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2024年03月27日

☆壁☆

あたしは今、台湾で仕事している。
運よく日本での経験が生かせる仕事に就け、
しかも客先はほぼ日本企業なのでその点でも仕事しやすい。
とはいえ、あたしは中国語レベルが高いわけではないので、
現地企業での業務がしんどいと感じることも少なくない。

そこでふと、日本で仕事していた時に一緒に働いていた
中国人女性のことを思い出した。

何度かこのブログでも彼女のことを書いたけど、
一生忘れることはないほど強烈な人物だった。
彼女はコミュ力が高く社交的で、日本語レベルも高いと言える。
たまに会話がかみ合わないなと思うことはあったものの、
特に気にならない程度だったのであまり深刻に考えなかった。

入社後の彼女は残念ながら仕事が遅く、びっくりするようなミスが多かった。
彼女は同業他社からの転職で会社も即戦力と期待しての採用だったけど、
実際、彼女にはあたしの仕事の半分も任せられなかった…

あたしも上司も単純に彼女の能力不足が原因だと思い、
彼女への仕事量をかなりコントロールして様子を見ることにした。
採用した以上何とか育てたいと考えている上司は時間を作り
彼女と面談して『何ができるか』をヒアリングしたようだけど、
彼女はひたすら『やりたい』ことを話し意思の疎通が困難だと判断したらしい。
結局社長から退職を促すような話を持ち出され、
『メンツをつぶされた』と上司に怒りのメールを残し去っていた。

今、自分が台湾企業で外国人として仕事する立場になり、
自分と元同僚の中国人女性を重ね合わせて考えるようになると、
彼女がなぜあんなに『仕事ができなかったか』が見えてきた。

あたしも彼女ほどではないけど現地語でのコミュニケーションは問題ない。
でも、あたしは業界経験者で同僚も日本語がわかるので、
本当ににっちもさっちも行かないときは日本語で質問できる。
だから、慣れない海外の会社でも問題なく仕事をこなすことができている。
一方、元同僚の中国人女性は母国語が一切通じない環境で誰にも頼れなかった。

今現在、中国語の環境下でうなりながら仕事してるあたしは、
『彼女、本当はあたしたちが指示している仕事内容をほとんど理解しておらず、
でもわからないこともうまく言い出せず、自分で間違った解釈をしていたのでは?』
と突然元同僚が仕事できない理由を思いついてしまった。

あたしはこれまでの経験から専門知識がそれなりにあって、
最悪言葉で説明できなくても図に描くなどの方法で工場へ指示することができる。
転職組とはいえ、業界経験が浅く専門知識がない元同僚は
あたしたちが普通に話している仕事関連の言葉がそもそもわかっていなかった…
ということをあたしはようやく気付いたのだった。

日本語が堪能で同業他社からの転職者、という先入観から、
あたしたちが指示する内容を彼女は『理解している』と認識していた。
ところが、あたしや同僚が数分で処理できてしまうような簡単な仕事も、
彼女は何度も修正が必要で数時間の時間がかかってしまっていた。
それが続いたことで『仕事ができない人』と決めつけてしまっていて、
あたしたちも彼女に対して配慮が足りなかったのも事実だった。

あたしはもともとの性格から感情的に怒るようなことはせず、
彼女に指摘するときは小声の低いトーンで話すようにしていた。
でもあたしより若い男性同僚はその点どうしても怒りの感情を抑えきれず、
割とキツイ物言いで彼女に指摘していたので、彼女のプライドはズタズタだっただろう。
中華圏の人はメンツが何より大切と考える人が多いので、
時に日本の考え方に合わせられないこともあると思う。
実際、台湾に住んでからそういう違いはたくさん見てきた。

留学のため単身中国から日本へきて、親へ仕送りするために学業とバイトを両立、
短大卒業後はスカウトされた会社へ就職し、その会社で知り合った日本人と結婚。
その後仕事を転々としながら、無職の旦那とその母のために生活を支えていた。
こういう背景については彼女に対して頭が下がるものの、
プライドが邪魔して年下の方に教えを乞うことができない性格については
この先日本で生きるのであれば改善すべき重欠点だな…と思っていた。
もちろんこの点については彼女と何度も話したことがあったが、
退職するまで彼女はこの点だけは納得できなかったようだった…

