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2024年11月09日

【離婚からの立ち直り】『心の痛みの治癒期間を終え、再出発』

離婚から6年経った。
幸せなことに人生で何度かの恋愛を経験できた。

なのに僕は精神的に未熟だった。

異性から好かれることが
どれだけ幸せなのかに気づけなかった。
ふとした時に、相手を傷つけた後悔と罪悪感に襲われる。

僕がスポーツや創作活動に没頭する理由は、
成長欲や表現欲だけじゃない。

きっと、相手の心の涙から必死で目を逸らしているんだ。
立ち止まっていたら、その痛みに押し潰されてしまいそうだから。

この6年間、心理学の本を読み漁った。
ゼロから人間について学び直した。

たとえ手遅れでも、
せめて今からご縁がある人の心を少しでも理解したい。

僕の残りの人生で大切にしたい言葉は、
Mr.Childrenさんの名曲「Tomorrow Never Knows」の歌詞

『癒えることない痛みなら いっそ引き連れて』



⇒他記事
【短編小説】『白だしうどんは涙色』全2話

【短編小説】『鳥カゴを打ち破って』全4話




2024年11月01日

【短編小説】『なぜ学校にはお金の授業がないの?(リメイク)』7 -最終話-

【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Samune1Small1.png

【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Character1Small1.png

【第6話:お金は工場の煙に消ゆ】からの続き



【第7話:お金は自由との引換券】



<現代>

メルクリス
『おかえりなさい。』
『あらあら…難しい顔しちゃって。』


真知
「…もう学校なんて信じられない…。」


メルクリス
『…何があったか聞かせて?』


真知
「工場長と政府の人が言ってました。」
「工場労働者を育てるために学校を作るって。」
「命令に従順だったり組織に忠実だったり。」
「国に都合のいい人材を作るため…。」


メルクリス
『政府が主導するからにはそうね。』


真知
「私、邪推しちゃったんです。」


メルクリス
『邪推?』


真知
「学校でお金のことを教える理由なんてないんです。」
「お金の知識を持つ人が増えたら困るから。」


【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode7MishiruOtona4Small4.png

メルクリス
『…知らない人が多い方が都合がいいかもね。』


真知
「社会の安定は、経済活動し易くして利益を得るため。」
「自らの権力や信用を盤石にして、その座に居続けるため。」


「もちろん私たちはそのおかげで生きてます。」
「けどそれは鳥カゴじゃないですか?」

「もっと利益、もっと労働って!」
「人生には”ラットレース”しか道がないの?!」


メルクリス
『…極端な時代を見せすぎたわね。』
『それが資本主義よ。』


真知
「やっぱり…。」


メルクリス
『確かに学校でのお金の教育は不十分。』
『真知が邪推するのも仕方ないわ。』
『たとえそのおかげで今があるとしても。』


真知
「感謝と、裏側への不信感がぶつかるんです。」


【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode7Torikago1Small1.png

メルクリス
『そう…やっぱりあなたを連れて行ってよかった。』


真知
「どういうこと?」


メルクリス
『真知は周囲が避けがちな”お金の話”を疑った。』
『悩み考え、お金のことを少し知った。』
『あなたの知見は広がっているはずよ?』


真知
「知ったら苦しいことまで知ってしまったけど…。」
「お金や社会の見方が変わりました。」


メルクリス
『それでいいの、自分なりの答えを探してね?』
『それに真知も気づいているはずよ。』
『時代は変わってきている。』


真知
「最近はお金の話をしても大丈夫な空気ですね。」


メルクリス
『そうね、時代の必要性に迫られてはいるけど…。』
『お金の知識を得るチャンスが無限にある時代よ。』


真知
「…私、お金は自由との引換券だと思うんです。」


メルクリス
『引換券?』


真知
「人生の自由な選択肢を買うんです。」


メルクリス
『自由な選択肢を買う…ね。』


真知
「パパとママが働くのはお金のためじゃない。」
「お金で自由との引換券を得て…。」



「幸せな人生を送るため。」



「なのに、お金への誤解が幸せを邪魔してる。」
「お金は苦労の対価とか長時間労働とか。」
「パパやママや先生が悪いわけじゃない。」
「誰も知らないから教わる機会がなかっただけ。」


メルクリス
『…そこまで考えられるあなたなら大丈夫。』
『お金に好かれる幸せな未来が待っているでしょう。』


真知
「私、残りの高校生活で考えます。」
「お金で得た自由でどう幸せになりたいか。」


メルクリス
『それを考えてくれたら、商業神として最高に嬉しいわ。』


【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode7Sayonara1Small1.png

………。



いつの間にか
真知の歩く先の霧が晴れていました。

家までもう少し。
真知はあたたかな夕陽に包まれながら決めました。

真知
「今日はパパとママ早く帰って来るかな?」
「おいしい料理作って待ってる!そして…。」



「ありがとうって伝えるの!」


【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode7Arigato1Small1.png



ーーーーーENDーーーーー



⇒他作品
『無表情の仮面』全11話

『国教「頑張れ教」』全4話

『雪の音色に包まれて』全4話


⇒参考書籍

















2024年10月29日

【短編小説】『なぜ学校にはお金の授業がないの?(リメイク)』6

【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Samune1Small1.png

【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Character1Small1.png

【第5話:お金という必要悪】からの続き



【第6話:お金は工場の煙に消ゆ】



<19世紀:欧州北西部の島国>

この国は100年前に産業革命を起こして以来、
多くの労働者が工場で働いていました。

過酷すぎる労働環境は徐々に改善されましたが、
まだまだ工場労働者が足りませんでした。

工場長
『ウチも労働者の育成が間に合っていません。』
『作業員がもっとほしい。』


役人
『政府も工場の人手不足を危惧しています。』
『そこで”学級制度”の導入を検討しています。』


工場長
『学級とは?』


役人
『子どもたちに読み書きと計算を教えるのです。』


工場長
『それなら私塾や教会がやっているでしょう?』


役人
『確かにやっていますが年齢も時間帯もバラバラです。』
『学級では同じ時間に、同じ年齢の子を教室に集めます。』
『そこで集団授業、集団行動を教えます。』


真知
(それ…現代の学校と同じ?)


