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2021年05月31日

モンゴル帝国から日本を救った北条時宗が「英雄」とは言い難いワケ



  モンゴル帝国から日本を救った北条時宗が

 「英雄」とは言い難いワケ


  ダイヤモンド・オンライン  5/31(月) 6:01配信



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                  Photo PIXTA 5-31-11


 〜鎌倉時代、2度に渉ってモンゴルに攻め入られた日本。そんな大国の侵攻から日本を救った英雄と観られて居るのが北条時宗だ。しかし、モンゴルが日本に攻め入った経緯を踏まえると、寧ろ北条時宗が日本を〔危険に晒していた〕とも言える事が分かって来た。世界最大の帝国が小国・日本を2度も攻めた理由とは何だったのか〜



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  本稿は、本郷和人著『「失敗」の日本史』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。


 ● 疑われる事が無かった 「北条時宗=英雄説」  

 そもそも何故モンゴルは日本に来襲したのでしょうか? 実は戦前、この疑問に付いて考えられる事は殆どありませんでした。面積として世界最大の帝国を作ったモンゴルは言わば侵略マシーンです。だから日本に攻めて來るのは、彼等の本能からして当たり前・・・それで話は終わり。  
 一方、北条時宗は疑問の余地も無く、モンゴルから日本を救った英雄とされ、又、何処迄信じて居たのか判りませんが、太平洋戦争当時、日本はイザと為れば神風が吹いて救われる国とも言われて来ました。その様なニュアンスで、モンゴル来襲に付いては「時宗が国を救った」ことばかりが強調され、そもそも何故攻めて来たのかに付いて真面目に考えられる事が無かったのです。



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 ● 何故モンゴルは見返りの少ない日本へ来襲したのか  

 それが戦後に為って要約変わりました。日本の歴史家が余り確り研究して来なかった問いでしたが、寧ろ東洋史・モンゴルの専門家の方々が調査し考察し始めたのです。それを機会として30、40年前辺りから認識が可成り変わって来ました。  
 趙良弼(ちょうりょうひつ)と云う元の使者が書いたレポートがあります。モンゴルは文永の役と弘安の役の2度に渉り日本へ遣って来た訳ですが、この人はその文永の役の前にフビライ・ハンの基から派遣され日本に遣って来て居ます。そして1年近くも日本に滞在し、様子を好く見て報告したのです。  

 ではその趙良弼がどの様なレポートを書いていたかと言えば、先ず「日本と云う国は狭いです」と。そして「ロクな作物が育たず、豊かでは無い。人間も野蛮で、皇帝陛下がワザワザ日本を征服しても、何の見返りもありません。だから、辞めるべきです」と報告して居た。
 そうした事実が判って来たので、改めて「では何故モンゴルは、そんな日本に攻めて来たのか」と云う疑問が論じられる様に為ったのです。


 ● 中華帝国の後継者としてのモンゴル  

 さてそれで、東洋史の方々の考察から出て来た答えは「モンゴルは当時、中華帝国の後継者であることを全世界に対して示そうとして居た」と云うもの。モンゴルは、漢民族からすると北方の異民族です。元々中国大陸では好く征服者として北方の異民族が万里の長城を越えて攻めて來るのですが、モンゴルはその一つだった。
 そして中国大陸は勿論、全世界へその領地を広げた訳ですが、五代皇帝フビライ・ハンは、殊の外中国大陸の征服に熱心だった。中国大陸をホボ制圧した段階で、元と云う中国風の国号を定め「我々は中国大陸の歴代王朝の伝統を受け継ぐものである」と内外に示したのです。
 
 歴代王朝の伝統を受け継ぐと云う事は、中華思想の後継者と為ると云う事です。そして中国の皇帝は、天の神様の子。即ち「天子」天から、下々の民草を導けと云う天命を受けた存在である。その天子がトップに立つ元は、東アジア、嫌彼等の視野では全世界で、最も高度な文明を持ち、最も高度な文化が花開いた素晴らしい国と云う事。


 ● 歴史的に根強い 「中華思想」  

 中華と聞くと中華料理を思い浮かべるかも知れませんが、世界の中心である中華の周りには北には北狄(ほくてき)東には東夷(とうい)西には西戎(せいじゅう)南には南蛮(なんばん)と野蛮な国々がある。そうした野蛮国からは、天子の徳を慕って挨拶に遣って來る・・・こうした世界観が中華思想です。
 挨拶に來る周辺国の中には、直接、中華の皇帝の家来に為る国もあります。そうした中でも一番のエリートが、朝鮮半島の王朝とベトナムで、この国々のトップは「王」として皇帝の直接の家来と為りました。その為元号も自前ででは持たずに、中国の皇帝が定めた元号を使って居ました。

 中華思想に付いては華夷(かい)思想と云う呼び方もあります。中華のに異民族の華夷思想。こうした思想が中国には根強くある訳です。  
 その華夷思想の継承者として元は国を立てた。だからフビライ・ハンにしてみると周辺の国々はモンゴルの・元の徳を慕って挨拶に遣って來るべきなのです。逆に挨拶に来無いと為ると、それは元の威信に関わる自分達のメンツを潰す振る舞いと云う事を意味するのですが。


 ● 驚く位丁寧だったフビライの国書  

 それ故フビライは日本にも使節を派遣しました。その時の国書が残って居ます。読んでみるとビックリする位低姿勢。低姿勢と云うかとても丁寧なのです。例えば文書の最後は「不宣」で締められて居ます。これは私人の手紙であれば「敬具」に当たる書き止めであり、しかも比較的平等な関係で手紙を遣り取りする時に使われるもの。