今、彼女がどこで何をしているかはわからないけど、
数年前に出産もされたということだから、
どうか幸せに過ごしていてほしいとは心から思う。

2023年05月16日

☆兄弟の中国初上陸記録A☆

せっかく時間かけて西安まで来たので、
チェックイン後はすぐホテル近辺の散策に出た。
国内外の観光客の多さに圧倒されながら、
地球の歩き方片手に何の史跡か確認しながら、ゆっくり歩いて回った。
ホテルは真ん前に鐘楼のある西安中心部だったので、
徒歩圏内でもいろんな史跡があって楽しめた。
また地下鉄の駅も近く、とても便利な立地だけど、
ホテルスタッフは日本語ができない。英語か中国語での対応だった。

この日はフライト時間の関係でまともな食事が出来なかったから、
初中国の兄弟のためにいいモノを食べさせようと、
有名な餃子店『コ發長』で少し早めの夕食を取ることにした。
あたしは過去ツアー旅行で来たことがあるので、
清潔でおいしい店だということも知っていた。
ウサギやアヒル、カエル肉の餃子が食べられると説明すると
食に対する好奇心が旺盛な兄弟は「ここで!」と即決だった。

店内に案内されると、日本語のができる若い女性店員が担当についてくれた。
兄弟がメニューについていろいろ質問すると、店員さんは丁寧に答えてくれる。
メニューの日本語は間違いだらけで意味不明だったけど、
彼女のお陰で兄弟も安心してオーダーし、食事を楽しむことができた。
このお店の特徴は、アヒル肉の餃子は鳥型に作られ、
カエル肉はカエルの形、ウサギ肉はウサギの形…とわかりやすいこと。
視覚と味覚、両方で楽しめるからあたしも好きになった。
ちなみにアヒルは少し臭みを感じたけど、カエルとウサギは食べやすい。
鶏肉だって言われたらそのまま信じてしまうほど淡泊だった。

そろそろ食事も終盤になってきたという頃に、
店員がいろんな名産品を持って再度あたしたちのテーブルに。
それらの名産品の対面販売を始めた。
前回の来店時もこの土産物販売オプションはあったけど、
時間の関係で食事中に始まったため、あたしはあまり聞いてなかった。
今回はテーブルにはあたしと兄弟しかいないし、
食事もほぼ終わって休憩しているタイミングだから、聞くしかない。

ひと通りセールストークを聞き、試食を終えた後、
あたしは店員さんにちょっと意地の悪い質問を投げかけてみた。
これが売れたらあなたは幾らか(マージンが)もらえるの?と。
彼女は「はい。私たちはこれが売れないとお給料もらえない」と答えた。
あたしは腹の中で『決まり文句出た!』と思いながら、
大変なアルバイトだねと相打ちを打った。
彼女は近くの大学の日本語専攻の学生さんで、
日本人の接客しながら日本語の練習をしているとは既に聞いていた。
当然給仕分のバイト代は支払われるだろうが、恐らく時給は高くない。
だからこうして物販もして多く稼ごうという魂胆なのは聞くまでもない。
わざわざ聞いたのは、彼女がどう答えてくれるか気になったからだった。

彼女は日本語も非常に流暢だったし、サービス態度も良かったので
あたしは気に入ったものを何点か購入することにした。
兄弟からは「気でも触れたか?」って後から心配されたけど、
苦学生を助けるのは大人の義務だとか言って、適当に流した。

この手の土産物セールスは外国では珍しくない。
もちろんあたしも毎回購入するわけじゃないし、品物と相手を見て決める。
相手を見極めるために、あたしは「ちょっと考えさせて」と言う。
その時に笑顔で引き下がるか、もしくはそれでも根性見せて売り付けてくるか、
或いはあからさまに不機嫌になるか、その人の本質がそこでわかる。
この店員さんは笑顔で引き下がったし、その後もお茶が足りてるか、
食事の量や味は問題なかったかなどの気配りがあったので、
あたしは彼女に少し協力しようという気持ちになった。
彼女の本音はわからない、でも真面目に仕事する人間であることは間違いない。

2023年05月10日

☆旅行シッター☆

台湾では社員旅行に家族同伴って普通らしく、
みんなあたしには子どもを連れておいで、と毎回言ってくれる。
でも幼児連れではみんなに気を使わせてしまうので、
これまで社員旅行に子どもを連れて行ったことはない。
実は過去の経験で、他人の子どもの面倒を見ることが
どれだけ気を使うか、あたしはわかっていた。

まだ日本で働いていた数年前、
社員旅行に社長夫婦が孫を連れて参加したことがあった。
自分たちで面倒を見るから、と連れてきたにもかかわらず、
旅行中はほぼ孫放置で自分たち二人はしっかり旅行を堪能していた…

社長夫婦がお孫さんの面倒を一切見ないから、
見かねて若手や女性社員が出来るだけ気にかけていた。
何で旅行中に子守しなきゃならんの?!とは思ったけど、
連れてこられたお孫さんには罪はない。