工場長
『効果は?』


役人
『工場の作業には個性より同調が必要です。』
『集団行動で”みんなと同じが良い”と教えます。』
『スケジュールを守らせ、命令に従順な人材を作るのです。』


工場長
『それは名案。』


役人
『工場労働者の育成は、国力増強の急務です。』


真知
「待ってください!」
「それじゃあ学校は工場で働く人を育てる場所?」


役人
『主な目的はそうです。』


工場長
『我が国はもうすぐ世界を獲る。』
『そのために必要なモノが足りない。』
『時代が工場労働者を欲しています。』


【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode6Factory1Small1.png

真知
「まさか子どもたちも労働力に…?」


工場長
『これでもかなり改善されたんですよ。』
『私が子どもの頃は1日18時間労働もザラだった。』


役人
『我々の監督不行届きです…。』


工場長
『真知さんは工場労働者ではないようだが…。』
『どちらへお勤めかな?』


真知
「私はまだ高校生で…。」


役人
『コウコウセイ?聞かない職ですね。』


真知
「あ…何でもないです!」
「実家のお店の手伝いを(汗)」


役人
『失礼しました。国の発展への寄与に感謝します。』


真知
「どういたしまして!(汗)」

(学校は工場労働者を作る?)
(それは現代でも同じじゃない?)
(入る場所が工場から会社になっただけ。)

(人生のどこで役立つかわからない授業。)
(決まった時間割にチャイム音。)
(すべて工場長の話と繋がってる…。)

(つまり現代の学校はサラリーマン育成機関?)


その後、欧州の辺境の島国は
世界最大の植民地を有する大帝国になりました。

歴史家たちは彼らの華々しさと残酷さを
ドラマティックに記録しました。

影の立役者である
”学校で無個性に教育された工場労働者”が
日の目を見ることはありませんでした。




真知
「もうわかんない…。」
「学校の勉強楽しくないよ!」
「毎日ボロボロになって働くの?一生?」

「お金って何?お金は大事だよ?」
「はしたなくないし汚くないよ?」
「なぜ授業で誤解を解かないの?」

「お金は国家の商品?」
「学校で工場労働者になるの?」
「サラリーマンになるの?」

「私はどう生きていけばいいの…?!」


パァァァ

【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode6Factory2Small2.png

まばゆい光が真知を包みました。

彼女の悲鳴は誰に聞こえるでもなく、
工場の煙に飲まれて消えていきました。



【第7話(最終話):お金は自由との引換券】へ続く

2024年10月26日

【短編小説】『なぜ学校にはお金の授業がないの?(リメイク)』5

【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Samune1Small1.png

【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Character1Small1.png

【第4話:お金が紙切れになる時】からの続き



【第5話:お金という必要悪】



<紀元前1世紀頃:中東>

地中海の東端に小さな国がありました。
この国は欧州の強国に屈し、属州になっていました。

国民が貧困に苦しむ中、
彼らを救おうと立ち上がった宗教家が
多くの支持を集めていました。

宗教家
『皆さんは明日のパンにも困っている。』
『なのにお金持ちは捨てるほどパンを手に入れる。』

『お金持ちが憎いですか?』
『お金持ちは幸せとは言えないのです。』

『お金持ちが天国へ行くのは難しいからです。』
『ラクダが針の穴を通るよりも。』

『だから皆さんこそ救われるのです。』
『貧しくとも、神を信じて清く生きる皆さんこそ!』


民衆
『そうだそうだ!金持ちは汚い奴らだ!』
『正しく生きてこそ天国へ行ける!』


宗教家の演説会場は、お金持ちへの憎悪と
救世主への狂信が入り混じった異様な空気でした。

【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode5Shiden1Small1.png

演説が終わり、民衆がいなくなった頃、

真知
「あの…質問してもいいですか?」


宗教家
『何でしょう?』


真知
「なぜ清貧を説くんですか?」
「できれば生きているうちに救われたいのに。」
「これじゃあお金への憎悪が増すばかり…。」


宗教家
『痛いところを突きますね。』
『そう…見方によっては、私は彼らを騙している。』


真知
「ではどうして…?」


宗教家
『先ほどの民衆の活気を見ましたか?』


真知
「はい…すごい一体感が…。」


宗教家
『あれも1つの救いです。』


真知
「救い?」


宗教家
『人間には”幻想”を信じる力があります。』
『精霊や王を信じれば心の拠り所に。』
『お金持ちは民衆の敵と信じれば団結力に。』


真知
「お金という必要悪が人々に活力を?」


宗教家
『そう、富は一部の権力者が独占してしまった。』
『その格差は大部分の国民にはもう覆せない。』
『絶望し、放っておけば国中で暴動が起きる。』


真知
「お金には価値があると信じる力の副作用?」


宗教家
『ええ、お金は今やどんな神より共通の神です。』
『”お金信仰社会”を覆せない以上、別の”すがるもの”が必要です。』


真知
「それで清貧こそ救われると?」


宗教家
『ええ、貧困や格差を納得させる”拠り所”が必要です。』
『お金を悪者にして心苦しいが、彼らの生きる力になれば…。』


【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode5Shiden2Small2.png

その後、宗教家は異端者として
宗主国に捕らえられてしまいました。

民衆は彼の思想を信じて団結し、
宗主国に抵抗しました。

宗主国は民衆の反乱を抑え切れず、
ついに彼の思想を”国の宗教”と認めました。

お金へのネガティブさを含んだその思想は、
後に欧州を席巻する巨大宗教になりました。




<現代>

メルクリス
『おかえりなさい。』
『どう?お金は”はしたないもの”?』


真知
「はい…2000年以上前から。」
「お金は汚いというイメージはその名残り?」


メルクリス
『かもしれません。』
『お金の教育という意味では大きな失敗でしょう。』


真知
「…仕方ない事情もありました。」


メルクリス
『事情?』


真知
「団結と、貧困や格差への納得感です。」
「清貧を良しとして、人々が暴走しないように。」
「”すがるもの”に希望を持てるように…。」


【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode5MishiruOtona4Small4.png

