2012年03月06日
リトル・ジュニアの不思議な旅
これはいいです !
久々に個人コレクションものとして、良盤だと思いました。
大好きなJunior Parkerの新しい編集盤が、英Fantastic Voyageからリリースされました。
映画「ミクロの決死圏」の原題を社名とする会社、Fantastic Voyageは、多分ここ数年前くらいから、地域別のR&Bのコンピを粛々と出していたという印象でしたが、昨年ころから、堰を切ったようにわらわらとリリースしだしたという感じの会社です。
コンピでは、白黒混成の女性ロッキンR&B、ロカビリー集や、ロッキン・ウエディング・ソング集など、興味を惹かずにはいられない企画ものを出しています。
コレクションでは、ロイ・ブラウン、ワイノニー・ハリスの新らしい編集盤(どちらも2枚組)がよくまとまっていて良いです。
さて、そんな英国幻想的旅行社が、かなり頑張ってリリースしたのが本盤です。
Junior Parkerの初期シングル集というテーマで、Modern、Sun、Dukeの音源をCD2枚にパッケージしています。
この会社、デジパック仕様が多いのが特徴で、CD収納の省スペース化を図っている私には、美麗な装丁はよいですが、収納の面では困った社風ではあります。
Disc 1
1. You're My Angel (Herman Parker)
2. Bad Women, Bad Whiskey (Herman Parker, Jules Taub)
3. Love My Baby (Bobby Bland and Junior Parker) (Herman Parker, Sam Phillips)
4. Feelin' Good (Herman Parker)
5. Fussin' And Fightin' Blues (Herman Parker)
6. Love My Baby (Herman Parker, Sam Phillips)
7. Mystery Train (Herman ParKer, Sam Phillips)
8. Feelin' Bad (Herman Parker)
9. Dirty Friend Blues (Herman Parker)
10. Can't Understand (Herman Parker)
11. Please Baby Blues (Herman Parker)
12. Sittin', Drinkin' And Thinkin' (1953 Duke) (Herman Parker)
13. Sittin' At The Bar (Herman Parker)
14. Sittin' At The Window (Herman Parker)
15. Sittin', Drinkin' And Thinkin' (1954 Sun) (Herman Parker)
16. Love My Baby (Alt.take) (Herman Parker, Sam Phillips)
17. Backtracking (Herman Parker)
18. I Wanna Ramble (Herman Parker)
19. Can You Tell Me, Baby (Herman Parker)
20. Driving Me Mad (Dick Cole)
21. There Better Be No Feet (In Them Shoes) (Eddie "Tex" Curtis)
22. I'm Tender (Herman Parker)
23. Pretty Baby (1955) (Chester Burnett)
24. Mother-In-Law Blues (Don Robey)
25. That's My Baby (Angel Cartwright, Bill Harvey)
26. My Dolly Bee (Oscar Willis)
27. Next Time You See Me (Earl Forest, Bill Harvey)
Disc 2
1. That's Alright (Jimmy Rogers)
2. Pretty Baby (1956) (Chester Burnett)
3. Peaches (Joe Veasey, Don Robey)
4. Pretty Little Doll (Joseph Scott, Don Robey)
5. Wondering (Joseph Scott, Don Robey)
6. Sitting And Thinking (Joseph Scott, Don Robey)
7. Barefoot Rock (Charles Harper, Joseph Scott)
8. What Did I Do (Don Robey)
9. Sometimes (Don Robey)
10. Sweet Home Chicago (Robert Johnson)
11. I'm Holding On (Joseph Scott, Deadric Malone)
12. Five Long Years (Eddie Boyd)
13. Blue Letter (William Joiner, Deadric Malone)*
14. Stranded (Deadric Malone)
15. Dangerous Woman (Deadric Malone)
16. Belinda Marie (Deadric Malone)
17. You're On My Mind (Deadric Malone)
18. The Next Time (Deadric Malone)
19. That's Just Alright (Deadric Malone)
20. I'll Learn To Love Again (Deadric Malone)
21. Stand By Me (Herman Parker)
22. I'll Forget About You (Herman Parker, Pluma Davis)
23. Driving Wheel (Roosvelt Sykes)
24. Seven Days (Herman Parker, Deadric Malone)
25. How Long Can This Go On (Herman Parker)
26. In The Dark (Herman Parker, Deadric Malone)
27. Mary Jo (Thomas Braden)
28. Annie Get Your Yo Yo (Joseph Scott, Deadric Malone)
まず本題の前に、なぜ61年までなのか、ここは知りたいところです。
Junior Parkerは早世した人(71年没:39歳)ですが、Dukeには60年代中期まで在籍したはずで、現に本家(当時の)米MCA発売のCD、"Backtracking 〜 Duke Recordings Vol.Two"では66年のシングルを収録していました。
Dukeのシングルがコンプリートじゃないのは、続編の企画があるのでしょうか?
