10日発売

勇者が死んだ!の過去記事



テラモリ 第7巻 2017年8月10日発売

テラモリの過去記事




>>ドラマCDつき限定特装版 (特品)

7SEEDS 第35巻(完) 2017年8月10日発売

7SEEDSの過去記事



僕のジョバンニ 第2巻 2017年8月10日発売

僕のジョバンニの過去記事



早乙女選手、ひたかくす 第3巻 2017年8月10日発売

早乙女選手、ひたかくすの過去記事



響〜小説家になる方法〜 第7巻 2017年8月10日発売

響〜小説家になる方法〜の過去記事



魔法使いの嫁 公式原作ガイドブック Merkmal 2017年8月10日発売

魔法使いの嫁の過去記事



試し読みをして気になった作品もふたつ紹介します。


ロッタレイン 第01巻
著者:松本 剛
掲載:月刊IKKI→ヒバナ
2017年8月10日発売


女手一つで育ててくれた母を亡くした青年・玉井一(たまい はじめ)は、日頃からイビられていた上司と大切な恋人の浮気現場を目撃してしまう。精神的に追い詰められたことでバス運転士の業務中に起した事故で、母と恋人だけでなく、大怪我を負って仕事まで失う事態に。
そんな全てを失ったはじめの前に現れたのは、幼い頃に自分と妻を捨てて別の女の元へ行った父親と、初めて会う血の繋がらない義妹・山口初穂(やまつぎ はつほ)だった。心にも体にも傷を負ったはじめは、「一緒に暮らそう」と切り出した父親に怒りをぶつけるも、とりあえず足が完治するまで世話になることを決める。
歓迎する父親とは裏腹に、2人きりだと敵意を向けてくる初穂。そんな厳しい態度と、彼女の美しさに心乱されるはじめは、複雑な想いを抱えながら同じ屋根の下で暮らしていく。

他人、でも家族、だけど血の繋がらない男と女。全てを失った青年と目の前に現れた義妹が織り成す、ひと夏の揺れ動く恋の物語。
作者は『甘い水』やドラマ化もされた『すみれの花咲く頃』などで知られる漫画家・松本剛(まつもと つよし)先生。

元々は月刊漫画誌「月刊IKKI」で掲載されていたものが、同誌の休刊(2014年11月号)に伴い「ヒバナ」へ移籍して連載再開(2015年4月号)し、2017年6月号をもって完結した作品。
なかなか単行本発売されなかった作品がやっと登場。全3巻を8月・9月・10月で連続刊行されます。新海誠氏も推薦されてるとか。

主人公の青年・玉井一は、シングルマザーだった母を亡くし、心の支えであった恋人とパワハラ上司との浮気現場を目撃し、精神的におかしくなってバスの回送中に車庫へ突っ込み大怪我を負って失業。
出だしから重過ぎ・・・。母親を亡くして「天涯孤独になったんだ」と言うはじめに対し、「もう。孤独じゃないでしょ。」と温かい言葉を投げかけてながらの裏切り。キツイですね。

失意の中にいたはじめの前に現れたのは、まさかの自分と母親を捨て、妾・山口美子の元へ行ってしまった父親。そして、初めて会う義妹の山口初穂。
「一緒に暮らそう」と言う父親への複雑な気持ちはあるのものの、何もない一(はじめ)は足の怪我が治るまで、父と義妹の初穂、彼女の母親・美子と義弟の澄也と一緒に暮らすため、住居がある新潟県長岡市へ向かいました。

初穂は父と美子が出会ったときには既に彼女のお腹の中にいたようなので、血の繋がりは全くありません。初穂が溺愛している弟の澄也は、父と美子の間に生まれたのではじめとは血の繋がりがあるという複雑な家族構成。

体を壊してる様子の父親は、はじめとの暮らしを喜んでるようですが、二号さん家の子、妾の子と言われて肩身の狭い思いをしていた初穂は、今の家族関係を乱されるのではないかと敵意を向けてきます。
家族として歩み寄ろうとするはじめは戸惑ってしまうわけですが、戸惑うことはそれだけではなく、初穂の美しさにも次第に心を奪われていくことに。

