2017年03月10日
【ちはやふる】マンガ 感想&あらすじ 小倉百人一首競技かるたに情熱をそそぐ少年少女たちの熱き青春ストーリー
BE・LOVE。2007年12月28日から連載中。既刊33巻
作者:末次由紀
他作品:エデンの花
まだ何の情熱も知らない小学6年生の女の子・綾瀬千早(あやせ ちはや)は、福井からの転校生・綿谷新(わたや あらた)と出会い、「競技かるた」という百人一首を用いた競技の存在を知る。
新から才能があると言われた千早は、かるたの世界に強く惹かれだし、幼馴染の真島太一(ましま たいち)も巻き込んで、どんどん競技かるたにのめり込んでいった。
――それから4年後。新は故郷の福井へ転校し、太一も名門中学へ進学したことで、3人は離れ離れになっていたが、千早と太一は進学した瑞沢高校で再会を果たす。
千早は新がかるたを辞めたと聞くも、かるたが嫌いになったわけではないと分かり、小学生の時に交わした「かるたを続けてたらまた会える」という約束を信じ、太一と一緒に強くなって新と再会することを誓い合った。
そして、千早と太一は部の設立のため、和服を愛する古典マニアの大江奏、学年2位の秀才・駒野勉、かるた経験者の西田優征の3人の勧誘に成功し、苦労の末に瑞沢高校かるた部を始動させた。
瑞沢高校かるた部の仲間たちと全国選手権を目指す千早。それと同時に、女性競技者の頂点であるクイーンへの想いも大きく膨らませていく。
・綾瀬千早(あやせ ちはや)
主人公。小学6年生の時に出会った綿谷新から競技かるたを教わり、後に進学した瑞沢高校で太一と競技かるた部を設立。府中白波会所属のA級選手。天性の聴力による“感じ(聞き分け)”の良さというかるたにとって最も大事な才能を持ち、対戦中はその能力に起因する驚異的な反応速度、高い集中力を生かし、「攻めがるた」を得意としています。かるたへの情熱を燃やしすぎるあまりに周囲からは「かるたバカ」として扱われ、容姿端麗にも関わらず、行動と発言が全てを台無しにしてしまうことで「無駄美人」とも言われています。かるたの顧問になりたりという理由から、教師を目指し勉学にも励むようになります。
・綿谷新(わたや あらた)
小学生の時に千早の通う学校に転校してきた同級生。福井南雲会所属のA級選手。千早と太一が競技かるたを始めるきっかけとなった、眼鏡をかけた寡黙で温和な少年。永世名人・綿谷始を祖父に持ち、幼い頃から名人を夢見てかるた打ち込んできたことから、大会でも優勝する非凡な才能と実力があります。普段はクールで大人しい子ですが、元々負けず嫌いな性格のため、かるたが関わると熱くなります。かるたの試合では常に冷静沈着に流れを見極め、高い記憶力と正確無比の払い手を武器に対戦車を圧倒しています。
・真島太一(ましま たいち)
千早の幼馴染。府中白波会所属のA級選手。瑞沢高校かるた部部長。容姿端麗、文武両道、実家が裕福なうえに性格まで爽やかで優しい非の打ち所のない少年。女子からの人気も高く、才能や境遇に甘んじることなく隠れて努力をする人でもあります。しいて欠点を上げるなら、ここぞというときの運のなさ。かるたの試合では非凡な暗記力を駆使し、自陣・敵陣の札を把握して冷静に戦います。千早に恋心を抱いており、友人でライバルである新には対抗心を燃やしています。
・大江 奏(おおえ かなで)
瑞沢高校かるた部設立時からのメンバー。翠北かるた会所属のC級選手。礼儀正しく優しい少女。実家が「呉服の大江」を営む呉服屋の娘で、奏自身も和服をこよなく愛しています。古典オタクでもあり、百人一首や昔の和歌・歌人に対して深い造詣を持ってます。競技者としてよりも専任読手への憧れが強く、将来は千早のクイーン戦で読手を務めたいと思っています。
・西田 優征(にしだ ゆうせい)
