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2017年12月27日

B栄養・食事療法と栄養補給法【解説】

それでは、「栄養・食事療法と栄養補給法」の問題の解説をします。

Q1.食事療法と栄養補給に関する記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)JCSが100である患者には、経口栄養法が適応できる。
(2)経皮内視鏡的胃瘻増設術は、経静脈栄養に用いる。
(3)経静脈栄養は、経腸栄養に比べて代謝上の合併症は少ない。
(4)経静脈栄養は、経腸栄養に比べてバクテリアル・トランスロケーションを起こしやすい。
(5)経静脈栄養が1か月以上に及ぶ場合、末梢静脈栄養を選択する。


【解説】…正答(4)
(1)誤り。JCSは意識障害評価法の1つで、数値が大きいほど、意識障害が重いことを示している。
   JCS100は、刺激をしても覚醒しない状態であるので、経口栄養法は不適である。
(2)誤り。経皮内視鏡的胃瘻増設術(PEG)は、経腸栄養に用いる方法である。
   PEGとは、開腹手術を行わず、内視鏡を用いて腹部から胃に通じる孔である胃瘻を造設する方法で、
   局所麻酔で短時間の手術で造設できる。
(3)誤り。経静脈栄養は、経腸栄養に比べて代謝上の合併症が多い。
   経静脈栄養では、高血糖高浸透圧症候群、リフィーディング症候群、
   ビタミンB₁欠乏による乳酸アシドーシスなどの代謝性合併症が起こる。
(4)正しい。長期にわたる中心静脈栄養では、腸管粘膜が萎縮し、腸管由来の免疫能が低下し、
   腸管内の細菌や毒素が門脈から血中に入りやすくなる。
   この現象をバクテリアル・トランスロケーションという。
(5)誤り。経静脈栄養が1か月に及ぶ長期の場合、中心静脈栄養を選択する。
   末梢静脈栄養は、高エネルギー輸液が投与できないので、
   短期間(1〜2週間程度)の栄養管理に用いられる。


Q2.経腸栄養剤に関する記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)成分栄養剤の糖質減として、でんぷんが用いられる。
(2)消化態栄養剤の窒素源は、たんぱく質である。
(3)成分栄養剤の長期投与では、必須脂肪酸欠乏症が発生する。
(4)肝不全用経腸栄養剤には、分岐アミノ酸が含まれない。
(5)腎不全用経腸栄養剤の特徴は、高エネルギー・高たんぱく質である。


【解説】…正答(3)
(1)誤り。デキストリンが用いられる。
(2)誤り。アミノ酸またはジペプチド、トリペプチドである。
(3)正しい。成分栄養剤の脂肪含有量はきわめて少ないため、脂肪乳剤の併用が必須である。
(4)誤り。分岐アミノ酸が多く含まれる、これにより、フィッシャー比の低下を是正して、
   肝性脳症を予防する。
(5)誤り。高たんぱく質ではなく、低たんぱく質である。


Q3.経鼻胃管により経腸栄養剤を投与した時に生じた下痢の原因である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。

(1)乳糖を含むものを使用した。
(2)浸透圧の低いものを使用した。
(3)投与速度を400mL/時とした。
(4)投与時の温度を4℃とした。
(5)残実に溶解したものを使用した。


【解説】…(2)
(1)正しい。下痢が起こす原因として、乳糖不耐症も考えられる。
(2)誤り。下痢は、栄養剤の浸透圧が高い場合に起こりやすい。
(3)正しい。栄養剤の投与速度が速い場合には下痢が起こりやすい。
   通常の栄養剤投与速度は100〜200mL/時である。
   下痢時には、50mL/時程度にまで下げる。
(4)正しい。栄養剤の温度が低い場合には下痢が起こりやすい。
(5)正しい。調整方時間が経過した栄養剤は、細菌感染のリスクが高くなり、下痢の原因となる。


Q4.静脈栄養補給法に関する記述である。
正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)末梢静脈補給法に用いる輸液のアミノ酸濃度は、30%である。
(2)高カロリー輸液基本液には、鉄が含有されている。
(3)成人では、非たんぱく質熱量/窒素比を700kcal/gとする。
(4)中心静脈栄養補給法では、ブドウ糖濃度が20%の輸液を使用できる。
(5)脂肪乳剤の投与は、1g/s標準体重/時とする。


【解説】正答(4)
(1)誤り。末梢静脈栄養補給法で用いる輸液のアミノ酸濃度は、2.7〜3.0%である。
(2)誤り。高カロリー輸液基本液には、微量元素として亜鉛は含まれているが鉄は含まれていない。
(3)誤り。成人では、非たんぱく質熱量/窒素比を150〜200kcal/gとするのが一般的である。
(4)正しい。中心静脈栄養補給法では、ブドウ糖濃度が15〜36%の輸液を使用できる。
(5)誤り。成人の脂肪乳剤の投与は、0.1g/s体重/時を超えないことが推奨されている。


Q5.中心静脈栄養法に関する記述である。
誤っているのはどれか。1つ選べ。

(1)アクセスルートには、大腿静脈がある。
(2)鎖骨下静脈穿刺の合併症には、気胸がある。
(3)カテーテルの先端は、左心房内に留置する。
(4)1日に400g以上のグルコースを投与できる。
(5)ビタミンB1欠乏による、乳酸アシドーシスをきたすことがある。


【解説】…正答(3)
(1)正しい。通常のアクセスルートは、鎖骨下静脈または内頸静脈である。
(2)正しい。気胸とは、本来空気が存在しない胸腔内に何等かの原因で空気が入った状態であり、
   肺尖部が鎖骨下静脈に近いことから気胸を起こす可能性がある。
(3)誤り。カテーテルの先端は、右心房に入る2〜3p手前の上・下大静脈内に留置する。
   心房や心室に入ると、不整脈や心タンポナーデの原因となる。
(4)正しい。高カロリー輸液用製剤を投与することができるので、
   最大500〜600g程度までのグルコースを投与できる。
(5)正しい。ビタミンB₁欠乏により、解糖経路においてピルビン酸からアセチルCoAへの変換が進まず、
   血中に乳酸が蓄積するためである。
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食品会社で勤務しながら、半年間の独学を経て管理栄養士の国家試験に合格。その後、管理栄養士として勤務するために病院へ転職。6年間で3つの病院を経験。現在は、管理栄養士国家試験の参考書の校正や答案添削を行っています。 <取得資格>管理栄養士、栄養教諭、糖尿病療養指導士、病態栄養認定管理栄養士、NST専門療養士
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