とにかく続きが非常に気になります。人が持つポジティブな面だけではなく、ネガティブな面にも目を瞑ることなく表現されていて、リアルな陰鬱とした人間関係の描写も織り交ぜられている作品。綺麗だけど汚く、穏やかに見えて激しい、そんな感じです。
初穂は義妹とはいえ血の繋がりがなく、美しい容姿をしていることからはじめは彼女に女を感じてしまうこともあります。初穂も初穂ではじめに対して兄という感覚はあまり無いことから、今の不安からくるあやふやな敵意が好意に変わった場合、家族ではなく1人の男性として惹かれそう。この危うさからは不安しか感じませんけど、それが面白そうでもあります。

かなり期待。3冊読んで満足できたらまた改めて感想書かせてもらおうと思います。
この作品ドラマ化や映画化にも向いてそう。

試し読みは小学館「ヒバナ」さんの公式サイトで配信しています。(こちら



4分間のマリーゴールド 第01巻
著者:キリエ
掲載:週刊ビッグコミックスピリッツ
2017年8月10日発売


1秒で1年分、この女(ヒト)を愛そう――。
9歳の時、父の再婚を機に家族になった義理の母と兄姉弟と一緒に暮らす、救命士になったばかりの青年・花巻みこと(はなまき みこと)。
救命士となって人の生死に直面したことで、みことは自分の中に「特殊な能力」があることに気づいた。それは、手を重ねた相手の“死の運命”が視えるという能力。視えてしまった死の運命は、みことがどれだけ手を尽くしても、かならず現実になってしまう。決して変えることはできない運命、それがどれだけ大切な人であっても・・・。
みことの最愛の人、義理の姉・沙羅(さら)。画家である彼女は、1年後の27歳の誕生日、この世を去る。

人の死が視えてしまう青年救命士の、死が迫る最愛の人を見守り想い続ける愛の物語。「救命医療」×「純愛ストーリー」。
作者は、第74回小学館新人コミック大賞青年部門で大賞を受賞した姉妹2人組の漫画家・キリエ先生。

主人公は救命士の青年・花巻みこと。9歳のとき父親の再婚で花巻家の家族になりましたが、その父は再婚後すぐに他界してしまい、母親はフリーカメラマンで不在がちのため、主に義理の兄姉弟の4人で暮らしています。

みことは手を重ねた人の「死期」が見えてしまう特殊能力を持っているとのこと。ただ、視えてしまった運命はこれまで1度たりとも変えることはできなかったようで、知っているのに何も出来ない無力さに主人公は葛藤しています。

家族仲は、警備員の兄と高校生の弟とも良好な関係を築き、一緒に花火をしてお酒を飲むなど温かな家族団欒の様子を見せていますが、その中でみことが一際熱い視線を注ぐ相手が・・・。
それは、画家をしている義姉の花巻沙羅。みことが彼女のことを姉としてではなく、1人の女性として好意を抱いていることは彼の様子から見て取れます。
ですが、義理の姉弟という2人の関係以上に、恐らくずっと昔のこと、能力によって視てしまった沙羅の運命がみことを苦しめています。
沙羅の残りの寿命は1年。27歳の誕生日にこの世を去る運命。

タイトルの「4分間」―救命において4分間というのは、それを過ぎると蘇生の可能性が格段に下がってしまう重要なライン。
そして「マリーゴールド」というのは、春に種をまいてから夏に花を咲かせ、冬には枯れてしまう「一年草」と呼ばれる短命の花。しかも花言葉が「絶望」「悲しみ」。
1話の内容以前にタイトルからしてもう悲しくも切ないストーリーになることを物語っています。

やはりポイントは、死を回避出来るか出来ないかでしょうね。救いはないような気もしなくはないですけど・・・みことは諦めてないからこそ救命士としての仕事を選んだのではないかと予想。沙羅の「死の運命」を回避する手立てを探るため、生死の現場に直面する機会の多い職場を選び、色々模索してるのかもしれません。

