アフィリエイト広告を利用しています

広告

posted by fanblog

2024年09月09日

【短編小説】『無表情の仮面』1

【MMD】Novel Muhyojo SamuneSmall1.png
【MMD】Novel Muhyojo Character1Lior2Small1.png
【MMD】Novel Muhyojo Character2Clavis2Small2.png

<登場人物>
リオラ
 ♀主人公、16歳
 西の国の魔法学院・高等科に在籍

エルーシュ
 ♀リオラの母親、32歳

アシェラ
 ♀エルーシュの妹/リオラの叔母、22歳

クラヴィス
 ♀10歳、南の国の魔法学院・初等科に在籍

オルニス
 ♂クラヴィスの父親、32歳
 南の国の国防軍・魔法部隊隊長
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【第1話:無表情の”イイコ”】



<16年前、西の国:王都>

私の名前はアシェラ、6歳。

10歳上のエルーシュお姉ちゃんと、
魔法の研究が盛んな”西の国”に住んでいます。

お姉ちゃんは王都の魔法学院・高等科で
「学院始まって以来の天才」と言われています。

私はお姉ちゃんみたいな魔術師になりたくて、
魔法をたくさん勉強しています。

そのおかげで、
私はお姉ちゃんが通う魔法学院の
初等科に合格できました。

数日後に初等科の寮に入ります。
お姉ちゃんと同じ学院で学べるなんて
夢みたいです。



1つだけ心配事があります。
それはエルーシュお姉ちゃんの”無表情”です。

私が物心ついた時から、
お姉ちゃんは笑うことも泣くこともしません。

怒っているわけじゃないし、
優しさは十分伝わってきます。

なのに、お姉ちゃんは嬉しい時も悲しい時も
”無表情の仮面”を着けたままです…。

お姉ちゃんは無愛想に見えるので、
まわりから誤解されやすいです。

学院では「氷姫」
呼ばれているみたいです。

けれど、私はお姉ちゃんに
『少しくらい愛想よくしたら?』
なんて言えません。

私は、お姉ちゃんが
無表情の仮面を外せなくなった理由を
知っているからです。


お父さんとお母さんが、
お姉ちゃんをどう扱ってきたのかも…。


ーー


私は魔法学院に入ってしばらくの間、
慣れない寮生活に戸惑いました。

お姉ちゃんのことも忘れるくらい、
自分のことで精一杯でした。

あっという間に1年あまりが経ちました。

私がようやく寮生活に慣れてきた頃、
お姉ちゃんが1年前から魔法学院を
休学していると知りました。

アシェラ
『お姉ちゃんに何かあったんですか?』


私は高等科の先生に尋ねました。
そして先生の答えに耳を疑いました。



お姉ちゃんは休学中に
女の子を出産していたんです。




私は1年ぶりにお姉ちゃんを訪ねました。

お姉ちゃんは
高等科に進むと同時に学院の寮を出て、
王都の魔法研究機関の宿舎に住んでいました。

お姉ちゃんは優秀すぎて、
学生ながら研究員として在籍していました。

お姉ちゃんの娘は生後3ヶ月で、
名前は「リオラ」ちゃんです。

私は、リオラちゃんをかわいがる
お姉ちゃんの姿を楽しみにしていました。

リオラちゃんとのふれあいで、
お姉ちゃんが”無表情の仮面”を
外せるかもしれないからです。

ところが、



エルーシュ
『アシェラ、久しぶり。』


部屋には魔導書を読みふけるお姉ちゃんと、
ベッドで静かにしているリオラちゃんがいました。

私はリオラちゃんが
あまりにおとなしいことに驚きました。

アシェラ
『赤ちゃんってこんなに静かなの?』


お姉ちゃんは無表情のまま答えました。

エルーシュ
『うん、”イイコ”でしょ?』


リオラちゃんのベッドの壁際に
スケジュールが貼られていました。

食事やオムツ交換や就寝の時間が
細かく書かれていました。

アシェラ
『これは?』


エルーシュ
『リオラのお世話スケジュール。』


アシェラ
『スケジュール?!』
『赤ちゃんは予定通りになんて…。』
『リオラちゃん泣いちゃうよ?!』


エルーシュ
『最初は泣いたよ。』


アシェラ
『やっぱり…。』


エルーシュ
『けど、まだ時間じゃないから。』


アシェラ
『……。』


エルーシュ
『その内”イイコ”になった。』


アシェラ
『時間が来るまで、お姉ちゃんは何してるの?』


エルーシュ
『魔法の研究。』


アシェラ
『リオラちゃんは?』


エルーシュ
『おとなしくしてる。』


私は思いました。

やっぱり、お姉ちゃんは
親に扱われたように娘を扱うんだ、と。



私はリオラちゃんを
抱っこさせてもらいました。

リオラちゃんは、
冷めた目で天井を見つめていました。

彼女には愛くるしさも、