 その内容は「今度中国大陸に元と云う王朝が出来ました。ですから元の皇帝の徳を慕って、貴方達日本の国も使者を派遣して挨拶に来なさい」と云うものでした。 例えばSF小説『銀河英雄伝説』の作者、田中芳樹先生等は、この文書は衣の下に鎧が見えて居る様なもので「言う事を聞かなければ滅ぼす」と云う意味だと仰っていました。只、僕はそこ迄深読みし無くても好いのではないかと思います。

 侵略すると云っても、実際に軍を差し向けて征服するのは、何処に兵を派遣するにせよ大変なお金が掛かる訳です。しかも日本に付いては、趙良弼から「征服しても旨味は無い」と云うレポートまで上がっている。  
 であれば、使者だけキチンと派遣し頭を丁重に下げて挨拶して呉れればそれで好いと、フビライは考えて居た筈。それで皇帝としての威信は十分に成立する。そしてこれが東洋史の研究者の方々の意見です。だから日本の採るべき態度としても、フビライの国書をキチンと読み込み元に然(しか)るべき使者を派遣して居れば、それで好かったのではないか。


 ● 「返書は無くした」と報告した 小野妹子の真意  

 実際には、朝廷が先ずその国書を受け取りました。しかし暫く中国と外交をして居なかった朝廷は、キチンと皇帝の意図を読む事が出来なかった。大部上から目線の返書を下書きして居るのですが、マアそこは外交です。過つて隋(ずい)の煬帝(ようだい)に使者を送った時も「日出処(ひいずる)ところの天子より」と随分盛った挨拶をして居ました。
 当時の朝廷は遣唐使の時期とは違って、まさに夜郎自大(あろうじだい)・・・天皇程偉い存在は居ないと云う集団ですから「日本は神様が守る立派な国」だと、この時も随分と上から目線で国書を書いた訳です。  
 使節の小野妹子(おののいもこ)は隋の煬帝から「これはどう云う意味だ?」と訊かれて、多分色々言い繕(つくろ)った事でしょう。その返書にはキッと「お前ら図に乗るなよ」と云う様な事が書かれて居た筈。

 尚小野妹子は、朝廷に「返書は無くしてしまいました」と報告して居ます。恐らく、とても見せられ無い様な内容だったのではないでしょうか。しかしそれでも、兎に角返書さえ出せば、間に立つ外交担当者が何とかしてしまう事も出来たと云う訳です。そしてこの当時の朝廷も返書の準備はして居たのですが、そこに待ったを賭けた者が居た。それが幕府です。


 ● 時宗を英雄と言い難い これだけの理由  

 北条時宗が「そう云う事は私達が遣るから、朝廷は余計な事をし無くて好い」と朝廷から国書を取り上げた。平時の外交も拗(こじ)れれば戦争に為ります。外交も戦争も同じコインの裏表ですが、戦争出来るのは幕府で在る以上、外交を担当出来るのも幕府だけ。それで朝廷から国書を取り上げたのですが、取り上げて置きながら幕府は返事を出さ無かった。  
 その非礼に怒ったフビライが軍隊を送って来たと東洋史の研究者は見ています。しかも最初の文永の役(1274)は、現代の軍事行動で言えばどうも「威力偵察」だったらしい。威力偵察とは、敵の状況が判ら無い時、敵と遭遇しても帰還出来るだけの或る程度の規模の部隊を送り偵察を強行すること。


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 まさに第一回の文永の役は、元に取って、この威力偵察だった訳です。だから日本の武士と少し戦闘を交わすと直ぐに帰って行った。これは神風が吹いたからでは無く、元々早期に帰還する予定だったと云うのが現代の理解です。
 それで敵情を把握した元は、2回目と為る弘安の役(1281)で、本腰を入れて軍勢を送り込む事に為る訳ですが、実はフビライ、この弘安の役の前にチャンと杜世忠(とせいちゅう)ら使者を日本へ送って居たのです。  

 「この間の文永の役で元の怖さが判っただろう。だからキチンと挨拶に来い」と杜世忠を始めとする5人の使者が送られて来た。しかし北条時宗は、何とその使者全員の首を切ってしまう。非礼処か、完全に野蛮国の振る舞いです。  
 結果、激怒したフビライは、今度は10万人からの軍勢を送って来た。しかしこの時、恐らく本物の幸運で台風が来て軍勢は難破してしまった。詰り、偶々台風が吹いて難を逃れましたが、国を危険に晒す外交をする上、運任せで勝ったリーダーをとても英雄とは呼べ無いのではないでしょうか。


 ● それでも鎌倉から 動か無かった時宗  

 では当時の北条時宗は、国際情勢を何も勉強して居なかったのでしょうか。一つ擁護すれば「勉強しよう」とはして居た様です。勉強するに際して、誰を先生にすれば好いかと言えば、当時、中国から可成りハイレベルな禅僧が日本に遣って来て居たので彼らから学べば好い。でも、何故そんな僧侶が日本に来たかと言えば、モンゴルが攻めて来て日本へ逃げて来た訳ですね。
 それでは当然、モンゴルの事を好く言う訳が無い。寧ろ「飛んでも無い勢力だ!」と言う訳です。それを聞いて居たからこそ北条時宗はキチンと対応出来無かったのでしょう。  

