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2020年11月27日

《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.58)?米大統領選 特別編【大船怜】(2020.11.14)(米大統領選挙2020)[政治・社会]


《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.58)?米大統領選 特別編【大船怜】』

(2020.11.14)

(米大統領選挙2020)

[政治・社会]


『お勧め・参考記事』


FIJ|ファクトチェック・イニシアティブより引用
https://fij.info/archives/8255#20
》》外部サイト《《

アメリカ大統領選に関する“要注意”情報20

◆「ウィスコンシン州で開票率1%増の間にバイデン12万票増」
◆「怪しいのでウィスコンシンで州兵が集計作業に参加」
◆「バイデン『最大規模の不正投票組織を設立した』と発言」
◆「ミシガン州で1902年生まれや1850年生まれが投票」
◆「ミシガン州デトロイトで1823年生まれが投票」
◆「ミシガン州で共和党6000票を民主党にカウント」
◆「国土安全保障省が投票用紙に偽造防止の透かし」
◆「ネバダ州で3000件以上の不正投票を確認」
◆「機械的に製造されたバイデン票を発見」
◆「トランプ票を燃やした(動画)」
◆「カリフォルニア州のゴミ場で数千万枚の票を発見(画像)」
◆「ジョージア州でゴミ箱に捨てられたトランプ票を発見(動画)」
◆「トランプ票がトラックで運ばれ山に埋められた(動画)」
◆「トランプ票を大量廃棄(画像)」
◆「ペンシルベニア州でトランプ票が大量に廃棄」
◆「投票率 ネバダ州125%、ペンシルベニア州109%…(画像)」
◆「投票用紙を民間企業が発送するのは違法」
◆「RCPがバイデン氏のペンシルベニア州勝利を撤回」
◆「ペンシルベニア州で死亡している2万1000人の名前で投票」
◆「トランプ陣営会見場はアダルトショップの隣」

(1)「ウィスコンシン州で開票率1%増の間にバイデン12万票増」

◆票の急増は不在者票の加算 開票率も誤り
バイデン氏の得票が急増したのは、大都市ミルウォーキーの不在者投票分が一気に加算されたため。当日メディア記者等がレポートしていた開票率は、拡散された数字とは異なっている。




本シリーズ前号の解説(インファクト)
「ウィスコンシン州で投票率が100%を超えた」「バイデン氏の不正」はデマ。当日に有権者登録が可能、保守系メディアも否定(ハフポスト)
米大統領選「バイデン氏の不正疑惑で州兵投入」「ウィスコンシン州で投票率200%」は誤り。日本だけで拡散?(BuzzFeed)
<著名人による拡散例>渡邉哲也氏(経済評論家)、門田隆将氏(ジャーナリスト)、橋本琴絵氏(政治活動家)、ゴンゾー氏(芸人)


(2)「怪しいのでウィスコンシンで州兵が集計作業に参加」

◆投票用紙の印刷ミス対応作業のため
ウィスコンシン州の開票場に20人の州兵が動員されたのは事実。しかし、その理由は不正選挙の疑いからではなく、不在者投票用の投票用紙に見つかった印刷ミスの対応のためだ。(検証記事は(1)参照)

(3)「バイデン『最大規模の不正投票組織を設立した』と発言」

◆実際の発言だが文脈は投票妨害対策
10月のネット番組でバイデン氏が「不正投票組織」(voter fraud organization)を結成したと発言したのは事実。しかし、前後の文脈からこの「組織」は選挙妨害対策のための電話相談窓口を指していると読み取れる。

バイデン氏が「最大規模の不正投票組織を用意した」? 拡散した動画は切り取り、ミスリードに注意(BuzzFeed)
バイデン氏が「最大規模の不正投票組織を作った」と発言? トランプ氏側が拡散、全文まで見ると全く違う意味だった(ハフポスト)
<著名人・メディアによる拡散例>西村幸祐氏(評論家)、深田萌絵氏(アナリスト)、大紀元

