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2014年12月11日

十三月の翼・最終話(天使のしっぽ・二次創作作品)




 終わり!!
 「十三月の翼」、遂に終了しました。
 「おとぎストーリー・天使のしっぽ」のTV放送時に書き始めたこの作品。
 一時、意欲が途切れてフロッピーの中に打ち捨てられていた時もありましたが、長い時をかけてこうして完成させる事が出来ました。
 流石にこんな長く付き合ってくると、いざ終わるとなっても寂しい様な実感がない様なw
 とにかく、ここまで長きのお付き合いありがとうございました。
 もっとも、後で手直しとか入ったりするかもしれませんがwww
 と言っても、天使のしっぽ二次創作を終わらせるつもりはありません。
 次作の構想も練っているので、その時はまたお付き合いのほどお願いいたします。
 ではでは。



ポスター7.jpg



 キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
 静まり返っていた教室に、終業のチャイムが鳴り響く。
 「はい。終了でーす。後ろから集めてきてくださーい。」
 教師の口から飛び出した言葉に、静まり返っていた教室のあちこちから息が漏れた。
 もっとも、その内容は純粋な安堵のものから、失意の底からのものと様々ではあるが。
 ちなみに彼女―キツネのアカネの口から漏れたのは、前者の方である。
 ここしばらくの騒動で試験勉強なぞロクに出来なかったものの、普段から予習復習を欠かしていなかったお陰で、二、三日の徹夜でなんとかしのぐ事が出来たのだった。
 普段の行いがいかに大事かと言う、生きた見本である。
 アカネが久々の開放感に浸りながら帰り支度をしていると、
 「アァ〜カァ〜ネェエ〜!!」
 ズシッ
 「ぶっ!?」
 地獄に響く亡者の呻きの如き叫びとともに、背後から誰かがのしかかってきた。
 振り向くと、そこにはやはり亡者の如き顔。
 級友の一人、栗色の髪の少女である。
 「な・・・何?」
 おずおずと問うと、その顔がズズッと迫る。
 「あんた・・・随分と余裕しゃくしゃくな面(つら)してるじゃない・・・。」
 徹夜したのだろう。両目が赤く血走った上に深い隈が寄って、非常に怖い。
 「出来たのね・・・?」
 「え・・・?」
 「テスト出来たのねぇえええっ!!?」
 「えあ!?うわ!?ひあ!!」
 肩を鷲掴みにされ、ガタガタと揺さぶられる。
 「裏切り者裏切り者裏切り者――――っ!!!あの図書室での誓いを忘れたか――――っ!?」
 「ちょ、ちょっと待って!!」
 「五月蝿い五月蝿い五月蝿い!!弁明も弁解も認めない!!裏切り者は(ピー)で(ピー)の刑なのよ――――っ!!!」
 「(ピー)って何だ―――っ!!?」
 と、もつれ合う二人の背後から忍び寄る怪しい影。
 そして、一閃。
 バチコーン
 「キャウッ!?」
 後頭部を丸めた教科書で強打された襲撃者は、あえなく崩れ落ちる。
 「全く。自分がヤマ外れて散々だったからって、八つ当たりしてるんじゃないの!!」
 ポニーテール眼鏡の少女が、クルクルと教科書を戻しながら溜息をつく。
 ・・・どうやら、件の少女は一夜漬けの上ヤマを張り、それが外れたらしい。
 反面教師としての生きた見本、その2である。
 「大丈夫?アカネ。」
 眼鏡の少女が問いかける。
 「あ、ああ・・・うん。」
 ワシャワシャにされた髪を整えながら、苦笑いするアカネ。
 「そう。それじゃ・・・」
 ズズズォオオオッ
 唐突に迫り来る眼鏡。
 近い。
 そして、やっぱり目が血走っている。
 怖い。
 思わず後ずさるアカネ。
 迫る少女。
 その口が、人形の様にパクパクと動く。
 「こ、ここ、これから、も、ももも、モスで慰労会開こうと思うんだけど、あ、あああ、あか、アカネも、い、いい、いっしょ、いっしょに、どど、どうかな?かな?」
 必死の形相であった。
 退路を絶った顔であった。
 それを見て、アカネはクスリと笑う。
 そして、出した答えは、
 「モスはちょっと痛いかな。マックでいいなら。」
 である。
 「―――――っ!!!」
 それを聞いた眼鏡が目を見開く。
 そのまま、しばし硬直。
 やがて、静かに目を閉じると、握った右拳を高々と天に突き上げた。
 パァア、と射す来光(室内だろとか言ってはいけない。)
 ・・・悔い無き人生だったらしい。
 「バリューセット〜、フライポテトのLサイズ〜、アカネの〜、奢りだからね〜。」
 地をのたうちながらのたまう亡者には、とりあえず御札など貼っておくアカネだった。