 しかし、それでも彼がそれ為りに確りして居れば、1回目は止むを得無いとしても2回目に付いては万全の準備を整えて然るべきでした。実は1回目は兎も角、2回目もそこ迄防衛準備は行われて居なかったのです。何より、北条時宗は九州迄行って居ない。責めて総司令官として広島辺りまで行って戦いを指揮するのであれば未だ判るのですが、この非常事態でも鎌倉から動いて居ない。
 それでも結果論として、運が味方して呉れたお陰で撃退出来たのですが、しなくて済む戦争を遣った訳で、ひとつ間違えると飛んでも無い事態を招いて居た可能性まであった。
 
 最も、モンゴルは世界帝国を築いた所為で、ヨーロッパのペストが中国本土に迄遣って来てしまって居た為、漏れ無く衰退してしまいます。そうすると結局、海を隔ててしかも趙良弼の言う様に特に占領する意味の無い日本の独立は保つ事が出来たでしょう。しかし、もしかすると北九州位はモンゴルに占領された可能性は有るかも知れない。


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 ● 鎌倉幕府の倒幕原因は モンゴル襲来の時点で生じて居た  

 更に良く無かったのは戦後の報奨です。モンゴルが攻めて来て、武士達は命懸けで戦った訳です。この章で何度も述べて来た主従制の契約では、命を投げ出して戦った彼等に対し、ご褒美を与え無ければ為らない。
しかしモンゴルとの戦いでは、勝利したと云っても敵を撃退しただけですから、相手の土地を奪って皆に分配すると云う訳にはいか無い。戦争が終わっても、家来達に分配する新しい土地は無いのだから。
 しかしこの時に北条氏がもしも「好く遣って呉れた」と云う事で、山程ある自分達の領地から、少しずつでも割いて分け与えて居れば? そうしたら武士達も「北条さんも身を切って呉れた。有難いね」と納得して居たと思うのです。
 
 しかしケチ臭いと云うか、北条氏はそれを遣ら無かった。寧ろ、自分達の財産を増やした。財産を増やして桁違いの力を持つ事により、武士達の不満を押さえ着け様としたのです。これがまさに大失敗で、北条氏の専制的な姿勢が表面化してしまい、時宗・貞時・高時の三代で北条氏は武士達の支持を失って行く。
 やがて後醍醐天皇が、幕府を倒せと号令すると、本当に潰れてしまう事に為りました。 これは後醍醐天皇の号令の結果と云うより、鎌倉幕府に対する武士達の、蓄積された不満がこのタイミングで溢れ、幕府を倒したと云う状況だったのですが、本当の原因は倒幕の50年前、モンゴル襲来の時点で生じて居たと思います。




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                  本郷和人氏 5-31-1

プロフィール 1960(昭和35)年東京都生まれ 東京大学史料編纂所教授 東京大学・同大学院で石井進氏・五味文彦氏に師事し日本中世史を学ぶ 中世政治史・古文書学専攻 史料編纂所で『大日本史料』第五編の編纂を担当 著書に『天皇はなぜ生き残ったか』『戦国武将の明暗』など


















水素エンジンはハイブリッドの様に大ブレイクするか? 大原 浩 国際投資アナリスト



 水素エンジンは ハイブリッドの様に大ブレイクするか?


 現代ビジネス 大原 浩 5/18(火) 5:01配信



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       水素エンジン車で耐久レース参戦 写真 現代ビジネス 5-18-5

 
 先ず、若い世代の方には「ベンチがアホやから野球ができへん」と云う言葉の意味を説明する必要があるかも知れない・・・1981年8月26日、甲子園の阪神ヤクルト戦で、阪神タイガースのピッチャー江本孟紀氏がこの言葉を吐いたとされる。先発の江本氏が8回に同点のランナーを背負うピンチを迎えて居た時の、ベンチの対応が余りにも杜撰(ずさん)であった事に対する怒りが爆発した様だ。
 この言葉が瞬く間に広がり一世を風靡したのは、例えばサラリーマンであれば「ベンチがアホやから仕事が出来へん」等、大多数の一般国民の気持ちを代弁したからではないかと思う。

 そして40年後の今「アホなベンチ」に苦しめられて居るのがトヨタ自動車である。豊田章男社長は、世代的にこの言葉を知っていると思う。喉まで出掛かって居る感じはあるが、強力な自制心で耐えて居る様である。しかし、トヨタが凄いのは「アホなベンチでも野球はする」気概を持って居る事である。
 その象徴だと感じるのが、トヨタが5月21〜23日に行なわれるスーパー耐久シリーズ2021「第3戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」で「カローラ スポーツ」に水素エンジンを搭載した競技車両で参戦すると云う事だ。


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 これ迄の一連の記事で述べて来た様に「次世代自動車」の本命はハイブリッドだ。しかし「アホなベンチ」から「ガソリンエンジン」を使用して居ると云うだけで政治的な圧力が掛けられるのであれば、次善の策は「水素エンジン」だと云う判断は正しい。  
 2019年8月27日「騙されるな、空前の電気自動車(EV)ブームは空振りに終わる」で述べた様に、これから自動車産業が進むべき道は @使う場所で発電する為送電ロスが少なく Aガソリン車で捨てていたエネルギーを活用し B尚且つ災害時の非常用電源に為るハイブリッドである。  

 しかし、前述の記事の副題が「次世代環境車の穴馬はLPG自動車か?」である様に「ガスを燃焼させる」自動車もそれ為りに有望だと考えて来た。LPGとは液化石油ガスのことである。何より、不便・非効率な電気自動車(EV)より遥かに優れて居るし二酸化炭素の排出も少ない。
 尚且つ、水素エンジンは既存のガソリンエンジン技術の延長上で開発が可能であり「EVの強要」で「日本車下ろし」を企む、欧米や中韓の政府・メーカーに一矢を報いることが出来る。詰り、水素エンジンが主流に為れば、ガソリンエンジンと同じく日本勢の独壇場に為ると考えられるのだ。