瑞沢高校競技かるた部設立時からの部員。翠北かるた会所属のA級選手。太めの体型で、千早たちからは「肉まんくん」というあだ名で呼ばれています。かるた歴は部内で最も長く、小学生のときに千早、新、太一の「チームちはやふる」とかるた大会で対戦し、その縁で入部しました。幼い頃から培ってきた経験で身に付いた、「流れの読み」と呼ばれる札の読まれる順番を読むことが得意。太めの外見に反して意外と運動神経は高い。
・駒野 勉(こまの つとむ)
瑞沢高校競技かるた部設立時からの部員。翠北かるた会所属のB級選手。試験では太一にこそ及ばなかったものの、学年2位の秀才。机にかじりついて勉強してる姿から、「机くん」と呼ばれています。勧誘を拒否していましたが、強引な千早の行動、太一の熱い説得で心を動かされ、入部を決めました。勤勉で真面目な性格から、対戦記録の詳細なデータを収集しており、そのデータを試合でも生かし、部員たちに適格なアドバイスも与えてくれます。かなちゃんのことが好き。
・若宮 詩暢(わかみや しのぶ)
京都出身の現クイーン。小学4年生でA級に昇格し、史上最年少15歳でクイーン位をおさめています。千早同様整った顔立ちをした美少女ですが、ファッションセンスも千早と同じくかなりダサい。ただ、かるたのタイプは千早とは正反対の「守りがるた」。独特な感性の持ち主で、かるたから愛されてるかのような札との深い?つながり”があると評されています。札を払う動作は正確無比で鋭いにも関わらず、恐ろしく丁寧で滑らか。新とはかるたを通した昔馴染みではあるが、1度も勝てたことがないため強く意識しています。
【eBookJapan】 ちはやふる 登録不要で試し読みできます
競技かるたにおける女流最高位のクイーンを目指す少女が、部活の仲間たちと全国優勝に向けて日々の練習に励みながら、ライバルたちと切磋琢磨し、友情を育み、ときに恋に悩んで、熱い青春を駆け抜けていく物語。
「小倉百人一首競技かるた」を題材にした作品。少年少女のかるたに打ち込む姿と、友情、恋愛を描いた青春ストーリー。
いろいろあって漫画家活動休止していた末次由紀さんの、再開後初となる連載作品にして、著者最大のヒット作です。「マンガ大賞2009」大賞、「このマンガがすごい!2010」オンナ編第1位、2011年第35回講談社漫画賞少女部門受賞。
2011年にはアニメ化され、2013年にはアニメ2期も放送されました。2015年に実写映画化が発表され、女優の広瀬すずが主演で、2016年に『ちはやふる -上の句-』、『ちはやふる -下の句-』が公開。さらに、映画の続編製作も決定しています。あと、中学時代を描いた小説もあります。
昨今、マイナーな競技や文化を題材にした青春漫画、スポーツ漫画が目覚しい活躍をみせるようになりましたね。薙刀に打ち込む少女たちの姿を描いた『あさひなぐ』、高校生が伝統楽器である筝(こと)に青春を燃やす『この音止まれ!』など、メジャー級の人気競技に負けず劣らずの熱さと華々しさを読者に届けています。
そして、今回紹介させていただく『ちはやふる』は、そんなマイナー競技を扱った漫画の中では、今や代表的な作品の1つとして高い人気を誇っています。上記でタイトル名を上げた作品が好きな方なら楽しめるのではないかと思います。
それ以外では『青空エール』なんかも部活、友情、恋愛、を描いた青春ストーリーですので、本作にも通じるところがありますね。まあ、こちらの方が『ちはやふる』より甘酸っぱい恋愛してますけど。
まず、タイトル名にもなっている「ちはやふる」というのは、在原業平の和歌に出てくる枕詞です。以前紹介した「応天の門」の主人公ですね。
“ちはやふる 神代も聞かず 竜田川 からくれないに 水くくるとは”
漢字だと「千早振る」になります。一見すると風景を表現している歌のように見えますが、これは平安時代のプレイボーイである在原業平が、恋愛関係にあった女性に送った恋の歌らしいです。清和天皇に輿入れしたことにより手の届かなくなった藤原高子に、暗にほのめかしていまだ忘れえぬ想いを込めて詠ったという説があります。