でも、残りはかなり少ないはずで、なおかつ英Fantastic Voyageは、3枚組を普通に出している会社なので、どうせなら3枚組のシングル・コンプリート集にしてほしかったです。
Bobby BlandのDuke時代が、2枚組CD×3セット(米MCA盤、日本盤はVol.1のみ出された。現在は全て入手困難)にまとめられたことに比べれば、やはり不遇という気はします。
現在は、ユニバーサルに吸収されて(?)、マーキュリーも傘下なら、Parkerはデューク〜マーキュリーを横断するセットも可能ははず…。
そして話は唐突に変わりますが、アルバム・タイトルの"Ride With Me, Baby"が気になります。
このタイトルは、収録曲の曲名ではありません。
あるいは、どの曲かの歌詞の一節である可能性は高いです。
でもまあ、普通ならさほど気にせず、スルーするところですよね。
アルバム・タイトルなんて、単に編者の好みや気分で付けられたかも知れないからです。
今回私が気になったのは、Disc1-23とDisc2-2に収録された、"Pretty Baby"という曲の存在です。
どちらも、作者はChester Burnettとなっていて同じ曲です。
Chester Bernettが、Howlin' Wolfの本名であることは、(ブルース・ファンには)よく知られています。
違うのは、Disc2の方が、シングルとして57年にリリースされたのに対して、Disc1の方は、先に録音されましたが、後に82年の英AceのLP、"I Wanna Ramble"で初めて世に出るまでお蔵入りしていたことです。
ちなみに、ギターは、正規盤のDisc2がPat Hareで、Disc1はRoy Gainesです(どちらもかっこいい!!)。
この"Pretty Baby"という曲は、これまでリリースされたMCAのCDや、DukeのLPでは、作者がHerman Parker、つまりJunior Parkerの自作となっていたのです。
これは、単にFantastic Voyage盤のケアレス・ミスでしょうか。
あるいは、最新の修正情報なのでしょうか?
Howlin' Wolfには、"Pretty Baby"という曲はありましたっけ?
