NHK朝ドラ、「虎に翼」には、本当によく泣かされる。
だいたい高齢者になると涙もろくなっているというのに、上手いシナリオと演出とキャストによって、それがさらに加速する。(愛する人が次々に亡くなるというシチュエーションがやや多すぎるのが、とても辛いのだが)
脚本の吉田恵里香氏は、36歳だという。その年でこのようなシナリオが描けるとはなんという才能かと驚く。しかし、向田邦子賞を受賞するテレビドラも手掛けるなど、やはりただものではなさそうだ。
私は、恥ずかしながら?法学部出身である。ただし法律学科でなく政治学科ではあるが、(やや言い訳している)憲法については、中学で学び、そして大学でも学んだ。しかし、憲法14条はすぐに思い出せない。その程度であった。それがこの番組によって、あらためて、日本国憲法の意義を教えられた。それも授業で学ぶよりもはるかに深く。
よねと轟が営む法律事務所の壁には、この14条の条文が掲げられている。
そこには、二人の、特によねの強い思いが感じられる。
憲法第十四条:すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
ちなみに、門地とは、家柄のことである。そういえば遠い記憶ではあるが、大学の授業で聞いたような気がする。華族などの家柄に対する特権制度など家柄に寄る差別を、新憲法では撤廃しているということでこれも明記されている。
このドラマでは、よねという男装の麗人を通して性差別を表現し、梅子によって妻の立場の弱さなど家庭内の差別と相続の問題を描き、香淑によって、国籍による差別にフォーカスし・・・とまさに14条の持っている平等の意味を問い続けている。
こうした中で、GHQとの協議を重ねながら新憲法が生まれていく過程に折り重なるように物語が進み、主人公の寅子が、新民法の制定にも関わりながら、14条の意味がドラマの随所に織り込まれていく。見事というほかにはない。
今週は、梅子の相続調停が中心となったが、最後に梅子は、相続権や家族との縁などすべて捨てる決意を宣言した。財産も放棄する悲しい決断だが、自分を縛ってきたものとの決別シーンは、どこか潔く清々くもあり、思わず快哉を叫んでしまった。
その梅子のエピソードでは、民法第730条が大きな役割を果たしていた。
「民放第730条:直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。」
夫からも姑からも子供たちからも助けられることのなかった梅子の相続放棄によって、皮肉なことに姑と息子たちは、あらためて助け合うことを考える。
全てを失った梅子、しかしどこか晴れやかな表情である。
うーん、うまいストーリー展開だな、素晴らしい。そして、梅子、寅子と花江さんの演技にも泣かされる。
あー、もうたまらんなあ。来週の予告編で、キャストが喪服を着ていたのが、気になったが、来週もまた泣かされるのだろうか。はて?
#虎に翼 #民法第730条