2017年02月17日
【町でうわさの天狗の子】マンガ 感想&あらすじ 天狗の子として生まれた少女が普通の幸福を求めて奮闘する恋愛ストーリー
月刊フラワーズ。2007年6月号から2013年12月号まで連載。既刊12巻
作者:岩本ナオ
他作品:雨無村役場産業課兼観光係
緑峰山に住まう天狗を信仰する町、緑峰町。山のふもとに母と2人で暮らす少女・刑部秋姫は、天狗の父と人間の母との間に生まれた町でうわさの天狗の子。
普通の人より力が強いこと、たくさん食べることを除けば、見た目も中身もどこにでもいるごくごく普通の女の子。お山では暮らさず、下界で母と暮らしながら学校にも通っていた。
天狗になるため修行に明け暮れる幼馴染の瞬ちゃんからは、はやくお山にあがって「修行して 天狗になれ」と口酸っぱく言われ続けているが、天狗になりたくない秋姫はそれを拒み続ける毎日。秋姫の頭の中は憧れのタケル君のことで頭がいっぱいなのだが・・・。
天狗の子の秋姫は、お目付け役の瞬ちゃんや友達の緑ちゃんたち、それと緑峰山に住む眷属たちと、ちょっとふしぎでヘンテコな日常を送っていく。
・刑部 秋姫(おさかべ あきひめ)
主人公。群青高校に通う1年生。天狗の父親と人間の母親との間に生まれた天狗の子。力持ち、大食いを覗けば、外見も中身も普通の女の子。 「緑峰山太郎坊秋姫」という天狗としての名前を持ち、お山では「太郎坊」や「姫さま」と呼ばれています。天狗としての資質は他に類を見ない力を秘めていますが、本人は天狗になることを強く拒んでおり、普通の女の子になりたいと望んでいます。
・榎本 瞬(えのもと しゅん)
秋姫の幼馴染。まだ赤ん坊のときに緑峰山の麓に捨てられていたところを康徳坊に拾われ、秋姫と一緒に育てられました。人間ではありますが天狗になるため修行に励んでいます。天狗としての名は緑峰山次郎坊瞬。秋姫のお目付け役として群青高校に通いだします。女子からの高い人気にはあまり関心ない様子ですが、秋姫のこととなると一生懸命になります。
・神谷 武(かみや たける)
秋姫の片想い相手。群青高校に通う1年生。実家は大工で、秋姫の父が住まう康徳神社を建てたのは神谷家の先祖。女子からの人気が高いだけでなく、妖からも好かれる性質。手先が器用なため物作りを得意とし、血筋が影響しているのか武の作る像には何かが宿るようです。誰にでも隔てなく優しい性格ですが、さびしがり屋の一面もあります。仏像マニア。
・松中 緑(まつなか みどり)
秋姫の親友。群青高校に通う1年生。祖父は緑峰町長を務めています。まだ幼かった頃は「町長の孫」として扱われことを嫌い、秋姫が自分と似た境遇にあったことがきっかけで仲良くなりました。クールで物静かな性格をしてますが、結構毒を吐きます。読書家で、特にオカルト系の怪しい本が好き。
・金田一麗華(きんだいち れいか)
秋姫のクラスメイト。群青高校に通う1年生。当初は緑峰町にある天狗信仰に懐疑的な立場にあり、秋姫や緑峰中学出身者を馬鹿にしていたが、後に和解し、緑ちゃんと共に秋姫の良き理解者になります。面倒見の良い姉御肌で頼りがいのある性格。
・康徳坊(こうとくぼう)
秋姫の父親。緑峰山にある康徳神社の僧正天狗。夏祭りの夜に出会った秋姫の母・春菜と450歳差の恋仲になりました。最初は秋姫をお山に引き取る約束をしていましたが、春菜の脅しを含んだ猛反発を受けて断念。秋姫のことを非常に溺愛して何かと気にかけています。元は破戒僧でしたが、天狗となった現在では街の住民からとても慕い敬まわれています。
【eBookJapan】 町でうわさの天狗の子 無料で試し読みできます
天狗の父と人間の母との間に生まれた少女が、人間離れした自らの力や天狗に関わる様々な事柄に振り回されながらも、幼馴染や友人たちと共に、恋をし、友情を育み、普通の女の子として青春を送ろうと奮闘する物語。
ちょっと不思議なほんわか青春ラブストーリー。「TV Bros.」のマンガ賞『輝け! 第2回ブロスコミックアワード2009』大賞受賞、第55回小学館漫画賞少女向け部門受賞した作品。
まず私が気に入ったのはこの作品の世界観。
少し懐かしさを感じるどこにでもありそうなのどかな田舎町を舞台としています。土着信仰が根付いてるところが田舎らしくあるんですが、その信仰の対象は偶像の神仏ではなく、人々の目に映り言葉も交わせる命を持った天狗。神様や妖といった人ならざるものの存在を人々は疑いなく認知しており、敬い、親しみ、畏れを抱きながら信仰しています。
