\PR!/
自衛隊の中で、たまに聞くけど中身があまり知られていないものとして技術幹部の存在があります。
コメントの中で、技術幹部について知りたい!というリクエストがありましたので、海自を中心にまとめてみました。
広義の技術幹部や狭義の技術幹部、社会人経験者の募集をする技術幹部など結構いろいろあったりしてこんがらがります。
会社勤めの方!45歳までなら技術幹部になれますよ〜!
(前回記事):『【近況報告】感謝と記事いろいろ!』
\こちらもご参考に!PR/
(1)技術幹部候補生について整理しよう!
まずは、技術幹部候補生について整理していく必要があると思います。
図1 技術幹部
引用URL:https://www.mod.go.jp/pco/wakayama/2020/wp-content/uploads/2021/01/1b5b0faf5f7de7a5ed7f9a69aa3c5a32.png
私ペンギンは、海上自衛隊技術幹部候補生として入隊しています。
1.1 技術幹部候補生は大卒院卒程度の採用者!
最初に技術幹部候補生は、大学卒業程度の学力を持つ満26歳(大学院卒は満28際)までの人間が、一般幹部候補生として採用されたものです。
以前は技術幹部候補生という分類がありましたが、近年は「大卒・院卒」に区分して採用しています。
大学院卒の一般幹部候補生のほうが、技術分野に進む可能性が多くなっています。
図2 募集要項(令和2年度)
引用URL:https://www.mod.go.jp/pco/wakayama/2020/wp-content/uploads/2021/03/588ea29331310748afafcb9c0ee4b25a.pdf
基本的に、一般幹部候補生は大体の職種に進む要員を広く募集しています。
この中から、技術分野に進む要員を技術幹部と呼ぶことがあります。
1.2 陸自に技術幹部はいない?!
陸自の技術に関する話として、かたくなに陸自には技術幹部という区分は無い!と陸上自衛隊の実験団の方から言われたことがあります。
陸上自衛隊には、技術系幹部という括りで部隊の幕僚指揮官として勤務したり、研究開発分野で勤務することがあります。
私の大学同級生も、陸自の幹部候補生を卒業して武器科の技術系幹部となりました。
図3 陸自武器科
引用URL:https://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanbosyu/streaming/movie/story/sp/ground-leader/kind/subject09/img/slide02.jpg
陸自は、戦闘系職種も含めて現場と研究開発を両立させて勤務させる人事になっています。
そのため技術幹部という文化が存在しないそうです。
そのかわり、技術高級課程(TAC)など、技術に特化した教育課程があるもの魅力です。
1.3 自衛官でありながら技術者の一面を持つ。
一般幹部候補生で入隊して、技術幹部の道に進んだ幹部自衛官は技術者としてのスキルを磨くことになります。
現場で勤務したり、防大や一般大学の大学院に進むなどしてキャリアを磨きます。
ただ、一般幹部候補生で採用した人間だけでは高度な技術進歩に追いつけないこともあります。
そんなときに、社会人として経験を積んだ人を採用するのが「技術海上幹部・技術航空幹部」です。
\母の日に甘いものをどうぞ!PR/
価格:3,730円 |
\PR!/
(2)技術幹部の制度について
自衛隊で技術幹部というと、社会人経験者から募集する技術海上幹部・技術航空幹部のことを指しています。
採用人数が少ないため、あまり情報が出ないんですよね〜!
2.1 大卒後一定の業務経験者から募集!
技術幹部については、大学卒業後一定の関係する業務経験者から幹部自衛官として勤務を希望する人を採用する制度です。
一般幹部候補生が、必ずしも大卒を条件としていないのに対して技術幹部は大卒以上を対象としています。
面白いところでは、技術と言いながら広い分野で募集をしています。
図4 募集分野
引用URL:https://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanbosyu/pdf/y/r3_y_gizyutukanbu.pdf
募集する部門については、艦船航空機武器分野のほかにいろんなものがあります。
@安全保障
A語学
B心理(臨床心理士)
C施設(海自のみ)
D法務
E情報通信(サイバー系)
なども募集されています。
いずれも、自衛隊内部では育成が難しい分野の業務経験者を募集しています。
基本的に、理工系学部を卒業して3年以上の経験者から募集しています。
大体38歳未満で、一部45歳まで応募できるようになってます。
2.2 採用後の訓練は?遠洋航海・艦艇勤務があるの?