読手が読み上げる百人一首の上の句を聞き、対戦相手よりも早く下の句を書かれた札を取る、それがこの作品のメインテーマでもある「競技かるた」というスポーツ。実際の映像を見てもらえれば分かると思いますが、非常に激しく、「畳の上の格闘技」とも言われる競技です。
『ちはやふる』は、そんな競技かるたに情熱をそそぐ女子高生・綾瀬千早を中心に、部活の仲間やライバルたちなど、周囲の人たちとの友情、恋愛、そして競技かるたに励む姿を描いた漫画です。
そもそもは女性向け漫画雑誌に掲載されている少女漫画。ただ、この作品は千早たちを取り巻く恋愛要素も見所のひとつではありますが、あくまでメインは「競技かるた」。恋愛よりも仲間やライバルたちとの友情、それぞれの家族関係、そして競技者として、ひとりの人間としての成長により重きを置いたストーリー構成になってます。少女漫画的なキラキラした恋愛も見せながら、今ではむしろ少年漫画でも珍しくなった友情・努力・勝利を体現した王道青春漫画とも言える内容。
そのあたりが少女漫画でありながら、男性にも好まれ、広く親しまれている要因にもなっていると思われます。
今でこそ高い人気を誇っていますが、競技人口は少なく、メディア露出もごく僅か、世間の認知度も低めという、いわゆるマイナー競技である「競技かるた」なだけに、これをテーマにするというだけでも挑戦的だったのではないかと思います。百人一首なら授業に取り入れている学校は結構あるのでそれなりに馴染まれているのでしょうが、競技かるたとなるとちょっと変わってきますね。
しかし、この作品を読むと競技かるたのルールや概要だけでなく、その凄さ、面白さ、カッコよさが激しく伝わってきます。1枚の札をとるために全神経を研ぎ澄ませる競技者、緊張感に包まれた静寂が広がる会場、そこに読手の声が響き渡り、上の句が詠まれると同時に場の空気は一変し、さながら戦場のような激しさを見せます。
その試合描写が作者・末次由紀の高い画力によって描かれているため、かるたの魅力は何倍にも引き上げられています。速く、激しく、熱く、時に泥臭く、またあるときには見惚れてしまうほどの美しさがあり、それらを見事に表現されていました。激しい動作はもちろんのことですが、個人的には札が詠まれる前の静けさの表現が素晴らしいと感じています。
心理描写も巧みで、相手との駆け引き、その時の体調や状態、抱えている悩みや葛藤なども垣間見ることができるので、単に迫力があるだけではなく、内容が非常に濃い見応えある試合を演出していました。
競技かるたがメインとはいえ、やはり千早たちの恋愛も非常に気になる要素。肝心の主人公である千早がそっち方面に免疫がない疎い子なので、なかなか大きな変化は見せませんでしたが、この頃ようやく太一、新の両名にも動きがあり、鈍感な千早も恋に悩む様子を見せるようになりました。
これまでの何とも言えないもどかしさも良かったんですが、この三角関係がどう変化し、どのような決着を見せるのかは楽しみですね。
他にも机くんやかなちゃんなど、ちらほらと恋の香りが漂っているので、メインの子たち以外のキャラにも注目。
競技かるたに着目した斬新さ、青春漫画としての王道な展開を見せるストーリー、登場人物が多いにも関わらず一人一人が個性的で魅力に溢れるキャラクター、作品内容にマッチした高い画力で描かれている絵、ほとんど悪い点が見られず、まだ完結してないですけど全体的に質の高い名作だと思っています。
現実の競技かるたにも強い影響を及ぼしているようで、メディアで取り上げられる機会も増え、かるたの大会に訪れる観客も増加し、確実に知名度アップへ貢献されていますね。
友情、恋愛、成長、千早たちの熱い想いとひたむきな姿は読む者の心を揺さぶる面白さがあり、同時に百人一首、競技かるたの奥深さと魅力も伝えてくれる作品。男性でも女性でも幅広い層の人たちに楽しんでもらえると思うので、よければ詠んでみてください。自信をもっておすすめさせていただきます。