メルクリス
『彼らは必死だったでしょうね…。』


真知
「わからない…。」
「お金へのネガティブなイメージには背景があった。」
「それを授業でやればお金への誤解が解けるのに!」
「なぜ学校で教えてくれないの?!」


メルクリス
『では…それを見せましょう。』
『行き先は19世紀の欧州。』

『さぁ行ってらっしゃい。』




【第6話:お金は工場の煙に消ゆ】へ続く

2024年10月23日

【短編小説】『なぜ学校にはお金の授業がないの?(リメイク)』4

【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Samune1Small1.png

【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Character1Small1.png

【第3話:お金は国家の商品】からの続き



【第4話:お金が紙切れになる時】



<王宮>

近衛兵
『国王さま!王宮の入口に国民が集まっています!』


国王
『反乱か?』


近衛兵
『いえ嘆願です。』
『”物価が高過ぎて食料が買えない”と。』


国王
『今のパン1個の相場は?』


近衛兵
『1個1000エレクトです…。』


国王
『原因は粗悪なコインの価値の低下…だな?』


近衛兵
『申し上げにくいのですが…。』


国王
『よい、私の責任だ。』
『国民にできる限りの支援を。』


近衛兵
『御意…。』




 『国王さま助けてください!』
 『子どもがお腹をすかせて…。』
 『ママー!おなかすいたよー!』


王宮には連日、
国民の悲痛な叫びが響きました。

国王の懸命な支援もむなしく、
戦況も国民の生活もどんどん悪化しました。

高まる王家への不信感が
コインの価値をさらに下げ、
物価高と治安悪化が進みました。




<さらに数ヶ月後、王宮>

国王
『…国民は全員、避難できたか?』


財務大臣
『はい…。』


国王
『ならば良い。』


財務大臣
『申し訳ございません…。』
『コインの流通を制御できなかった私の責任です…。』


国王
『私の失政だ、顔を上げてくれ。』
『財務大臣、真知、すまなかった。避難してくれ。』


財務大臣
『ですが…!』


国王
『お前は必要な人材だ。』
『新たな長とともに国の財政を支えてくれ。』


真知
「王さま…私、無知でした…!」
「お金はたくさん出回るほど幸せなんて勘違いして…!」


国王
『若者よ、ここでの学びを後世に活かすのだ。』
『行ってくれ、じきに隣国の兵士が来る。』


真知
「待って!王さま…!」


パァァァ

【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode4Okyu2Small2.png

まばゆい光とともに
王宮から真知の姿が消えました。



<現代>

メルクリス
『おかえりなさい。』


真知
「戻ってきたの…?」


メルクリス
『ええ、危ないところでした。』


真知
「王さま…大臣さん…無事かなぁ…?」


メルクリス
『…無事だといいですね…。』
『…”お金は商品”だったでしょう?』


真知
「お金は商品でした…。」
「お金を安く作って、高い価値で流通させる。」
「国王さまの権力への信用あっての商売。」


メルクリス
『まさに国家の商売ね。』


真知
「それで気づいたんです。」
「国は国民をタダ働きさせられるって。」


メルクリス
『…続けて?』


真知
「あの国の王さまは立派でした。」
「けど、悪い王さまはもっと粗悪なコインを与えて…。」
「タダで国民に戦争をさせることもできる…。」


【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode4MishiruOtona4Small4.png