本来ならファンタジー的な存在である天狗や神、人の言葉を話す動物や妖怪などが、違和感なく日常生活の中に溶け込んでいるふしぎな世界観です。会話のなかにも当たり前のように天狗などのことがあがり、主人公が天狗の娘であることも周知の事実として住民たちは受け入れており、孫を相手にしてるかのように結構可愛がられています。
ありふれた日常を送る町の住民、学校へ通う少年少女、それを山の上から見守る天狗や眷族たち、人の日常にファンタジー要素が自然に寄り添う町、とても良い雰囲気ですね。
これだけ見ると和風ファンタジーモノを想像してしまうのかもしれませんが、展開の仕方はとても少女マンガらしい作品です。まあ、少女向け雑誌に掲載されていたわけですから当然ではあるんですけどね。
ちょっと不思議な世界で、天狗の父親を持って生まれてきた少女が、等身大の女子高生らしい悩みを抱いて学校生活を送っています。イケメンの人気者に憧れを抱いていた少女がその人とお近づきするため日々奮闘しているうちに、いつしかずっと近くで見守ってくれていた幼馴染の存在の大きさに気づき、次第に想いを膨らませていくという少女マンガの王道とも言っていい流れ。
それだけだと定番というよりありきたりな作品になり下がってしまう恐れがあるわけですが、そこに天狗や妖などのファンタジー要素を織り交ぜてることで、他の少女マンガとは一線を画す味わいを楽しめる作品に仕上げています。
主人公の秋姫は、年上好きの母親が450歳離れた天狗の父親と結ばれたことで生まれた女の子。脱輪したトラックを軽々と持ち上げてしまう怪力の持ち主で、将来は大天狗にもなれる高い資質を秘めていますが、本人は頑なに天狗になることを拒否し続けていました。秋姫は普通の女の子として恋愛をし、友達と遊んで、平凡な生活を送りたいと望んでいます。なにより、天狗になってしまったら父のように毛深く厳つい可愛さの欠片もない姿になってしまうので、それは女の子からしたら受け入れがたいことでしょうね。
天狗に絡んだ悩みも当然持ってはいますが、好きな人に可愛くないところを見せたくない、親が薦めるものにはなりたくないなど、この年頃なら誰しも普通に抱えてそうな悩みばかりです。ただ、本人の思いはどうあれ、皮肉にも内に秘められた大きすぎる天狗の力はどんどん成長して秋姫を悩ませることになります。そして、終盤からはファンタジー色がかなり強調された展開になりますね。
登場人物はどのキャラも皆良い子ばかりで可愛い。キャラ数は大所帯ではありますが、主人公だけでなく友人たちの恋愛も丁寧に取り上げています。
やっぱりメインの秋姫と瞬ちゃんは良かったですね。裏表がなく、誰よりも強い力を持っているのに守ってあげたくなる秋姫は可愛い。そして、秋姫の不安をいつも受け止めてくれる駿は男前。上述でも書いた通り天狗の力が大きく成長して不安を募らせる秋姫ですが、瞬ちゃんはぶっきらぼうな態度でいつでもどんなときでも寄り添ってくれます。見守っているだけではなく、好きな子のために成長しようとする瞬ちゃん、これは惚れますね。
秋姫の友人たちはすごい安心させてくれる存在でした。秋姫が辛そうな時は一緒に悩み、優しく励まし、嬉しい時や楽しい時は肩を並べて笑いあってくれる大切な友達。皆良い子ばかりなのでどの子の恋愛も純粋に応援したくなりますね。
特に親友のミドリちゃんが好きですね。秋姫のことを本当に大切に思ってくれていることが強く伝わってきます。ミドリちゃんと瞬ちゃんの意外すぎる関係がある意味作中で一番驚いたかもしれません。
読み始めた当初こそ、特殊な設定と世界観ばかりに注視していたんですが、、読み進めていくうちに先の展開がどんどん気になり出していました。ジワジワと引き込ませてくれる面白さがあるかと思います。
ラストもぐだぐだな展開に陥ることはなく、1人の少女を救うため、幸せになってもらうため、登場人物一丸となって奔走する温かさを見せ、とても感動させてもらえました。
普通を求めた天狗の子から、普通であることの幸せ、そしてそんなありふれた日常の中にこそ特別が生まれることに気づかせてもらえました。恋愛、友情、親子愛、ファンタジーでも日常系としてでも楽しめる作品なので、よければ読んでみてください。おすすめさせていただきます。