母親を求める必死さもありませんでした。

リオラちゃんは生後3ヶ月で、
お姉ちゃんと同じ”無表情の仮面”を
着けてしまいました。


「お腹空いた」
「オムツを換えてほしい」


まるで、それらを泣いて知らせても
ムダだと学んでしまったようでした。

この時、私は決意しました。
『私だけでもリオラちゃんの味方でいよう』

私の前だけでも、
この子が”無表情の仮面”を外せるように。

私は学院での勉強の合間をぬって、
リオラちゃんのもとへ通いました。

【MMD】Novel Muhyojo Episode1AsherahChild2Small2.png


ーー


<16年後、西の国:王都>

私の名前はリオラ、16歳。
西の国の魔法学院・高等科に在籍中。

だけれど、もうすぐ休学する予定。
母親を探して、少し遠出するために。

私は物心つく頃には
王都の魔法研究機関にいた。

父親の記憶はなく、
母親の記憶はあいまいで、顔は覚えていない。


叔母のアシェラさんが私に会いに来て、
色々お世話してくれた。

叔母といっても、
私とは6歳しか離れていない。
彼女は私にとって姉のような存在。



アシェラさんの話では、
母親は私を産んでから数年間、
私をスケジュール管理するように育てた。


そして私が物事つく頃に、
突然、行方をくらましてしまった。

私の母親は「学院1の天才」と言われ、
16歳で王都の研究機関にも在籍していた。

ちょうどその頃、
何かがあって私を産んだらしい。

その「何か」について、
当時を知る先生たちは口をつぐんだ。

学院の長期休みが近づくと、

寮生の母親
『久しぶり、元気にしてた?』


寮生
『お母さん久しぶり!元気だよ!』


寮生の母親
『よかった…それじゃ帰りましょう。』


寮生
『お母さんのご飯、楽しみ!』


寮生たちの親が迎えに来た。

私は彼らの幸せそうな顔を見るたびに、
胸が締めつけられた。

「どうして私はああいう経験ができないの?」と。

私は顔も覚えていない母親を
憎く思うこともあった。

それでも私にとって世界で1人の母親。
どんな人でもいい、逢ってみたい。

1度だけでも、抱っこしてもらいたい…。


ーー


私が休学する理由はもう1つ。
それは学院での孤立が辛いから。

私の学院でのあだ名は「氷姫」

母親譲りの魔力と容姿、
そして無表情なことからそう呼ばれた。

本当は、アシェラさんの前でしか
”無表情の仮面”を外せないだけなのに。

私は男子たちの目にはミステリアスに映り、
何度も告白された。

けれど、私は断る時も無表情。

本当は申し訳ないのに、
『冷たく切り捨てる』と誤解を招いた。



それを聞いた周りの女子たちは、
私の陰口を言った。

『冷徹人間』とか
『無表情で気味が悪い』とか。

ある雨の日の放課後、
教室のロッカーに入れておいた
私の傘がなくなっていた。

私は学校の玄関に立ち尽くしたまま、
どしゃ降りの雨を眺めていた。

『クスクス…。』

私の後ろの方から、
クラスメイトたちの笑い声が聞こえた。

私は居心地の悪さに耐え切れず、
雨の校庭へ駆け出した。

私は寮までの帰り道を、
びしょ濡れになりながら歩いた。

この時間が私の救いだった。
なぜなら、



ポロ、ポロ、

リオラ
「…もう消えたいよ…。」
「こんな人生、早く終わらせたいよ…。」


私が涙を流せるのは、ここだけだから。



【MMD】Novel Muhyojo Episode1Lior2Small2.png



私は寮に入る前に、
”無表情の仮面”を着け直した。
管理人さんを心配させないために。

私は部屋に戻ると、
すぐに魔法の研究に逃避した。
何もせずにいると涙が溢れてくるから。

私の魔法の実力と成績は上がり続けた。
それが余計に周囲の嫉妬心を煽った。

辛くて魔法の研究に没頭し、
また周囲から孤立するという
悪循環に陥っていた。

「母親を探すための休学」
というのはウソじゃないけれど、
自分自身からの逃げでもあった。

私は自己嫌悪と戦いながら、
学院を休学する日を待ち焦がれた。



【第2話:冷眼の魔女】へ続く

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/12697631

※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
検索
プロフィール
理琉(ワタル)さんの画像
理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
プロフィール
最新記事
カテゴリーアーカイブ
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。