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2017年01月27日

【ぼくの地球を守って】マンガ 感想&あらすじ 前世の記憶を持つ少年少女たちが自分と向き合う姿を描いたSF作品

花とゆめ。1986年12月20日から1994年5月20日まで連載。既刊21巻
作者:日渡早紀
他作品:GLOBAL GARDEN



あらすじ

北海道の田舎から東京の高校へ転校してきた坂口亜梨子は、草花や樹木の気持ちがわかる不思議な少女。元々引っ込み思案で大人しい性格が災いしてクラスには馴染めず、さらに東京は自然の「自」の字もない空気の悪い街だったため、「帰りたい・・・」と寂しさを募らせていた。

ある日、亜梨子は偶然クラスメートの迅八と一成の会話を聞いてしまったことをきっかけに、2人が同じ夢を共有していることを知る。夢の中ではお互い全くの別人の姿であり、背景にはまるで月から見下ろしているかのようにいつも地球があるということだった。

一緒に話を聞いていた近所に住む何かとちょっかいを出してくる小学生の輪は、亜梨子が他の男子と仲良く話していたことに嫉妬してしまう。困らせようとイタズラしたことに怒った亜梨子は、叱った折に誤ってベランダか輪を転落させてしまった。

幸い奇跡的に軽傷で済んだ輪だったが、この事故をきっかけに迅八たちが話していた月の記憶に目覚め、怪しい行動をとるようになっていく。さらに、亜梨子もまた月で「木蓮」という女性として生きていた夢を見るようになり、遠い場所の、遠い記憶に深く関わり、振り回されていくことになる。


主要登場人物

坂口亜梨子
植物や動物の感情が分かる少女。石蕗高校1年生。黒髪ロングヘアーの美少女。内気で大人しい性格をしており、北海道から引っ越してきた当初はクラスに馴染めずにいました。輪とは近所に暮らしていたことから世話を任せられることもあり、彼のイタズラには困っていました。前世の記憶に覚醒してからは動植物の感情が分かるだけではなく、歌によって植物の成長を促進させる現象も起しています。
前世は木蓮(モクレン)という名の女性。本名「コウ=ハス=セイ=テ=モク=レン」。 生物学者で、月基地のマドンナ的存在。数億人に1人しかいないキチェ=サージャリオンという特殊能力者。彼女の歌は植物を異常成長させてしまう効果があります。

小林輪
亜梨子の隣室に住む少年。小学2年生。ある事故がきっかけとなり、前世の記憶と能力に覚醒し、大人びた態度と言動をとる天才少年になりました。事故前はイタズラ行為で亜梨子の気を引こうとしていましたが、事故以降は直接的に想いを伝えるようになり、強い執着も見せます。何かの目的のために怪しげな行動をとるようになり、覚醒はしても本来とは別の人物として振舞っています。
前世は紫苑(シオン)という名の男性。本名。「ザイ=テス=シ=オン」孤児院出身の戦災孤児。天才的なエンジニア、強力なサーチェス能力の持ち主ではありますが、協調性には欠けています。木蓮の恋人だった。

小椋迅八
亜梨子のクラスメイトの石蕗高校1年生。一成の幼馴染。単純で喧嘩っ早い性格。亜梨子に想いを寄せており、彼女が木蓮の転生者だと知ってからより気にかけるようになります。前世の記憶には覚醒はしていますが、能力はほとんど使えません。
前世は玉蘭(ギョクラン)という名の男性。本名「オ=アンティ=シャ=ギョク=ラン」。考古学者。サーチェスではありましたが、制御は上手くできなかったようです。 前世では木蓮に片想いしており、紫苑とはライバル関係。

錦織一成
石蕗高校1年生。迅八の幼馴染。中世的な整った顔立ちをしている少年。前世の女性が玉蘭(現在・迅八)に一途な愛を抱き続けていたことで、次第に一成自身もその想いに引きずられ迅八を意識するようになり、思い悩む日々を送っていました。
前世は槐(エンジュ)という名の女性。本名「ト=フェコ=ロール=エン=ジュ」 。古生物学者。木蓮に恋する玉蘭に想いを寄せていました。テレパス能力の持ち主。

