2017年04月28日
漫画『僕のジョバンニ』1巻の感想とあらすじ
『僕のジョバンニ』1巻の感想。
僕のジョバンニ
著者:穂積
掲載:月刊flowers
1巻発売日:2016年12月9日
海辺の田舎町で家族といっしょに暮らしている小学生の鉄雄。6歳のとき、祖父が遺した古いビデオに映っていたチェロの二重奏を観た鉄雄は、その光景に魅せられてチェロを習い始めていた。東京のコンクールで優勝するまでに成長した鉄雄だったが、ビデオの中の二重奏を忘れられず、1人での演奏に寂しさを感じていた。
ある日、大型客船が海難事故によって沈没し、岸まで流れ着いた少年・郁未が発見される。海に投げ出され、広い海原を1人で漂っていたとき、自分を呼ぶ誰かの声を聞いていた郁未。彼を導いた誰かの声、それは他でもない鉄雄が奏でるチェロの音色だった。
同じ家で暮らし始め、鉄雄だけに心を開いていく郁未はいつしか彼からチェロを教わり出し、一緒に弾き始めるのだが・・・。
田舎の町で相棒を求めながら1人でチェロを弾き続けていた少年と、海難事故にあうも彼の奏でる音色に導かれて命を繋げたハーフの少年の、奇跡によって巡り合ったふたりの少年が紡ぐ物語。
「チェロ」を題材にした天才と凡才のヒューマンドラマ。帯での謳い文句は「神様って、残酷だ。」。『さよならソルシエ』『式の前日』の漫画家・穂積さんによる連載作です。
事前情報なく表紙買いした作品だったので読む前は海外の話なのかと予想していましたが、日本を舞台にした話でした。ちなみに、BL作品ではありません。たぶん・・・。
天才と凡才、多くの作品でよく取り上げられるこのテーマ。作品であろうと現実であろうとも、皮肉にも凡人は努力をすればするほどその高過ぎる壁を思い知らされることになり、そこで折れてしまうか、はたまたそれでも突き進めるかは大きな分岐点になることが多いですね。
さらに、凡人が抱く嫉妬や羨望、誰にも理解されない天才の悩みなど、凡人は凡人なりの、天才は天才なりの葛藤にあがき、そういったところから様々なドラマも生まれてきたと思います。
この『僕のジョバンニ』でも運命によって導き出会わされたのか、“天才と凡才”2人の少年の物語ということで、この先どのような展開・結末を見せてくれるのか非情に気になる内容になってます。
舞台は海沿いの小さな田舎町。この町で家族と暮らしながら祖父の影響でチェロを弾いていた少年・鉄雄が主人公。おおまかなあらすじは冒頭の通りで、二重奏に憧れて始めたチェロの腕前はかなりの域に達しているも、周囲には一緒に演奏してくれる人が誰もいないことから、鉄雄は憧れた二重奏が出来ずに孤独な演奏を続ける日々を送っていました。地主だった祖父がチェロの収集家であったことから、楽器には困らなかったようです。
そんな鉄雄の前に現れたのがハーフの少年・郁未。海難事故で沈没した大型客船の唯一の生存者です。真っ暗な海原で「死にたくない」と1人溺れかけていたところ、聴こえてきた鉄雄の弾くチェロの音色に導かれ、奇跡的に助かりました。そういった経緯があることから、声(音)の主が鉄雄だったことに気づいたことで郁未は献身的過ぎるほど鉄雄だけに懐き、独りでチェロを弾くことに寂しさを感じていた彼のため、一緒に演奏するべく郁未もチェロの練習を始めることになりました。
家族や友人に囲まれて過ごしていても、ずっと求め続けているチェロの相棒には巡り合えず孤独を感じていた鉄雄。海難事故によって唯一の家族だった母親を失い、孤独な身となってしまった郁未。状況は異なりますけど互いに孤独のなかにいた少年たち。
この2人が次第に唯一無二の存在になっていくわけなんですが、これは友情なのか、兄弟的な愛なのか、はたまた別の何かなのかが微妙なところで、その描き方が見事。