(4)「ミシガン州で1902年生まれや1850年生まれが投票」

◆同姓同名の息子や仮の生年
実際に投票したのは、1902年生まれで1984年に死去した人物と同姓同名の息子であり、州の有権者情報システムが両者を混同して表示していたことが判明している。データ上で生年月日が不明の場合は仮の日付が登録される場合もあり、「1850年」などはこれに当たると考えられる。

ミシガン州州務長官室による声明
【米大統領選2020】 投票について拡散されたうわさを検証(BBC)
米選挙で死者が投票したとの情報拡散、実際に調査した結果(CNN)
No, a dead voter named William Bradley didn’t vote in Detroit(PolitiFact)
<著名人による拡散例>ナザレンコ・アンドリー氏(政治評論家)、小野寺まさる氏(元北海道議)、釈量子氏(幸福実現党党首)、ゴンゾー氏(芸人)

(5)「ミシガン州デトロイトで1823年生まれが投票」

◆選挙前に修正済み
これは(4)とは別のケースで、2019年12月に市民団体が有権者登録に多数の不備を指摘し告訴したというもの。しかし、既に登録が修正されたことから、今年7月に訴訟は取り下げられている。従って、今回の大統領選には影響せず、投票も行われていない。



まとめサイト「アノニマスポスト」によるTwitter投稿



「バイデン氏に1823年生まれの197歳が投票」は誤り。大統領選の「不正疑惑」として拡散したが…(BuzzFeed)
Did a Fox 2 Detroit Report Expose Voter Fraud in the 2020 Election?(Snopes)
<著名人による拡散例>小野寺まさる氏(元北海道議)、くつざわ亮治氏(東京都豊島区議)、ゴンゾー氏(芸人)

(6)「ミシガン州で共和党6000票を民主党にカウント」

◆速報値の誤りのみ 結果に影響なし
誤りが発覚したのは開票中の速報値。カウント自体は適切に行われ最終結果に影響していないと、共和党・民主党双方の点検委員が確認している。速報値の誤りの原因は選挙用ソフトの更新が適切に行われていなかったことで、ソフト自体の不具合ではないという。

ミシガン州州務長官室による声明
Officials: Clerk error behind county results favoring Biden(AP通信)
Michigan county vote count glitch was not fraud | Fact Check(AFP通信)
<著名人・メディアによる拡散例>門田隆将氏(ジャーナリスト)、渡邉哲也氏(経済評論家)、孫向文氏(漫画家)、及川幸久氏(宗教家)、大紀元

(7)「国土安全保障省が投票用紙に偽造防止の透かし」

◆DHSは関与せず一部地域が実施
投票用紙は地域ごとに作成されるため国レベルで用紙の印刷や偽造対策は行っていないと、国土安全保障省(DHS)傘下のサイバーセキュリティ&インフラセキュリティ庁(CISA)が否定。ただし、カリフォルニア州など一部地域では実際に透かしによる偽造対策を独自に行っている。

Rumor Control(CISA)
大統領選の投票用紙は追跡できるのか、世界の終りとインテリジェンス・インボーランド(ネットロアをめぐる冒険)
Fact Check: Department Of Homeland Security Did NOT Craft An Election Fraud Sting With Watermarked Ballots ? This Is A Hoax(Lead Stories)
Did President Trump issue secret watermarks on ballots? No, that’s another QAnon conspiracy theory(PolitiFact)
<著名人・メディアによる拡散例>篠原常一郎氏(ジャーナリスト)、加藤清隆氏(政治評論家)、竹内久美子氏(エッセイスト)、渡部篤氏(元衆議院議員)、大紀元

(8)「ネバダ州で3000件以上の不正投票を確認」

◆引越し前の住所で投票は可能
トランプ陣営はネバダから既に引っ越した3062人が投票していると主張、その名簿リストを公開したが、実際は引っ越して30日以内の人は旧住所で投票できる。また、リストには正規の在外投票をした軍人等も含まれている。



まとめサイト「ツイッター速報」によるTwitter投稿

Fact-checking Republican claim of illegal votes in Nevada(PolitiFact)
<著名人による拡散例>加藤清隆氏(政治評論家)、竹内久美子氏(エッセイスト)