 同じ水素でもFCVと水素エンジンは全く違う
 
 これ迄水素を使う環境車としては、トヨタのミライ等のFCV(燃料電池車)が騒がれて来た。しかし結局、燃料電池で水素と酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーによってモータを回す「電動車」だ。一般の電気自動車は電池に充電した電気を使用するが、燃料電池車はその場で発電した電気を使用する「水素(と酸素)を燃料とする電気自動車」と言えよう。  

 それに対して、水素エンジンは水素をガソリンと同じ様に燃やすから既存のエンジン技術を応用出来る。従って、全く新しい技術であるFCVよりも開発が簡単だ。但し、1807年 に初めて(水素を燃焼させる)水素自動車を作ったのは、フランシス・アイザック・ディ・ライバスと云うスイスの発明家だとされる。
 電気自動車が、自動産業黎明期(れいめいき)にメジャーであったのにも関らず、電池(容量)の問題が解決出来ずガソリン自動車に席巻されたのと同じ様な歴史を辿った訳だ。水素の場合は、ガソリンに比べて取り扱いの難しい事等がネックであったと思われる。  

 1937年5月6日に米国レイクハースト海軍飛行場で発生した、ドイツの飛行船ヒンデンブルク号の爆発炎上事故の映像は、今でも好く見かけ「水素は危険」と云うイメージを世の中に広めた。だが、実の処真相は不明で、1997年にNASA・ケネディ宇宙センターの元水素計画マネジャー、アディソン・ベインが当時の証言・映像分析等を行い、事故の原因はヒンデンブルク号の船体外皮の酸化鉄・アルミニウム混合塗料であると発表したと伝えられる。また、テロ説などもある。  
 何れにせよ、水素を扱う技術そのものはFCVで既に実用化されて居るから、安全性に基本的な問題は無いと考える。

 今から間に合うか?
 
 1995年秋、トヨタは東京モーターショーにプリウスの名前でハイブリッドカーのコンセプトモデルを出展したが、1997年10月には世界初の量産ハイブリッド乗用車プリウスが発表された。ホボ2年と云う驚くべきスピードだ。  
 しかも当時、トヨタ以外の自動車メーカーは、ハイブリッドは2つの駆動システムを搭載する非効率なものだと考えて眼中に無かったのだ。  

 それを考えれば、近日中の「量産モデルの水素エンジン自動車」の登場も十分考えられる。水素はガソリンよりも好く燃えるので、平たく言えば「燃え過ぎ」が開発の上での難しさだが、水素エンジンに向いて居るとされるロータリー方式のマツダと提携関係にあることも強みである。結論から言えば「アホなベンチ」が設定した期限に十分間に合うと考える。

 水素ステーションは?
 
 気に為るのは、水素エンジン車に水素を供給する場所がどの位あるのかと云う事だ。2020年12月現在、135ヵ所の水素ステーションと云うのは、おおよそ3万拠点のガソリンスタンドに見劣りする。しかし、全国津々浦々で走る約25万台のタクシーの大部分がLPG車であるが、LPGスタンドは約1,900ヵ所で十分だ。
 FCVよりも普及の可能性が高い水素エンジン車の登場が、水素ステーション新設を後押しするかも知れないし、LPGスタンドが水素ステーションに為る事も十分考えられる。  

 LPGは、体積を気体の状態から約250分の1に圧縮する。LNG(液化天然ガス)は600分の1、液化水素は800分の1である。圧縮比は異なるが、ガスを液化する技術には共通性がある。特にLNGにおいては、島国である日本はパイプラインでの天然ガスの輸送が難しいので、LNG船で産地から輸入する為の「ガスの液化技術」が優れており、世界最高峰とも云われる程だ。
 また、水素ステーションには「オフサイト」と「オンサイト」の2種類がある。「オフサイト」は、外部から水素を運び込む。「オンサイト」はその場で水素を製造するのだが、水素の元と為るのは化石燃料である。LPGも化石燃料の1つであり、オンサイトで水素製造が可能な点もLPGステーションが水素供給場所として期待される理由だ。

「水素エンジンハイブリッド」は有得るか?
 
 ちなみに、製鉄所などの副産物として生まれるものを除けば、現在使用されている水素の殆どは化石燃料から製造される。電気自動車に使われる電気の大部分が化石燃料(或いは環境に優しく無い原子力)で発電されるのと同じ構図だ。  
 4半世紀ほど前、ノートパソコンが普及し始めた頃は「水」(H2O)は海水に無尽蔵に含まれて居るから「水素は究極のエネルギー」だと言われ「電池が切れると水道(ペットボトル)から水を入れれば好いだけに為る」と云う夢物語があった。  

 しかしながら、水の電気分解により水素を発生させる事は、今でも産業界では一般的で無い。電気分解に必要なエネルギーコストの方が、化石燃料から生み出される水素のコストより遥かに割高だからだ。言ってみれば「錬金術」が現代の科学で可能にも関らず、実行され無いのと同じだ。
 現代科学では、LHC(CERNが建設した世界最大の衝突型円形加速器)の様な超大型加速器を使い、2つの元素の原子核同士を猛烈なスピードでブツケ合体させる事によって(自然界に存在しない)新たな元素を人工的に生み出す事は既に可能だ。  