メルクリス
『…。』


真知
「もしかして…。」
「だからお金は”はしたない”んですか?」
「国民をボロ雑巾みたいに働かせるから?!」


メルクリス
『確かにそれは人間の醜さの1つです。』
『が、一面だけで判断するのは早いと思いませんか?』


真知
「そうですよね…。」
「私、もっとお金の歴史を見てみたい。」
「お金は”はしたない”の起源を知りたい!」


メルクリス
『勉強熱心ですね。』
『次は紀元前1世紀頃、場所は中東。』

『行ってらっしゃい。』




【第5話:お金という必要悪】へ続く

2024年10月20日

【短編小説】『なぜ学校にはお金の授業がないの?(リメイク)』3

【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Samune1Small1.png

【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Character1Small1.png

【第2話:お金の歴史を知る旅へ】からの続き



【第2話:お金は国家の商品】



<紀元前700年頃:アナトリア地方>

戦乱のアナトリアを統一した某王国には
”エレクト”という通貨が流通していました。


今日は国王と財務大臣との会議の日。
真知はさっそく”女神のパスポート”を使い、
王宮での会議を見せてもらうことにしました。

国王
『国内は安定したが、隣国に軍拡の動きがある。』
『防衛費を調達したいが、良い方法はないか?』


財務大臣
『あります。』
『新たに”100エレクトのコイン”を流通させましょう。』


国王
『なるほど、10エレクトコインだけでは買い物が大変だな。』


財務大臣
『それだけではありません。』
『コインの製造費との差額でさらに利益を出せます。』


真知
「???」


国王
『では安価に作れるコインのデザインを検討する。』
『決まったら招集通知を出す。』


財務大臣
『御意。』


真知
「あの…どういうことでしょう?(汗)」
「セイゾウヒとのサガク?」


国王
『説明不足で失礼した。』
『ここに10エレクトコインがあるだろう?純銀製だ。』


真知
「はい、きれいな絵柄ですよね。」


国王
『実は、これ1枚作る費用は1エレクトなのだ。』


真知
「えぇ?!すごく手が込んでるように見えますよ?」


財務大臣
『鋳造技術は年々発達していますから。』
『それに、作ったコインの価値を決めるのは国王です。』


真知
「王さまが”10エレクト”と言えば…。」


国王
『青銅の粗悪なコインでも10エレクトだ。』
『国民が王家の力を信用する限り。』


真知
「じゃあコイン1枚作るごとに…。」
「国は差額で9エレクト儲かるんですか?」


財務大臣
『そういうことです。』


真知
(そういえば現代で聞いたことある。)
(1万円札を1枚作る費用は数円って…。)


国王
『エン?聞いたことのない通貨だな。』


真知
「な、何でもないです!(汗)」


国王
『そうか。』
『私は戻るが、真知もデザインの案を出してくれぬか?』


真知
「わ、私が?」


国王
『なにぶん多忙でな、協力してくれると助かる。』


真知
「わかりました!」


【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode3Okyu1Small1.png

”お金は国家の1番の商品”
それは真知にとって衝撃でした。

コインを安価でたくさん作るほど
製造費との差額で儲かります。

さらに出回るお金が増えれば、
国民はお金をたくさん持って豊かになるはず。

真知
「そっか!コインをどんどん作ればみんな幸せ!」


真知は浮かれながら
100エレクトコインのデザインを考えました。

そこにとんでもない落とし穴があるなんて
思いもしないまま。




<数ヶ月後:某王国、城下町のパン屋>

真知
「お姉さんこんにちは!」


パン職人
『あら真知ちゃん!これ、いつものパンよ。』


真知
「ありがと!」
「やっぱりお姉さんのパンは大人気だね!」


パン職人
『おかげで商売繫盛よ!』
『けど最近、お客が出すコインの質が気になってね。』


真知
「コインの質?」


パン職人
『ホラ、少し錆びてるでしょ?』
『噂だけど、混ぜものコインも出回ってるんだって。』


真知
「混ぜもの?純銀製だけじゃないの?」


パン職人
『そうらしいの。』
『錆びていても価値は同じだから問題ないけど…。』
『その内、価値が下がるんじゃないかと不安なの。』


真知
(おかしいなぁ…。)
(たくさんお金が出回ったら幸せなはずなのに…。)


パン職人
『だから値上げを考えてるの。』
『パン1個1エレクトから2エレクトへ。』


【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode3Bakery1Small1.png

真知
「だ…大丈夫だよね?」
「みんなお金たくさん持ってるから買えるよね?」


パン職人
『物価高が心配ねぇ…。』




間もなく
某王国と隣国との戦争が始まりました。

序盤は優勢だった某王国ですが、
資源に恵まれた隣国に押され、
さらに多額の戦費がかさみました。

結果、純銀製のコインだけでは足りず、
粗悪なコインが大量に出回りました。

そんな”悪貨”も、国王の権力にかかれば
純銀製と同じ100エレクトになりました。


が、城下町では
コインの価値の低下を恐れた店が
値上げを繰り返しました。

さらに数ヶ月後、パン1個1エレクトから
1000エレクトになっていました…。



【第4話:お金が紙切れになる時】へ続く

2024年10月17日

【短編小説】『なぜ学校にはお金の授業がないの?(リメイク)』2

【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Samune1Small1.png

【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Character1Small1.png

【第1話:お金は”はしたない”?】からの続き



【第2話:お金の歴史を知る旅へ】



<6年後>

「なぜ学校にはお金の授業がないの?」

真知はその答えがわからないまま
高校2年生になりました。

同級生は受験や就職で
慌ただしく過ごしていましたが、
真知は虚しさでいっぱいでした。

学校の勉強を頑張る意味がわからず、
霧の中へ迷い込みました。


真知
「学校の授業?進学?就職?」
「その先に待つのは辛い仕事?」
「人生にはそんな道しかないの?」


真知が歩く先の霧が
どんどん深くなっていきました。
そしてついに一寸先も見えなくなった頃、



パサッ



真知
「?…足元に何か落ちて…。」


真知が
足元のネームプレートらしきものを拾い上げると、

パアァァ

真知
「まぶしい…!」


【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode2KIRI1Small1.png


『それは女神のパスポートです。』
『お金の歴史を見てきてはいかが?』


まばゆい光の中に優しい声が響き、
美しい女性が現れました。

真知
「誰…?」


メルクリス
『真知、初めまして。』
『私はメルクリス、商業を司る女神です。』


真知
「商業の神さま?女神のパスポート…?」


メルクリス
『真知は今、とても迷っていますね?』
『学校に金の授業がないことで。』


真知
「は…はい!」
「お金は大切なのに、学校で教えてくれないんです。」
「会社に入っても、辛い仕事をする未来しか見えなくて…。」


メルクリス
『よく気づきましたね。』
『周りはそれどころじゃないのに。』


真知
「おかしいと思うんです。」
「お金は”はしたない”って思われてることも。」


メルクリス
『では、真知の疑問の答えを探しに行ってみませんか?』


真知
「え…?どこへ?」


メルクリス
『お金の歴史を知る旅です。』


【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode2Mercuris1Small1.png

真知
「過去へ?そんなことが…。」


メルクリス
『できますよ、神ですから。』


真知
「現地の人とどうやって話すんですか?」


メルクリス
『そのための”女神のパスポート”です。』
『それを見せればどんな王宮にも入れます。』
『もちろん権力者とも自由に話せます。』

『怪しいでしょ?』


真知
「…都合よすぎな気がします。」


メルクリス
『(クス…)…正直ですね。』
『真知のそんなところも気に入りました。』
『あとはあなたの選択です。私は道を示すだけ。』




女神からの唐突な提案に、真知は迷いました。

もし現代へ帰って来れなくなったら?
パスポートが効かずに捕まったら?