作者:末次由紀
他作品:エデンの花
あらすじ
まだ何の情熱も知らない小学6年生の女の子・綾瀬千早(あやせ ちはや)は、福井からの転校生・綿谷新(わたや あらた)と出会い、「競技かるた」という百人一首を用いた競技の存在を知る。
新から才能があると言われた千早は、かるたの世界に強く惹かれだし、幼馴染の真島太一(ましま たいち)も巻き込んで、どんどん競技かるたにのめり込んでいった。
――それから4年後。新は故郷の福井へ転校し、太一も名門中学へ進学したことで、3人は離れ離れになっていたが、千早と太一は進学した瑞沢高校で再会を果たす。
千早は新がかるたを辞めたと聞くも、かるたが嫌いになったわけではないと分かり、小学生の時に交わした「かるたを続けてたらまた会える」という約束を信じ、太一と一緒に強くなって新と再会することを誓い合った。
そして、千早と太一は部の設立のため、和服を愛する古典マニアの大江奏、学年2位の秀才・駒野勉、かるた経験者の西田優征の3人の勧誘に成功し、苦労の末に瑞沢高校かるた部を始動させた。
瑞沢高校かるた部の仲間たちと全国選手権を目指す千早。それと同時に、女性競技者の頂点であるクイーンへの想いも大きく膨らませていく。
主要登場人物
・綾瀬千早(あやせ ちはや)
主人公。小学6年生の時に出会った綿谷新から競技かるたを教わり、後に進学した瑞沢高校で太一と競技かるた部を設立。府中白波会所属のA級選手。天性の聴力による“感じ(聞き分け)”の良さというかるたにとって最も大事な才能を持ち、対戦中はその能力に起因する驚異的な反応速度、高い集中力を生かし、「攻めがるた」を得意としています。かるたへの情熱を燃やしすぎるあまりに周囲からは「かるたバカ」として扱われ、容姿端麗にも関わらず、行動と発言が全てを台無しにしてしまうことで「無駄美人」とも言われています。かるたの顧問になりたりという理由から、教師を目指し勉学にも励むようになります。
・綿谷新(わたや あらた)
小学生の時に千早の通う学校に転校してきた同級生。福井南雲会所属のA級選手。千早と太一が競技かるたを始めるきっかけとなった、眼鏡をかけた寡黙で温和な少年。永世名人・綿谷始を祖父に持ち、幼い頃から名人を夢見てかるた打ち込んできたことから、大会でも優勝する非凡な才能と実力があります。普段はクールで大人しい子ですが、元々負けず嫌いな性格のため、かるたが関わると熱くなります。かるたの試合では常に冷静沈着に流れを見極め、高い記憶力と正確無比の払い手を武器に対戦車を圧倒しています。
・真島太一(ましま たいち)
千早の幼馴染。府中白波会所属のA級選手。瑞沢高校かるた部部長。容姿端麗、文武両道、実家が裕福なうえに性格まで爽やかで優しい非の打ち所のない少年。女子からの人気も高く、才能や境遇に甘んじることなく隠れて努力をする人でもあります。しいて欠点を上げるなら、ここぞというときの運のなさ。かるたの試合では非凡な暗記力を駆使し、自陣・敵陣の札を把握して冷静に戦います。千早に恋心を抱いており、友人でライバルである新には対抗心を燃やしています。
・大江 奏(おおえ かなで)
瑞沢高校かるた部設立時からのメンバー。翠北かるた会所属のC級選手。礼儀正しく優しい少女。実家が「呉服の大江」を営む呉服屋の娘で、奏自身も和服をこよなく愛しています。古典オタクでもあり、百人一首や昔の和歌・歌人に対して深い造詣を持ってます。競技者としてよりも専任読手への憧れが強く、将来は千早のクイーン戦で読手を務めたいと思っています。
・西田 優征(にしだ ゆうせい)
瑞沢高校競技かるた部設立時からの部員。翠北かるた会所属のA級選手。太めの体型で、千早たちからは「肉まんくん」というあだ名で呼ばれています。かるた歴は部内で最も長く、小学生のときに千早、新、太一の「チームちはやふる」とかるた大会で対戦し、その縁で入部しました。幼い頃から培ってきた経験で身に付いた、「流れの読み」と呼ばれる札の読まれる順番を読むことが得意。太めの外見に反して意外と運動神経は高い。