というのも特に郁未の鉄雄に向ける想いが、友人・家族・恋人に向ける「好き」なんていうものとは比べられないほど濃度が高いレベル。絶望的な死地の中で自分を導いた存在であることから無くは無いのでしょうが、「依存」や下手すると「信奉」にも近いと思います。
「お前に俺の人生をやるよ/俺は生涯お前の友でいよう/俺だけはお前を裏切らない この先何があっても お前を孤独にはしない」(郁未)
こんな演劇の一幕みたいなセリフを小学生が言ってしまうのだからちょっと異様にも見えます。
そして、帯に書いてあった「神様って、残酷だ」の通りの事態へ。私だけではなく、恐らく予想していた人の方が多いと思いますけど分かっていてもやはりきついです。
求めていた片割れとやっと出会えた少年に突き付けられた絶望的とも言える展開で1巻は締められたわけですが、こうなってくると郁未が鉄雄に向けた言葉は違う響きでズシリと重くのしかかってきますね。
歪ではあってもこれまでは強く結びついていた2人の関係。それはある人物の登場、そして郁美の鉄雄のためを思っての行動によってさざなみが立ったわけですが、はたしてこの関係はどうなるのか・・・。
物語はまだ始まったばかりということでまだ決め付けられないことも多く、何を伝えたいのかもぼんやりしているとは言え、否応なく惹きつけられてしまう面白さがある1巻でした。良く練られたストーリー、雰囲気を盛り立てるきれいな絵、引き込ませる演出もすばらしかったと思います。
これからの2人の関係はどうなっていくのか、「ジョバンニ」とは鉄雄か郁未かどちらのことを指しているのかなど、続きが気になって仕方ないですね。
思わぬ掘り出し物を拾った気分。今後も目が離せません。
【eBookJapan】 僕のジョバンニ
↑無料で試し読みできます
僕のジョバンニ
著者:穂積
掲載:月刊flowers
1巻発売日:2016年12月9日
海辺の田舎町で家族といっしょに暮らしている小学生の鉄雄。6歳のとき、祖父が遺した古いビデオに映っていたチェロの二重奏を観た鉄雄は、その光景に魅せられてチェロを習い始めていた。東京のコンクールで優勝するまでに成長した鉄雄だったが、ビデオの中の二重奏を忘れられず、1人での演奏に寂しさを感じていた。
ある日、大型客船が海難事故によって沈没し、岸まで流れ着いた少年・郁未が発見される。海に投げ出され、広い海原を1人で漂っていたとき、自分を呼ぶ誰かの声を聞いていた郁未。彼を導いた誰かの声、それは他でもない鉄雄が奏でるチェロの音色だった。
同じ家で暮らし始め、鉄雄だけに心を開いていく郁未はいつしか彼からチェロを教わり出し、一緒に弾き始めるのだが・・・。
田舎の町で相棒を求めながら1人でチェロを弾き続けていた少年と、海難事故にあうも彼の奏でる音色に導かれて命を繋げたハーフの少年の、奇跡によって巡り合ったふたりの少年が紡ぐ物語。
「チェロ」を題材にした天才と凡才のヒューマンドラマ。帯での謳い文句は「神様って、残酷だ。」。『さよならソルシエ』『式の前日』の漫画家・穂積さんによる連載作です。
事前情報なく表紙買いした作品だったので読む前は海外の話なのかと予想していましたが、日本を舞台にした話でした。ちなみに、BL作品ではありません。たぶん・・・。
天才と凡才、多くの作品でよく取り上げられるこのテーマ。作品であろうと現実であろうとも、皮肉にも凡人は努力をすればするほどその高過ぎる壁を思い知らされることになり、そこで折れてしまうか、はたまたそれでも突き進めるかは大きな分岐点になることが多いですね。
さらに、凡人が抱く嫉妬や羨望、誰にも理解されない天才の悩みなど、凡人は凡人なりの、天才は天才なりの葛藤にあがき、そういったところから様々なドラマも生まれてきたと思います。
この『僕のジョバンニ』でも運命によって導き出会わされたのか、“天才と凡才”2人の少年の物語ということで、この先どのような展開・結末を見せてくれるのか非情に気になる内容になってます。
