ウラニウムの塊が小さ過ぎると核分裂が止まり、多過ぎると大爆発が起こります。
或る一定の大きさを与えらた時だけ、連鎖核反応が希望する規模で行われるのですが、最も適当な量を決定するには実に多くの異なった条件が満足されなければなりません。
先ず第1に、速度の緩やかな中性子でウラニウム235の原子核を爆撃する事です。
速度が大き過ぎると困るのです。
そこで適当な速度にまで下げる為に、重水素を使います。
進行中の核分裂を途中で止めさせるには如何するかと言うと、カドニウムを使用する事が考えられました。
カドニウムは中性子を自分の中に取り込んで、安定したアイソトープを形成すると言う利点がありますから、ウラニウムの中にカドニウムを配置しておくならば、分裂した原子核より発生した中性子たちを吸収して、火に水を掛ける様に、核反応を制御してしまうでしょう。
この原理を利用する事によって、世界最初の、自給核分裂装置が、イタリアから来た科学者、フェルミの指導の下に、シカゴ大のキャンパスに建設されました。
核反応装置が建設された結果、大量に放射性アイソトープを製造する事が可能となりました。
アイソトープの使い道は凡そ無限と言え、化学的な研究に、医学的研究に、又農業の方面にと多方面での利用価値があります。
炭素14を使用して、食物が身体の中をどの様に動くか、その跡を辿る事ができます。
沃素は、食物がエネルギーに変わる際に大きな役割を演ずるのですが、沃素を蓄える甲状腺の病気は、アイソトープを使って治療されるのです。
最も偉大な利用法、それは原子力です。
ノーチラス号やシーウルフ号は、原子核反応装置を積み込んでいる潜水艦です。
地球には、銅よりも、もっと多量のウラニウムが存在しますが、核分裂を起こすのに必要なウラニウム235はそのうちの1000分の7ほどです。
ウラニウム238は速度の小さい中性子が衝突すると、中性子を取り込んで、ウラニウム239となり、ネプチニュウム239に変わり、それからプルトニウム239と変わりますが、このプルトニウム239は分裂可能です。
然し、石炭や水力の使用し難い地方では、原子力を大いに活用できるでしょう。
1955年、ジュネーブの国際会議でソ連の科学者たちは、工場や家庭へ電気を送る核反応装置について発表しました。
同じ装置がペンシルバニアにも建設されました。
イギリスでは水爆のエネルギーを利用しようと研究しています。
何千万度と言う高熱を処理する方法が発見される日が来るかも知れません。
人類史上、1939年以後に原子に関して成し遂げられた業績程、素晴らしい事はありません。
原子の世界から
これはラダー版の本である。
それも昔の本である。