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2022年07月05日

地下のまる穴 3


Bは「…仕方ないわ。降りよう」と言い出しました。
私は「えっマジで…?」と返事をしました。
あの得体の知れない階段を降りるのはすごく嫌でしたが、トイレ内にはもはや隠れる場所もなく、走り出したところで、暗闇の中でしかも場所がよく分からないので、捕まるだろうと思いました。
深夜の宗教施設という特殊な状況下で、判断力も鈍っていたのかもしれません。

足音がもうすぐトイレ付近に差しかかる中、私とBは個室の扉を開き、足音を忍ばせながら下の階段を降りました。
階段はコンクリート造りの階段で、長い階段なのかと思っていましたが、意外にも10段くらいで下に着きました。
真っ暗闇なので何も見えないのですが、前を歩いていたBが、降りた突き当りの目の前にあったのだろう扉を開きました。

中には部屋がありました。
部屋の天井にはオレンジ色の豆電球がいくつかぶら下がり、部屋全体は淡いおれんじいろに包まれていました。
私とBはその部屋に入ると、扉をそっと静かに閉めました。
部屋を見渡すと、15畳くらい(よく覚えていません)の何もないコンクリート造りの部屋で、真ん中には大きく円状のものがぶら下がっていました。
説明しにくいですが、巨大な鉄製のフラフープみたいなものが縦にぶら下がっている感じです。

そのフラフープは、部屋の両脇の壁に付くくらい巨大なものでした。
私とBはそんなのを気にせずに、扉の前で硬直していましたが、私が

「Aたちは?おらんじゃん…」

と小さな声で言うと、Bは

「わからん、わからん……」

と、ひきつった表情で言いました。

そして、私たちが聞いていた足音が、予想通りにトイレの中に入ってきたのが分かりました。真上から足音がコンクリートを伝って響いてきました。
その足音は3人〜4人くらい。私たちはジッと動けないまま、扉の前で立ち尽くしていました。
なにやらブツブツ話し声が聞こえてきましたが、内容まで聞きとれません。
話し合うような声に聞こえましたし、それぞれがなにかをブツブツ呟いているようにも聞こえました。
Bは下をうつむいたまま目を閉じていました。

どのくらい時間が経ったのか分りません。
私はなにか楽しい事を思い出そうとして、当時流行っていたお笑い番組『爆SHOW☆プレステージ』を必死に思い出していました。
いつのまにかトイレ内のブツブツ呟く声は、3〜4人から10人くらい増えている事に気づきました。
上にいる連中は、私たちがココに隠れている事を知っているのではないかと思いました。
怖くてガタガタ震えてきました。ブツブツブツブツと気味の悪い話し声に気が遠くなりそうでした。

突然ブツブツ呟く声が聞こえると、ガタンッと扉が二つ連続して開く音が聞こえた後、さらにガタンッと音がしました。
そのガタンッはトイレの個室を開く音だとすぐに分かり、鳥肌が立ちました。

『他の個室には最初から人は入っていたんじゃないか』

私と同じようにBがその可能性に気づいたのかどうかは分かりませんが、さっきは鍵が閉まっていたのですから、外から開けたのではなく、個室から誰かが出てきたんだと思ったのです。
そして、階段を降りる足音が聞こえてきました。限界でした。

階段を降りきるまで15秒とかからないでしょう。私はBの腕をギュッと掴みました。
階段を降りる足音が中間地点くらいになった時、Bは「うわぁぁぁ〜」と情けない悲鳴をあげながら私の手を振り払い、部屋の奥に走り出しました。

その時です。Bがあの丸い輪をピョンとジャンプした瞬間、一瞬でBの姿がいなくなったのです。

私はただただ唖然としました。


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