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2017年07月18日

研究にはLimitationがつきもの 〜研究をはじめる前にはなるべく少なくなるデザインにしよう〜

PubMedから、今日のつぶやき − 31 −

Pickhardt PJ, et al. Colorectal Findings at Repeat CT Colonography Screening after Initial CT Colonography Screening Negative for Polyps Larger than 5 mm. Radiology 2017; 282: 139-148.



今日はLimitation(研究の限界・研究の欠点)についてつぶやきます。
昨日のT橋さんのコメントはナイスフォローでしたね。
どうもありがとう〜研究費申請書類作成もヘルプも大感謝です〜

さて、今回取り上げたPickhardt論文では、
初回に検診目的で大腸CT検査受けた受診者のうち
検査陰性例は5640名でしたが、
そのうち2回目の検診目的で
大腸CT検査受けた受診者は1429名でした。
つまり、75%は1回目の検診しか受けていないのです。

2回目の検診を受けていない75%の中には、
5年後の検診を待たずに有症状のため
内視鏡検査などで大腸病変が指摘されることもあるでしょう。
つまり2回目の受診者は全員が無症状の検診受診者ですから、
有症状者は原則としてすべて外れることになります。
とすると見逃し病変はもう少し高くなる可能性も否定できませんね。

なお、細かいことですが、
前回の検診で指摘されず(見落とされ)有症状のため
検診以外で診断されたがんを「中間期癌、interval cancer」、

前回の検診で指摘されず(見落とされ)
次の検診で診断された癌を「見逃し癌, missed caner」と同じ見落としでも区別されます。
混乱しやすいのですが、自分の上司が厳しく指導してくれます。

話を戻しますね。
それでは、Limitationは悪いことなのでしょうか?
でも、Limitationをなくそうとすると、お金も時間もかかってしまいます。
新しい科学的な知見を出す際には、ある程度のLimitationは避けられないと思います。

Limitationを示すことは、読者にこうした課題があるからね、という注意喚起です。
悪いことでも何でもないと私は考えます。
むしろ、このLimitationを隠そうとすることは、
利益相反と同様に非常によくないです。

先月、自分が査読した論文のことです。
Methods(方法)に次のように記載されていました。
画像データ以外の情報は知らないエキスパート一人が決まられた手法で画像の判定を行った、。
一人で画像の判定を行うのは主観的だよね〜Limitationに明示してくださいね〜と返しました。
すると、驚きのレスポンスが返ってきました。
一人のエキスパートが判定したのだけれども、
カンファレンスで数名の医師と十分に議論っをしたのだから十分に客観的ですよと
論文にご丁寧に記載してきたのです。

まずいのがお分かりでしょうか?
もし、これが本当だとしたら、科学的な研究とはいえません。
画像以外の検査情報を有しているほかの医師と相談して判定したのであれば、
その判定法に関する検討をした研究としては成り立ちません。

完全に一人でブラインドで判定したのであれば、
Limitationに主観的な可能性もあることを明示すればよかったのに・・・。
あえなくこの論文は研究手法に致命的なミスがあるとしてReject(却下)されていまいました。

画像データなど判定にばらつきが出る可能性がある検討であれば、
研究デザインをどうすればよかったのでしょうか?

答えのひとつは複数人で決まった手法のもと互いにブラインドで判定する。
そして、その判定の一致率を見て、大きくばらついていなければその判定方法は有用だと証明すればいいのです。


教訓:
研究をはじめる際にはLimitationがなるべく少なくなるようにデザインをして、
論文執筆の際にはLimitationを正々堂々と記載しましょう。
ジャーナルのグレードにもちろんよりますが、派手にまずいLimitationでなければ大丈夫だと思います。

それでは、また〜
もうさすがに新しい論文を紹介したいと思います。


それでは、また。
今日もよい日をお過ごしくださいね。


★★最新ニュース!!━━━━━━━━━━━━━━━
日本消化器がん検診学会とGAIAの共催で実施した
「大腸CT検査の実態全国調査【臨床研究 GAIA−03】」
が放射線領域の代表的なジャーナル
European Radiology(2016 Impact Factor: 3.967)」
に掲載されました!!

委員の先生方に大変」ご尽力いただきました。
ご協力いただいた施設の医師や技師の皆様にも感謝です!
皆さま、本当にありがとうございました!!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━★★

ご注意)必ずしも論文の内容をすべて網羅している情報ではございません。詳細にご興味の方は原文をご確認ください。つぶやきは正確な情報発信を心がけますが、その内容を保証するものではないことをどうぞご了承ください。


原文
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27552558



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▲PRここまで--------------------------------




大腸CT検査のポイント集
毎日のつぶやきを経て増えていきますね。

<適応>
・閉塞性大腸がんに対して大腸CT検査は有用だが、手技に工夫が必要。
・完全閉塞症例には「PET/CT colonography」。
・内視鏡の検査待ちの日数を減らす役割もあり。

<前処置>
・内視鏡後にガストログラフィン30mLを服用したら約4時間後に大腸CT検査をしよう。

<読影>
・読影の飛ばしすぎは読影精度を下げるので要注意。
・トレーニングを積めば、都市部の病院でなくとも高い精度の検査が可能。

<診断>
・C-RADSにおけるC1の5-10年の検査間隔は妥当
・大腸CT検査の中間期癌の頻度は非常に低い(0.1%、2/1429)

<偶発症>
・閉塞性大腸がんでは穿孔のリスクが高くなるので注意しましょう。



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プロフィール
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大腸の専門家 ナガイチ
大腸を専門に外科、内視鏡、画像診断のキャリアがあります。               経歴のご紹介:               1996年 国立医学部医学科卒業。       1996〜2007年 消化器外科、内視鏡医として従事。                    2007〜2011年 ハーバード大学 医学部 放射線科、マサチューセッツ総合病院に留学。 2009年〜国内のナショナルセンターに外来研究員として併任。               2011年 帰国し内視鏡医として従事。     2015年〜国内のナショナルセンターに常勤勤務。 2019年〜某国公立大学医学部医学科の特任教授として働いています。                  資格: 外科認定医・認定登録医、消化器内視鏡認定医・専門医・指導医、消化器病専門医、H. pylori(ピロリ菌)感染症認定医、消化器がん検診認定医、胃腸科専門医・指導医、アメリカ消化器内視鏡学会(American Society for Gastrointestinal Endoscopy) 国際会員、アメリカ消化器病学会(American College of Gastroenterology) 国際会員                    どうぞよろしくお願いいたします。              ご注意)個人的な病状に関するご相談、診療に準じるご相談にはお答えできませんので、何卒、ご容赦ください。
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