                    ―十三月の翼―


 「ほお。それじゃアカネちゃん、元気になったのかい。」
 「はいです。」
 「もう、すっかり元気なのれす。」
 のれんを片付けながら問うトキに、箒がけやテーブル拭きをするタマミとミドリが笑顔で答える。
 「今日は、テスト終わりの日でお友達と慰労会に行ってますけど・・・。」
 「明日からは、元通りなのれす。」
 「そうかい。じゃ、休んだ分しっかり働いてもらうから、覚悟しときなって言っといておくれ。」
 「「はい(なのれす)!!」」
 トキの言葉に、ビシッと敬礼を返すタマミとミドリなのだった。


 「ほらほら〜おいてっちゃうよ〜?」
 「ちょ、ちょっと待って。ナナちゃん・・・。」
 「はやすぎるらぉ〜!!」
 トテテと走るナナを、モモとルルが息も絶え絶えに呼び止める。
 「なになに〜?だらしないな〜。もう〜。」
 そう言いながら戻ってくるナナに、二人が問う。
 「い・・・一体・・・どうしちゃったの・・・?ナナちゃん・・・。」
 「なに、そんなにはりきってるらぉ〜?」
 そんな二人に、ナナはニパッと笑って答える。
 「練習!!」
 「練習?」
 「なんのらぉ〜?」
 「歩く練習。今のうちに足をいっぱい強くして、今よりもいっぱい歩ける様にしておくの。んで、トウハ姉ちゃんが帰ってきたら、いっぱいいっぱい、お散歩するんだ!!」
 「ナナちゃん・・・。」
 一瞬、目を潤ませかけるモモ。
 でも、次の瞬間にはプルプルとそれを振り払う。
 本人が精一杯頑張っているのに、自分がヘタれる訳にはいかないのだ。
 モモも、そしてルルも笑顔で言う。
 「そうだね。ナナちゃん。きっと、トウハさんも楽しみにしてるよ。」
 「がんばるらぉー!!」
 「うん!!」
 満面の笑顔で頷くと、ナナは再び走り出す。
 「ほらほら〜。二人共、早く〜!!」
 「え?あ、ちょ、ちょっと待って〜!!」
 「だから、はやいらぉ〜!!」
 夕日の中を駆けていく小さな影。
 それをやっぱり小さな影が二つ、息せき切って追いかけて行った。


 「はーい、夕刊でーす。」
 手にした新聞を郵便箱に放り込み、ツバサは次の家に向かう。
 と、
 「んん?」
 通り過ぎかけたコンビニの前で立ち止まる。
 自動ドアの向こうでレジに並ぶ、見慣れた顔。
 待つ事しばし。
 彼女が袋を下げて店から出てきた。
 「コォラ!!クルミ!!」
 「ひゃっ!?ツ、ツバサちゃん、どうしたなの!?」
 「どうしたじゃないよ。買い食いは駄目って言われてるだろ?」
 「う〜〜〜なの。」
 お説教にショボくれるクルミ。
 でも、手の中の袋は握り締めたまま。
 まるで、大事な宝物の様に。
 「・・・どうしたの?クルミ。」
 ツバサが怪訝そうに訊くと、クルミはガサゴソと袋の中身を取り出す。
 「あ・・・。」
 それを見たツバサが声を漏らす。
 袋から出てきたのは、メープルパンと缶紅茶。
 「ツバサちゃん・・・。」
 クルミが、半ば潤んだ目でツバサを見る。
 溜息をつくツバサ。
 「しょうがないなぁ。タマミには内緒だからね。」
 パァ、と明るくなるクルミの顔。
 いそいそとメープルパンの袋を開けると、中身を取り出して二つに割る。
 「はい。」
 「え?」
 半分になったメープルパンを差し出され、戸惑うツバサ。
 「半分こ、なの。」
 満面の笑顔で言うクルミ。
 その言葉に、ツバサの顔もフッと綻ぶ。
 「もう。バイト中なんだけどなぁ。」
 そんな事を言いながら、ツバサはパンを受け取った。