作者:岩本ナオ
他作品:雨無村役場産業課兼観光係
あらすじ
緑峰山に住まう天狗を信仰する町、緑峰町。山のふもとに母と2人で暮らす少女・刑部秋姫は、天狗の父と人間の母との間に生まれた町でうわさの天狗の子。
普通の人より力が強いこと、たくさん食べることを除けば、見た目も中身もどこにでもいるごくごく普通の女の子。お山では暮らさず、下界で母と暮らしながら学校にも通っていた。
天狗になるため修行に明け暮れる幼馴染の瞬ちゃんからは、はやくお山にあがって「修行して 天狗になれ」と口酸っぱく言われ続けているが、天狗になりたくない秋姫はそれを拒み続ける毎日。秋姫の頭の中は憧れのタケル君のことで頭がいっぱいなのだが・・・。
天狗の子の秋姫は、お目付け役の瞬ちゃんや友達の緑ちゃんたち、それと緑峰山に住む眷属たちと、ちょっとふしぎでヘンテコな日常を送っていく。
主要登場人物
・刑部 秋姫(おさかべ あきひめ)
主人公。群青高校に通う1年生。天狗の父親と人間の母親との間に生まれた天狗の子。力持ち、大食いを覗けば、外見も中身も普通の女の子。 「緑峰山太郎坊秋姫」という天狗としての名前を持ち、お山では「太郎坊」や「姫さま」と呼ばれています。天狗としての資質は他に類を見ない力を秘めていますが、本人は天狗になることを強く拒んでおり、普通の女の子になりたいと望んでいます。
・榎本 瞬(えのもと しゅん)
秋姫の幼馴染。まだ赤ん坊のときに緑峰山の麓に捨てられていたところを康徳坊に拾われ、秋姫と一緒に育てられました。人間ではありますが天狗になるため修行に励んでいます。天狗としての名は緑峰山次郎坊瞬。秋姫のお目付け役として群青高校に通いだします。女子からの高い人気にはあまり関心ない様子ですが、秋姫のこととなると一生懸命になります。
・神谷 武(かみや たける)
秋姫の片想い相手。群青高校に通う1年生。実家は大工で、秋姫の父が住まう康徳神社を建てたのは神谷家の先祖。女子からの人気が高いだけでなく、妖からも好かれる性質。手先が器用なため物作りを得意とし、血筋が影響しているのか武の作る像には何かが宿るようです。誰にでも隔てなく優しい性格ですが、さびしがり屋の一面もあります。仏像マニア。
・松中 緑(まつなか みどり)
秋姫の親友。群青高校に通う1年生。祖父は緑峰町長を務めています。まだ幼かった頃は「町長の孫」として扱われことを嫌い、秋姫が自分と似た境遇にあったことがきっかけで仲良くなりました。クールで物静かな性格をしてますが、結構毒を吐きます。読書家で、特にオカルト系の怪しい本が好き。
・金田一麗華(きんだいち れいか)
秋姫のクラスメイト。群青高校に通う1年生。当初は緑峰町にある天狗信仰に懐疑的な立場にあり、秋姫や緑峰中学出身者を馬鹿にしていたが、後に和解し、緑ちゃんと共に秋姫の良き理解者になります。面倒見の良い姉御肌で頼りがいのある性格。
・康徳坊(こうとくぼう)
秋姫の父親。緑峰山にある康徳神社の僧正天狗。夏祭りの夜に出会った秋姫の母・春菜と450歳差の恋仲になりました。最初は秋姫をお山に引き取る約束をしていましたが、春菜の脅しを含んだ猛反発を受けて断念。秋姫のことを非常に溺愛して何かと気にかけています。元は破戒僧でしたが、天狗となった現在では街の住民からとても慕い敬まわれています。
【eBookJapan】 町でうわさの天狗の子 無料で試し読みできます
感想・見所
天狗の父と人間の母との間に生まれた少女が、人間離れした自らの力や天狗に関わる様々な事柄に振り回されながらも、幼馴染や友人たちと共に、恋をし、友情を育み、普通の女の子として青春を送ろうと奮闘する物語。
ちょっと不思議なほんわか青春ラブストーリー。「TV Bros.」のマンガ賞『輝け! 第2回ブロスコミックアワード2009』大賞受賞、第55回小学館漫画賞少女向け部門受賞した作品。
まず私が気に入ったのはこの作品の世界観。
少し懐かしさを感じるどこにでもありそうなのどかな田舎町を舞台としています。土着信仰が根付いてるところが田舎らしくあるんですが、その信仰の対象は偶像の神仏ではなく、人々の目に映り言葉も交わせる命を持った天狗。神様や妖といった人ならざるものの存在を人々は疑いなく認知しており、敬い、親しみ、畏れを抱きながら信仰しています。