色んな危険が真知の頭をよぎりましたが、

真知
「…見たいです、お金の歴史。」
「お金は”はしたないもの”じゃなくて大切だから。」


【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode2MishiruOtona4Small4.png

メルクリス
『…度胸がありますね。』
『大丈夫、危ない時は私があなたを引き戻します。』


真知
「どの時代へ?」


メルクリス
『まずは紀元前から。』
”お金は商品”だと知ってもらいましょう。』


真知
「お金は商品?お金で商品を買うんじゃなくて?」


メルクリス
『行き先は紀元前700年頃のアナトリア地方。』
『では、行ってらっしゃい。』


真知
「待って!どういうこ…。」


パアァァ

まばゆい光とともに、
真知の時間旅行が始まりました。



【第3話:お金は国家の商品】へ続く

2024年10月14日

【短編小説】『なぜ学校にはお金の授業がないの?(リメイク)』1

【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Samune1Small1.png

【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Character1Small1.png

<登場人物>
深澤 真知(ふかざわ みしる)
 ♀小学5年生(11歳)⇒高校2年生(17歳)

メルクリス
 商業の女神
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【第1話:お金は”はしたない”?】



真知
「パパ…ママ…今日も遅いのかなぁ…?」


小学5年生の深澤 真知(ふかざわ みしる)は、
家で1人、寂しさを募らせました。

真知の両親は共働きで帰りが遅く、
なかなかお話できませんでした。

真知
「なぜパパもママもこんなに働くの…?」


ある夜、真知の母親が
久しぶりに早く帰宅しました。

真知
「ねぇママ?」



『なぁに?』


真知
「パパもママも毎日帰りが遅いよね。」
「いつも疲れてるし…。」



『パパはお仕事を頑張ってくれているのよ。』


真知
「お仕事って辛いの?」



『内容によるけど、辛いことも多いの。』


真知
「ママのお仕事も?」



『そうね…。』


真知
「パパはどこでお仕事してるの?」



『会社よ。』


真知
「カイシャ?」



『会社を経営している人に雇ってもらうの。』
『パパは会社の役に立つために働いているのよ。』


真知
「やっぱりパパはすごいね!」



『そうね…。』


真知
「ねぇママ、大人はどうしてこんなに働くの?」
「お金をもらうため?」



『多くの人はそうね…。』
『お給料をもらって生活するためよ。』


真知
「パパもママも会社からお金をもらうんでしょ?」



『そうよ。』


真知
「会社に入るって難しいの?」



『えぇ、たくさんお勉強してやっと入れるの。』


真知
「お勉強して会社に入って、辛いお仕事するの?」
「お金って辛いことをした分だけもらえるの?」



『…そ、それはね…。』


【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode1MishiruChild2.2NightSmall2.2.png

真知
「じゃあ遊園地の人は?」
「私たちを楽しませてくれるよ?」
「人を楽しませてもお金もらえるの?」



『きっと裏側で辛いこともあるのよ?』
『ホラ、怖いお客さんもいるでしょう?』


真知
「怒ってるお客さん?」



『そうよ、怒っている人ともお話しないといけないの。』


真知
「私だったら泣いちゃいそう…。」
「そっか、お仕事って辛いんだ…。」



『そうね…。』


真知
「ママ、辛いのにお仕事してくれてありがと!」
「パパにも伝えるね!」



『ええ…パパもきっと喜ぶわ…。』


真知
「うん!」



『それとね真知。』
『あまりお金のことを話すものではありませんよ?』


真知
「ダメ?お金は大切なのに?」



『大切だけど、あまり口にしない方がいいの。』


真知
「どうして?」



『お金のことばかり考えると”はしたない”と思われるからよ。』


真知
「はしたない?」
「パパもママもこんなに頑張ってお金をもらってるのに?」



『今は飲み込んでちょうだい…。』
『その内わかる時が来るから…ね?』


真知
「むぅー…わかった。」




数日後、真知はクラスメイトの
咲姫(さき)ちゃんの家に招待されました。

咲姫ちゃんの父親は、
会社を経営する”社長さん”でした。

真知
「”しゃちょうさん”ってどんなお仕事?」


咲姫
『詳しくはわかんないけど…。』
『毎日色んな”とりひきさき?”へ行ってる。』
『あとパパの会社の”しさつ?”に行ってるよ。』


真知
「忙しそうだね…。」


咲姫
『うん…だからあんまり会えないの…。』
『帰ってきても夜遅くまでお仕事してる。』
『パパ、寝れてないみたい…。』


真知
「そっか…大変…。」
(私のパパのお仕事と全然違うけど…。)
(お仕事ってやっぱり辛いもの?)