 卑金属(ひきんぞく)の元素を金に換える事も不可能では無い筈だが、超大型加速器の莫大な運営費用を使って「原子単位」の量の金を得ても経済的な意味は無い。「水から水素を製造する」と云うのもこの様な錬金術に近いと言える。だから、水素エンジンが普及しても、化石燃料から製造された水素を使う訳だから「自分の家の前のゴミ(二酸化炭素)を、隣の家の前に掃き集める」以上の意味は無い。だが「アホなベンチ」に対抗する為の方法としては優れていると思う。
 また、万が一「水から水素を製造する事が可能」に為れば「水素エンジン」と「モータ―」を組み合わせた「水素エンジンハイブリッド」として、次世代自動車の本命として躍り出るだろう。

 水素エンジンはカッコ好い?
 
 自動車は単なる実用品では無い。自分の愛車に思い入れを抱く人は多いし、日本の高速道路の速度制限や一般道の状況を考えれば、フェラーリを購入する人々が実用性を重視している訳では無い事が直ぐに判る。その点で、水素エンジンのデビューを「自動車レース」に設定した豊田章男氏のセンスには恐れ入る。
 電気自動車でもカーレースは可能だが、炭酸が抜けたサイダーの様なものだ。水素エンジンの音はガソリンエンジンよりもヤヤ甲高いそうだが、よりスピード感が溢れるサウンドと思われ、モーターファンを歓喜させるのではないだろうか?
   
 ハイブリッドが世界的に大ヒットしたのは、性能と同時にトヨタの巧みな販売戦略もある。ブラッド・ピットを始めとするハリウッドスター達が乗ることによる「環境に優しく『かっこ好い』プリウス」と云うブランド戦略を成功させたのだ。  
 今度も「水素エンジンのスポーツカーは環境に優しく『カッコ好い』」と云うイメージを広げる戦略ではないかと思う。

 ホンダは残念だ・・・
 
 もし水素エンジンの時代に入ったら、世界は日本に追い付け無い事は既に述べた。日本車下ろしに対抗する為に、政府は水素エンジンの開発・普及を強力に後押しして欲しいのだが・・・ホンダの新社長が会見で「2040年にはEVとFCVで100%の目標」を発表した。確かに、優れた自動車メーカーではあるものの、他社との連携を行わず独立性の強いホンダにとって「アレもコレも開発」するのは体力的に厳しいから、取捨選択を迫られている事情は好く判る。  
 しかし、次世代自動車の中核に為ると思われるガソリンや水素(エンジン)のハイブリッドを、将来の選択肢の中から消去するのは明らかな誤りだ。 「アホなベンチ」の圧力に屈せず、次世代自動車の本命の開発をぜひ継続して欲しい。



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               大原 浩(国際投資アナリスト)














日本企業は何故中国と手を切ら無いのか・・・




 日本企業は何故中国と手を切ら無いのか・・・

 やがて身包み剥がれるのに



 現代ビジネス 5/31(月) 6:02配信


 夜逃げしない日本企業は立派だが・・・


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                写真 現代ビジネス 5-31-1


 拙著「韓国企業は何故中国から夜逃げするのか」は、2008年の北京オリンピック華やかりし頃に発刊された。当時の共産主義中国は、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いと世間には思われて居たから、この本に対して「一体何をバカなことを言っているんだ」と云う反応も多かった。
 しかし、中国が「何れはタイタニック号の様に沈没する」と云う理由を説明したのが本書であり、3月29日公開の『金の卵を産むガチョウ』を絞め殺す習近平政権に未来は無い」や朝香豊氏の「中国経済いよいよ崩壊寸前…! 習近平が今度こそ本当にその引き金をひく」の様に、まさにタイタニック号の前に氷山が迫って居る状況だ。
 
 前記の著書発刊当時、驚くべき数の韓国企業が共産主義中国から夜逃げして居た。何故夜逃げをしたのかと言えば、中国は「行きは好い好い帰りは怖いシステム」を採用しているからだ。
 どの様な事かと云うと、当時外資系企業の誘致に熱心であった中国共産党は、数々の外資系優遇措置をチラつかせ、又白酒(ぱいちゅう・中国酒)宴会で肩を組んで「我々は友達だ」と仲間に引き入れる。処が、進出してみて「話が違う」と感じて撤退しようとすると、鬼の様な形相に為り手のひらを反す。

 詳しくは拙著を参照して頂きたいが、要するに「身包みを剥がされて裸で追い出される」のだ。又、撤退を表明した外資系企業の社長を初めとする経営幹部の監禁事件も屡々起こっている。
 結局、韓国企業の行動は褒められたものでは無いが、闇金のエゲツナイ取り立てから逃れる為の「夜逃げ」程度には同情出来る。日本でも〔夜逃げ屋本舗〕と云う夜逃げの助っ人を肯定的に描くテレビドラマや映画があった。 しかし、忍耐強く誠実な日本企業はその様な過酷な環境でも、歯を食い縛って耐え忍んで来た。  

 又、一般論で言えば、2月28日「1400年の歴史、世界最古の会社が日本に存在して居る…!」で述べた「継続性」が日本繁栄の基盤だ。しかし、共産主義中国がその様な日本人の誠意が通じる相手で無い事は確かである。
 例えば、ケ小平に請われ改革・開放と云う現在の中国繁栄の基礎作りに多大な貢献をしたパナソニックを始めとする日本企業が、現在どの様な扱いを受けて居るのか見れば分かる。
 
