アフィリエイト広告を利用しています
写真ギャラリー
検索

広告

posted by fanblog

2022年12月29日

角田の森


角田の森とは洒落怖のひとつである。


【内容】



あれは小学6年生の夏休みの事でした。
有人のHと角田の森で遊んでいた時、Hが奥の廃屋へ行ってみようと言い出したそうです。
当時、私達は角田の森でよく遊んでいましたが、それは道路に面した崖のように反り、立った部分から飛び降りたり、木のツルにぶら下がってターザンの真似事をしたりといったもので、森の中へ入る事はありませんでした。
もちろん廃屋があることは知っていましたし、一部の怖いもの知らずの先輩や同級生の子がその廃屋に忍び込んで何かを見たという噂も聞いてはいましたがまだ日の高い日中でしたが、Tはどちらかというと臆病な性格だったので「やめたほうがいい」とHに行ったそうですが聞き入れず、結局Hが一人で廃屋に行き、Tは森の崖の上で待つ事になりました。
Hが森の奥に消えてから数分が経った頃でしょうか、突然「うわぁぁぁぁぁ!」という叫び声とともに物凄い形相のHが森の奥から飛び出してきたのです。
ただならぬ雰囲気を察したTはHの先に立って一目散に逃げ出し、二人は死に物狂いで走って近くの寺の境内に駆け込みました。
息を切らせながらTがHの顔を見ると、その顔は青ざめ、目はうつろでした。
ただ左の頬だけが赤く染まっていたそうです。
何も話さないHを心配し、Tは自分の家へHを連れて行きました。
ようやく落ち着いてきたHは、廃屋で何があったのかを語り始めました。
Hは森の中に入り廃墟の前へと出ました。
その廃屋は、壁はボロボロで窓は割れ、もう何十年も人の手が入っていない感じでした。
Hはその異様な雰囲気にたじろぎながらも、勇気を振り絞って引き戸に手を掛けたのだそうです。
その時、廃屋の脇から70歳位の婆さんが突然飛び出てきて、Hの手首を掴みました。
あまりの事に声も出ないHが立ち尽くしていると、更に同じ歳位の爺さんが廃屋の脇から出てきて、絞り出すような声でこう言ったそうです。

「坊主、ここで何をやってるんだ」

その爺さんの手には包丁が握られていました。
「すいません、すいません」とHはひたすらに謝ったそうですが、婆さんはモノ私語位置からで握った手首を放さず、爺さんはHの前に回りこんで、顔を覗き込んできました。
そして、突然Hの頬を力まかせに平手打ちしたそうです。
その瞬間Hは目が覚めたように婆さんの手を力いっぱい振りほどいて、Tの待つ森の入口へ駆け出したのです。
翌日私は学校のプール教室で、仲の良かった四人組のもう一人Yとともに、二人からその話を聞きました。
Hの話によれば、あれは幽霊などではなく間違いなく生身の人間であったとのこと。
あんな所に人が住んでいるというのは、にわかには信じ難い話でしたが、TはHの頬が赤くはれているのを見ていましたし、Hがそんなにうまい嘘をつけるとも思わなかったので、私はその話を信じました。
ただTはHが捕まっている間、廃屋の方から物音や話し声などを一切聞かなかったそうです。
森の入口から廃屋まではそんなに離れてはいないのですが。
それからしばらくは、角田の森へ行くことはありませんでした。
ところが一週間ほどたったある日、ダイエーの7階で遊んでいた時でした。
Hが「今度夜あそこに行ってみようぜ」と言い出したのです。
あんなに恐ろしい思いをしたのにこいつは何を考えているんだと思いました。
今思えば、ガキ大将的な存在だったHは、無様な姿を見られた事が我慢ならなかったのでしょう。
Tはすぐに反対しましたが、Yがやけに乗り気で「行こう、行こう、大丈夫だって」と私やTをしつこく誘いました。
私も内心は絶対に行きたくないという気持ちでしたが、ここでビビッたらかっこわるいという思いが先に働き、Yの粘りもあって最後には「別にいいよ」と答えたのです。
結局Tは、親が夜の外出を許してくれまいという理由で参加しないことになりました。
その翌日の夜9時半、私達はサレジオ協会の前で待ち合わせをしました。
その自転車をサレジオの前に置き、私達は角田の森へと向かったんです。
昼間でも不気味なこの森、夜に見るそれは表現し難い異様さを放っていました。
魔界への入り口というか、悪霊の巣窟というか、とにかくそれ以上近寄るなという邪悪な意思を発している様に感じました。
私はすっかり怖気づいてしまい、「やっぱりやめよう、やばいよ」と言いましたが、YとHは聞く耳を持たず、「ここまで来て何言ってんだよ、いくぞ」と崖を登り始めました。
すぐにでも逃げ出したい気分でしたが、一人でサレジオまで戻るのも怖かったし、森の前で一人で待ってるのもご免でした。
ほとんど半泣きで二人の後を追ったのです。
真っ暗でほとんど何も見えない中、手探りで腰をかがめ、物音を立てないようにしながら、私達は廃屋の前まで辿りつきました。
私の心臓は早鐘の様に、激しく脈打っていました。
そんな私をよそに、Yは一人で廃墟の脇に回り、ガラスの無い窓から中を覗き込んだのす。
Yは虚勢を張っていたのか、本当に強心臓の持ち主なのか、私は人事られない思いでYの行動を見ていました。
言いだしっぺのHでさえ、私の横で動けずにいましたから。

「何だ、誰もいねえじゃん」

Yは持参した懐中電灯を点け、それを私とHの方に向けてそう言いました。

「じゃあ、入ってみようぜ」

Yはしゃがみ込んでいる私達の前へ来て、引き戸の手を掛けました。
引き戸がその外見に似合わず、スーッと静かに開いた瞬間を何故か今でも鮮明に覚えています。
Yが懐中電灯で室内を一通り照らし、「大丈夫だ、入ってみよう」と私達を振り向きました。
先にHが立ち上がり、私もその後を追いました。
Yのあまりにも平然とした語り口に、私もHも拍子抜けしたというか、現実感を失っていたんだと思います。
YとHが懐中電灯で室内を照らし出すと、意外な程片付いた室内が現れました。
というより、ほとんど何も無かったのです。
部屋の正面奥に置かれた祭壇のようなもの以外は。
Yがその祭壇を照らし出しました。
それは実際には祭壇と呼べるようなものではなく、小さな長方形の机の上に両脇にはカップ酒のコップを花瓶代わりにして花(と言っても、雑草のような物)を生けたものが置いてあり、その真ん中にお札が立てかけてありました。
「ん、ジンカ?何だこれ読めねぇや」とお札に書いてある漢字を見て、Yが言いました。
私もお札の文字を見ましたが、漢字の苦手だった私には読めず、何かお経の様なものが書いてあるのかなと思いました。
と、それまで黙っていたHが突然その祭壇を蹴り上げたのです。


角田の森 2へ
この記事へのコメント
コメントを書く

お名前:

メールアドレス:


ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/11470214
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
<< 2024年06月 >>
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
最新記事
カテゴリーアーカイブ
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。