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2022年11月04日

交換だから 3



冬の初めくらいだったと思う。女子のリーダー的存在のBが話しかけてきた。
転校してきた当初は知らなかったが、Bの父親はPTAの会長をしており、Bの家はこの辺の集落の農家を取り仕切るような(昔の庄屋のような)家らしい。
B自身はとてもかわいらしい女の子だった。みんなからの人望もあったと思う。クラスの女子達はBを中心にグループを作っていた。

Bは、私が机の上に広げたシールを見て「このシールかわいい〜」と言ってきた。Aからもらったシールだった。私は何も考えずに「Aからもらった」とBに伝えた。
そのときのBの表情は、何と例えたらいいのか分からない。一瞬顔が引きつったように見えたのは気のせいだったのだろうか。
Bは「ふ〜ん、Aからねぇ…」と言いつつ、私の隣の席のBを足元から頭までじっくりと見つめた。と思うと、Bの持っていた筆箱を取り上げた。
Bの筆箱は、春には去年家庭科で作ったフェルト製のものだったが、今のはアニメのキャラクターが描かれた7か所入れる所がある最新のものだった。

「これ、ちょうだい!!」

Bはそう言いながら自分のグループの子たちの方に走っていった。私は慌ててBを止めようとしたが、とっさのことで「ちょ…な!?」くらいしか言えなかった。
私はAの方を見て「先生に言わなきゃ!!」と叫んだ。Aは、Bの方をぼうっと見ているだけだった。しっかりしろと、私が思わずAの肩を掴んで揺さぶろうとしたとき、Aはぼそっと「いいの…」とつぶやいた。
「はあ!?」と思わずAに言うと、Aは、細い目をさらに細めて「そのかわり×××(聞き取れなかった)をもらうから…」と言った。
私はまた「はあ!?」と言ったとき、チャイムが鳴り先生が教室に入ってきた。私はとりあえず席に座ったが、授業が終わったらこのことを先生に報告する気まんまんだった。

だが授業中Bが突然倒れた。ひゅーひゅーという音が聞こえるなと思った次の瞬間、Bは机ごと床に投げ出されてそのままけいれんをおこした。
騒然とする教室内、慌てて救急車を呼ぶ先生、Bを中心にできる人垣。何もかもスローモーショーンのように感じた。私は自分の席で起立したまま動けなかった。ふと、Aを見るとAは座ったまま運ばれていくBをじっと見ていただけだった。
Bはそのまま救急車で運ばれ、担当はそれに付き添っていった。その日、残りの授業は副担当が行った。

放課後、私は担当に呼ばれた。いつの間に病院から戻ってきたのか、Bのことで話があるというのでついていくと、校長室に入るように言われた。
校長室に入るのは初めてで、緊張しつつ入室した。校長先生の机が部屋の奥にあり、手前に応接セットが置いてある。
そこに座っていたのは、Bの両親と教頭と好調、担当は入り口付近に立った。偉い先生方が並んでいるのを見て子供心にもただ事ではないと思った。

真っ先に口を開いたのはB母だった。

「なんでこの子は無事なの!?Bは〇〇ちゃん(私)は大丈夫だったって言ったのに!」

急に叫んだかと思うと、私に飛びかからんばかりの勢いで中腰になった。
B父はB母の肩を抑え、B母に席に座るように促した。
びっくりしたまま状況についていけない私は、直立不動で動けなかった。今度は好調が優しく話しかけてきた。

「ねえ、〇〇さん。Aさんからなにかもらった?」

私はかすれた声で「…シールもらった…」と答えるのが精いっぱいだった。その瞬間、大人たちのはっと息をのむような声が聞こえた。

「なんで…」「この子は…」「Aから…」「なんで無事で…」

そんな声を誰ともなくつぶやいていた。
ようやく頭が状況を整理しようと動き出した私は、例のAの呪いの件を思い出した。多分大人たちはAの呪いでBがあんな風になったと考えているのだろう。
そう考えると全てに納得がいった。と同時にムカついてきた。いい大人が何人もいて何を言っているんだ!と。
そして、叫んでしまった。

「私はAとシール交換しただけだもん!Bみたいに筆箱取ったりしてないもん!」

その瞬間、大人たちは一斉に私を見た。

「交換…だから…」

B母が呟いた。
それにかぶせるように「お前はそれをBに言わなかったんかああ!!」とB父が叫び、私に掴みかかってきた。
B父を羽交い絞めにする校長と教頭、泣き叫ぶB母。もういっぱいいっぱいだった。

その時、制服姿の父が校長室に入って来た。多分いつの間にかいなくなっていた担任に呼ばれたんだと思う。
大人たちはとたんに静まり返った。

「この子は…駐在さんとこの子か」

そうつぶやいてB父は舌打ちをした。
私は父と共に校長室を出た。私は茫然自失のまま家についた。家に入ると母が狼狽えていたが、何が起きたのか分からないのでどうしようもなく、何かできることもなかった。
父は私を家に送り届けると小学校に戻り、B父と話をした。が、B父が一方的に怒っているのは分かるが、なぜ怒っているのかは詳しくは語らない様子で父にとっても腑に落ちない様子で帰ってきた。


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