あたし含む何人かが子守に不満を抱えている中、
一人の若手男性同僚だけはずっとお孫さんを面倒見ていた。
子ども嫌いじゃないんで〜とトイレや食事もつきっきり、
社長はすっかり気を良くして「子育ての練習だ」なんて言ってた。
社員旅行中なんだから、冗談でもそんなこと言うべきじゃない。
この同僚には後日社長から何かしら謝礼があったと信じたい。

この経験から、どんなに同僚がウエルカム!でも遠慮している。
せっかくならあたしも同僚と思いっきり旅行を楽しみたいし、
いくら自分で面倒見ていても、同僚に迷惑かけるのは目に見えている。
子連れがいかに大変かは現在進行形で奮闘しているからこそわかる。
自分の子だからガマンできるのであって、
よその子がワーワー騒ぐのはあまりいい気分ではない。

もう少し大きくなるのを待って、その時は甘えさせてもらおう。

2023年03月31日

☆抗日教育とあたし☆

あたしは結婚前には年に数回上海へ渡航していた。
仲良くしていた中国人の友人を訪ねるため、
そしてその友人の友人のビジネスを手伝うためだった。

当時は尖閣諸島をめぐって日中関係は最悪。
社内でも中国の反日感情が落ち着くまでは
中国出張を控えるよう指示が出たほどだった。
そんな中でも、あたしはプライベートで上海へ渡っていた。

あたしが身の危険を顧みず渡航したのは、
友人の子どもに粉ミルクを届けるためだった。
友人は非常に神経質だったため、
中国国内で販売されている日本やその他外国製の
粉ミルクは中身がすり替えられている可能性があるから信用できない、
中国ドメスティックブランドなんて論外、という徹底ぶりだった。

こうして何度も中国へ渡っているうちに、
あたしは彼女の家族や友人たちとも仲良くなっていった。
反日教育を受けているはずの彼らだけど、
友人のお陰であたしには非常に良くしてくれた。
日本政府は嫌いだけど、オマエはいい奴だな。
なんて面と向かって何度も言われた(笑)
あたしも同じで、中国政府や教育方針にはいい印象はないけど、
彼らはとても付き合いやすくて、毎回会うのが楽しみだった。

あたしは自分で中国を訪れ、自分の目でどんな場所かを見てきた。
中国は汚い、中国人はマナーが悪い、も自分で経験した。
同時に中国人の温かい面もたくさん発見し、
中国はみんなが言うほど悪くないとあたしは思っている。

日本人は15日以内ならビザなしで中国に滞在できるのに対し、
中国人はビザが無ければ日本へ来ることができない。
今でも観光ビザが必要だけど、当時はもっと面倒な手続きが必要で、
そのため片寄った情報下での日本しか知らなかった。
友人は日本で3年間仕事した経験があるので、
彼女がいかに日本がいいところかをみんなに語っていたけど、
先入観はなかなか拭えないもの。

中国ではいまだに日中戦争時代を舞台にしたドラマがバンバン報道され、
それをあたしがいてもお構い無しで見ていた。
一度だけ友人の義兄に「ごめんね、気分良くないよね?」と聞かれたけど、
「中国人の精神を知るには必要な番組ですよ」と言うと安心していた。
彼らはあたしがドラマの中の日本鬼子とは全く違うと知ってもらうには、
直接彼らに比較してもらうのが手っ取り早いと思ったからね。

正直歴史の話を出されるとあたしは困った。
あたしは日本で日本に都合よく改ざんされた歴史を学んだだろうし、
彼らは彼らで中国に都合よく改ざんされた歴史を学んできた。
ただ、中国より日本の方が情報統制が少ないので、
日本で学ぶ歴史の信憑性の方が若干高いかなとは思っている。
あたしは何度か歴史的内容について彼らと話したことがあるけど、
日本と中国両方の食い違いを知ったからこそ
「自分で見たわけじゃないから、どっちが正しいとは無責任に言えない」
と正直に述べると、彼らは一瞬怯んだのち、話題を変えてきた。

友人の旦那さんはこの手の議論をよくあたしに振ってきた。
その度にあたしは出来るだけ中立を守ろうと意見を述べ、
友人が最終「私たちは過去ではなく、今を生きてるんだから」と取り持つ。
全くその通りで、過去の感情に捉われていては今も未来も変わらない。
日本は侵略した側だから、近隣諸国に比べて歴史認識は低いだろうし、
縄文や弥生を長時間かけて教える間抜けな歴史教育をしているのも事実。
こういう外国の友人との交流をきっかけに、
あたしは日本と近隣諸国の近代史を今一度勉強することにしている。