 又、前記記事で述べた様に、日本には1400年の歴史と共に「式年遷宮」と云う素晴らしい革新の知恵もある。日本人の行動は遅い様に見えても、或る瞬間から爆速に為り、全体を通して見れば欧米と変わら無い。  
 そして、日本の中国ビジネスは「爆速で社を建て替える時期」に入りつつ有るから、モタモタして、その流れに乗り遅れるべきでは無いと云え様。

 警鐘が活かされて居ない
 
 2019年12月24日「ウイグル人権法案、実は『日本企業』が他人事とは云え無い可能性」でユニクロ(ファーストリテイリング)や無印良品(良品計画)が、人権問題で「名指し」された事を述べた。  
 処が、それにも関らず「ユニクロ」の綿製シャツが、新疆ウイグル自治区の強制労働を巡る米政府の輸入禁止措置に違反したとされる「事件」が起こった。米税関・国境警備局(CBP)が今年1月、ロサンゼルス港で輸入を差し止めて居た事が5月10日付けの米国土安全保障省の文書で明らかに為ったのだ。  

 それに対してファーストリテイリングは5月19日に、CBPの決定は「非常に遺憾」と云うコメントを出した。「サプライチェーンに於いては、強制労働等の深刻な人権侵害が無い事を確認。綿素材に付いても、生産過程で強制労働等の問題が無い事が確認されたコットンのみを使用している」とのことだ。  
 しかし、このファーストリテイリングの対応は非常に稚拙(ちせつ)である。1月に指摘されたのに5月迄情報を公開して居なかったのは「僕は悪くないもん・・・」と云う考えからだと思われるが、最大の問題は柳井正氏率いるファーストリテイリングが「国際情勢」に疎い「世界の田舎者」であることだ。  

 重要なのは「世界の流れが変わった」=「ゲームチェンジ」した事である。5月29日公開の「バイデン政権が既に『深刻な機能不全』…このママ終わるのだろうか」でも述べた様に、バイデン政権がどの様な考えであろうと「米国の真意」は、既に共産主義中国を冷戦時代のソ連と同じ様に「悪の帝国」と見做して居る。
 「天上の無いアウシュビッツ」と呼ばれるウイグル問題を抱えるから、ナチスドイツと同じ「人類の敵」と扱われて居る可能性もある。  

 だから、この様な相手との取引には「疑わしきは罰せず」の民主社会の原理は適用され無い。「疑わしきは全て罰せられる」対応をされると云う事に付いて、ファーストリテイリングを始めとする日本企業は全く理解して居ない様に思える。  
 しかも、綿そのものには製造番号やタグ等は着いて居ない。見た目では全く区別が着かないのだ。DNA鑑定である程度の産地を絞れるとの話もあるが、ファーストリテイリングはそこ迄踏み込んだのだろうか?どのような「確認方法」なのかは分から無いが「悪の帝国(人類の敵)である中国」が証明した内容など意味が無いと云うのが米国の立場だと肝に銘じるべきである。

 社内英語公用語化を進める「田舎者企業」
 
 日本企業は、日本と云う素晴らしい社会に於いて「性善説」で生きて居るから、そのママ海外に出ると「世間知らずの格好のカモ」に為る。冒頭で述べた様に、日本国内で相手にする人々と海外(特に「特定地域」)の人々は違うのだ。同じ様な対応をするのが国際センスの無さを如実に表している。  
 又、ファーストリテイリングは、2019年7月30日「『英語の社内公用語化』ブームが、密かに大失敗に終わりそうなワケ」で指摘した「馬鹿気た社内英語公用語化」を推進して居る企業でもある。  

 例えば、関西で関東から遣って来た人々が大阪弁を喋れば、親しみをも持たれる部分もあるが、大抵は「下手糞な関西弁が鼻で笑われる」事に為る。逆に関西人が東京に来ると、関西弁で押し通す事が多いが、自分達は関東よりも長い歴史と伝統を持つ関西から遣って来たと云う自負が在るからだ。
 それに対して地方から来た人々の多くは「自分達は田舎者だ」と云うコンプレックスを持っており、完璧な東京弁(標準語)を話して東京人の仲間入りをしようとする。社内英語公用語化と云うのはまさにこの様な事である。日本企業は、中国との取引云々以前に「真の国際感覚」を身に着ける必要があると言える。

 テスラに学ぶべき
 
 また、民主主義国家では「民意の反映」で在る事も、共産主義中国では「党の意向」=「国策」である。  
2012年に起こった反日不買運動の時期に、上海のユニクロ店舗で「尖閣は中国固有の領土」等と書いた紙を中国人の店長が一時張り出し、その写真がインターネット上に掲載された。ファーストリテイリングの柳井正氏は「反日デモの襲撃を避ける為、警察からの強い指示に店長が止む無く従った」と語ったと伝えられる。  

 中国共産党に対する柳井氏のヘッピリ腰はその当時からだが、この時に柳井氏の反日的行動に怒った日本国民がユニクロの不買運動を徹底的に行って居たら、ファーストリテイリングの現在も変わって居たかも知れない。しかし、民主国家では国民に不買運動を強制する事が出来無いのも事実だ。それに対して、最近の中国の国策と考えられるテスラへの消費者のクレーム騒動は常軌を逸している。  