よく分かりません。
これこそ、タイトル違いで、歌詞やメロが同じものがあるのかも、などと思ったりします。
"Pretty Baby"の正解が解き明かせぬまま、しかし、Wolfについて、あることに気が付きました。
Howlin' Wolfの代表曲のひとつに、"Riding In The Moonlight"という曲があります。
くだんの"Pretty Baby"とは、ひいきめに聴いてメロが若干似ていますが、全体の歌詞は違います。
ただこの"Riding In The Moonlight"、実は別名があり、それが"Baby Ride With Me"というのです。
熊家族が94年に出したHowlin' WolfのCD、"Memphis Days Definitive Edition 2"の1曲目は、"Baby Ride With Me (Ridin' in the Moonlight)"という表記になっています。
そして、歌詞の中に、"Come On Ride With Me, Baby"というフレーズがあるのでした。
そして、改めてJunior Parkerの"Pretty Baby"を聴き返したところ、"Ride With Me Baby"と歌っていたのでした。
まあ、ブルースの歌詞の場合、オリジナルだと思っても、実は昔からある伝承的な常套句である可能性は高いです。
とはいえ、ひとつの関連性を見つけました。
アルバム・タイトルは、"Pretty Baby"の歌詞の一節から名付けられた、とりあえずそういう結論にしたいです。
さて、そろそろ中身をじっくり聴いてみましょう。
簡素なスモール・コンボ・スタイルから、ホーンを数管加えた編成、そしてゴージャスなビッグバンド・スタイルまで、いくつかの例外を除いて、ほぼ録音順に並べられているので、その音の変遷をたどりながら聴くだけでも楽しいです。
Disc1の冒頭の3曲は、Matt Murphyがギターを弾いているんですが、意表をついてT-Boneみたいなプレイで、音もフルアコかセミアコっぽかったりします。
ピアノの存在がモダンで、ジャンプ風にも聴こえます。
ちなみに52年録音です。
その後を引き継いだのが、弟(それとも兄?)のFloyd Murphyで、Disc1-4から1-8あたりは彼のギターなのでした。
このあたりは53年録音なんですが、タイトなスモール・コンボ・スタイルです。
今回、面白く思ったのは、有名な"Mystery Train"が案外ロッキン度がゆるくて、その裏面だった"Love My Baby"のプレイが、よりロカビリーの原石っぽく聴こえることです。
"Love My Baby"のカバーでは、クリス・スペディングを擁したロバート・ゴードン盤が懐かしいです。
さらに、Floyd Murphyから、徐々にPat Hareへと移行していきますが、この二人は、Junior Parkerのギターリストとして双璧だと感じました。
一時期、Roy Gainesも登場し、Bobby Blandの場合もそうですが、やはりDuke時代は素晴らしいメンツばかりですね。
この時期の代表曲のひとつ、"Mother-In Low Blues"は、これまでのCD等ではPat Hareとなっていますが、本盤のライナーではFloyd Murphyとなっています。
そして、"Next Time You See Me"は、確証はないが、おそらくFloydだろうと記しています。
この曲も、これまではPat Hareだと言われていた曲です。
もし仮に、本盤の説が正しいとすれば、Pat Hareが弾いた代表曲は、"That's Alright"当たりということになます。
その後、Pat Hareは、やんごとない事情(I'm Gonna Murder My Baby)で、57年ころを最後にセッションから消えることになります。
さらに、ごくわずかですが、Clarence Hollimanが弾いた曲もあり、ついにはWayne Bennettの登場となるわけですが、ビロードのようなボーカルには、Bennettの優しい音色は相性抜群のように思えて、実はスリルに欠けるのではないか、と思ったりしています。
まあ、名人同士ですので、曲によりますよね。
"Sweet Home Chicago"、"Driving Wheel"、"Five Long Years"、"In The Dark"といった代表曲が、弾き人知らずなのが残念です。
時期的には、Wayne Bennettの可能性はあります。
もしそうだとすれば、相性抜群だと全面的に前言を翻します。
今回の発見として、コーラス・グループを配した曲があり、これがゴスペル・カルテットみたいだと感じて興味深かったです。
Disc2の以下の曲がそんな風です。
16. Belinda Marie
18. The Next Time
19. That's Just Alright
3曲とも新鮮で、とりわけ"That's Just Alright"は、コール・アンド・レスポンスが印象に残ります。
実は、本盤で私が初めて聴いた曲がかなりあり、上記3曲以外では、以下の曲がそうです。
Disc 1
25. That's My Baby
26. My Dolly Bee
Disc 2
4. Pretty Little Doll
8. What Did I Do
13. Blue Letter
20. I'll Learn To Love Again
27. Mary Jo
これらの曲は、あるいは初CD化曲かも知れません。
少なくとも、私の持っている既発のCD、LPには未収録でした。
CD2枚組、至福の時間を過ごせました。
関連記事はこちら
リトル・ジュニアが大好き
ギタリストでたどるジュニア・パーカー
久々に個人コレクションものとして、良盤だと思いました。
大好きなJunior Parkerの新しい編集盤が、英Fantastic Voyageからリリースされました。
映画「ミクロの決死圏」の原題を社名とする会社、Fantastic Voyageは、多分ここ数年前くらいから、地域別のR&Bのコンピを粛々と出していたという印象でしたが、昨年ころから、堰を切ったようにわらわらとリリースしだしたという感じの会社です。
コンピでは、白黒混成の女性ロッキンR&B、ロカビリー集や、ロッキン・ウエディング・ソング集など、興味を惹かずにはいられない企画ものを出しています。
コレクションでは、ロイ・ブラウン、ワイノニー・ハリスの新らしい編集盤(どちらも2枚組)がよくまとまっていて良いです。