今、あたしは日本を離れて台湾人配偶者と台湾で生活しているけど、
この時の中国人友人旦那さんとの議論が非常に役に立っている。
ここに住む以上、舐められないようにそれなりに台湾を知る必要があった。
台湾人はどちらかと言えば親日だなんて言われているものの、
中国同様の反日の歴史を教え込まれた世代が存在している。
ただ、日本統治時代とその後を知る大統領によって歴史教育が見直され、
現在台湾の歴史の教科書では史実に則った記載がされているそう。
これは多くの台湾好き日本人が知らない事実だと思うけど、
呑気に親日に甘んじているとひどい目に合うよ、とだけ忠告しておきたい。

いつかタイムマシンでも出来たら、
自分の目で正しい歴史を見てみたいななんて毎日考えてマス。

2023年03月13日

☆横領同僚☆

過去勤務したとある零細企業では、いろんな経験をした。
昼ドラのような泥沼社内不倫、同僚が地団駄踏んで大暴れなど…
そんな中でもずば抜けて強烈なのは『同僚の横領』だった。

横領していたのは、当時40代に突入したばかりの先輩同僚。
横領の手口は身バレなどの危険があるため割愛するけど、
正直「この人ならやりそうだな…」と思ったことは覚えている。

横領は言うまでもなく立派な犯罪なんだから、
発覚した時点で速やかに会社が警察へ被害届を出し、
法にのっとって厳重に処理すべきこと。
でもこの先輩を新卒時から育てて来たことや、
家庭がありお子さんがいることを考慮した社長の温情で
解雇と横領額の全額返金だけで済まされた。

横領が発覚する前から、この先輩の動きは不可解なことが多かった。
一番わかりやすく変化があったのは通勤のクルマ。
社員駐車場にある時から見慣れない欧州高級車が停められるようになり、
『あの高級車って○○さんのらしい』など陰で話題になった。
先輩と親しい上司が高級車について突っ込んでいたけど、
奥さんの親に格安で譲ってもらった、と何とも胡散臭い理由。
新品同様の状態のものを、誰が格安で譲るというのか…

クルマ買い替えの件はみんなが怪しく感じていたから、
社長から横領の話をされたあたしたち社員は誰もが合点がいった。
仕事で成果を出さない人間にはホントに厳しい会社だったから、
先輩の働きっぷりがとても上層部から評価されるものじゃないことは
あたしたち後輩社員の目から見ても明らかだった。
先輩の高級車購入が全社員に知れ渡った頃、
チームの打ち合わせ中にこの先輩の話になり、上司が神妙な顔つきで
「アイツ、何か悪いことやってんじゃねーの」と言っていた。
社長が急遽開いた会議で先輩の横領を説明している中、
あたしはこの上司の言葉を思い出し、
悪いことはできないな…としみじみ考えてしまった。

横領の動機を『奥様からのプレッシャー』だと供述した先輩。
この理由がホントかどうかはわからないけど、
横領の責任を奥様に転化した気がしてしまい、
先輩への嫌悪感が強くなった瞬間だった。

この会社は、能力があれば年齢部署関わらず公平に評価された。
先輩の奥様が所得に満足できなかったのは、先輩の努力不足であって、
自身で新規販路獲得したなどの報告は一切聞いたことがなかった。
先輩よりベテランの営業社員さんたちは既存の客先を持つ一方で、
それぞれが自分で新規先開拓に精力的に動いていたというのに……
よく『奥様のプレッシャー』なんて恥かしくもなく言えたものだ。

先輩がその後何しているかは知らないけど、
半年ぐらい経過したころFACEBOOKで友達申請が届いた。
一応承認したものの、あたしがFACEBOOKを更新していないから
その後は特に音沙汰もない。
どうかお子さまのことを最優先に、
真面目に地道に仕事を頑張っていて欲しいと思う。


2022年09月16日

☆洗脳の経過☆

生活圏内に、日本の創価学会支部が出来ていた。
現地の学会員向けに開設されたのだろうけど、
まさか海外で創価学会を見るとは思わなかった。

親戚が学会員だったけど、勧誘された経験はない。
だからあまり意識することはなかったけど、
大学時代のある出来事から、創価学会ヤバい?という疑念が。
それは同じゼミだったある女子学生の奇妙な行動によって、
創価学会、実は危ないところ?と思うようになった。