咲姫
『この前、パパのお仕事を聞いてみたの。』


真知
「知りたい!それでそれで?」


咲姫
『”パパはみんなが喜んでくれるものを売ってる”』
『”そしてパパの会社で働いている人たちにお給料を払う”』
『って言ってた!』


真知
「かっこいい!」


咲姫
『うん!だから私パパを尊敬してるの!』
『みんなのためにお仕事するパパはかっこいいもん!』


【MMD】Novel Okane NO Jugyo Remake Episode1Saki1Small1.png

真知
「すごいなぁ…会社をやって、みんなにお給料を払って…。」
「咲姫ちゃんのパパはどうやって会社を作ったの?」


咲姫
『パパが作ったわけじゃないの。』
『親戚から継いだんだって。』


真知は咲姫ちゃんの父親の話を聞いて、
学校での日々に疑問を持ちました。

真知
「会社に入るためにお勉強するの?」
「会社に入らなくてもお金をもらってる人もいるよ?」
「なら学校で”お金の稼ぎ方”を習えたらいいのに…。」


「なぜ学校にはお金の授業がないの?」




後日、真知の学校で定期テストがありました。

真知は学校の勉強の目的がわからなくなり、
成績が落ちていました。


ある日の放課後、
真知は担任から職員室へ呼び出されました。

担任
『深澤、最近どうした?』
『この成績じゃあ上のランクの学校は厳しいぞ?』


真知
「上の学校へ入れなかったらどうなるんですか?」


担任
『どうなるって…良い会社へ入れなくなるんだよ。』


真知
「良い会社ってどんな会社ですか?」


担任
『もらえる給料が高い会社。』


真知
「じゃあ、咲姫ちゃんのパパは?」
「”しゃちょうさん”も良い会社へ入るんですか?」


担任
『?!…まぁ1回は…入るんじゃないか?(汗)』
(マズイ…経営者のことはわからん…。)


真知
「学校のお勉強は、良い会社に入るためですか?」


担任
『すべてではないが、大体そうだな。』


真知
「先生も会社からお金をもらってるんですか?」


担任
『先生は公務員だから、国から給料をもらってる。』


真知
「学校の勉強を頑張ったら”しゃちょう”になれますか?」


担任
『…そ、そうかもな(汗)』


真知
(先生は本当に知ってるの?)
(焦ってるけど…。)


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担任
『もういいだろ?(汗)』
『次回はもう少し成績を…。』


真知
「先生!なぜ学校にはお金の授業がないんですか?」


担任
『…授業の内容は国が決めてるんだ(汗)』
『先生がどうこうできることじゃない。』


真知
「私、ずっと気になって…。」


担任
『ホラ、帰って復習でもしなさい。』


真知
「はぁい…。」


真知の心のモヤモヤは
どんどん膨らんでいきました。

真知
「なぜお金のことを話すのは”はしたない”の?」
「なぜ誰もお金のことを教えてくれないの?」
「ねぇどうして?どうしてなの?!」




【第2話:お金の歴史を知る旅へ】へ続く

2024年10月09日

【短編小説】『無表情の仮面』11 -最終話-

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【第10話:守りたい人がいる】からの続き

<登場人物>
リオラ
 ♀主人公、16歳
 西の国の魔法学院・高等科に在籍

エルーシュ
 ♀リオラの母親、32歳

アシェラ
 ♀エルーシュの妹/リオラの叔母、22歳

クラヴィス
 ♀10歳、南の国の魔法学院・初等科に在籍

オルニス
 ♂クラヴィスの父親、32歳
 南の国の国防軍・魔法部隊隊長
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【第11話:お母さんの笑顔】



