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2021年02月09日
「さよならは明日の約束」 生まれる前の出来事を推理する青春ミステリ
題名「恋文」 美しい思い出の話
大食い・本好きな美少女エミール(永美)は祖母の蔵書で「ヒッチコック」宛ての一通の手紙を見つけます。「昔ヒッチコックにファンレターでも出そうとしてたの?」と祖母に効きますが、祖母には全く覚えがありません。書いた覚えのない手紙を読んで見ると
「もしも私が不審死を遂げたら 犯人は、以下のどちらかの男です。
村岡将志(51歳) 笠亭雄一(33歳)
警察に知らせてください 工富多津子」
昔の祖母のルームメイトからの手紙。祖母の記憶をたどりながらエミールと共に謎を解いていきます。
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もう一人の主人公は2話から
2話目の「男は関係なさすぎる」からもう一人の主人公ユッキー(柚木崎)が登場。更に「ブックステアリング」というカフェとオーナーの梶本さんが登場します。こちらは梶本さんが昔、心臓発作で苦しむ女性教師に言われた言葉「男は関係ないでしょ」の言葉の真意を探していきます。
この作品以降、「ブックステアリング」で推理・想像していくことになります。本好きのエミールの推理力と、映画好きのユッキーの想像力で生まれる前に起こった出来事の真意を探していきます。ユッキーの恋心が垣間見える描写もあり、「青春と恋愛」要素も感じる温かさがあります。
誰も傷つかない・真意かどうかわからない
できごとのほとんどが主人公2人の生まれるかなり前の事象になります。なので特に解決しなくても誰も傷つきません。更に導き出された結果は「真実」ではなく、あくまで2人の「総まとめ」になります。それでも一つの「答」として納得できるもので、読んで見れば爽快感すら感じます。
「生まれる以前の謎を解く」意味がないことに思えますが、この謎に向き合いながら2人は自分自身と向き合っていきます。それこそ本や映画と同じく自分の考え方に少しずつ影響していくことでしょう。苦さもありますが、優しいミステリ小説です。
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