悲しい話になりそうですけど面白そう。儚いからこそ美しく見えてるのかもしれませんが、それでもこの2人には救いを、明るい未来を求めずにはいられません。

試し読みはビックコミックBROS.NETさんの公式サイトで配信しています。(こちら

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2017年08月04日

漫画『終電ちゃん』1巻の感想とあらすじ

『終電ちゃん』1巻の感想。


終電ちゃん
著者:藤本正二
掲載:週刊モーニング
1巻発売日:2016年3月23日

あらすじ・概要

残業をがんばって疲れきってる人、眠そうにしてる人、ぐでんぐでんに酔い潰れた人たちが、乗り遅れまいと最終電車を待つ深夜の駅。そんな人たちのもとへ、今夜も電車と癒しを引き連れて、小さな「終電ちゃん」がやって来た。
彼女がホームへ入ってくると、「ようこそ」と歓迎のアナウンスが流れ、沈んだ顔をしていた乗客たちも歓声をあげる。到着するなりさっそく声を張り上げ、ちょっと乱暴な口調で乗客たちの尻を叩き、潰れた酔っ払いを引きずって車内へ運ぶなど、なるべく乗り遅れる人のないよう熱心に手を尽くす終電ちゃん。
疲れてウトウトしてしまう深夜でも、厳しくも優しい世話焼きな終電ちゃんに出会えると、なんだか嬉しくなってくる。深夜に走る終電――ここには様々な人間ドラマがある。

中央線、山手線、小田急線など、首都圏の各路線を走る深夜の最終電車。その終電が人の形を成した見た目小さな女の子たちが、乗客たちを無事に家まで送り届けるなかで起こる、様々な人情味溢れるドラマを描いた話。
人情系ストーリーの「最終電車」擬人化作品。帯での謳い文句は「お前たち、明日はもっと早い電車で帰るって約束しな!」。「週刊モーニング」2015年40号から連載されている作品。第67回「ちばてつや賞」一般部門にて入選を受賞。
作者はこの作品が初の連載作品となる漫画家・藤本正二(ふじもと しょうじ)先生。

感想

「擬人化」作品って最近こそ少し勢いが落ちついてきたものの、ほんの数年前に『艦隊これくしょん』で火が付いてからは、アレもコレもと異常なほど乱発されていましたね。もちろん面白い作品もあったのですが、なかには正直意味不明だったり、「そんなものまで・・・」と呆れてしまうような作品も決して少なくはなかったです。
その中では、細胞を擬人化した『はたらく細胞』や、動物を擬人化した『BEASTARS』、あと意外にも現実では嫌われ者代表格であるゴキブリを擬人化した『ごきチャ』辺りは結構好きな作品。他にパっと思い浮かぶのは、「国」や「47都道府県」、それに「政党」や「ウルトラマンの怪獣」なんてものもありました。ホントなんでもありですね。
今回紹介させていただく漫画『終電ちゃん』は、電車や鉄道ではなくまさかの「終電」の擬人化という面白い設定。読んでみたら「こう来たか〜・・・」とちょっと感心してしまいました。

友人に薦められたときは、「終電の擬人化?なんだそれ?」と思ってしまったのですが、物は試しと読んでみたらめちゃくちゃいい話でした。
電車の先頭車両の屋根に乗って深夜の駅にやってくる「終電ちゃん」は、最終電車を待っていた人たちにキツめの言葉で叱咤激励しながら、なるべく取り残される人がいないように電車へ乗せていきます。これは、「終電」に乗る様々な人たちと終電ちゃんとの、悲喜こもごもなヒューマンドラマを描いた話。
表紙を見た限りでは単純な「電車×萌え」漫画だろうと予想していたのですが、良い意味で裏切られました。キャラ萌え要素も十二分に提供しながらの、人情味溢れるエピソードを1話完結構成で展開される作品。

