2022年06月06日
危険な好奇心29
一瞬、空気が凍った。
俺も淳も『…』と言葉を失った。
まさか、『あの場所』に行こうなんて。。予想外の発言だったから。
慎はそんな俺達を挑発するように
『オメーら変わってねーな!まぢでビビってんの?!ハハッ!』
と、少し悪酔い?していた。
その言葉に酔っ払いの淳が反応し、『あ?誰がビビるかよ!喧嘩売ってんのか慎?』とキレ出した。
俺は酔いながらも空気を読み
『おいおい、やめとけって!第一、淳まだ杖突いてんだぜ?』
言うと、慎がすかさず
『あ、そっか、、杖ツイてちゃ逃げれねーしな?ハハハ♪』
と、かなりの悪酔いしていた。
淳は益々ムキになり
『うるせーよ!行きてーんなら行ってやるよ!お前こそ途中でビビんぢゃねーぞ?』
とまるで子供の喧嘩のようになり、結局『ハッピーとタッチの冥福を祈りに』と言う名目で行くことになった。
慎、淳は二人とも結構酔っていたのにと、引くに引けなかったんだと思う。
まぁ、『ハッピーとタッチの供養』はいずれしなければならないと思っていたので、いい機会かも、、と少し思った。三人なら恐さも薄れるし。。
カラオケBOXを出て、コンビニに寄り、あの2匹が大好きだった『うまい棒』と『コーラ』を買い込み、タクシーで一旦俺の家に寄り、照明道具を取って来てから『小学校の裏山』へ向かった。
タクシー運転手に怪しげな目で見られつつ、山の入口でタクシーを降りた。
俺は三人でよく遊んだ裏山という懐かしさと共に『あの日』の出来事を思い出した。
こんな夜更けに‥又、入ることになるとは…
そんな俺の気持ちを知らずに淳は意気揚々と
『さぁ、入ろうぜ!』
と、杖を突きながらズカズカと入っていく。
その後ろをニヤニヤしながら慎が明かりを燈しながら着いて行った。
俺は
『淳、足元、気つけろよ!』
と言い、淳に続いた。
いざ山に入ると、昔の景色が変わっていることに驚いた。
いや、気色が変わったのではな無く、俺達がデカくなったから気色が変わって見えているのか。。?
登山途中、慎が淳をからかうように
『中年女がいたらどーする?俺、お前置いて逃げるけど♪』
等、冗談ばかり言っていた。(俺は逃げるけど)
思いの他、スムーズに進め、30分程で『あの場所』に到達した。
『あの場所』『初めて中年女』と会った場所。。。
俺達は黙り込み、ゆっくりと明かりを燈しながら『あの樹』に近づいた。
『あの日』中年女が呪いの儀式をしていた樹。。。
間近に寄り、明かりを燈した。
今は何も打ち込まれておらず、普通の大木になっていた。。
しかし、古い『釘痕』は残っていた。所々、穴が開いていた。
恐らく、警察がすべて抜いたのだろう。
しばらく三人で釘痕を眺めていた。
そして慎が『ここらへんでハッピーが死んでたんだよな。。。』と、地面を照らした。
さすがにもう、ハッピーの遺体は無かったが、ハッキリとその場所は覚えている。。
俺はその場に『うまい棒』と『コーラ』を供えた。
そして三人で手を合わせ、次はタッチの元へ。。『秘密基地』へ向かった。
秘密基地へ向かう途中、淳が
『色々あったけど、やっぱ懐かしいよな。。』
とポツリと言った。
すると慎が
『あぁ。。あの夜、秘密基地に泊まりに来なければ、、、嫌な思い出なんて無かっただろうな。』
と言った。確かに。。
この山で『中年女』」に合わなければ、ここは俺達にとっては聖地だったはずだ。
『ここらへんだたよな。。。』
慎が立ち止まった。
『秘密基地跡地』