舞台は海沿いの小さな田舎町。この町で家族と暮らしながら祖父の影響でチェロを弾いていた少年・鉄雄が主人公。おおまかなあらすじは冒頭の通りで、二重奏に憧れて始めたチェロの腕前はかなりの域に達しているも、周囲には一緒に演奏してくれる人が誰もいないことから、鉄雄は憧れた二重奏が出来ずに孤独な演奏を続ける日々を送っていました。地主だった祖父がチェロの収集家であったことから、楽器には困らなかったようです。
そんな鉄雄の前に現れたのがハーフの少年・郁未。海難事故で沈没した大型客船の唯一の生存者です。真っ暗な海原で「死にたくない」と1人溺れかけていたところ、聴こえてきた鉄雄の弾くチェロの音色に導かれ、奇跡的に助かりました。そういった経緯があることから、声(音)の主が鉄雄だったことに気づいたことで郁未は献身的過ぎるほど鉄雄だけに懐き、独りでチェロを弾くことに寂しさを感じていた彼のため、一緒に演奏するべく郁未もチェロの練習を始めることになりました。
家族や友人に囲まれて過ごしていても、ずっと求め続けているチェロの相棒には巡り合えず孤独を感じていた鉄雄。海難事故によって唯一の家族だった母親を失い、孤独な身となってしまった郁未。状況は異なりますけど互いに孤独のなかにいた少年たち。
この2人が次第に唯一無二の存在になっていくわけなんですが、これは友情なのか、兄弟的な愛なのか、はたまた別の何かなのかが微妙なところで、その描き方が見事。
というのも特に郁未の鉄雄に向ける想いが、友人・家族・恋人に向ける「好き」なんていうものとは比べられないほど濃度が高いレベル。絶望的な死地の中で自分を導いた存在であることから無くは無いのでしょうが、「依存」や下手すると「信奉」にも近いと思います。
「お前に俺の人生をやるよ/俺は生涯お前の友でいよう/俺だけはお前を裏切らない この先何があっても お前を孤独にはしない」(郁未)
こんな演劇の一幕みたいなセリフを小学生が言ってしまうのだからちょっと異様にも見えます。
そして、帯に書いてあった「神様って、残酷だ」の通りの事態へ。私だけではなく、恐らく予想していた人の方が多いと思いますけど分かっていてもやはりきついです。
求めていた片割れとやっと出会えた少年に突き付けられた絶望的とも言える展開で1巻は締められたわけですが、こうなってくると郁未が鉄雄に向けた言葉は違う響きでズシリと重くのしかかってきますね。
歪ではあってもこれまでは強く結びついていた2人の関係。それはある人物の登場、そして郁美の鉄雄のためを思っての行動によってさざなみが立ったわけですが、はたしてこの関係はどうなるのか・・・。
物語はまだ始まったばかりということでまだ決め付けられないことも多く、何を伝えたいのかもぼんやりしているとは言え、否応なく惹きつけられてしまう面白さがある1巻でした。良く練られたストーリー、雰囲気を盛り立てるきれいな絵、引き込ませる演出もすばらしかったと思います。
これからの2人の関係はどうなっていくのか、「ジョバンニ」とは鉄雄か郁未かどちらのことを指しているのかなど、続きが気になって仕方ないですね。
思わぬ掘り出し物を拾った気分。今後も目が離せません。
【eBookJapan】 僕のジョバンニ
↑無料で試し読みできます
【このカテゴリーの最新記事】
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
-
no image
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/6214384
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック