(2019年投稿記事です。)
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2007年に発生した、イージス艦情報漏洩事件を記憶している方はいるかと思います。
私ペンギンもこの事件に関して、艦船補給処時代に事情聴取を受けたことがあります。
ブログを書き始めた時、この事件に触れるべきか苦慮しましたが、内部で何があったのか?
報道で語られない、内部からの状況を記録すべきとして書くことにしました。
(前回記事):『ロシア幻のT-95戦車スクープ写真流出か?!』
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(1)艦補処での内部事情聴取について
最初に、イージス艦情報漏洩事件に関する事情聴取が始まったのは秋ごろでした。
1.1 武器部長:課長・班長と共に会議室に来るように!
艦補処武器部事務所で仕事をしている時、武器部長が私の仕事デスクまで突然来ました。
(武器部長)
『ペンギン1尉、1時間後に私(部長)と共に会議室に出頭せよ。』
『(所属部署の)課長・班長も同席するように。』
『なぜ呼ばれているかは、想像しているとおりだ。』
数週間前から、聴取があることは自覚していました。
当時世間をにぎわせていた、イージス艦情報漏洩事件の報道が加熱していました。
武器部長が来る1週間前に、前任地の艦艇開発隊の名前が報道機関に出ていました。
数日前には艦艇開発隊時代の上司から
『イージスに関する事情聴取を受けた。』
『君のところまで、事情聴取があるかもしれないので留意するように』
との連絡を受けていました。
図1 イージス艦きりしま(問題の艦)
引用URL:http://www.mod.go.jp/msdf/equipment/ships/ddg/kongou/#174-5
1.2 ついに来たか・・・
イージス艦情報漏洩事件について、事情聴取を受けることについて驚きはありませんでした。
なぜなら私は艦艇開発隊で、情報流出した資料に接触していたからです。
報道が出る前から、海自内部で流出元資料は艦発隊との話が流れていました。
詳細情報は伏せますが、その他にも流出情報で直接関与したものがありました。
あるプログラムについては、艦発隊直属の上司(技官)が作成に関与していました。
(Winnyで流出が報道されたプログラム(艦発隊作成))
1.3 艦補処・保全隊合同の事情聴取
会議室に出頭して、処長・副所長・各部長が居並ぶ中で事情聴取を受けました。
私(ペンギン)の他、もう1名(艦船部所属)が事情聴取の対象です。
図2 艦補処会議室
ここで情報保全隊の調査官から、色々な質問を受けました。
艦船部所属の該当隊員は、早期に関係性が無いと判断され退出できました。
ただ、私(ペンギン)は事案に深く関係性があるため聴取が続きました。
聴取の要点は、
『流出したイージス艦の資料を閲覧・取得したか?』
『資料について、自己で保有していたか?』
というものです。
(当該資料について、複写版を聴取時に提示されて聞かれました)
私の場合は、
『当該資料は閲覧していた。(装備実験部の試験に関係するため)』
『資料は、許可を得て複写・装備実験部の特定防衛秘密で登録した。』
『資料自体は、開発部にある特定防衛秘密保管金庫にて保管した。』
ということを、事情聴取の中で説明いたしましした。
事情聴取は供述書に、署名・押印して終了となりました。
その後、処分を覚悟していましたが本件での処分はありませんでした。
私の場合、
『資料の閲覧は、秘密有資格者であるため適正』
『資料の取得について、許可を得て手続き通りに保管していた』
ということから、処分対象者とはなりませんでした。
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(2)事件の背景にあった狂と猛
イージス艦情報漏洩事件は、その後艦艇開発隊(プログラム業務隊)所属だった隊員の逮捕・有罪判決まで発展しました。
本事件について、各界からいろんな事件の原因・背景などが論じられました。
本事件については、弁解不能な秘密取扱いの怠慢があったのは事実です。
完全に弁解の余地のないことが発生してしまいました。
関係部署に在籍したものとして、本事件の自己批判と共に背景を検証してみます。
2.1 狂と猛の精神が歪んだ行動となった。
本事件について、「狂と猛」という艦艇開発隊(プログラム業務隊)の指導方針が背景にあったと考えています。
『狂と猛』
この指導方針は、プログラム業務隊(PGC)の部隊指導方針の根幹でした。
艦艇開発隊に改編された後も、狂と猛の精神は継承されました。
より良い艦艇システム・装備品を作るという使命を持つ、艦艇開発隊に合致した言葉でした。
『わからないという言葉を使うな。狂うまで勉強・知識化せよ』
