巨人の守護神クルーンが九回に同点のピンチを招くと、ベンチで見守っていた高橋尚は「心臓が口から飛び出しそうだった」という。最後の打者が空振り三振に倒れ、やっとの思いで手にした約１カ月ぶりの６勝目。お立ち台では、久々に笑顔がのぞいた。

　一回は３者連続三振。その後も要所を締め、７回を２失点に抑えた。巨人は９月に入って、先発で７回以上投げたのはグライシンガーだけ。負担が増していた越智や山口ら中継ぎ陣を休ませることができ、高橋尚は「ふがいないピッチングばかりだったけど、きょうは粘り強く投げられた」と納得の表情を見せた。

　２日の広島戦では五回途中４失点で敗戦投手。６日のヤクルト戦では中継ぎ登板を命じられた。そしてこの日、１２日ぶりの先発マウンドは、その６日にプロ初勝利を挙げた由規との投げ合い。

　３３歳の左腕は試合前、西山バッテリーコーチから「どうしても負けられない。意地を見せてくれ」とハッパをかけられていた。昨年まで高校生だった１８歳との真剣勝負。「プロで９年やってきたプライド」で投げ勝った。

　原監督からも「今季で一番」と評されたが、「まだまだ大事な試合が続く。これからです」と気を引き締める。ナイターで首位阪神が敗れ、またも自力優勝の可能性が復活。今季の開幕投手が奇跡へのカギを握っている。