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2018年01月31日

大腸CTアカデミア  内視鏡検査後の大腸がんは検査の見落としあるいは不完全切除がおもな原因だよ!

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大腸CTアカデミア目次
大腸CTアカデミア【医療従事者用】目次
大腸CTアカデミア【一般の方用】目次
大腸CTアカデミア【腸長ダービー】目次
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前回の「つぶやき − 165 −」の後に
次のようなやり取りがラインコミュニティで
ありましたので、ご紹介しますね。

「たかはし のり」
実にくだらなくて恐縮なのですが、
大腸で「近位(proximal)」「遠位(distal)」
と聞くたびに「どっちがどっち側だっけ???」と
毎回混乱して不安になるのは私だけでしょうか。

「ナガイチ」
日本語では従来、口側、肛門側と言われてきました。
この習慣によって和製英語
oral side, anal side
と学会や論文で誤って使用されることが頻発しました。
医学英語としては正しくないのですね。

「ナガイチ」
で、自分は近位側 proximal side
遠位側 distal side
を基本使うようにしています。
覚え方は簡単です。
今考えている脳から近い大腸が近位側
脳から遠い大腸が遠位側です。
いかがでしょうか?

「たかはし のり」
なるほどそんな経緯があったのですね。
「脳から」で覚えます!

「Ken Takabayashi」
上部内視鏡はそのままproximal、distal
のイメージが湧きますが、
下部内視鏡は逆行性に観察しているので
病変部位のdistalに点墨した
といわれると混乱しますね‥
表現って難しい‥‥
(´θ`llll

「ナガイチ」
「たかはし のり」さんも
同じことを言ってました。
内視鏡する側からすると確かに、
肛門に近いほうが近位ですね。
医療では患者さんを主体に考えます。
CTのアキシャル像も下から見ていますよね。
下から見上げた画像になっているわけですね
左右や近位・遠位は
患者さん主体にとらえるといいですよ〜



PubMedから、今日のつぶやき − 166 −

Belderbos TD, et al. Risk of post-colonoscopy colorectal cancer due to incomplete adenoma resection: A nationwide, population-based cohort study. United European Gastroenterol J 2017;5:440-447.



ラインコミュニティでは「つぶやき」の
思わぬとところで、盛り上がりました!

確かに内視鏡する側からすると、近位と遠位は逆ですね〜
見る角度が変わると、景色が変わる。

広い視野を持って、柔軟な考え方を持っていきたいと感じた次第です。

それでは、Post-colonoscopy colorectal cancer
大腸内視鏡検査実施後の大腸癌(PCCRC)
の最新文献のご紹介です。

今日はDiscussionをかいつまんでいきますね。

近年のエビデンスの集積により、PCCRCの多くは
悪性度が高い急速に成長する腫瘍が原因なのではなく、
検査の見落としあるいは不完全切除が原因と判明してきた。

過去の3つの研究報告から
PCCRC全体の頻度は1.7-2.9/1000人/年
不完全切除に起因するPCCRCの頻度は0.7-1.5/1000人/年

不完全切除に起因するPCCRCはPCCRC全体の
31-50%にものぼる。
これらの報告は、われわれの報告と同等である。

かつてのPCCRCに関する研究報告からは
大腸近位側
〜論文445ページ、右段落の最初に登場しますが
Proximal locationと記載されています。
本人の頭から近い、盲腸、上行結腸、横行結腸右半
あたりまでを指しますよ。昨日の話題ですね〜
はPCCRCが生じやすいハイリスク因子だとされてきた。

しかし、今回の研究では、多い傾向はあるものの
統計学的な有意差は見られなかった。

このあたりは、さらに今後の検討が必要そうですね。

今回の研究の強みは、
1.腺腫の不完全切除はPCCRCの明らかなリスク要因だ
と初めて証明したこと

2.地域住民をベースにした研究であること。
セレクションバイアスが少なくなりますね。
さらに、国(オランダ)全体をカバーしたデータソースを
活用したことも強みです。

さて、つぶやき恒例のリミテーション(研究の限界)
を見ていきましょう。

最大のリミテーションは以前解説してしまいましたが、
内視鏡切除した大腸区分と同じ部位のPCCRC
を不完全切除に起因するPCCRCを定義していること。
なぜなら、不完全切除ではなく、同じ大腸区分の見逃された病変
であった可能性も否定できないですよね。

大腸内視鏡検査では、引き抜き時に主に観察してきますので、
例えば病変を切除し、そのサイズが大きい場合、
回収ネット、バスケット型把持鉗子、五脚鉗子などで
病変を回収します。
すると切除部位の遠位側の観察が十分でないことも少なくなく、
同じ腸管区分の遠位側に病変があっても見落とすことはありえるわけです。

このあたりがこの研究の限界になりますね。

この論文の紹介はこのあたりにしておきます。

次回は日本からのPCCRCに関する研究報告をご紹介したいと思います。

それでは、また。



原文
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28507757


ご注意)必ずしも論文の内容をすべて網羅している情報ではございません。詳細にご興味の方は原文をご確認ください。つぶやきは正確な情報発信を心がけますが、その内容を保証するものではないことをどうぞご了承ください。



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プロフィール
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大腸の専門家 ナガイチ
大腸を専門に外科、内視鏡、画像診断のキャリアがあります。               経歴のご紹介:               1996年 国立医学部医学科卒業。       1996〜2007年 消化器外科、内視鏡医として従事。                    2007〜2011年 ハーバード大学 医学部 放射線科、マサチューセッツ総合病院に留学。 2009年〜国内のナショナルセンターに外来研究員として併任。               2011年 帰国し内視鏡医として従事。     2015年〜国内のナショナルセンターに常勤勤務。 2019年〜某国公立大学医学部医学科の特任教授として働いています。                  資格: 外科認定医・認定登録医、消化器内視鏡認定医・専門医・指導医、消化器病専門医、H. pylori(ピロリ菌)感染症認定医、消化器がん検診認定医、胃腸科専門医・指導医、アメリカ消化器内視鏡学会(American Society for Gastrointestinal Endoscopy) 国際会員、アメリカ消化器病学会(American College of Gastroenterology) 国際会員                    どうぞよろしくお願いいたします。              ご注意)個人的な病状に関するご相談、診療に準じるご相談にはお答えできませんので、何卒、ご容赦ください。
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