その女子学生は名字がかなり特徴的なので、ここではSさんとする。
Sさんとあたしはゼミが同じになるまで互いに存在を知らなかったが、
他のゼミ生との関係から、少しずつ話をするようになった。
Sさんに対しては、清楚で可愛らしい子という印象だったが、
他のゼミ生が言うには「そのうち本性が分かるよww」だった。
ゼミは週1回1コマのみ、しかも彼女は度々欠席していたので、
あたしは彼女の本性を知らないまま、ゼミコンへ参加。
そこでSさんは見事に清楚の印象を覆してくれた。
−−とんでもない酒乱だった。
みんなで彼女を介抱し、ある男子学生がSさんを送り届けたそうだが、
後日その男子学生との関係が明らかになり、
Sさんが欠席気味だった理由が分かった気がした。

その後のゼミでは相変わらずの清楚キャラだったSさんだけど、
ある時彼女がとうとう奇行を曝すことになった。
まもなく講義時間終了という頃、Sさんが急に立ち上がり、
「教授、ちょっと皆さんに話したいことがあるのですが……」
と教授に許可を取り、教壇に立って話し始めた。

「先日友人に誘われ、創価学会の会合に参加したんです」
この一言目で、多分Sさん以外のゼミ生はみんな????となったはず。
そのままSさんは創価学会での会合の様子をうっとりしながら熱弁し、
「学会員の皆さん本当に幸せそうで」「学会員の方はみんな親切で」を
その演説の中で繰り返し強調していた。
そんなSさんを見て、あたしは『洗脳されるってこういうことか』と知った。
別にSさんが学会員になろうがあたしには関係はないが、
創価学会の良さを無関係なゼミ生の前でわざわざ語るのは、普通の行動ではない。
とりあえずみんな静かに彼女の不気味な演説を聞き流した。
彼女がスッキリした表情で話し終えると、教授は彼女に尋ねた。
「あなた、これからも会合には参加しますか?」
彼女は「まだ迷っています」とだけ答え、そのまま講義は修了した。

あたしたちが帰り支度をしていると、Sさんが突然大声で泣き始めた。
同じゼミ生の中でSさんと唯一親交のあったEちゃんが、彼女をなだめに入った。
Sさんは創価学会演説後のみんなの視線が怖かったと言って泣いていた。
そりゃそうよ……と思ったが、さすがにそれは言えない。
あたしたちも困惑しているEちゃんの助っ人に入り、
みんなびっくりしただけだよ、誰も何も思ってないから大丈夫、
なんて根拠もない何もない口先だけの言葉をSさんに掛け続けた。
それほど接点のなかったあたしたちがSさんをなぐさめたことで、
Sさんは安堵して泣き止み、Eちゃんに支えられながら教室を後にした。
その場に残されたあたしたちは、アレは疲れる……とEちゃんに同情。
Sさんの情緒不安定さに恐怖を感じたが、それ以降Sさんの話は出なかった。

創価学会演説後からしばらくして、その日のゼミはSさんの卒論研究発表。
夏休み前、Sさんは確か中東の情勢について研究していると発表していたが、
その日の発表テーマは創価学会に変更されていた。
冷静に創価学会の概要を語っていたと思うが、あまり記憶していない。
また創価学会かよ!!と心の中で突っ込んだことだけ、覚えている。
Sさんが発表を終えると、教授が間髪入れずきつい一言。
「卒論テーマを中東に戻しなさい。創価学会はあなたに相応しくない」
Sさんが気まずそうな表情を浮かべ、何か言いたげにしていたが、教授は続けて
「それからあなたは学会員にならない方がいいですよ。
取り返しがつかなくなりますから」
と他のゼミ生たちの前でズバッと言い放った。
教授はみんなの心境をわかって、意図的にSさんをけん制したはずだけど、
情緒不安定なSさんは「教授に創価学会を否定された!」とショックだったのだろう。
それ以降、Sさんがゼミに姿を現すことはなかった−−

まもなく大学3年が終るという頃、EちゃんがSさんのその後をあたしたちに教えてくれた。
Sさんは原因はわからないけど、もともと情緒不安定だったことは間違いなくて、
卒論発表後すぐに休学を申し出て、一時的に地元に戻って療養することにしたそうだ。
あのゲリラ演説からの卒論発表で、創価学会への思い入れはすごかったから、
家族のもとで一旦冷静に整理するのがベストだろうなとは思った。
結局あたしたちが卒業するまで、Sさんを大学で見かけることはなかった。

