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愛しいケイジャン娘

 私は、10代のころ、月に2枚のLPを買うことが楽しみでした。
 そうやって手に入れたLPは、正に宝物で、ターンテーブルに乗せることはほとんどありませんでした。

 すぐにカセット・テープに録音して、テープの方を繰り返し繰り返し聴いたものでした。
 今回のアルバムは、もう少し時代が進んで、かなりこの世界にどっぷりとつかり始めていたころに手に入れたものです。


Little Green Frog
Clarence Frogman Henry

Side 1
1. Loving Cajun Style(Cajun Honey) : H.P.Meaux
2. Ceatin' Traces : Jimmy Donley
3. Ain't Got No Home(1) : C.Henry
4. Think It Over : Jimmy Donley
5. Baby, Ain't That Love : C.Henry
6. Heartaches By The Number : Harlan Howard
7. Have You Ever Been Lonely : deRose, Brown

Side 2
1. Little Green Frog : Sam Taylor
2. You Cant Hide A Tear : Sidney Beiley, Walter Jessup
3. I Told My Pillow : Sammy Taylor, T.Bruneau
4. I Might As Well : V.J.Boulet
5. Don't Take It So Hard : C.Singleton, R.McCoy
6. Tore Up Over You : Hank Barrard
7. Ain't Got No Home(2) : C.Henry


 Clarence Henryは、多分、既にチェス(カデット)録音を先に聴いていたと思います。
 その時の印象は非常に良いものでしたが、その認識は、カエル声などを使う、色もの的なニューオリンズR&Bシンガーだというものでした。

 まあ、ニューオリンズR&Bからノベルティ・ソングをより分けてしまうと、草一本生えてない、とまでは言いませんが、ごくごく普通のスタイルだと思っていました。

 しかし、そういった私の認識は、このアルバムによって、大きく変化することになります。
 私が、最初にLPを聴き通した感想は、「これはいい!、なぜ今までこんな音楽を知らなかったんだ!」くらいのレベルで激しく心を動かされました。

 過去の記憶というものは、年々あいまいになっています。
 たとえば、過去20年の出来ごとの記憶と、ここ数日の記憶との比重は、ほぼ同じだったりします。

 どの出来ごとが先で、どれが後だったのか、記憶違いや、経年による誤った刷り込みなどもあると思います。

 私がこのアルバムを聴き返してみて、しみじみと思ったのは、あるいはこれがスワンプ・ポップを意識した最初の1枚かも知れないということでした。
 同じクラレンス・ヘンリーでも、チェス録音は、ボビー・チャールズのチェス録音にも共通する、あの時代が持つ匂い、たたずまいのようなものを感じます。

 私はそれが大好きですが、このアルバムで出会った音は、グレッグ・オールマンを何枚聴くよりも、私なりに、レイド・バックという言葉を理解する道のひとつだったと思います。

 このアルバムは、87年にBear Familyからリリースされたもので、当時はまだメイド・イン・西ドイツでした。
 コンパイラーは、コリン・エスコットとリチャード・ウェイズとなっています。
 コリン・エスコットは、カントリーのコンピなどでよく見かける名前でした。

 中身は、ヒューイ・モーによる60年代中ごろの録音を集めたもので、90年代には同時期の編集盤CDも手にしましたが、未だにこのLPが一番だという思いは変わりません。

 選曲も、ヘンリーのパフォーマンスも最高に素晴らしく、彼のキャリアを代表する録音ばかりを集めた決定盤だと思っています。

 チェス時代のI Ain't Got No Homeの新録音もありますが、ここで最も聴くべき曲は、まず、ヒューイ関連の曲、Loving Cajun Style(Cajun Honey)と、Think It Overでしょう。

 Loving Cajun Style(Cajun Honey)は、フレディ・フェンダーによる、うきうきするようなロッキン・スタイルのバージョンもいいですが、このヘンリー盤のまったり感もまた、たまりません。

 そして、Think It Overは、あるいはこれがこの曲との出会いかもしれません。
 オルガンのゆるーい、ブーカ、ブーカいうサウンドに続いて、ヘンリーのとぼけたボーカルが乗っかると、たちまち彼の世界に惹きこまれ、しばし我を忘れて陶然としてしまうのでした。

 私はこの時、ジミー・ドンリーへと続く脇道を発見したのでした。
 この曲は、しばしばヒューイ・モー作とクレジットされています。

 このアルバムには、ハーラン・ハワード作のHeartaches By The Numberも含まれています。
 失恋数え唄とでもいうんでしょうか、この曲も、このバージョンが好きになるきっかけだったかも知れないな、と思い始めています。
 この曲は、60年代には未発表だったもので、このアルバムで世に出ました。

 当時未発表だった曲では、もう一つのドンリー作品、Cheatin' Tracesもあります。
 この曲にもまた、私を20年以上もとらえて離さない、得も言われぬ魅力があります。
 なぜ、お蔵入りだったのか、不思議でならない名演だと思います。

 名曲もまた、歌い手を選ぶのだと思います。
 この曲が埋もれ続けなかったことに感謝します。

 あなたがお好きなHave You Ever Been Lonelyは、ジム・リーヴス盤でしょうか、それともパッツィ・クライン盤ですか?  
 私は、クラレンス・ヘンリー盤です。
 ここには、サラリーマンの私が、ネオン街だけでは得ることが敵わなかった安息があります。

 そして、ちょうど昨日とりあげた、ハンク・バラードのTore Up Over Youが収録されています。
 このアルバムでは珍しく、タイトなアップ・テンポのアレンジがなされています。
 ドラムスの連打とタンバリンのシャカシャカが印象に残ります。

 ラストに、ファスト・アレンジのI Ain't Got No Homeがおまけとして入っています。
 アップのオルガン・サウンドは、少しアシッドな雰囲気がします。
 ルイジアナから、テキサスへとトリップするような感覚です。

 もうひとつの有名曲、But I Doの新録音は、試みられなかったんでしょうか?
 でもそれは贅沢な願いです。

 また、そのことで不満など一切ありません。
 このアルバムは、私にとって、20数年変わることのない、フェイヴァリット・アルバムの1枚です。




チップス・モーマン作のダイアル録音、This Timeです。
ダグ・サームも吹き込んだ名曲です。



 

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