技術海上幹部については、その年の6月頃採用試験が行われ、合格すると9月下旬頃から幹部候補生学校(江田島)にて教育が行われます。
図5 海上自衛隊の教育期間
引用URL:https://www.mod.go.jp/msdf/mocs/mocs/education/student/img/katei_01.gif
この時、すぐに幹部自衛官に任命されるのが一般幹部候補生との違いです。
基本的には、8週間(約2か月)の教育を受けることになり幹部自衛官としての基礎知識・射撃・教養を身に着けます。
任命される階級は業務経験によって異なり、
@業務経験3年以上:2等海尉
A業務経験5年以上:1等海尉
B業務経験9年以上:3等海佐
C業務経験1〜3年:3等海尉
といった感じで、一応の業務経験に準じた階級に任命されます。
業務経験はあくまで目安であり、技術士・博士号取得者などは任命する階級が考慮されます。(博士号・技術士などの難関国家資格保有者は1尉または3佐に任命されます)
一般幹部候補生とは別個に訓練を受けますが、生活隊舎は同じなので「赤鬼青鬼」の嵐をたまに受けることも・・・
12月ごろまでには卒業となり、ちょうど同じ頃に卒業する幹部予定者と共に見送られることになります。
図6 帽振れ
引用URL:https://www.mod.go.jp/msdf/mocs/mocs/news/event02/sub52/img/06.jpg
公募技術幹部は、遠洋練習航海には参加するこはなく艦艇勤務で「サムライ配置」につくこともありません。
卒業時に、江田島から呉への短い卒業航海(3時間ほど)を体験してから、配属先に向かいます。
2.3 勤務先でのOJTと術科学校への入校
技術幹部は、幹部候補生学校卒業後に各勤務地でOJTで仕事を覚えていきます。
艦船武器航空機など術科教育課程がある分野では、職場でのOJTが数か月行われた後に幹部専修科などに入校します。
その後、各勤務を重ねていき必要な教育課程などに入校したりします。
\PR!/
(3)待遇は?人事に差がある?どこまで昇進できる?
社会人から技術幹部になったときに気になるのは、待遇や人事措置・昇進などの面です。
この辺は、情報がほとんど外部に出てこないので不安になる面が多いでしょう。
3.1 人事待遇はA幹に準じて扱われる
公募技術幹部は、所定の教育などを終えるとA幹に準じた人事待遇を受けます。
(A幹:防大・一般大卒の一般幹部候補生のこと)
海上自衛隊だと、1尉〜3佐の時に幹部中級課程があり技術幹部も入校いたします。
部隊勤務や、研究開発機関(防衛装備庁など)での研究にも従事しており、分野においては公募技術幹部を欲しがる部門もあったりします。
(防衛装備庁の各研究所は、特に公募技術幹部を多く求めています)
入隊年齢の関係で、同年齢のA幹よりは多少差がありますが人事面で大きく差がつけられるということはありません。
スペシャリストとして、部隊の科長をしていることも多くあります。
3.2 給与の面では不満が結構ある!
公募技術幹部のデメリットとして、前職に比べると給与が下がる場合もあるのが難点です。
大手重工の技術者だった人が公募幹部になったとき、年収が半分くらいになった例もあります。
(海外支店長を経験して、年収1000万円を超えていたそうです)
1等海尉に任官すると、月額給与は大体27〜31万円くらいになります。
職歴や資格等の保有により、給与額に上乗せされますが大手企業に比べるとかなり安いといえます。
さらに、自衛官として定年まで勤務すると「若年定年退職者給付金制度」というのがあります。
公募技術幹部の方で35歳以上で採用されると、勤務年収が20年に満たないため若年定年退職者給付金制度の適用を受けないというデメリットがあります。
トータルの生涯年収で考えると、54〜55歳の自衛官定年制度も相まって結構不利といえます。
ただ、民間ではやれない仕事ができたり再就職支援などがあるためここは考慮すべき部分だと思います。
3.3 実力次第では1佐もありうる!
公募技術幹部は、実力と試験突破次第では結構上まで昇進可能です。
私が勤務していた時の上司は、公募技術幹部出身で2佐に昇進した方でした。
定年後すぐに資格を生かして、技術系会社の管理職にヘッドハントされたということもあります。
中には海幕施設課の班長(1佐)まで昇進して定年になった方もいました。
年齢的に指揮幕僚課程を受験できない公募技術幹部でも、海上自衛隊では幹部特別課程を履修して1佐まで昇進することは可能となっています。
3.4 技術幹部として入隊するのもありかも!
公募技術幹部は結構採用人数が少ないため、狭き門と言われています。
(海自は年間数人・空自でも最大10〜15人程度)
なかなか厳しいですが、民間ではやれない仕事をできるというメリットがあります。
図7 P−1哨戒機
引用URL:https://www.mod.go.jp/msdf/equipment/aircraft/patrol/p-1/img/p-1_07l.jpg
川崎重工のXP−1設計技術チームにいて、航空機の将来を思うあまり公募技術幹部に応募して海上自衛隊に入隊した技術者もいました。
その方は、その後第51航空隊に配属となりP−1哨戒機の戦力化に貢献したそうです。
技術幹部は、なかなか面白い世界ですよ〜!