Sさんのことはよくわからないままだったけど、
Eちゃんの話を聞く限り、精神的に脆いせいかどうも依存体質だったらしい。
それが彼氏であったり友人であったり、宗教であったり……
恐らく教授はそれを見越して、創価学会への加入を止めたのだと思う。
宗教に依存する人は、その活動に没頭しすぎて普通の生活が送れないという。
依存体質な人にとって、それは宗教に限ったことではないと思うが、
Sさんの場合はたまたまそれが創価学会だった。
間違いなく毎日会合に通い、どんどん深みにはまっていくのが容易に想像できた。

人は見かけだけでは判断できない−−
Sさんを通じてあたしはいろいろ考えさせられた。

2022年03月28日

☆出会い系サイトA☆

☆出会い系サイト@☆からの続きです+++

あたしには出会い系利用の経験が無かったから、どうアドバイスすべきか迷ったが、
相手がはっきりさせない以上、もう見切りをつけたほうがいいと思った。
ダラダラ曖昧な関係を続けて、もし妊娠でもしてしまったら?
万が一の時、苦しみ悲しむのは男性ではなく女性であるMなのだから、
今の中途半端な状態がどれだけハイリスクか、よく考えるべきだとあたしは話した。
恋人にしてくれないなら会わないと言いながらも、ずっと会い続けていることは、
M自身もはっきりした答えが出せていない証拠。
もしこの男性と関係を断ってしまったら、元の色気のない生活に戻ってしまうことが、
Mにとってはとても怖かったのかもしれない。

でも、出会いのチャンスへの不安は、簡単に解決できるとあたしは思っていた。
Mには男友達がいなかったのかもしれないが、女友達はいる。
だったら女友達に素直に心の内を話して、真面目で信頼できる男性を紹介してもらえばいい。
別に紹介を依頼することは、恥かしいことでも何でもないし、
なにより出会い系サイトを利用するより、はるかに安全。

Mは性格的にはおとなしいが、外見は決して地味なタイプではなかった。
もし外見だけでMを判断するなら、男性ウケは絶対にいいと思ったので、
誰かの紹介であれば絶対にうまくいく!とあたしは自信を持っていた。
いつまでも結論を出さない男に時間を割くのはもったいない。
関係をうやむやにさせたい理由はこの男性にしかわからないのだから、
いつまでも悩んで、いつまでも話し合いを求めていても、多分現状維持のまま。
それなら本格的に傷付く前に、自分で動くしかない。
あたしはMに早く良い相手を見つけてほしい、と必死で話をした。

しばらくして、Mは友達から男性を紹介してもらうことになったそうだ。
その友達には、あたしに話してくれていたように詳細を語ったらしく、
案の定あたしと同じように「そんな男はダメ!」と新しい男性紹介に至ったそうだ。
あたしが読んだ通り、紹介された男性はすぐにMを気に入って、
数回遊びに行った後に正式に恋人関係になったことを報告された。
わざわざメールで報告してくれたことは、Mはとてもうれしかったのだろう。
もちろんあたしもうれしかった。

新しい男性との紹介が決まった時点で、Mは出会い系の男性との関係を終わらせるため、
「もう会わない」とお別れを告げたそうだ。
しかし、出会い系の男性からはMに「彼女になってほしかった」などと、
しつこく未練がましい連絡が送られてくるようになり、
新しく彼氏ができたことを告げると、ようやくあきらめたのか連絡は途絶えたらしい。
第三者の意見としては、本当にMを彼女にしたかったのではなく、
都合よく遊べる相手がいなくなることが惜しかったとしか思えない。
だったらなぜさっさと関係をはっきりさせなかったの!?と言いたくて仕方がなかった。

半年ほどツラい時間を過ごしたMだったが、最終彼女をとても大切にしてくれる彼氏ができた。
若くしてイヤな経験をしておいたことで、その後変な男に振り回されることは無いと思うが、
その後あたしは自己都合でバイトをやめてしまったので、自然とMとの連絡はなくなった。
あたしがバイトをやめた後、Mもストレスから精神面を病んで仕事を辞めたと聞いた。
そこで連絡は途絶えてしまったが、ストレスは仕事上のことだと聞いていたし、
彼氏とは順調で、彼が支えてくれているという話を少しだけ聞いていた。
控えめで優しい性格のMだから、今はきっと結婚して良いママになっているとあたしは思っている。


〈完〉

☆出会い系サイト@☆

今回はちょっとアダルトなお話しでも+++

スマホが生活必需品となった今、いろんなアプリが開発されていて、
そんな中「マッチングアプリ」なんてものも広く利用されている。
男女問わず利用者年齢は幅広く、『安全』を売り文句にしているもののあるようだが、
どうしても「出会い系サイト」のイメージが根強く残っているあたしは、
その安全への信憑性を疑わずにはいられない。
もちろんこのアプリでの出会いがきっかけで幸せになったカップルも多いだろうし、
それは出会い系サイトも同じで、利用者がすべて悪い人というわけでもない。
それは理解できるのだけど、どうしても自分が積極的に利用したいとは思えないし、
たとえ出会いに悩む友人がいたとしても、アプリ使用は自分からは推奨しない。

