2024年09月15日
【短編小説】『無表情の仮面』3
⇒【第2話:冷眼の魔女】からの続き
<登場人物>
◎リオラ
♀主人公、16歳
西の国の魔法学院・高等科に在籍
◎エルーシュ
♀リオラの母親、32歳
◎アシェラ
♀エルーシュの妹/リオラの叔母、22歳
◎クラヴィス
♀10歳、南の国の魔法学院・初等科に在籍
◎オルニス
♂クラヴィスの父親、32歳
南の国の国防軍・魔法部隊隊長
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【第3話:泣いて支えて】
<翌朝、西の国:魔法研究機関>
アシェラ
『おはよう、よく眠れた?』
リオラ
「うん…。」
アシェラ
『…よかった…朝食は?』
リオラ
「食べたよ。この国の名物料理。」
アシェラ
『美味しかった?』
リオラ
「とっても。」
アシェラ
『今夜、楽しみにしといてね!』
『私の行きつけのお店に連れて行くから!』
アシェラさんは、私を元気づけようと
明るい話題を選んでくれた。
私は昨夜の悪夢でひきつった顔を
整えてきたつもりなのに、
彼女にはお見通しだ。
リオラ
「それで、冷眼の魔女のことだけど…。」
アシェラ
『少し遠いけど南の国。』
『国境付近の山地で目撃されてる。』
『次のターゲットにされるかも。』
リオラ
「南の国かぁ…休学期間、延ばさなきゃ。」
アシェラ
『どうして冷眼の魔女のことを知りたいの?』
リオラ
「根拠は何もないんだけど…。」
「私のお母さんかもしれない予感がするの。」
アシェラさんは驚かなかった。
彼女だって、
各国を攻撃して回る魔女が
実の姉だなんて信じたくないはずなのに。
リオラ
「あとね…昨夜…。」
私はアシェラさんに
昨夜の悪夢のことを話した。
リオラ
「夢に出てきた女の人が冷眼の魔女で…。」
「私のお母さんじゃないかって思ったの。」
アシェラ
『…その人に…どんな気持ちになった?』
リオラ
「…”懐かしい”って思った。」
アシェラ
『そっか…。』
リオラ
「あ、あはは!」
「夢が根拠なんておかしいよね!」
「今の話は気にしないで?(汗)」
アシェラ
『確かめてみる?』
リオラ
「え?」
アシェラ
『冷眼の魔女がリオラのお母さんかどうか。』
『逢って確かめましょう。』
リオラ
「逢って?!」
アシェラ
『その方が早いでしょ?』
リオラ
「早いけど…。」
「軍隊を負かしちゃうくらい強いんだよ?」
アシェラ
『私が護衛するから、一緒に行きましょう。』
『リオラはお母さんの顔、覚えてる?』
リオラ
「覚えてない。」
アシェラ
『なら私が付いて行かなきゃ!』
リオラ
「あ…ありがたいけど…。」
アシェラ
『なーに?私じゃ頼りない?』
『これでもここの研究機関のエースだよ?』
リオラ
「そ、そんなことないよ!頼もしいけど…。」
「アシェラさんは研究機関にとって大事な人でしょ?」
「私の個人的な活動に付き合わせるなんて…。」
機関長
『その点は大丈夫。』
リオラ
「機関長?」
機関長
『リオラ、久しぶり。』
『こちらはとっくに根負けしている(苦笑)』
『安心してアシェラを連れて行きなさい。』
リオラ
「アシェラさん…機関長と何があったの(汗)」
アシェラ
『ちょっとしたバトルかな。』
リオラ
「バトル…(…止めても聞かなかったのね)…。」
アシェラ
『”ヤダ!お姉ちゃんに会いに行く!”』
『って言ってみただけ☆』
リオラ
「まだ冷眼の魔女がそうと決まったわけじゃ(汗)」
機関長
『何度言っても聞かなくてな…(泣)』
アシェラ
『もし冷眼の魔女が姉だとしたら、知りたいの。』
『お姉ちゃんの悲しみも、苦しみも…。』
リオラ
「……。」
アシェラ
『人違いならまた探せばいいでしょ?』
機関長
『そう、戻って来てもらわないと困る。』
『ウチは人手不足でな。』
アシェラ
『機関長!』
『それって業務的にってことですよね?(笑)』
『そこは”悲しい”って言ってほしかったです!』
機関長
『すまない(苦笑)』
『もちろん無事を祈ってるよ。』
アシェラ
『むぅー…何だか付け足し感がありますね…。』
リオラ
「あ、あははは!」
アシェラ
『…リオラ…笑えるようになったね。』
『私以外の人の前でも。』
リオラ
「…あ…!」
機関長
『…苦節16年か…。』
『やっと私にも笑顔を見せてくれて嬉しいよ。』
リオラ
「もしかして…そのために?」
アシェラ
『えー?わりと真剣だったよ?』
リオラ
「…とぼけるのがヘタだよ、お姉ちゃん…。」
アシェラ
『…おいで。』
私はまた、アシェラさんにしがみついて泣いた。
ーー
<数日後>
機関長
『南の国の魔法部隊に話を通しておいた。』
『きっと力になってくれるだろう。』
リオラ
「ありがとうございます、何から何まで。」
アシェラ
『私…必ずこの子を守ります。』
機関長
『2人なら問題ないと思うが、危険もある。』
『実力を見るための模擬戦闘があるかもしれない。』
『準備だけはしっかり整えてくれ。』
アシェラ
『わかりました、余裕で勝ってやります!』
リオラ
「わ…私も!大丈夫です!」
機関長
『無茶だけはしないように。』
『…アシェラ、お姉さんに会えるといいな。』
アシェラ
『……機関長!行ってきます!』
私はアシェラさんと機関長のおかげで、
少しだけ”無表情の仮面”の外し方を覚えた。
⇒【第4話:スケジュールと秘術】へ続く
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