2024年09月12日
【短編小説】『無表情の仮面』2
⇒【第1話:無表情の”イイコ”】からの続き
<登場人物>
◎リオラ
♀主人公、16歳
西の国の魔法学院・高等科に在籍
◎エルーシュ
♀リオラの母親、32歳
◎アシェラ
♀エルーシュの妹/リオラの叔母、22歳
◎クラヴィス
♀10歳、南の国の魔法学院・初等科に在籍
◎オルニス
♂クラヴィスの父親、32歳
南の国の国防軍・魔法部隊隊長
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【第2話:冷眼の魔女】
魔法学院の休学手続きを終えた私は、
隣街にある魔法研究機関へ向かった。
そこには叔母のアシェラさんが
研究員として在籍していた。
アシェラさんなら
『冷眼の魔女』について
何か知っているかもしれない。
冷眼の魔女は数年前に突如現れ、
各国を攻撃して回っていた。
特徴は類まれな美しさと、
氷のように冷たい眼。
彼女は圧倒的な魔法の力で、
国防軍を次々に打ち負かしていった。
ただ、彼女は戦いに勝利すると、
国を支配するでもなく去ってしまうので、
目的がわからなかった。
なぜ私はそんな危険人物のことを
知りたいのかって?
彼女の噂を聞いた時から
「冷眼の魔女は母親かもしれない」
という予感がしているから。
ーー
<西の国:魔法研究機関>
西日が少しずつ下がり、
空には橙と紺色が混ざり始めた。
アシェラ
『リオラ、久しぶり。』
リオラ
「アシェラさん、久しぶり。」
アシェラ
『中等科の卒業式以来?』
リオラ
「うん、1年くらい。」
アシェラ
『早いね、もう1年かぁ…。』
私はアシェラさんの顔を見た瞬間、
自然と”無表情の仮面”を外していた。
アシェラ
『手紙読んだよ。』
『学院を休学したんでしょ?』
リオラ
「うん。」
アシェラ
『いよいよ行くんだね。』
リオラ
「まぁ…。」
ぎゅっ
アシェラ
『…辛いよね…”氷姫”なんて呼ばれて…。』
リオラ
「…どうしてわかるの?」
「…まだ何も言ってないのに。」
アシェラ
『ずっと見てきたからね。』
『赤ちゃんのあなたから。』
リオラ
「…もう少し…このままでもいい?」
アシェラ
『…いいよ。』
私はそのまま静かに泣いた。
涙を流せるのは雨の帰り道だけ?
訂正、雨の帰り道と、アシェラさんの前。
ーー
リオラ
「コホン…。」
「先ほどはお世話になりました///(照)」
アシェラ
『どういたしまして。』
『冷眼の魔女のことはウチでも調べてるんだ。』
『他人事じゃないからね。』
リオラ
「目的もわからないし、怖いよね。」
アシェラ
『今日は長旅で疲れたでしょ?』
『時間も遅いし、詳しいことは明日話すね。』
リオラ
「お願いします。」
アシェラ
『今夜はどうするの?』
リオラ
「宿を取ってる。」
アシェラ
『そっか、明日すぐ出発?』
リオラ
「何日か滞在するよ。」
「せっかく来たから観光したいな。」
アシェラ
『なら出発までの間、私の家に来ない?』
『宿代も節約できるよ。』
リオラ
「いいの?」
アシェラ
『もちろん。』
『積もる話もあるだろうしね。』
リオラ
「ありがと!」
ーー
<その夜、リオラの宿泊先>
私は不思議な夢を見た。
異空間に佇む私に向かって
見知らぬ女性が迫ってくる夢。
彼女は見惚れる美しさと、
氷のように冷たい眼をしていた。
彼女の全身から憎しみが伝わってくるのに、
まったくの無表情だった。
まるで私と同じく
”無表情の仮面”を外せなくなったみたい。
リオラ
「…?…あなたは誰…?」
?
『許せない…。』
リオラ
「え?」
?
『…許せない、許せない、許せない!!』
リオラ
「?!!」
ゴォォォォ!!
彼女の背後から、
憎しみの炎が燃え上がった。
リオラ
「ねぇ、聞かせてよ?」
「何がそんなに悲しいの?!」
「誰に怒ってるの?!」
?
『…狂わせた…!』
『…何が…秘術…!』
『…何が世界のため…!!』
リオラ
「…狂わせた…?…秘術…?」
?
『勝手に生み出しておいて…!』
『何が”罪滅ぼし”よ…!!』
リオラ
「生み出した…?!
「誰のこと?!秘術って何?!」
?
『私の人生を狂わせた全員…!』
『滅ぼしてやる!!!』
リオラ
「待って!わからないよ…。」
「あなたに一体何が…?!」
?
『忌々しいあの男も…!』
『あなたもね!!!』
リオラ
「やめてーーーーー!!!!」
ガバッ!
リオラ
「…ハァ…ハァ…夢…?」
時刻は深夜2時すぎ。
窓の外は穏やかな月夜だった。
リオラ
「怖かった…。」
私は汗に濡れた服を替えながら、
彼女の言葉の意味を考えた。
「私の人生を狂わせた」
「勝手に生み出した」
何のことか、誰のことか、
さっぱりわからなかった。
過去にどこかで逢って、
深く傷つけてしまった人?
いいえ、思い当たる節もなかった。
なのに、どうして私は
面識がないはずの彼女に
こんなに懐かしい気持ちになるの?
リオラ
「夢のこと、アシェラさんに相談してみよう。」
「冷眼の魔女はやっぱり私の…。」
ある”根拠のない確信”を得た私は、
再び眠りについた。
⇒【第3話:泣いて支えて】へ続く
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