あたしが高校を卒業する頃から、出会い系サイトが流行り始めた。
運良くあたしは出会いに関しては恵まれていたのか、
出会い系サイトなどに頼ることなく恋人を持つことができていた。
でも、就職後はプライベートでの出会いの機会は極端に減るのは事実で、
そういう時には、やっぱり出会い系サイトは便利かもしれない。

あたしが大学生の頃、バイト先で一緒に働いていた女の子Mは
『出会い系サイト』で知り合った男性とよく遊んでいると話してくれた。
Mはフルタイム勤務だったので、ほぼ毎日仕事と家の往復で、
異性との出会いの機会が全く無い生活に、怖くなったそうだ。
そこで思い切って出会い系サイトを利用することを決めた、と経緯を話してくれた。
陽キャではない、どちらかと言えばおとなしいタイプの子なので、
彼女が出会い系サイトを利用していたことに、あたしは心底驚いた。
出会いがないけど彼氏は欲しくて……と、Mは恥ずかしそうに話してくれた。
休憩時間が同じになると、その男性との話をよく聞いていたが、
Mと男性は恋人関係ではなく、大人のお友達という関係だった。
Mが話していた「遊んでいる」というのは、いわゆる大人の遊びのことで、
あたしは話を聞きながら、やっぱり……と思わずにはいられなかった。

互いに遊びと割り切って、その関係を続けているのであれば問題はないのだが、
彼女は相手の男性との恋人関係への発展を希望していた。
この時点で関係はほぼ破綻していると、第三者的には簡単に察しがつく。
すでに大人の遊びを済ませた後からの関係発展は容易でない、とMもわかってはいたが、
それでも粘り強く彼女は、自分の気持ちを毎回男性にぶつけていたという。
もし遊びであればもう会うのはやめたい!と何度も何度も訴えていたが、
その度に男性が話を濁して、結論を先延ばしする−−を繰り返されていたという。
残念ながら出会い系って結局大人の関係目的だから、とはさすがに言えなかったが、
そういう風に利用されることが多いということが、これではっきり分かった。

Mはあたしのことを信頼してくれていたのか、割と赤裸々な話をしてくれて、
時には遊びの内容までリアルに話してくれた。
会えば毎回遊びを迫るそうだが、そのまま遊び場に直行!というわけではなく、
一応デート的な時間を過ごしてから、最終イベントとして遊びを求めていたそうだ。
Mの大胆な話を聞く限り、この男性は意外にも彼女に対しては常識的に接していたようで、
自分本位の無茶苦茶な要求をしていなかったことには安心した。
欲求まる出しのとんでもない極悪なヤツも多いと聞いていたが、
少なくともMの相手はその類の男性ではなかった。

だからこそMもその男性に惹かれていき、惚れた弱みで身体を許してしまったのだろう。
日頃からマメに連絡も取り合っていたようだし、なぜ男性は恋人関係を拒否するのか、
あたしはその点とても引っ掛かるようになった。
Mと男性の関係は、恋人関係と何も変わらない。
自分の恋愛やほかの友人の恋愛と比較してみても、むしろ恋愛関係が成立している方が、
デート時間よりも大人の時間が圧倒的に多いのでは?と思ってしまった。
だから、Mが何故関係をはっきりさせてくれないのだろう……と悩む横で、
あたしも一緒に『なぜだろう』と考えるようになっていった。

Aへ続きます+++

2022年01月24日

☆夢を叶えた人B☆

しばらくして、あたしはこの漫画家と二人で遊ぶ機会をようやく作ったので、
タメの特権とばかりに「さすがに仕事中のナンパはダメだって〜」など苦言も呈してみた。
そうすると、この人は『〇ちゃんはみんなと違うから話すけど……』と前置きし、
自分のこれまでの半生を独演会のように話し始めた。
いじめの経験、それによって精神疾患になり、何年も現在進行形で苦しんでいることなど。
何となくいじめられる経緯は日ごろの言動から簡単に予測できたのだが、
特に何か口をはさむことはせず、黙ってこの人の話を聞くことに徹した。