(9)「機械的に製造されたバイデン票を発見」

◆有権者側のミスで返送されたもの
選管は、動画に映る投票IDをもとに、この票がどのように取り扱われたかを調査。その結果、有権者側が送付用でない封筒を誤って使ったため、自らマークした投票用紙がそのまま返送されたと判明している。


拡散したTwitter投稿

米大統領選「郵便投票で機械的に製造されたバイデン票が発見された」は誤り。アメリカで検証済みの情報が日本でも拡散(BuzzFeed)

(10)「トランプ票を燃やした(動画)」

◆本物の投票用紙ではない
本来あるはずのバーコード(紙の周りに付いてるマーク)が無いことから、映っているのは本物の投票用紙ではないとバージニア州当局が声明を発表している。


拡散したTwitter投稿と動画

バージニア州バージニアビーチ当局の発表および参考資料
トランプ大統領の息子たち、選挙のデマ情報や動画を拡散。「トランプ票が燃やされた」(ハフポスト)
「投票用紙」燃やす動画は偽物、現地当局が発表 トランプ氏息子も共有(CNN)
<著名人による拡散例>孫向文氏(漫画家)

(11)「カリフォルニア州のゴミ場で数千万枚の票を発見(画像)」

◆過去の選挙用の空封筒
捨てられたのは2018年の選挙時に使われた空の封筒(枚数は不明)で、今回の選挙用のものとは見た目が違う。この画像は9月には拡散されていたが、その時点では新しい投票用紙はまだ送られていない。


拡散したTwitter投稿と画像

ソノマ郡公式Facebookアカウントの投稿
Photos of Recycled Election Materials in California Prompt False Claim(FactCheck.org)
<著名人による拡散例>孫向文氏(漫画家)

(12)「ジョージア州でゴミ箱に捨てられたトランプ票を発見(動画)」

◆捨てられたのは封筒のみ 投票用紙は無し
選管事務所へ投票用紙を送るための封筒がその建物裏のゴミ捨て場で見つかったが、共和党員の郡保安官による捜査で、封筒は全て開封済みで投票用紙は入っていなかったことが確認された。


拡散したTwitter投稿と動画

捜査主任による投稿
No, ballots for Donald Trump weren’t discovered in a Georgia dumpster(PolitiFact)
<著名人による拡散例>孫向文氏(漫画家)

(13)「トランプ票がトラックで運ばれ山に埋められた(動画)」

◆動画は2016年に存在 サウジでの鶏肉廃棄か
期限切れの鶏肉を捨てているところとして、2016年にサウジアラビアの衛星放送局のニュースで紹介された動画だった。



拡散したTwitter投稿と動画

当時のニュース動画
「大量のトランプ票を埋めた」動画は誤り 実際はサウジの冷凍チキンか(毎日新聞)
<著名人による拡散例>孫向文氏(漫画家)

(14)「トランプ票を大量廃棄(画像)」

◆記入前の投票用紙や、無関係の郵便物
4枚の画像のうち、2枚は投票用紙、1枚は投票用紙を含む郵便物が実際に捨てられた時の画像だが、いずれも記入前のもの。特定の候補への票が捨てられたわけではなく、いずれもその後本来受け取るべき有権者へ用紙は渡されている。残り1枚は2018年に未配達の郵便物が捨てられた時の写真であり、今回の選挙とは全く関係が無い。


拡散したTwitter投稿と画像

米大統領選「トランプの票を大量に廃棄、埋めた」は誤り。拡散された画像はどれも別のニュースからの切り取り(BuzzFeed Japan)
<著名人による拡散例>孫向文氏(漫画家)

(15)「ペンシルベニア州でトランプ票が大量に廃棄」

◆捨てられていたのは9票 うちトランプ票は7票
記入済みの在外軍人票が不正に開封され、廃棄されているのが見つかったのは、9月に実際あった出来事だ。詳細は捜査中だが、州務長官は単なるミスによるものという見解を示している。廃棄されたのは9票でうち7票がトランプ、他は不明。いずれも発見後再封され正規の票として取り扱われている。大量の投票用封筒の写真はあくまでもイメージ画像。