 この件に関しては、朝香豊氏のコラム「反テスラのクレーム女子騒動から見る、中国経済の先行き」ブルームバーグの記事「テスラ株、1月以降で時価総額約33兆円吹き飛ぶ・・・重なる悪材料」更にはこの2つの記事を中心に解説した闇のクマさんの動画「テスラ株大暴落の影に中国共産党! 時価総額33兆円吹っ飛んだ!」を参考にして頂きたい。  
 ちなみに、テスラは世界時価総額ランキングの上位に位置するが、トヨタ自動車の時価総額が25兆円から30兆円程度であるから、33兆円と云うのは途轍もない数字である。

 要するに、テスラに責任が無いと考えられる事故の遺族の女性が、モンスタークレイマーとして暴れ捲ってテスラを平伏させたのであるが、国家の威信を賭けた上海モーターショーで車を踏み着ける等と云う事は「超監視社会」の中国では警察(共産党)の暗黙の了解が無ければ出来ないのだ。
 テスラも多くの日本企業同様、媚中(びちゅう)であり多大な貢献をして来た。しかし、そのテスラでさえ、中国国内電気自動車メーカーの邪魔に為ると思ったら、容赦無く叩くのが共産主義中国である。先端技術を移転ささせたら用済みとばかりにポイ捨てされると云う訳だ。
 
 そして、テスラは5月25日、中国国内でデータセンターを設置したと発表した。同センターでは、中国で販売された車両の車載カメラやセンサー等から収集したデータの保存や管理を行うとの事だ。勿論中国国内のデータセンターの情報は、中国共産党が好きな様に扱える。最近のテスラバッシングの目的はこれではないかと指摘する声もある。

 マスク騒動を忘れるな
 
 中国共産党は、毛沢東によって8,000万人もの国民が死に追い遣られ(西側推計)崩壊して居た経済を立て直す為の改革・解放の初期には揉み手で日本にスリ寄って来た。しかし、一度成長の軌道に乗るとその「恩を仇で返す」事に躊躇(ちゅうちょ)が無い。  
 それ処か、昨年4月17日の記事「マスク不足の真犯人は誰だ! 中国共産党政権の火事場泥棒を許すな」で述べた様に「他人の弱みに付け込む」のがお家芸である。テスラの一件は他山の石である。「どの様な日本の誠意も通じ無い国が世界には存在する」と云う事に日本企業が気付き「正しい行動」を行う事を切に望む。




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              大原 浩(国際投資アナリスト)



 〜管理人のひとこと〜

 中国に対する観方が異なるお二人の見解をご紹介した。これが我が国に存在する中国への二つの考え方だろう。私は必ず偏らず両方の考えを見分することにしたいと思っている。そして、基本的に二つの考えが存在して好いとも思っている。
 それは、国民感情・国民性の違いは必ず存在するからで、全く同じ考えに為る必要も無いし為りそうにも無いからだ。方や陸続きのユーラシア大陸の一部の大国と太平洋の北東に存在する小さな島国。この環境で同じような人間が生まれる必然性も必要も無いのだ。異なってこそ好いのであり、それを乗り越えた友情も在りだろうし喧嘩も上等なのだ。その違いを互いに尊重し認め合う事が出来る教養を養いたいものである。
 世界の5人に一人が中国人・・・この現実を真剣に考える必要がある。我々は余りにも島国根性から抜け出せない。もう少しだけ中国人の研究が必要なのは間違いない。

                   以上


















日本が中国の属国に為ら無い 唯一の方法とは? 加谷珪一




 日本が中国の属国に為ら無い 唯一の方法とは?


 5-31-2.gif 5/30(日) 15:50配信



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 〜一早くコロナ危機を収束させ、他国を尻目にプラス成長に転じた中国。日本では米国と並ぶ経済大国と為った中国の現状から目を背け様と云う人達も少なく無い。本書「中国経済の属国ニッポン」は、中国の経済・技術・軍事力等を冷静に分析し、中国の台頭をリポートした「警世の書」である〜

 
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         「中国経済の属国ニッポン」(加谷珪一著)幻冬舎  著者

 著者の加谷珪一さんは 経済評論家 日経BP社を経て野村證券グループの投資ファンド運用会社で企業評価や投資業務を担当 独立後は中央省庁や政府系金融機関等に対するコンサルティング業務に従事 著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎) 「日本はもはや『後進国』」(秀和システム)等がある


 内需主導経済へシフトし始めた中国

 第1章で、米国・中国・欧州・日本のGDP(国内総生産)の長期予測をして居る。生産関数を使ったマクロ経済モデルによる加谷さん独自の推計で、2030年頃に中国のGDPは米国を追い抜くと予想して居る。英国のシンクタンク・経済ビジネスリサーチセンターは2028年に、日本経済研究センターも2030年前後の米中逆転を予想して居り、確度は高いと書いている。
 その後、中国の成長率は鈍化するが、それは消費大国化する事を意味して居り「日本は、今の輸出モデルを続けて行く限り、中国を最大顧客としてビジネスをして行か無ければ為りません。これは日本に取って極めて大きな試練と云う事に為るでしょう」としている。

 こうした状況に拍車を掛けたのが、米国のトランプ政権による米中貿易戦争だと云う。中国は一時的に大きな打撃を受けたが、逆に米国への輸出が激減した事から、米国に対して遠慮する事無くアジア政策を進める様に為った。
 一部の論者は中国のGDP統計は信用出来ないと主張して居るが「輸出入と云うのは相手国が存在しますから、中国が虚偽の数字を発表する事は出来ません」として、精度は低いものの或る程度迄は信用しても大丈夫だと云う。寧ろ、事実から目を背ける事が問題だと指摘する。