この人は、バイトできることが非常に楽しくてうれしいと語っていた。
学生時代に経験できなかった『みんなで仲良く』ができるから、だそうだ。
あたしは中学時代に、予期せぬ形ではあれいじめ加害者になったこともあるし、
そして同時にいじめ被害者でもあったが、少なくとも助けてくれる友人がいた。
彼には味方になってくれるはずの友人が徐々に自分と距離を取るようになり、
そして日ごとエスカレートしていくいじめに耐えられず、
登校拒否するしかなかったと語っていた。

学生時代の辛い経験で精神疾患に悩まされ、それでも夢に向かって漫画を描き続け、
結果としてプロ漫画家の仲間入りができたことは、尊敬しかない。
話を聞きながら、この人の「馴れ馴れしさ」や「異常な社交性」は、
このいじめが原因で、人との距離感が上手く調整できなくなったのかなと考察した。
もちろん他にもいろんなことが織り重なっているのは言うまでもないが、
彼なりにいろいろ自分の中で模索しているところだったのかもしれない。

みんなと仲良くしたい気持ちが暴走して、空回りしてしまっていることを、
彼は残念ながら気付いていなかった。
もしかしたら気付いていたかもしれないが、それを口に出すことは無かった。
いずれにしてもプロの漫画家と遊べる機会は今後無いだろうと思い、
その日は彼の相談に耳を傾けつつ、楽しい時間を過ごした。
あたしは彼の努力に敬意を示し、また同時に漫画家としての立場を称賛し、
絶対成功してほしいと願った。

その後あたしは大学を卒業し、彼も漫画の仕事が決まったとかでバイトを辞めた。
互いに忙しくなったため、自然と連絡を取ることはなくなって、関係は無くなった。
そのまま最近までずーっとこの人のことは忘れていたわけだけど……
それでも一時期は仲良くしていたので、成功していたことを知って嬉しい。
夢を掴めたのは才能だけではなく、陰の努力と苦労があったことは、計り知れないだろう。
そんな素晴らしい人と一瞬でも接点を持てたことは、ありがたいなと素直に思う。
海外在住のあたしは、今後この人に再会できる可能性はほぼ皆無だと思うが、
陰ながら今後の活躍を応援したいと思うし、機会があれば漫画も読んでみたい。

《完》

☆夢を叶えた人A☆

仕事中は一方的だが、休憩中には徐々にちゃんと会話が成立するようになっていった(笑)
話していくうちに家が近いことがわかり、遊ぼう!と誘われることが増えた。
仕事中でなければ迷惑ではなかったから、その誘いには一応乗っかったのだが、
それ以降、講義中に『いつ空いてる?』なんてメールがしょっちゅう送られてくるようになった。
あんな社交的なのに、他に友達いない人なのか?と違和感を持つようになった。

あたしは自分の違和感を確認するために、
仕事中にほかのスタッフとこの漫画家との距離感をチェックしてみた。
彼はあたしとある男性社員の2人にのみ、粘着傾向にあることがわかった。
あたしは年齢的なことと、多分漫画家さんにとっては『よき理解者』的立ち位置だったようだ。
もう一人の男性社員は『俺、カリスマ』とか言えてしまう人だったのだが、
漫画家さんのある問題行動に対し、その男性社員から本気なお叱りを受けたことで、
兄弟のような感情が生まれたようだった。
後に『あの人の真剣な叱責に感動した』と涙目で語っていたのが、印象に残っている。
それ以外のみんなは、思春期を通り過ぎた常識ある若者なので、仕事中は普通に接している。
休憩中も一緒に食事に行くものの、自分の話ばかりでみんなドン引きしてしまい、
みんなケータイいじるようになってしまったという、非常に芳しくない状況だった。
何かとみんなで飲み会することが多かったのだが、その時も異様なほど羽目を外し、
異常な悪ノリによって、更にみんなとの関係に溝をつくることになってしまった。

あたしはバイトが休みでも仲良しの子とはしょっちゅう食事に行っていたが、
その時にこの漫画家への不平不満を次々と吐き出していた。
仕事中接客してるかと思ったら、女の子ばかりに話しかけて関係ない話してる、とか、
連絡先交換していた、とか、その女の子と食事してるところに遭遇した、などなど止まらない(笑)
おお〜と思って聞いていたが、仕事中に連絡先交換はさすがに引いた。
社会人としてあり得ない行動のオンパレードだった。
いくら今後漫画家として生きていくにしても、最低限の社会常識がわかっていないようでは、
成功もできないのではないだろうか。
あたしは自分ができた人間とは決して思わないが、一応善悪の判断くらいは出来ると思っている。
ちょうど就職活動していて、社会に出て働く志を持っているわけだから、それは当然のことだ。

Bへ続きます⇒⇒
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