何と言っても気になるのは「終電ちゃん」という不思議な存在。終電と言っても「電車」の擬人化ではなく、終電の「概念」の擬人化とでも言えましょうか。あるいは終電に宿った世話焼き精霊や妖精さんみたいな存在として捉えてもいいかも。
見た目のデザインは、三頭身にデフォルメされた女の子が駅員服を着ているキュートなマスコットキャラクター。年をとることなくいつまでも変わらず同じ姿です。我々と同じ人間ではなくても、普通に会話してふれ合うこともでき、乗客たちもここにいる確かな存在として認識しています。
終電ちゃんの役目は、乗り遅れる人がなるべく出ないように誘導し、乗客たちを無事目的地まで送り届けること。

「終電ちゃん」というのは1人を指しているのではなく、実は各路線ごとに異なる見た目と性格の終電ちゃんがいたりします。
まず、1巻の表紙イラストにもなっている主人公各である、駅員服を着たショートカットの勾配標を背負った「中央線の終電ちゃん」。東京を東西に横断しているJR東日本の主要路線。乗客1人1人の名前とこれまで見て来た彼等の人生まで全部覚えている凄い子で、荒い言葉を使って叱咤激励する厳しくも優しい肝っ玉母ちゃんみたいな終電ちゃん。嫌われ役も厭わない彼女ですが、バリバリ乗客のために働く彼女はみんなから慕われています。

それから、普通転轍機をズルズル引き摺るツインテールのゴスロリファッションに身を包んだツンツン娘「山手線の終電ちゃん」。都心部では代表的な環状運転している沿線。横柄に見えますけど根は素直な終電ちゃん。じゃじゃ馬呼ばわりしてくる中央線とはよくケンカをするのですが、乗客たちはそんな光景も楽しんでいるようです。

あと、腕木式信号機用カンテラを持ち歩く着物を纏ったおだんご頭のおっとり癒し系「小田急線の終電ちゃん」。新宿駅から小田原駅・片瀬江ノ島駅・唐木田駅を結ぶ路線。上のキツイ口調が目立つ2人とは違って、口調は柔らかで、なんかホワホワした感じの終電ちゃん。

1巻ではこの3人。みんな見た目も性格も異なり、それぞれ何かしらの鉄道系アイテムを持っているのが特徴です。ちなみに、屋根の上で布団を敷いて寝てました。

終電というトラブルが起こりがちでなかなか時間通りにことが運びずらい大変な時間帯に、このような終電ちゃんたちが乗車してくる人たちの人生にちょっとだけ関わっていく話。
男にフラれて行く場所がないと終電ちゃんに泣き付いてくる女性の話や、酔った先輩を連れて初めて終電に乗った新生活に不安を抱える新入社員の話、たくさんの人を乗せようとする終電ちゃんと時間を守ろうとする運転士の話など。終電の時間だからこそ起こりうる様々なドラマを、人情味ある演出で魅せる内容です。
みんなから慕われている終電ちゃんたちですが、ときには罵られることも、物を投げつけられることもあります。それでも、乗客たちのことを第一に考えて、頑固に優しく仕事を続ける彼女たちは頼もしく、そして愛しい存在ですね。

ということで、「終電」を可愛い女の子に擬人化した漫画『終電ちゃん』1巻の紹介でした。基本的にイイ話ばかりの人情エピソードで展開され、感動させにきてる感は多少あるものの、それを差し引いても出会えて良かったと思えた素晴らしい作品。終電ちゃんたちのファンになってしまいました。
絵に関してはお世辞にも上手い言えるレベルではありません。ただ、気になってしまうほど酷くはないですし、意外と電車や駅の描写は細かくて味わいもあったと思います。
実際の終電はあまりお世話になりたくないのですが、こんな子たちがもし仮にいたなら終電にも関わらず賑わってしまうかもしれませんね。
2巻以降にもおそらく新キャラの終電ちゃんが登場すると思われるので、それも楽しみに続きを読んでみようと思います。心に沁みる良い漫画でした。

終電ちゃん(1) (モーニング KC)

藤本 正二 講談社 2016-03-23
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ハネ吉
とにかく漫画が大好きです。愛してるといっても過言ではありません。どんなジャンルにも手を出しますね。正直、文章力にはあまり自信はありませんが、なるべくうまく伝えられるようにがんばります。ちょっとだけでも読んでもらえたらうれしいです。 ちなみに、甘い物とネコも大好きです。
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