さて、そんな英国幻想的旅行社が、かなり頑張ってリリースしたのが本盤です。
Junior Parkerの初期シングル集というテーマで、Modern、Sun、Dukeの音源をCD2枚にパッケージしています。
この会社、デジパック仕様が多いのが特徴で、CD収納の省スペース化を図っている私には、美麗な装丁はよいですが、収納の面では困った社風ではあります。
Ride With Me, Baby
The Singles 1952-1961
Little Junior Parker
The Singles 1952-1961
Little Junior Parker
Disc 1
1. You're My Angel (Herman Parker)
2. Bad Women, Bad Whiskey (Herman Parker, Jules Taub)
3. Love My Baby (Bobby Bland and Junior Parker) (Herman Parker, Sam Phillips)
4. Feelin' Good (Herman Parker)
5. Fussin' And Fightin' Blues (Herman Parker)
6. Love My Baby (Herman Parker, Sam Phillips)
7. Mystery Train (Herman ParKer, Sam Phillips)
8. Feelin' Bad (Herman Parker)
9. Dirty Friend Blues (Herman Parker)
10. Can't Understand (Herman Parker)
11. Please Baby Blues (Herman Parker)
12. Sittin', Drinkin' And Thinkin' (1953 Duke) (Herman Parker)
13. Sittin' At The Bar (Herman Parker)
14. Sittin' At The Window (Herman Parker)
15. Sittin', Drinkin' And Thinkin' (1954 Sun) (Herman Parker)
16. Love My Baby (Alt.take) (Herman Parker, Sam Phillips)
17. Backtracking (Herman Parker)
18. I Wanna Ramble (Herman Parker)
19. Can You Tell Me, Baby (Herman Parker)
20. Driving Me Mad (Dick Cole)
21. There Better Be No Feet (In Them Shoes) (Eddie "Tex" Curtis)
22. I'm Tender (Herman Parker)
23. Pretty Baby (1955) (Chester Burnett)
24. Mother-In-Law Blues (Don Robey)
25. That's My Baby (Angel Cartwright, Bill Harvey)
26. My Dolly Bee (Oscar Willis)
27. Next Time You See Me (Earl Forest, Bill Harvey)
Disc 2
1. That's Alright (Jimmy Rogers)
2. Pretty Baby (1956) (Chester Burnett)
3. Peaches (Joe Veasey, Don Robey)
4. Pretty Little Doll (Joseph Scott, Don Robey)
5. Wondering (Joseph Scott, Don Robey)
6. Sitting And Thinking (Joseph Scott, Don Robey)
7. Barefoot Rock (Charles Harper, Joseph Scott)
8. What Did I Do (Don Robey)
9. Sometimes (Don Robey)
10. Sweet Home Chicago (Robert Johnson)
11. I'm Holding On (Joseph Scott, Deadric Malone)
12. Five Long Years (Eddie Boyd)
13. Blue Letter (William Joiner, Deadric Malone)*
14. Stranded (Deadric Malone)
15. Dangerous Woman (Deadric Malone)
16. Belinda Marie (Deadric Malone)
17. You're On My Mind (Deadric Malone)
18. The Next Time (Deadric Malone)
19. That's Just Alright (Deadric Malone)
20. I'll Learn To Love Again (Deadric Malone)
21. Stand By Me (Herman Parker)
22. I'll Forget About You (Herman Parker, Pluma Davis)
23. Driving Wheel (Roosvelt Sykes)
24. Seven Days (Herman Parker, Deadric Malone)
25. How Long Can This Go On (Herman Parker)
26. In The Dark (Herman Parker, Deadric Malone)
27. Mary Jo (Thomas Braden)
28. Annie Get Your Yo Yo (Joseph Scott, Deadric Malone)
まず本題の前に、なぜ61年までなのか、ここは知りたいところです。
Junior Parkerは早世した人(71年没:39歳)ですが、Dukeには60年代中期まで在籍したはずで、現に本家(当時の)米MCA発売のCD、"Backtracking 〜 Duke Recordings Vol.Two"では66年のシングルを収録していました。
Dukeのシングルがコンプリートじゃないのは、続編の企画があるのでしょうか?