・駒野 勉(こまの つとむ)
瑞沢高校競技かるた部設立時からの部員。翠北かるた会所属のB級選手。試験では太一にこそ及ばなかったものの、学年2位の秀才。机にかじりついて勉強してる姿から、「机くん」と呼ばれています。勧誘を拒否していましたが、強引な千早の行動、太一の熱い説得で心を動かされ、入部を決めました。勤勉で真面目な性格から、対戦記録の詳細なデータを収集しており、そのデータを試合でも生かし、部員たちに適格なアドバイスも与えてくれます。かなちゃんのことが好き。
・若宮 詩暢(わかみや しのぶ)
京都出身の現クイーン。小学4年生でA級に昇格し、史上最年少15歳でクイーン位をおさめています。千早同様整った顔立ちをした美少女ですが、ファッションセンスも千早と同じくかなりダサい。ただ、かるたのタイプは千早とは正反対の「守りがるた」。独特な感性の持ち主で、かるたから愛されてるかのような札との深い?つながり”があると評されています。札を払う動作は正確無比で鋭いにも関わらず、恐ろしく丁寧で滑らか。新とはかるたを通した昔馴染みではあるが、1度も勝てたことがないため強く意識しています。
【eBookJapan】 ちはやふる 登録不要で試し読みできます
感想・見所
競技かるたにおける女流最高位のクイーンを目指す少女が、部活の仲間たちと全国優勝に向けて日々の練習に励みながら、ライバルたちと切磋琢磨し、友情を育み、ときに恋に悩んで、熱い青春を駆け抜けていく物語。
「小倉百人一首競技かるた」を題材にした作品。少年少女のかるたに打ち込む姿と、友情、恋愛を描いた青春ストーリー。
いろいろあって漫画家活動休止していた末次由紀さんの、再開後初となる連載作品にして、著者最大のヒット作です。「マンガ大賞2009」大賞、「このマンガがすごい!2010」オンナ編第1位、2011年第35回講談社漫画賞少女部門受賞。
2011年にはアニメ化され、2013年にはアニメ2期も放送されました。2015年に実写映画化が発表され、女優の広瀬すずが主演で、2016年に『ちはやふる -上の句-』、『ちはやふる -下の句-』が公開。さらに、映画の続編製作も決定しています。あと、中学時代を描いた小説もあります。
昨今、マイナーな競技や文化を題材にした青春漫画、スポーツ漫画が目覚しい活躍をみせるようになりましたね。薙刀に打ち込む少女たちの姿を描いた『あさひなぐ』、高校生が伝統楽器である筝(こと)に青春を燃やす『この音止まれ!』など、メジャー級の人気競技に負けず劣らずの熱さと華々しさを読者に届けています。
そして、今回紹介させていただく『ちはやふる』は、そんなマイナー競技を扱った漫画の中では、今や代表的な作品の1つとして高い人気を誇っています。上記でタイトル名を上げた作品が好きな方なら楽しめるのではないかと思います。
それ以外では『青空エール』なんかも部活、友情、恋愛、を描いた青春ストーリーですので、本作にも通じるところがありますね。まあ、こちらの方が『ちはやふる』より甘酸っぱい恋愛してますけど。
まず、タイトル名にもなっている「ちはやふる」というのは、在原業平の和歌に出てくる枕詞です。以前紹介した「応天の門」の主人公ですね。
“ちはやふる 神代も聞かず 竜田川 からくれないに 水くくるとは”
漢字だと「千早振る」になります。一見すると風景を表現している歌のように見えますが、これは平安時代のプレイボーイである在原業平が、恋愛関係にあった女性に送った恋の歌らしいです。清和天皇に輿入れしたことにより手の届かなくなった藤原高子に、暗にほのめかしていまだ忘れえぬ想いを込めて詠ったという説があります。
読手が読み上げる百人一首の上の句を聞き、対戦相手よりも早く下の句を書かれた札を取る、それがこの作品のメインテーマでもある「競技かるた」というスポーツ。実際の映像を見てもらえれば分かると思いますが、非常に激しく、「畳の上の格闘技」とも言われる競技です。
