2022年03月13日
自作自演の旧石器新発見 「地の塩」
「神の手」と呼ばれた男
山梨県塩名町で遺跡発掘作業をしていた神村賢作。日本に存在しないといわれる全旧石器時代の遺物を発掘し、歴史の教科書にも掲載され「神の手」と呼ばれだしたのが3年前。新たに西多摩の桑名遺跡で発掘作業をしている神村は遺跡にしては新しい人骨を発掘してしまいます。それは13年前の未解決事件に関わる女子高生の遺骨でした。
丁度この頃、前期旧石器時代の発掘に異を唱える国松が教科書編集者佐久間里奈に対して「神村の発見は捏造」と訴えます。しかし教科書は出来上がっており、疑いはあるものの言い出すことができません。さらに桑名遺跡で、神村の捏造証拠を探っていた国松が殺害され浅く埋められていました。この事件から「神の手」への疑いが徐々に広がっていきます・・・。
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モデルが実在
2000年11月に発覚した旧石器発見の捏造事件が元になっており、神村のモデルは藤村賢作です。実際に「神の手」と称されており、25年間に渡り調査発掘チームで大活躍をしています。考古学的な発見は地域の観光地となるため、多くの地域から歓迎・賞賛されています。
しかし毎日新聞でスクープされた上高森遺跡を皮切りに過去全て藤村が関わった遺跡が再点検されます。そこで明らかになったのは、発見された遺物のほとんどが藤村自身が仕込んだものとされます。そのため今まで発掘した遺跡の多くが遺跡としての認定を取り消されました。本作「地の塩」はこの事件をモチーフにしていますが、遺体等はフィクションです。
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関係者全員が「あったらいいな」を信じてしまった
実際には気づいていた人も少なくなかったはずです。藤村が到着すると大発見が起こる・・・そんなはずはありません。政府も石器の展示や国の史跡に指定したりと強く後押し、まさに歴史的意味の発見よりも話題性・商業性に偏った結果見抜けなくなった事件です。「国が間違うはずがない」「専門学者が太鼓判」を鵜呑みにしてはいけない教訓になりました。
今回の見どころは渋い大泉洋の熱演でした。圧や迫力はないのですが、静かで紳士的な神村には一見すると陰がない人間に見えました。この辺りがうま〜く役作りされていす。題名の「地の塩」には「社会のため尽くす・模範となる人」という意味があり、「神村は地の塩だったのかどうか」と問いかけてくる作品でした。兎にも角にも大泉洋の幅広いキャラクターが活かされた名作です。
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