国生桜
横浜に住む高生2年生の少女。勝気な性格をしているため、女性らしい槐に憧れを抱いています。前世では槐(一成)の親友だったこともあり、迅八を意識してしまうことに思い悩む一成の相談に乗り励ましている内に親しくなっていきます。
前世は繻子蘭(シュスラン)という名の女性。本名「ロキ=シ=アノール=シュス=ラン」 。科学者。親友の槐の保護者的存在。報われない彼女の恋を見守り続けていました。勝気な性格に反し、精神的な面は脆い。

土橋大介
川崎に住む高校2年生。ある事故がきっかけで、同じ学校に通う桜も前世を持っていることを知ります。前世の月基地でリーダーを務めていた影響か、現世でも7人のリーダー的存在です。
前世は柊(ヒイラギ)という名の男性。本名「オク=タコ=サノール=ヒイ=ラギ」 。言語学者。月基地のリーダーを務めていました。ウィルスに汚染した基地を放棄するという提案を責任感から拒み、結果メンバー全滅を招いてしまいました。

笠間春彦
病弱で入退院を繰り返している少年。インド系クォーター。紫苑にそっくりな容姿。中学3年に復学していますが、年齢的には高校2年生。前世で犯した過ちに悩み、そのことで輪に脅されてしまいます。体が弱いのは、前世から引き継いだテレポートを繰り返していたため。
前世は秋海棠(しゅうかいどう)という名の男性。本名「レム=サイ=ネ=シウ=カイドウ」 。医学博士。基地で蔓延したウイルスのワクチンを完成させるが、木蓮を手に入れた紫苑に嫉妬し、彼にだけワクチンを打ってたった1人取り残そうとしました。



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感想・見所

月から地球を見守るように観察していた7人の異星人。月で命を落とした彼らの記憶と能力を引き継いだ7人の少年少女たちが、現世でも消えない深く刻まれた前世の因縁と対峙し、思い悩みながらも今を懸命に生きようとする姿を描いた物語。
通称「ぼく地球(ぼくたま)」と呼ばれる、輪廻転生によって現世と前世の狭間で揺れ動く主人公たちを描いたSF作品です。
通常の新書版コミックス全21巻の他に、大型の愛蔵版コミックス全10巻、文庫版全12巻が発行されています。また、アニメ化もされており、1993年から全6話でOVAもリリースしました。OVAは原作の途中までなうえ、ラストもオリジナル展開で締め括られてはいますが、個人的にはかなりお気に入りのアニメですね。

もう20年以上も前に完結した作品です。連載スタートに関しては30年以上前というかなり古い作品。私が読んだのは今から2年くらい前ということで、やはり絵柄やセリフ、人の考え方などからも若干古さを感じたものの、面白いものはどれだけの年月が経とうと色褪せない魅力がありますね。私の育った時代とのズレから違和感を感じることもありましたが、いつの間にか読む手が止まらなくなって一気に読了。

主人公の少女・亜梨子が偶然クラスメイトの迅八と一成の会話を聞き、夢―「ムーン・ドリーム」を共有していることを知り、輪の転落事故(軽傷)と回復を経た後に自身も「木蓮」としての夢を見て覚醒しました。
そのことを迅八たちと話し合った結果、月基地には7人の人物がいたことから、「もしかしたら探せば他にもいるんじゃないか?」という流れになり、夢の中の仲間探しを開始します。案の定、同様の夢を見ていた桜、大介、そして晴彦たちが現れ、そこに幼い輪も加わるというのが序盤ですね。
ここから究極のかまってちゃん(紫苑)を筆頭に、登場人物1人1人の愛憎入り乱れた人間ドラマが展開されていきます。

