2022年08月26日
ヒッチハイク
ヒッチハイクとは、洒落怖のひとつである。
内容はどこかの映画に似てなくともない。
【内容】
今から7年ほど前の話になる。
俺は大学を卒業したが、就職も決まっていない有様だった。
生来、追い詰められないと動かないタイプで(テストも一夜漬けタイプだ)
「まぁ何とかなるだろう」とお気楽に自分に言い聞かせ、バイトを続けていた。
そんなその年の真夏、悪友のカズヤ(仮名)と家でダラダラ話していると、なぜか「ヒッチハイクで日本を横断しよう」と言う話に飛び、その計画に熱中する事になった。
その前に、この悪友の紹介を簡単に済ませたいと思う。
このカズヤと俺と同じ大学で、入学の時期に知り合った。
コイツはとんでもない女好きで、頭と下半身は別と言う典型的なヤツだ。
だが、根は底抜けに明るく裏表も無い男なので、女関係でトラブルは抱えても、男友達は多かった。
そんな中でも、カズヤは俺と1番ウマが合った。
そこまで明瞭快活ではない俺とは、ほぼ正反対の性格なのだが。
ヒッチハイクの計画の話に戻そう。
計画と言ってもズサンなモノであり、まず北海道まで空路で行き、そこからヒッチハイクで地元の九州に戻ってくる、と言う計画だった。
カズヤは「通った地方の、最低でも1人の女と合体する!」と、女好きならではの下世話な目的もあったようだ。
まぁ、俺も旅の楽しみだけではなく、そういう期待もしていたのだが。
カズヤは長髪を後ろに束ね、一見バーテン風の優男なので(実際クラブでバイトをしていた)、コイツとナンパに行って、良い思いは確かにした事があった。
そんなこんなで、バイトの長期休暇申請や(俺は丁度別のバイトを探す意思があったので辞め、カズヤは休暇をもらった)、北海道までの航空券、巨大なリュックサックに詰めた着替え、現金などを用意し、計画から3週間後までには、俺達は機上にいた。
札幌に到着し、昼食を済ませて市内を散策した。
慣れない飛行機に乗ったせいか、俺は疲れのせいで夕方にはホテルに戻り、カズヤは夜の街に消えていった。
その日はカズヤは帰ってこず、翌朝ホテルのロビーで再会した。
にやついて指でワッカをつくり、OKマークをしている。昨夜はどうやら、難破した女と上手くいった様だ。
さざ、いよいよヒッチハイクの始まりだ。
ヒッチハイクなど2人とも人生で初めての体験で、流石にウキウキしていた。
何日までにこの距離まで行くなど精密な計画ではなく、ただ「行ってくれるとこまで」という大雑把な計画だ。
まぁしかし、そうそう停まってくれるようなものではなかった。
1時間ほど粘ったが、一向に停まってくれない。
「昼より夜の方が止まってくれやすいんだろう」等と話していると、ようやく開始から1時間半後に、最初の車が止まってくれた。
同じ市内までだったが、南下するので距離を稼いだのは稼いだ。距離が短くても嬉しいものだ。
夜の方が止まってくれやすいのでは?と言う想像は、意外に当たりだった。
1番多かったのが、長距離トラックだ。
距離も稼げるし、まず悪い人はいないし、かなり効率が良かった。
3日目にもなると、俺達は慣れたもので、長距離トラックのお兄さんにはタバコ等のお土産、普通車の一般人には飴玉等のお土産、と勝手に決め、コンビニで事前に買っていた。特にタバコは喜ばれた。
普通車に乗った時も、喋り好きなカズヤのおかげで、常に車内は笑いに満ちていた。
女の子2〜3人組の車もあったが、正直、良い思いは何度かしたものだった。4日目には本州まで到達していた。
コツがつかめてきた俺達は、その土地の名物に舌鼓を打ったり、一期一会の出会いを楽しんだりと、余裕も出来ていた。
銭湯をなるべくみつけ毎日風呂には入り、宿泊も2日に1度はネカゲに泊まると決め、経費を節約していた。
ご好意でドライバーの家に泊めてもらう事もあり、その時は本当にありがたかった。
しかし、2人共々に、生涯トラウマになるであろう恐怖の体験が、出発から約2週間後、甲信地方の山深い田舎で起こったのだった。
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