もう、跡形も無かった。あの日バラバラにされていた木材すら一枚も無かった。
淳が無言でしゃがみ込み、『うまい棒・コーラ』を置き、手を合わせた。
俺と慎も手を合わせた。
しばらく黙祷したのち、慎が言った。
『ハッピーとタッチがいなけりゃ。。。今頃俺達いなかったかもな』
淳『あぁ』
俺『そうだな…結局、中年女も更生して、、、なんだか、やっと悪夢から解放された感じだな。。』
しばらく沈黙が続いた。
ふと慎が周囲や目の前の家を電灯で照らし『この場所、あの頃は俺らだけの秘密の場所だったのに、結構来てる奴いるみたいだな。』と。
慎が燈す場所を見ると、スナック菓子の袋や空き缶が結構落ちていることに気付いた。
俺は『ほんとだな、あの頃はゴミなんて全然無かったもんな。。。今の小学生、この場所しってんのかな?』と言った。
淳が続けて『あの時は俺ら、まじめにゴミは持ち帰ってたもんな。。』と言った。
その時、慎が
『うわっ!何だこれ!』
と叫んだ。
俺と淳はその声に驚き、慎の照らす明かりの先に視線をやった。
一本の木に何やらゴミが張り付いている。
よく見ると無数の菓子袋や空き缶、雑誌が木に釘で打ち付けられていた。
『なんだこれ?!』
慎が明かりを照らしながら近づいていった。
俺と淳も後を着いて行った。
『誰かのイタズラ??』
俺はマヂマヂと打ち付けられたゴミを見た。
その時
『あぁぁぁ、、これ、、俺の、ゴミぃ、、ぁぁぁぁあ、、』
と淳が震えた声で言いながら硬直した。
『は?!』
俺と慎は聞き直した。
淳は
『あ゛ぁぁぁ、、、俺が病院で捨てた、、、あぁぁ、、、』
といいながら後ずさりした。
慎が
『おい!淳!しっかりしろ!んなわけねーだろ!』
と怒鳴りながら、釘で打たれた一枚の菓子袋を引きちぎった。
それを見て、淳は
『あー、ぁあぁ、、』
と奇妙な声を出し、尻餅を付いた。
その行動に俺と慎は呆気に取られたが、次の瞬間
『うわっ!』
と、慎が手に持っていた袋を投げた。
『え?!』と俺がその袋に目をやると、袋の裏に
『淳呪殺』
とマジックで書かれていた。
俺は『まさか?』と思い、木に釘打たれたゴミを片っ端から引き剥がし、裏を見た。
『淳呪殺』『淳呪殺』『淳呪殺』
すべてのゴミに書かれていた。
淳は口をパクパクさせながら尻餅を付いた状態で固まっていた。
慎が何気に周囲に落ちていたゴミを拾い
『!おい!これ!』
と俺に見せて来た。
『淳呪殺』
なんと、周囲に落ちているゴミにも書かれていた。
俺はその時、初めて気付いた。
『中年女』は更生なんて初めからしていなかったんだ。ずっと俺達を怨んでいたんだ・
俺が病院で見掛けた、ゴム手袋をして必死で分別していたのも、淳のゴミだけを分けていたんだ!
俺達に『ごめんね』と言っていたのも全部嘘だったんだ。
俺は急にとてつもなく寒気を感じ【ここにいてはいけない】と本能的に思い、淳に
『おい!しっかりしろ!行くぞ!』
と言ったが
『俺のゴミ、、ゴミ、。俺のゴミ、、、』
と、淳は壊れていた。発狂していた。
とりあえず慎と俺で淳を担ぎ、山を降りた。
あれから8年。
あの日以来、もちろん山には行っていない。
『中年女』とも会っていない。
まだ俺達を怨んでいるんだろうか?
どこかで見られているんだろうか?
しかし、俺達三人は生きている。
ただ
未だに、淳は歩く事が出来ない。
End
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