社長から直接スカウトを受けて入社を決めた彼女だったが、
実際はあまりに仕事ができない上、先に入社している年下の同僚の指摘は一切聞き入れず、
ほとほと困り果てていた。
前職の時、業務上では直接関わりがなかった、と☆常識摩擦 その@☆で記載したが、
実はあたしの仕事の一部を彼女に引き継いで、あたしは別担当に変わっていたのだ。
とは言え、その仕事は彼女の部署の先輩たちがみんなできる仕事なので、
あたしはマニュアルだけ渡して、後は先輩にお願いしていた。
専門職だから、基礎が分からなければあたしが渡した仕事はこなせない。
そのため、先輩が指導していたはずなのだが……彼女は一体在籍中何をしていたのか?
あたしは仕事中に、彼女の日本での職歴を延々と語られたことがあったのだが、
前職を離職した後はずっと転職を繰り返していたようだ。
会社が悪いという離職理由を並べていたが、どうにも考えにくいので、
恐らくどの会社でも使えなくて切られたのでは−−あたしの脳裏にそうよぎった。
それにしても、社長はこの職歴に疑問を持たなかったのか不思議に思ったが、
彼女は魔性な部分もあって、特に男性に取り入るのは得意だと過去に語っていたし、
きっと社長もうまいこと騙されたのかもしれない……
あたしと同僚も上司に相談して、今後の彼女への仕事の割り振りを考えていたものの、
上司ですら頭を抱えるような状態になっていった。
上司曰く「頭が悪い子ではないが、どんくさい」と、まさにその通り。
どうも同時にいくつもの仕事を処理ができず、次々入る仕事に散漫になり、ミスする。
これでは、今後この会社で仕事していく上では致命的なのだが、
彼女はあくまでも『自分は悪くない』というスタンスを貫く。
彼女の中では、話かけてくる相手が原因でミスをするというのだ。
これでは上司から指摘しても、まったく意味がない。
ある土曜日、臨時で出勤することになったのだが、
土曜日は近所のカレー店に社員分の昼食を注文して、届けてもらうことになっている。
この注文係を彼女が社長から指示されていた。
みんなが各々オーダー表に記入し、カレー店にFAXして、確認の電話を入れるだけ。
それほど難儀な作業ではないのだが、彼女にとっては難関だったのだ。
20人分のカレー注文に、なぜか1時間以上もかかっており、
社長から「何をしているんだ!」とご指摘が入ってしまった。
あたしがすぐに受付事務の主任にフォローしてもらうように根回しして、
彼女には主任の指示に従うように話をして、何とか無事オーダーできた。
この件で、社長の頭には彼女は使えないと刻み込まれてしまったのだ。
後日あたしが別館で一人、企画書用の写真撮影をしていると、そこに社長が現れた。
社長はあたしに彼女の日頃の業務内容について探りを入れてきて、
今後について、彼女と話をしたいと言っていた。
当たり障りのない話をしただけだが、残念ながら社長の相槌や質問には、
前向きな内容は皆無だったから、社長が彼女の本採用を見送ることはすぐに察知した。
優遇されていると勘違いしている彼女にとっては、雇用打ち切りは寝耳に水だろうが、
ウチの会社でこの結果は決して珍しくはない。
特に中途採用者へは「即戦力」が必須条件なだけに、何人も切られているのだ。
彼女にはこの必須条件が備わっていなかった。
面接時に必死に自分をアピールしすぎて、結果自滅していった。
これはお国的な文化背景が因果しているかもしれないのだが、
あたしが知る限り、中国の方の多くは自分を過大評価しがちなのだ。
もちろん過大評価ではなく、実力を伴った方も多く存在するのだけれど、
彼女は残念ながら、この会社では実力は発揮できないようだった。
そのCへ続きます→→
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