『ちはやふる』は、そんな競技かるたに情熱をそそぐ女子高生・綾瀬千早を中心に、部活の仲間やライバルたちなど、周囲の人たちとの友情、恋愛、そして競技かるたに励む姿を描いた漫画です。
そもそもは女性向け漫画雑誌に掲載されている少女漫画。ただ、この作品は千早たちを取り巻く恋愛要素も見所のひとつではありますが、あくまでメインは「競技かるた」。恋愛よりも仲間やライバルたちとの友情、それぞれの家族関係、そして競技者として、ひとりの人間としての成長により重きを置いたストーリー構成になってます。少女漫画的なキラキラした恋愛も見せながら、今ではむしろ少年漫画でも珍しくなった友情・努力・勝利を体現した王道青春漫画とも言える内容。
そのあたりが少女漫画でありながら、男性にも好まれ、広く親しまれている要因にもなっていると思われます。
今でこそ高い人気を誇っていますが、競技人口は少なく、メディア露出もごく僅か、世間の認知度も低めという、いわゆるマイナー競技である「競技かるた」なだけに、これをテーマにするというだけでも挑戦的だったのではないかと思います。百人一首なら授業に取り入れている学校は結構あるのでそれなりに馴染まれているのでしょうが、競技かるたとなるとちょっと変わってきますね。
しかし、この作品を読むと競技かるたのルールや概要だけでなく、その凄さ、面白さ、カッコよさが激しく伝わってきます。1枚の札をとるために全神経を研ぎ澄ませる競技者、緊張感に包まれた静寂が広がる会場、そこに読手の声が響き渡り、上の句が詠まれると同時に場の空気は一変し、さながら戦場のような激しさを見せます。
その試合描写が作者・末次由紀の高い画力によって描かれているため、かるたの魅力は何倍にも引き上げられています。速く、激しく、熱く、時に泥臭く、またあるときには見惚れてしまうほどの美しさがあり、それらを見事に表現されていました。激しい動作はもちろんのことですが、個人的には札が詠まれる前の静けさの表現が素晴らしいと感じています。
心理描写も巧みで、相手との駆け引き、その時の体調や状態、抱えている悩みや葛藤なども垣間見ることができるので、単に迫力があるだけではなく、内容が非常に濃い見応えある試合を演出していました。
競技かるたがメインとはいえ、やはり千早たちの恋愛も非常に気になる要素。肝心の主人公である千早がそっち方面に免疫がない疎い子なので、なかなか大きな変化は見せませんでしたが、この頃ようやく太一、新の両名にも動きがあり、鈍感な千早も恋に悩む様子を見せるようになりました。
これまでの何とも言えないもどかしさも良かったんですが、この三角関係がどう変化し、どのような決着を見せるのかは楽しみですね。
他にも机くんやかなちゃんなど、ちらほらと恋の香りが漂っているので、メインの子たち以外のキャラにも注目。
競技かるたに着目した斬新さ、青春漫画としての王道な展開を見せるストーリー、登場人物が多いにも関わらず一人一人が個性的で魅力に溢れるキャラクター、作品内容にマッチした高い画力で描かれている絵、ほとんど悪い点が見られず、まだ完結してないですけど全体的に質の高い名作だと思っています。
現実の競技かるたにも強い影響を及ぼしているようで、メディアで取り上げられる機会も増え、かるたの大会に訪れる観客も増加し、確実に知名度アップへ貢献されていますね。
友情、恋愛、成長、千早たちの熱い想いとひたむきな姿は読む者の心を揺さぶる面白さがあり、同時に百人一首、競技かるたの奥深さと魅力も伝えてくれる作品。男性でも女性でも幅広い層の人たちに楽しんでもらえると思うので、よければ詠んでみてください。自信をもっておすすめさせていただきます。
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