7人中6人がだいたい16、17歳の同年代のなかに、1人だけ小学生の輪が交じっているという違和感、「なぜ?」という疑問を抱くと思います。これは決して偶然でもなんでもなく、後々判明することですが、月基地で起こったあることが大きな原因となっており、彼の空白の9年間が本筋ストーリーに大きな意味をもたらすことになります。
亜梨子たちは他のメンバーと会うまでは「ムーン・ドリーム」がいつの時代を映してしたのかは曖昧でしたが、最も多く夢を見ていた大介の話から前世だったという確信に至り、さらにまだ思い出していない衝撃の事実も知らされることになります。

最初はただの不思議な体験に対しての興味心から起きた会合だったと思います。しかし、お互いの記憶を確認し合い、自分たちの前世をより深く知っていくなかで、次第に心までもう1人の自分に引っ張られていくようになり、前世と現世の狭間で思い悩むようになってしまいました。
彼女たちの年代が感受性の高まりやすい時期というのも大きな要因でしょうね。ただでさえ精神的には不安定な時期に、さながらもう1つの人生を体験してるようなものですから、自分をどこに置いていいものか思い悩むのも、影響を強く受けてしまうのも当然といえば当然の話だと思います。
ただ、この現世と前世の記憶が絡み合う複雑な人間模様は面白い。中には性別が前世と現世で異なる子も存在し、恋していた相手が前世では異性でも現世では同性ということもあり、その想いの影響まで受けているのだから困ったものです。前世の完璧な木蓮という人物像と今の自分を比較して自信をなくしてしまう亜梨子や、前世での過ちを深く引きずる晴彦、そして最も色濃く前世のしがらみに囚われている輪。現世と前世、今の自分と転生前のもう1人の自分、悩み苦しみ葛藤しながらも、それぞれが答えを出すためにしがらみと向き合うことになります。
登場人物は多くても1人1人しっかした設定で丁寧に作られており、それぞれが役割を果たしていたので全く必要ないという子はいなかったですね。

木蓮たち月メンバーのエピソードも面白かったです。遠く離れた母星に起きた悲劇、基地内で起こる様々なトラブルや事件によって、話が進むごとにシリアスの濃度は増していきましたが、重くても目が離せない展開を繰り広げていました。それぞれの誰かを想う愛情を強く感じられたものの、結局誰一人として報われることなく命を落としたのは辛かったです。月での暮らし以前、戦災孤児だった紫苑の親代わりになったラズロと珍獣キャーとの過去話も、好きだけど悲しい。
私は木蓮好きでしたね。とても良いキャラだったと思います。容姿端麗、才色兼備、冷静沈着、温厚博識、それでいておおらかな性格。一見スキのない完璧な聖女なんですが、実はお転婆ではねっかえりな子という性格は良かったですね。

壮大な物語と人間ドラマに感動させてもらえました。輪廻転生、地球外の星と生命、ESPなど、下手するとごちゃ混ぜ過ぎて物語が破綻してしまいそうな設定とテーマを組み込んでいますが、1つ1つの材料を丁寧に調理し上手くまとめられており、その読者を引き込ませる展開と世界観の奥深さは素晴らしかったです。
あと、漫画とは関係ありませんが、菅野よう子さんが作曲したOVAのテーマソング『時の記憶(歌手:SEIKA)』は名曲だと思います。重厚でありながら透き通った声がその場に広がる透明感ある美しい曲です。ぜひ聞いて欲しい。
男女問わず読める作品だと思うので、よければ読んでみてください。ただ、どちらかというと大人向けかな。あと、続編として『ボクを包む月の光』、『僕は地球と歌う』も出てます。



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ハネ吉
とにかく漫画が大好きです。愛してるといっても過言ではありません。どんなジャンルにも手を出しますね。正直、文章力にはあまり自信はありませんが、なるべくうまく伝えられるようにがんばります。ちょっとだけでも読んでもらえたらうれしいです。 ちなみに、甘い物とネコも大好きです。
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