 中国の技術力は最早トップレベル

 中国共産党は2020年10月、新5か年計画で「双循環を通じて経済の拡大を図る」との方針を決定した。これは輸出を中心とした外需(外循環)と国内消費を中心とした内需(内循環)の両方を組み合わせると云う意味だ。だが事実上、内需主導経済へのシフトと考えて間違い無いと云う。
 中国政府は、1980年代の日本が取った内需拡大策とその失敗を具(つぶさ)に検証して居り、加谷さんは「中国は比較的容易に消費社会にシフト出来るのではないか」と見て居る。

 第3章では、トランプ政権は〔関税〕と云う「伝家の宝刀」を抜いたが、結果的に中国の台頭を加速させると云う皮肉な結果を招いたと批判して居る。関税と云うカードには最早大きな効果が無い事が判ってしまったのだ。
 この処中国は香港弾圧を強化したりデジタル人民元の配布をしたりする等、米国への配慮を全く見せて居ないが、それも関税と云う最大の弱点が消滅した影響だと見ている。

 本書を読んで最も衝撃を受けたのは「第4章 中国の技術力は最早トップレベル」の件(くだり)である。日本政府が保有する1,000機以上のドローンの殆どは中国製であることや国際特許の出願数で中国が米国を抜いた事を紹介している。
 又、2020年に於ける世界のユニコーン企業513社の内、約半数が米国企業で約25%に当たる120社が中国企業、日本企業は4社のみだ。航空機産業でも自国製の開発を進め、形式証明を武器に世界の航空機市場をコントロールして来た米国の覇権が崩れる可能性も否定出来ないと云う。

 中国は国策として電気自動車(EV)へのシフトを進めて居る。中国は世界最大の二酸化炭素排出国なので、環境問題への対応でもあるが、それだけでは無いと指摘する。後発である中国メーカーが日米欧を追い越すチャンスでもあり、自動運転・ITサービスとリンクさせる事で、想像を超える巨大なビジネスが生まれる可能性があると云うのだ。

 「脱炭素」で中国をけん制せよ

 今後、日本は人口減少・低成長と明るい未来を展望出来そうに無い。巨大な存在と為った中国に対して、どうしたら好いのか・・・加谷さんは〔脱炭素〕と云う動きが中国を牽制する強力な武器に為ると指摘して居る。
 脱炭素シフトは国家間の覇権争いに為って居るのに、日本はそれを十分に理解出来ず、そのカードを十分に使え無い可能性も高いと危惧する。

 最終章で加谷さんは、ここ10年の〔嫌中論〕の台頭を批判。「幼稚な嫌中論は、中国の台頭が未だ先の事であると云う願望を前提にした、或る種の『ままごと』であったと考えて好いでしょう」と斬っている。それでは、どう中国と対峙すれば好いのか?
 短期的に有効なのは〔米国との協調〕だとする。脱炭素とリンクした国際金融システムを米国と協調して創出出来れば、中国に対して大きな牽制球に為ると観ている。

 中国の経済圏に入り込んでしまうと云う戦略もあるが「日本は経済活動の多くを中国にコントロールされてしまいますから、場合によっては中国の属国の様な地位に転落してしまう可能性も否定出来ないのです」と書いている。本書のタイトルは此処に由縁する。では、中国との距離を保つ方法は無いのか?
 輸出によって経済を成り立たせる産業構造から〔脱却〕し、完全に〔消費主導経済にシフト〕する事だ。基本的な経済活動は自国内で完結するから、中国との利害関係を最小限に食い止める事が出来る。

 その際、ネックに為るのが〔モノづくり大国〕と云う日本国民のマインドだと云う。そして、貧困を出来るだけ減らし国民が高いITスキルを身に着け、積極的にお金を使う〔消費主導型経済〕にする事だ。「高度で豊かな消費社会を作ると云う目の前の努力を確りと積み重ねれば、それコソが、最も効果的な対中戦略と為る筈です」と結んでいる。



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         「中国経済の属国ニッポン」加谷珪一著幻冬舎926円(税込)5-30-11


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 加谷珪一 プロフィ―ル 東北大学卒業後 出版社記者を経て 投資ファンド運用会社に転職 企業のオーナー社長やファンド出資者(個人投資家)等数多くの超富裕層と直に接する 2000年 コンサルタントとして独立 企業に対する経営コンサルティング ITコンサルティング 資産運用アドバイス等を行う 現在は億単位の投資を行う投資家でもある また自らが学んだ知恵やノウハウを基に「お金持ちの教科書」「出世の教科書」「投資の教科書」「起業・独立の教科書」等のウェブサイトを運営



 〜管理人のひとこと〜

 著者は「中国は巨大な輸出国から、何れ巨大な内需消費国へと為る」と指摘します。確かに人口から考えると十分に国内消費のみでGDPも維持出来るだろうし経済も廻るでしょう。指摘のあった航空機の分野でも、現状の世界市場を意識せず国内消費のみで採算は取れそうです。
 しかし、日本も「輸出に依存せず国内消費へ回帰しろ」とのことですが、如何なものなのでしようか。多寡が一億少々で今後益々人口減少に歯止めも掛かりません。確かに現状の輸出が好調なのは一部の車関係だけで、家電も半導体もソコソコですからGDPアップにも余り貢献しません。GDPの内容は国内消費が大きいのですが、政府は輸出産業に相当なエネルギーを消費して国内消費は消費増税で締め付けて居るだけです。国内消費を無視し未だに輸出に依存する政府の思惑が大きくズレて居るのが現状です。


                    以上












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