<数日後、南の国:王都>

私とアシェラさんは、
冷眼の魔女を封印した祝勝会に招かれた。

国防軍・魔法部隊とともに
国を救った英雄の1人にされてしまった。

私は何もできなかった。
あれは私を守ってくれたアシェラさんと、
救援に来てくれたオルニスのおかげ。

ともあれ、クラヴィスが
父親を失わずに済んでよかった。



クラヴィス
『ねぇ、リオラちゃん。』


リオラ
「なぁに?」


クラヴィス
『…ありがとね、ママの仇を討ってくれて。』


リオラ
「…あれはパパとアシェラさんの力だよ。」
「クラヴィスのパパはやっぱり強いよ。」


クラヴィス
『リオラちゃんもパパの術に協力したんでしょ?』
『だったら一緒!』


リオラ
「うん…ありがと。」
「ねぇクラヴィス、変なこと聞いちゃうけど…。」


クラヴィス
『なぁに?』


リオラ
「やっぱり、冷眼の魔女が憎い?」


クラヴィス
『もちろん憎いよ、ママの仇だもん。』


リオラ
「だよね。なのに…。」


クラヴィス
『?』


リオラ
「どうしてクラヴィスはまっすぐな笑顔でいられるの?」


クラヴィス
『笑顔かぁ…私ってそんなに笑ってる?』


リオラ
「羨ましいくらいに。」


クラヴィス
『そっかぁ…うーん…。』
『誰かがいなくならないように、かな?』


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リオラ
「いなくならないように?」


クラヴィス
『ママがいなくなって、私は魔女を憎んで…。』
『もし私が魔女を倒したら、誰かが私を憎んで…。』
『っていうのを止めたかったの。』


リオラ
「そっか…憎しみの連鎖を止めようと…。」


クラヴィス
『だから私、誰かを憎む以上に笑うことにしたの。』
『ママは命がけで守ってくれたんだもん。』
『笑ってる私の方がママ喜ぶと思う。』


ぎゅっ

クラヴィス
『わわ!リオラちゃん何…?!』


リオラ
「クラヴィスは優しいね…。」
「ママもきっと喜んでるよ…。」


クラヴィス
『…ママ、喜んでる…?』
『そうだと…いい…なぁ…(涙)』



ーー


<その夜、リオラとアシェラの宿泊先>

リオラ
「こんな立派な部屋を用意してもらっていいのかな…?」


アシェラ
『ね…すごいよね。』
『普段は王都の要人が泊まる部屋なんだって。』


リオラ
「わ、私は戦闘では力になれなくて…(汗)」


アシェラ
『まぁまぁ、結果オーライでいいんじゃない?』
『とりあえず平和になったんだし。』


リオラ
「そうだよね…それじゃ、アシェラさん。」


アシェラ
『なぁに?』


リオラ
「今から約束を果たすから。」


アシェラ
『約束?』


ぎゅっ

アシェラ
『…?!リオラ、急にどうし…。』


なでなで

アシェラ
『…ちょっ…恥ずかしいよ…///(照)』


リオラ
「山道で約束したでしょ?」
「私がお母さんに逢えたらなでなでするって。」
「ずっと支えてくれた感謝の印に!」


アシェラ
『あ…。』


リオラ
「アシェラさん、ありがと。」
「私が生まれてから、ずっと支えてくれて。」


アシェラ
『…(涙)』


リオラ
「あの時、弱音を聞かせてくれて嬉しかったよ?」


ポロ、ポロ、

リオラ
「辛かったよね、悲しかったよね…。」
「お姉ちゃんがあんなことをするようになって…。」
「せっかく再会できたのに、封印することになって…。」


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アシェラ
『うぅ…お姉ちゃん…(涙)』


リオラ
「今だけは…私がアシェラさんの姉代わりで、親代わり。」


アシェラ
『…リオラ…あなたこそ…。』
『無表情の仮面、外せたじゃないの…。』


リオラ
「…それも含めてのお礼。」


ポロ、ポロ、

アシェラ
『…もう少し、このままでもいい…?』


リオラ
「…うん。思いっきり泣いて?」




アシェラさんは私にしがみついて泣いた。
ずっと張りつめていた”心の糸”が切れたように。

アシェラさんは6歳の時、
私がスケジュール管理されて育てられるのを見て、
こう決意してくれた。

『自分だけでもリオラちゃんの味方でいよう』

以来、彼女はずっと私の姉であり、
母であり続けてくれた。

私が実母の愛情を諦めて
無表情の仮面を着けてしまってからも、
私を見捨てずにいてくれた。

今度は、私が恩返しする番。

どうか今だけは、
アシェラさんの心の支えになれますように…。


ーー


<1年後、南の国:国境付近の山地>

リオラ
「…お母さん、久しぶり。」


私の目の前にあるのは、
1年前の魔封じの秘術で形成された巨大な宝石。

中に封印されているのは、
かつて”冷眼の魔女”と恐れられた
私の実母・エルーシュ。


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彼女の顔は無表情ではなく、
涙でぐしゃぐしゃだった。

リオラ
「お墓参り?違うよ。」
「学院の長期休みに入ったから逢いに来たの。」


長年、未完成とされてきた魔封じの秘術は、
彼女の封印という功績をもって一旦完成。

世界各地の魔法学院の教科書が
書き換えられた。

ただ、魔封じの秘術は
今も世界中で改良のための研究が続いている。

お母さん…もとい、
冷眼の魔女のような恐怖が
いつ現れてもいいように。



リオラ
「来年、高等科を卒業するの。」
「アシェラさんと同じ、西の国の魔法研究機関に入るよ。」


私の魔法の研究テーマは2つ。

魔封じの秘術の解除魔法と、
お母さんが背負った憎しみの浄化魔法。


もしお母さんを解放できた時に、
また憎しみで暴走しないように。

リオラ
「アシェラさんも機関長も、南の国も協力してくれるよ。」
「オルニスは”暴走しないならいいですよ”って。」
「辛いはずなのに、器の大きい人だよね。」

「クラヴィスは来年、初等科を卒業するよ。」
「今は成績トップなんだって!すごいよね!」
「私とアシェラさんに基礎を教わってコツが掴めたんだってさ。」
「あの子の役に立てて嬉しいよ。」


私はこの1年間で、
色々な国の魔法研究機関へ実習へ行き、
すごい魔導士たちから指導を受けた。

そんな彼らでも、人間の力だけで
魔封じの秘術を破るのは難しいと言った。

可能性があるとすれば、
今は人間との交流が途絶えた魔界。

私は1年前の模擬戦闘で
暗黒魔導士に歯が立たなかった。

もし魔界へ足を踏み入れるなら、
あのレベルの魔導士と渡り合う実力が必要。

リオラ
「望むところ。」
「私、何年かかっても見つけてみせるよ。」
「お母さんを封印から助け出す魔法を。」


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私は1年前に
”無表情の仮面”を外すことができた。
アシェラさんがずっとそばにいてくれたおかげ。

私を産むまでのお母さんには、
誰も寄り添ってくれなかったんだろう。


『泣いてもムダ、笑ってもムダ』
『誰も私を愛していない』


そうやって親からの愛情を諦めた時、
子どもは”無表情の仮面”を着けるんだろう。

リオラ
「憎しみの連鎖はここで断ち切るよ。」
「いつか、お母さんの笑顔が見たいから。」


魔封じの宝石に映った私の顔は、
涙と笑顔でくしゃくしゃだった。



ーーーーーENDーーーーー



⇒他作品
『訣別の雪辱戦(グラジマッチ)』全6話

『転生の決闘場(デュエルアリーナ)』全5話


⇒参考書籍









2024年10月06日

【短編小説】『無表情の仮面』10

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【第9話:笑顔を奪ったもの】からの続き

<登場人物>
リオラ
 ♀主人公、16歳
 西の国の魔法学院・高等科に在籍

エルーシュ
 ♀リオラの母親、32歳

アシェラ
 ♀エルーシュの妹/リオラの叔母、22歳

クラヴィス
 ♀10歳、南の国の魔法学院・初等科に在籍

オルニス
 ♂クラヴィスの父親、32歳
 南の国の国防軍・魔法部隊隊長
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【第10話:守りたい人がいる】