でも、残りはかなり少ないはずで、なおかつ英Fantastic Voyageは、3枚組を普通に出している会社なので、どうせなら3枚組のシングル・コンプリート集にしてほしかったです。
Bobby BlandのDuke時代が、2枚組CD×3セット(米MCA盤、日本盤はVol.1のみ出された。現在は全て入手困難)にまとめられたことに比べれば、やはり不遇という気はします。
現在は、ユニバーサルに吸収されて(?)、マーキュリーも傘下なら、Parkerはデューク〜マーキュリーを横断するセットも可能ははず…。
そして話は唐突に変わりますが、アルバム・タイトルの"Ride With Me, Baby"が気になります。
このタイトルは、収録曲の曲名ではありません。
あるいは、どの曲かの歌詞の一節である可能性は高いです。
でもまあ、普通ならさほど気にせず、スルーするところですよね。
アルバム・タイトルなんて、単に編者の好みや気分で付けられたかも知れないからです。
今回私が気になったのは、Disc1-23とDisc2-2に収録された、"Pretty Baby"という曲の存在です。
どちらも、作者はChester Burnettとなっていて同じ曲です。
Chester Bernettが、Howlin' Wolfの本名であることは、(ブルース・ファンには)よく知られています。
違うのは、Disc2の方が、シングルとして57年にリリースされたのに対して、Disc1の方は、先に録音されましたが、後に82年の英AceのLP、"I Wanna Ramble"で初めて世に出るまでお蔵入りしていたことです。
ちなみに、ギターは、正規盤のDisc2がPat Hareで、Disc1はRoy Gainesです(どちらもかっこいい!!)。
この"Pretty Baby"という曲は、これまでリリースされたMCAのCDや、DukeのLPでは、作者がHerman Parker、つまりJunior Parkerの自作となっていたのです。
これは、単にFantastic Voyage盤のケアレス・ミスでしょうか。
あるいは、最新の修正情報なのでしょうか?
Howlin' Wolfには、"Pretty Baby"という曲はありましたっけ?