\PR!/
防衛・軍事ランキング
↑ブログ主の更新意欲維持の為↑バナーをクリック↑
↑していただければブログ主が↑頑張ります↑
公募幹部のしごきはそれほどありませんよ〜ちょっと短艇(カッター)のオール漕ぎで尻の皮がむけて出血するくらいです。
さあ公募幹部に応募しよう!(シュバババババ!)
公募幹部の方も、入校して最初の数週間が過ぎたら別課に参加するようになります。
ただ、一般課程や部内課程がこの時期、実習などで不在なことも多くあるため交流程度での参加です。
(私の期では、前年度に公募幹部課程の方が別課中に捻挫して卒業が伸びたことがあり別課を分けて実施していました。)
シュバババババ!技術幹部に興味がおありですか?!さあ受験票を!(誘拐卿くぅじーの派生型です!)
公募技術幹部は候補生学校での訓練期間は、確かに短いです。
自衛官としての基本教練プラスアルファ幹部としての最低限を知識を教育する形です。
公募技術幹部については、有事で戦闘を行うことまでは求められていません。
技術専門職のプロとして、部隊や機関で活躍することが求められています。
私は公募技術幹部と数多くご一緒しましたが、皆さん技術のプロとして部隊配置からどんどん活躍しています。
最初はいろいろやり方が違い、戸惑うことも多いですが技術のプロとしてどんどんA幹より活躍してます。
ただお役所特有無限書類地獄(民間じゃここまで書類にしないぞ!)に苦しめられたり、独特の自衛隊専門用語を会社への仕様書に変換して書き上げるなど苦労もあります。
自分の専門外の技術分野にて採用されることはないため、仕事のビジョンが見えやすい利点もあります。
(A幹の装備幹部は専門外の配置で一から再勉強もあります。)
公募技術幹部は、非常に技術のプロとして頼もしい存在でしたよ!
募集要項を見ると幹部候補生学校への入校が非常に短期間で部隊に配属後、幹部としてどれだけの事が要求されるのか少し気になっています。ペンギン様から見て公募技術幹部の出身の方は他の一般幹部候補生から入隊された方と比較してどのように映りましたでしょうか?
コメントにありました、博士号及び技術士保有者については「自衛隊法施行規則第二十四条の4」が元の根拠になります。
この施行規則の下に運用規定・細則など細かい規定があり、その中に階級指定時に考慮すべきものとして「博士号・技術士」などがあります。
(人事関係法令集の中に埋もれているので、公開情報にはなっていないはずです)
自衛隊創設時に、博士号や技術士保有者が非常に少なかったことから採用待遇を良くするために始まった慣習が明文化されたと聞いています。
中級課程にいた技術士(建設部門)の方も、1尉で採用されると聞いてたけど着任したら3佐で採用になってた!と話していたのを聞いたことがあります。
博士号・技術士をもっていても、経験期間が浅い場合は1尉になることが多いそうです。(博士後期課程3年又は技術士取得の7年間を経験期間に組み込むと聞いています。)
結構マイナーな採用規定なので、なかなか表に出ない情報です。(造修補給所時代に人事係長と仲が良く、いろんなことを押してていただきました。)
ブログの中で博士号や技術士を持っていると1尉もしくは3佐に任官とありましたが、根拠になる例規はありますでしょうか?探しても見つからないです。。
法学専攻の大学院に進学されるとのことで、おめでとうございます。
自衛隊では、海外展開が広がり法務幹部の役割がますます重要になってきています。
公募幹部として、空自に法務幹部というものがありますので将来の選択肢に入れていただければ幸いです。
そういえば海自公募幹部の中に「法務」が無い理由ですが、海戦法規やら慣習法など「海軍独特のルール」が理由として挙げられます。
国際法など成文法については、大学法学部での研究の方が高いレベルを持っていますが、海の慣習法など実際に勤務してみないと体感として整理と法的解釈の仕方が身につかないところがあります。
そのため、海自法務幹部は実際に現場を経験しながら法務幹部を育てる方式になっています。
(同期に砲雷長を経験後に法務幹部になったものもいます。)
サンレモ・マニュアルやCUSE(海上衝突回避規範)など海の法規はなかなか面白いものがあります。
有事7法が成立するとき、海自の強い要求で「外国軍用品審判所(捕獲検審所:prize court)」の法的整備が行われるなどなかなか独特です。
これからもよろしくお願いします。
自分は大学法学部を卒業して法律専攻の大学院に進みます 空自には法務分野はあるのに海自には見当たらないですね
募集人数も少ないですが将来の選択の一つとして頭に止めようと思います!
密かながらペンギンさんのブログを拝見しています これからも宜しくお願いいたします
これからもよろしくお願いします。