本来ならファンタジー的な存在である天狗や神、人の言葉を話す動物や妖怪などが、違和感なく日常生活の中に溶け込んでいるふしぎな世界観です。会話のなかにも当たり前のように天狗などのことがあがり、主人公が天狗の娘であることも周知の事実として住民たちは受け入れており、孫を相手にしてるかのように結構可愛がられています。
ありふれた日常を送る町の住民、学校へ通う少年少女、それを山の上から見守る天狗や眷族たち、人の日常にファンタジー要素が自然に寄り添う町、とても良い雰囲気ですね。
これだけ見ると和風ファンタジーモノを想像してしまうのかもしれませんが、展開の仕方はとても少女マンガらしい作品です。まあ、少女向け雑誌に掲載されていたわけですから当然ではあるんですけどね。
ちょっと不思議な世界で、天狗の父親を持って生まれてきた少女が、等身大の女子高生らしい悩みを抱いて学校生活を送っています。イケメンの人気者に憧れを抱いていた少女がその人とお近づきするため日々奮闘しているうちに、いつしかずっと近くで見守ってくれていた幼馴染の存在の大きさに気づき、次第に想いを膨らませていくという少女マンガの王道とも言っていい流れ。
それだけだと定番というよりありきたりな作品になり下がってしまう恐れがあるわけですが、そこに天狗や妖などのファンタジー要素を織り交ぜてることで、他の少女マンガとは一線を画す味わいを楽しめる作品に仕上げています。
主人公の秋姫は、年上好きの母親が450歳離れた天狗の父親と結ばれたことで生まれた女の子。脱輪したトラックを軽々と持ち上げてしまう怪力の持ち主で、将来は大天狗にもなれる高い資質を秘めていますが、本人は頑なに天狗になることを拒否し続けていました。秋姫は普通の女の子として恋愛をし、友達と遊んで、平凡な生活を送りたいと望んでいます。なにより、天狗になってしまったら父のように毛深く厳つい可愛さの欠片もない姿になってしまうので、それは女の子からしたら受け入れがたいことでしょうね。
天狗に絡んだ悩みも当然持ってはいますが、好きな人に可愛くないところを見せたくない、親が薦めるものにはなりたくないなど、この年頃なら誰しも普通に抱えてそうな悩みばかりです。ただ、本人の思いはどうあれ、皮肉にも内に秘められた大きすぎる天狗の力はどんどん成長して秋姫を悩ませることになります。そして、終盤からはファンタジー色がかなり強調された展開になりますね。
登場人物はどのキャラも皆良い子ばかりで可愛い。キャラ数は大所帯ではありますが、主人公だけでなく友人たちの恋愛も丁寧に取り上げています。
やっぱりメインの秋姫と瞬ちゃんは良かったですね。裏表がなく、誰よりも強い力を持っているのに守ってあげたくなる秋姫は可愛い。そして、秋姫の不安をいつも受け止めてくれる駿は男前。上述でも書いた通り天狗の力が大きく成長して不安を募らせる秋姫ですが、瞬ちゃんはぶっきらぼうな態度でいつでもどんなときでも寄り添ってくれます。見守っているだけではなく、好きな子のために成長しようとする瞬ちゃん、これは惚れますね。
秋姫の友人たちはすごい安心させてくれる存在でした。秋姫が辛そうな時は一緒に悩み、優しく励まし、嬉しい時や楽しい時は肩を並べて笑いあってくれる大切な友達。皆良い子ばかりなのでどの子の恋愛も純粋に応援したくなりますね。
特に親友のミドリちゃんが好きですね。秋姫のことを本当に大切に思ってくれていることが強く伝わってきます。ミドリちゃんと瞬ちゃんの意外すぎる関係がある意味作中で一番驚いたかもしれません。
読み始めた当初こそ、特殊な設定と世界観ばかりに注視していたんですが、、読み進めていくうちに先の展開がどんどん気になり出していました。ジワジワと引き込ませてくれる面白さがあるかと思います。
ラストもぐだぐだな展開に陥ることはなく、1人の少女を救うため、幸せになってもらうため、登場人物一丸となって奔走する温かさを見せ、とても感動させてもらえました。
普通を求めた天狗の子から、普通であることの幸せ、そしてそんなありふれた日常の中にこそ特別が生まれることに気づかせてもらえました。恋愛、友情、親子愛、ファンタジーでも日常系としてでも楽しめる作品なので、よければ読んでみてください。おすすめさせていただきます。
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