オルニス
『2人とも生きていてよかった…。』


リオラ
「オルニス、助けてくれてありがとう。」
「ごめんなさい、逃げ切れなくて。」


オルニス
『いえいえ、よく持ち堪えてくれました。』


リオラ
「オルニス1人で来たの?」


オルニス
『先行は私1人です。』
『後ろに精鋭部隊を待機させています。』
『私が倒れても彼らがいるのでご安心を。』


リオラ
「なぜ1人で?」


オルニス
『どうしても”妻の仇”を討ちたくてね。』
『部隊の連中にわがままを言って来たんです。』


リオラ
「奥さまってことは…クラヴィスのお母さん?」


オルニスは一瞬、悲しそうな顔をしてから
冷眼の魔女を睨みつけた。

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オルニス
『冷眼の魔女よ。』
『あなたは覚えてすらいないでしょう。』
『過去に討ち取った魔術師たちの名前など。』


エルーシュ
『…そんな奴ら、いちいち覚えていない…!』


オルニス
『でしょうね。たとえ彼らが…。』
『あなたを封印する寸前まで追い詰めたとしても。』


エルーシュ
『…?!…まさかお前は…!』


オルニス
『さすがに魔封じの秘術の恐怖は覚えていましたか。』
『私は、数年前にあなたが討ち取った魔術師の生き残りです。』


エルーシュ
『…!!』


オルニス
『今度こそあなたを封印します。』
『もう二度と娘を…クラヴィスを悲しませないために!』



ーー


<5年前、とある国の病院>

クラヴィス
『パパ!やっと起きた!』


オルニス
『…ここは…?クラヴィス?どうしてここに?』


クラヴィス
『パパどうしたの?ここは病院だよ?』


オルニス
『…私は…生き残ったのか…?』


クラヴィス
『ねぇ、パパはどうして包帯だらけなの?』


オルニス
『パパはは強い敵と戦ってね。』
『負けてしまったんだよ。』


クラヴィス
『敵?パパより強いの?』


オルニス
『ああ…強いよ。』


クラヴィス
『よかった…!パパが帰ってこれて!』


オルニス
(そうか…私の他に生き残りはもう…。)


クラヴィス
『ねぇパパ?』
『ママも帰ってきたのに、ずっと寝てるの…。』


オルニス
(ズキッ!…)


クラヴィス
『ママのお顔、何だか白っぽくて元気なさそう…。』
『パパ、どうしてママは起きないの?』


オルニス
『…。』


クラヴィス
『ママも敵と戦ったの?』


オルニス
『…そうだよ。』


クラヴィス
『やっぱりママも強いんだね!』
『じゃあ、ママは疲れて寝てるの?』


オルニス
『クラヴィス…ママはもう起きないんだよ…。』
『ママはクラヴィスを守るためにね…。』


……………。

………。

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クラヴィス
『…そんなのイヤだよ…。』
『私、ママと一緒がいいよ…!』
『ママと一緒に笑いたいよ…!』


オルニス
『…すまない…ママを守れなくて…。』


クラヴィス
『ママ…起きてよ…ぎゅってしてよ…!』
『ううぅぅぅ……わあぁぁぁぁ!!!!!!!』



ーー


<現在、南の国:国境付近の山地>

オルニス
『クラヴィスはまっすぐ成長してくれました。』
『あんなことがあったのに、誰も憎まずに。』


アシェラ
『クラヴィスの笑顔の裏に、そんな悲しみが…。』


オルニス
『私は妻を守れなかった。』
『だがクラヴィスだけは守る!』


オルニスはそう言って、
魔封じの秘術の詠唱を始めた。



リオラ
「待って!」




私は反射的に
オルニスと冷眼の魔女の間に
立ちふさがってしまった。

リオラ
「わかってる…。」
「彼女はオルニスにとって奥さまの仇。」
「けれど、私にとってはやっと逢えたお母さんなの!」


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アシェラ
『リオラ!ダメよ!』
『ここでお姉ちゃんを止めないといけない…!』
『弱っている今が封印のチャンスなの!』


オルニス
『2人の心中お察しします…。』
『ですがアシェラさんの言う通りです。』
『私にも、南の国にも、守りたい人がいるんです。』


アシェラ
(私だって本当は止めたいよ…!)
(たった1人のお姉ちゃんだもん…。)


リオラ
「…うぅぅ……!」




私はなんて弱いんだろう。

たとえ冷眼の魔女が母親でも、
目の前で封印されても耐えると約束したのに…。

こんな私じゃ、母親を亡くしても
前を向いて笑っているクラヴィスに
顔向けできないよ。


けれど、
お母さんの”無表情の仮面”が割れたんだ。

お母さんの笑顔が見たいよ。
一緒に過ごしたいよ。

私が里帰りする時に、
学院の寮に迎えに来てほしいよ…。

叶わないの…?

どうして私は
お母さんとの幸せな経験ができないの…?!



リオラ
「……私の魔力も足しにしてください。」


オルニス
『?!』


リオラ
「母から受け継いだ魔力をすべて出し切る。」
「母を…冷眼の魔女を…封印しましょう…!」


アシェラ
『リオラ…。』


オルニス
『…いいんですね?』


リオラ
「うん…憎しみの連鎖を止めよう。」


オルニスは
魔封じの秘術の詠唱を続けた。

私とアシェラさんは、
残った魔力のすべてを注ぎ込んだ。

魔封じの秘術が発動すると、
辺りがまばゆい光に包まれた。

【MMD】Novel Muhyojo Episode10 Fuin1Small1.png

冷眼の魔女の身体は
光に包まれて見えなくなっていった。

最後の瞬間、
涙でぐしゃぐしゃだった彼女が、
少しだけ微笑んだように見えた。




【第11話(最終話):お母さんの笑顔】へ続く


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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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