『専門家として、外部に発言できるよう猛全と研鑽せよ』
「狂と猛」の精神で、艦発隊所属中は徹底的に鍛え上げられました。
この指導方針がどこかで、行動の歪みとして現れた結果、事件に繋がったと考えています。
2.2 「艦発隊にいる以上、イージスについて理解してもらうぞ」
私は装備実験部に所属していましたが、開発部の「狂と猛」の精神に最初は戸惑いを隠せませんでした。
しかし、組織の空気に呑み込まれていったと自己批判せざるを得ません。
『艦発隊の一員なら、イージスシステムや艦艇システムも理解してもらうぞ』
新着任者教育での、ある担当幹部発言です。
徹底的に専門家となることを求められたのが、艦発隊です。
そのことが、秘密保全を疎かにする要因になったとも言えます。
秘密の区分の資料でも、研究開発・装備実験の為ならいくらでも閲覧できました。
2.3 形骸化していた保全体制
装備実験部に所属していたからこそ、秘密保全体制について感じることができたことがあります。
『なんとなく秘密保全体制が疎かじゃないかな?』
開発部の区画は、防衛秘密・特定防衛秘密(現在の特定秘密)に対応した区画になっていました。
ですが、なんとなく保全体制が機能していないようにぼんやり考えていました。
図3 秘密文書
引用URL:https://www.pakutaso.com/shared/img/thumb/PAK85_kuronurisaretahoukokusyo201409051_TP_V.jpg
ただ、そのようなことを指摘できる空気が部隊内に皆無でした。
そんな部隊の空気に流されたのは、自己批判せざるを得ません。
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(3)報告書に記述されなかったPC紛失
最終的に、防衛省からの報告書として事件の概要等について発表されました。
防衛省発表資料
URL:http://www.mod.go.jp/j/press/news/2007/12/daijin13.html
http://www.mod.go.jp/j/press/report/index.html
報告書が公表された後、疑問に思ったことがありました。
部隊では周知されたある事実について、どの報告書にも記述がないことでした。
本当に関係者しか知らない事実ですが、上層部に報告されなかったのかもしれません。
もしくは、余計な情報を記載したくなかったのかもしれません。
ただ、イージス艦情報漏洩事件に関連して発生した事実であり、報告書に記載すべきものではなかったのでしょうか?
『艦発隊開発部区画にて、官品PC1台の紛失事案』
図4 故障して紛失したPC
今回、あえてイージス艦情報漏洩事件を取り上げました。
自分が関わった事実がありますので、記録に残すべきと考えました。
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イージス事案の時に一番大変だった1術校の当該部署におられたということで大変な苦労をなされたと思います。
艦発隊にいた者として大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。
プログラム(艦発隊作成)についても、本来なら秘にも該当しないデーターだったのですが「対潜哨戒データーにも利用できる!」と報道されえしまったところがあります。
イージスのデーターもマジにヤバいデーターではなかったのですが、表紙の「特定防衛秘密」表記のみが独り歩きした状態でした。
(イージスの話は「とりあえず特定防衛秘密を受けとけ!」が一般的な時代でした)
秘密保全は、人間こそが最大の漏洩原因というのが教訓として生かされていないことに今回の漏洩事案の問題があるのでしょう。
(元上司が懲戒免職というのがかなりキツイです。)
当時私も海自におりまして、1術校に勤務していました。問題のCDが送られてきた部署におりましたので、事件後関係職員として、県警から調書を受けました。(部署の関係職員全員)その際、問題となったCDの中にあったデーターを全て印刷した資料を見せて頂いたのですが、内容は市販されている「世界の艦船」や「丸」で書かれているレベル…特に秘密要素は見当たりませんでした。県警の方も、「確かに、特に秘密の内容は無いのですよ…ただ、このCDが見つかった場所が悪かった。マスコミなども大騒ぎしてしまったので、引っ込みがつかなくなったのも否めませんね。」とのことでした。この事件で幹部自衛官が数名、懲戒免職となりました。秘密レベルでは無くても、秘密を漏らしたとして処分されたのですが、つい先日の事件(秘密漏洩)を見る限り、この教訓が生かされなかったと、残念でなりません。
海上自衛官と結婚していた、不法滞在中国人逮捕・家宅捜索の時にイージスの情報が発見された事案です。