アフィリエイト広告を利用しています
写真ギャラリー
検索

広告

posted by fanblog

2022年09月30日

鏡の中のナナちゃん 3


とっさに『ヤバイッ』と思いましたが、鏡から目を離すことは出来ませんでした。
やっぱり扉は動いています。
もう一度振り返っても、廊下の仕切は閉じたままです。
鏡の中では、納戸の扉がもう半分以上開いていました。
開いた扉の向こう、納戸の奥の闇に白いモノが浮かんでいました。
これまでにない恐怖を感じながらも、わたしはその白いモノを凝視しました。
それは懐かしい少女の笑顔でした。


そこで私の記憶は途切れています。
気がつくと、私は布団の中で朝を迎えていました。
気味の悪い夢を見た…。
そう思った私は、実家にいるのが何となく嫌になり、その日は休みだったのですが、すぐ自宅に帰る事にしました。

私の自宅のマンションには、住民用に半地下になった駐車場があります。
日中でも薄暗いそこに車を乗り入れ、自分のスペースに停めた後、最後にバックミラーを見ました。

すると、私のすぐ後ろにナナちゃんの顔がありました。

驚いて後ろを振り返りましたが、後部座席には誰もいません。
バックミラーに目を戻すと、ナナちゃんはまだそこに居ました。
鏡の中からじっとこっちを見ています。
色白で長い髪を両側に結んだナナちゃんは、昔と全く変わっていないように見えました。
恐怖のあまり視線を外すことも出来ず、震えながらその顔を見返していると、やがてナナちゃんはニッコリと笑いました。

「こんにちは」

「どうしてあの時、来てくれなかったの?私ずっと待っていたのに」

ナナちゃんは相変わらず微笑んだまま、そう言いました。
私が何と言って良いかわからずに黙っていると、ナナちゃんは言葉を継ぎました。

「ねえ、私と居間からこっちで遊ぼう」

そして、ミラーに映った私の肩越しに、こっちに向かって手を伸ばしてきました。

「こっちで遊ぼう…」
「ダメだ!」

私は思わず大声で叫びました。

「ごめん。ナナちゃん。僕は、もうそっちは行かない。行けないんだ!」

ナナちゃんは手を差し伸べたまま黙っています。
私はハンドルを力一杯掴んで震えながら、さっきよりも小さな声で言いました。

「僕には妻もいる。子供だって、もうすぐ生まれる。だから…」

そこで私は俯いて絶句してしまいました。
しばらくそのままの姿勢で震えていましたが、やがて私は恐る恐るミラーの方を見ました。
ナナちゃんはまだそこに居ました。

「そう…わかった。〇〇ちゃんは大人になっちゃったんだね。もう私とは遊べないんだ」

ナナちゃんは少し寂しそうにそう言いました。

「しょうがないよね…」

ナナちゃんはそこでニッコリと笑いました。
本当に無邪気な笑顔でした。
私はその時、ナナちゃんが許してくれたと思いました。

「ナナちゃん…」
「だったら私はその子と遊ぶ」

私がその言葉を理解出来ぬうちに、ナナちゃんは居なくなってしまいました。
それっきりナナちゃんは、二度と私の前に現れることはありませんでした。

2日後、妻が流産しました。
以来、今に至るまで、私達は子供をつくっていません。

現在、私はナナちゃんの事を弟に話すべきなのか、本当に迷っています。
この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/11320853
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
<< 2024年06月 >>
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
最新記事
カテゴリーアーカイブ
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。