よく分かりません。
これこそ、タイトル違いで、歌詞やメロが同じものがあるのかも、などと思ったりします。
"Pretty Baby"の正解が解き明かせぬまま、しかし、Wolfについて、あることに気が付きました。
Howlin' Wolfの代表曲のひとつに、"Riding In The Moonlight"という曲があります。
くだんの"Pretty Baby"とは、ひいきめに聴いてメロが若干似ていますが、全体の歌詞は違います。
ただこの"Riding In The Moonlight"、実は別名があり、それが"Baby Ride With Me"というのです。
熊家族が94年に出したHowlin' WolfのCD、"Memphis Days Definitive Edition 2"の1曲目は、"Baby Ride With Me (Ridin' in the Moonlight)"という表記になっています。
そして、歌詞の中に、"Come On Ride With Me, Baby"というフレーズがあるのでした。
そして、改めてJunior Parkerの"Pretty Baby"を聴き返したところ、"Ride With Me Baby"と歌っていたのでした。
まあ、ブルースの歌詞の場合、オリジナルだと思っても、実は昔からある伝承的な常套句である可能性は高いです。
とはいえ、ひとつの関連性を見つけました。
アルバム・タイトルは、"Pretty Baby"の歌詞の一節から名付けられた、とりあえずそういう結論にしたいです。
さて、そろそろ中身をじっくり聴いてみましょう。
簡素なスモール・コンボ・スタイルから、ホーンを数管加えた編成、そしてゴージャスなビッグバンド・スタイルまで、いくつかの例外を除いて、ほぼ録音順に並べられているので、その音の変遷をたどりながら聴くだけでも楽しいです。
Disc1の冒頭の3曲は、Matt Murphyがギターを弾いているんですが、意表をついてT-Boneみたいなプレイで、音もフルアコかセミアコっぽかったりします。
ピアノの存在がモダンで、ジャンプ風にも聴こえます。
ちなみに52年録音です。
その後を引き継いだのが、弟(それとも兄?)のFloyd Murphyで、Disc1-4から1-8あたりは彼のギターなのでした。
このあたりは53年録音なんですが、タイトなスモール・コンボ・スタイルです。
今回、面白く思ったのは、有名な"Mystery Train"が案外ロッキン度がゆるくて、その裏面だった"Love My Baby"のプレイが、よりロカビリーの原石っぽく聴こえることです。
"Love My Baby"のカバーでは、クリス・スペディングを擁したロバート・ゴードン盤が懐かしいです。
さらに、Floyd Murphyから、徐々にPat Hareへと移行していきますが、この二人は、Junior Parkerのギターリストとして双璧だと感じました。
一時期、Roy Gainesも登場し、Bobby Blandの場合もそうですが、やはりDuke時代は素晴らしいメンツばかりですね。
この時期の代表曲のひとつ、"Mother-In Low Blues"は、これまでのCD等ではPat Hareとなっていますが、本盤のライナーではFloyd Murphyとなっています。
そして、"Next Time You See Me"は、確証はないが、おそらくFloydだろうと記しています。
この曲も、これまではPat Hareだと言われていた曲です。
もし仮に、本盤の説が正しいとすれば、Pat Hareが弾いた代表曲は、"That's Alright"当たりということになます。
その後、Pat Hareは、やんごとない事情(I'm Gonna Murder My Baby)で、57年ころを最後にセッションから消えることになります。
さらに、ごくわずかですが、Clarence Hollimanが弾いた曲もあり、ついにはWayne Bennettの登場となるわけですが、ビロードのようなボーカルには、Bennettの優しい音色は相性抜群のように思えて、実はスリルに欠けるのではないか、と思ったりしています。
まあ、名人同士ですので、曲によりますよね。
"Sweet Home Chicago"、"Driving Wheel"、"Five Long Years"、"In The Dark"といった代表曲が、弾き人知らずなのが残念です。
時期的には、Wayne Bennettの可能性はあります。
もしそうだとすれば、相性抜群だと全面的に前言を翻します。
今回の発見として、コーラス・グループを配した曲があり、これがゴスペル・カルテットみたいだと感じて興味深かったです。
Disc2の以下の曲がそんな風です。
16. Belinda Marie
18. The Next Time
19. That's Just Alright
3曲とも新鮮で、とりわけ"That's Just Alright"は、コール・アンド・レスポンスが印象に残ります。
実は、本盤で私が初めて聴いた曲がかなりあり、上記3曲以外では、以下の曲がそうです。
Disc 1
25. That's My Baby
26. My Dolly Bee
Disc 2
4. Pretty Little Doll
8. What Did I Do
13. Blue Letter
20. I'll Learn To Love Again
27. Mary Jo
これらの曲は、あるいは初CD化曲かも知れません。
少なくとも、私の持っている既発のCD、LPには未収録でした。
CD2枚組、至福の時間を過ごせました。
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