拡散したTiwtter投稿と英文記事

Fact check: Inaccurate details about ‘discarded’ military ballots found in Pennsylvania(ロイター通信)
No, thousands of military ballots were not found in the trash in Wisconsin(PolitiFact)
<著名人による拡散例>西村幸祐氏(評論家)

(16)「投票率 ネバダ州125%、ペンシルベニア州109%…(画像)」

◆データが古く有権者登録数が少ない
拡散した表に記載された有権者登録数のデータは古く、最近登録した人が含まれていない。投票当日に有権者登録できる州もあるなど、実際の登録数はさらに伸びており、投票数との矛盾は起きていない。



拡散したTwitter投稿

Fact check: Table shows outdated voter registration numbers for eight key states(ロイター通信)
Fact Check: States Did NOT Have More Votes Than Registered Voters(Lead Stories)
<著名人による拡散例>篠原常一郎氏(ジャーナリスト)、孫向文氏(漫画家)

(17)「投票用紙を民間企業が発送するのは違法」

◆在外投票等では認められている
郵便公社(USPS)以外の民間業者を使っての郵便投票は多くの州で無効(違法ではない)だが、一部州では認められているほか、国外在住の有権者による在外投票の場合は全州で認められている。



まとめサイト「もえるあじあ」によるTiwtter投稿

中国から投票用紙が送られてくるのはなぜなのか、神の子どもたちはいつまでも踊る(ネットロアをめぐる冒険)

(18)「RCPがバイデン氏のペンシルベニア州勝利を撤回」

◆元々「当確」を出しておらず、「撤回」していない
アメリカの政治ニュースサイト「リアルクリアポリティクス」(RCP)は元々ペンシルベニア州の勝利者を未定とし、全州での過半数の選挙人獲得も発表していない。CNNはバイデン氏が選挙人過半数獲得で勝利と報じているが、アリゾナ州の勝利者は一貫して未確定扱いで、変更してはいない(日本時間11月12日現在)。


まとめサイト「アノニマスポスト」によるTwitter投稿

ファクトチェック:「バイデン氏のペンシルベニア州当確取り下げ」は誤り 元NY市長ら拡散後、訂正(毎日新聞)
Did Real Clear Politics Take Penn. ‘Away’ From Biden After Lawsuit News?(Snopes)
<著名人・メディアによる拡散例>加藤清隆氏(政治評論家)、FNN・平井文夫氏(フジテレビ解説委員:訂正・削除済み、リンクはキャッシュ)、現代ビジネス・大原浩氏(アナリスト:削除済み、リンクはキャッシュ)

(19)「ペンシルベニア州で死亡している2万1000人の名前で投票」

◆証拠不足で訴えは却下
民間の団体が主張し告訴したが、この約2万1000人が死亡しているという具体的な根拠が原告から示されなかったため、ペンシルベニア州東部地方裁判所が10月に訴えを却下している。

Misleading Claim of Dead Registered Voters in Pennsylvania(FactCheck.org)
<著名人による拡散例>加藤清隆氏(政治評論家)

(20)「トランプ陣営会見場はアダルトショップの隣」

◆隣ではなく数軒離れている
トランプ陣営が突如会見場として使用し話題になった園芸業者(Four Seasons Total Landscaping)は、アダルトショップ(Fantasy Island)の建物とは数軒離れていることが、Googleのストリートビューで確認できる。

現地ストリートビュー(Google)
<著名人・メディアによる拡散例>西村博之氏(2ちゃんねる創始者)、ぬまがさワタリ氏(イラストレーター)、ギズモード(訂正済み)、BuzzFeed(訂正済み)、しらべぇ

※この記事の調査には、インファクトの西村晴子が協力した。

(この記事はInFact(運営:NPOインファクト)からの転載です。過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年11月18日の予定です)

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