 「ランちゃん、ミカちゃん。お茶にしましょう。」
 テーブルの上にカップを並べながら、アユミが言う。
 「はーい。」
 「あー、もう喉渇いちゃった。」
 そんな事を言いながら、集まってくるランとミカ。
 「ミカさん。そんなに根を詰めて大丈夫ですか?」
 傍らに「虎徹弐号」と書いた竹刀を置いて、どっかと腰掛けたミカ。
 額の汗を、首に巻いた手拭いで拭く様を見たランが心配そうに言う。
 「ふっ、この程度どうって事ないわ。なんてったって、あのガキンチョとの決着はまだついてないんだから。その日が来るまで、精進の道を怠る訳にはいかないわ!!」
 「決着って、”あの時”もうついてませんでしたっけ?」
 「いんや。あの時は色々と横槍が入ったからね。キモ百足とか道楽魔王とか。だから、実質ミカとガキンチョの勝負はまだ未決着なのよ!!」
 「はあ・・・。」
 今一つ、納得しかねると言った体のランにアユミが言う。
 「ほっときなさい。ランちゃん。どうせ、三日坊主ですわよ。」
 コポコポと紅茶を注ぎながら、アユミが言う。
 「余計なお世話よ!!」
 「はいはい。どうぞ。」
 そう言って、紅茶の入ったカップをラン達の前に置くアユミ。
 「いただきます。」
 「どれどれ。」
 カップを手に取り、口をつけるラン達。
 ゴクリ 
 「ん!?」
 「あら!?」
 同時にカップを覗き込む二人。
 「いかがですか?」
 「美味しいじゃない!!」
 「本当!!」
 ふふ、と得意そうに微笑むアユミ。
 「わたくしも、あの娘とはお茶の約束がありますからね。味を砂糖で塗り潰されるなんて屈辱、二度と味あわせられない様に精進しませんと。」
 それを聞いたミカが笑う。
 「何よ。結局、あんたもミカと同じじゃない。」
 「あら、違いましてよ。」
 「何が?」
 「わたくし、三日坊主じゃありませんもの。」
 「ムキーッ!!ミカだって違うっちゅーにー!!」
 「ああ、ミカさん。こぼれますぅ―――っ!!」
 夕暮れに響く、少女達の声。
 「あらあら、睦さんのお宅はいつも賑やかね。」
 花壇の華達に水をあげながら、はるかはふふっと笑った。


 ―と、ここは何処とも知れない深山の渓谷。
 霧深く切り立った崖の上に、四つの人影があった。
 他の三人よりも一歩先に出た影―ゴウが言う。
 「此度の事で痛感させられた。」
 他の三人は、神妙な顔で耳を傾ける。
 「俺達は、まだまだ未熟だ。」
 頷く三人。
 「魔王(やつ)は今だ健在。これから、いつまた同じ様な事が起こらないとも限らん。その時に備えて、俺達は心身ともにもっと強くならなければならない。」
 吹き通る風が、纏った外套を巻き上げる。
 「奢るな。怠るな。 一挙手一投足、呼吸の一つまで、修行の一環だと思え。」
 「御意。」
 「承知。」
 「応!!」
 弟達の答えに、深く頷くゴウ。
 「行くぞ!!」
 「「「応!!」」」
 そして、彼らの姿は霧の深淵の中へと消えていった。


 「ご主人様―!」
 背後から聞こえてきた声に、悟郎は振り向いた。
 追いかける様に駆けて来たのは、黄金(こがね)の髪を揺らす少女。
 「アカネ。」
 「ああ、追いついた。」
 「どうしたんだい?今日は随分遅いじゃないか。」
 自分の隣りで息を切らす少女に、悟郎は問う。
 「うん。放課後に友達に誘われて。それで遅くなっちゃった。」
 そう言って、アカネはペロリと舌を出す。
 「家には、連絡したのかい?」
 「大丈夫。ちゃんと電話しておいたから。」
 「ならいいけど。あんまり遅くなっちゃ駄目だよ。世の中、何があるか分からないんだから。」
 「はい。」
 自分の注意に素直に頷くアカネを見て、微笑む悟郎。
 「全く。君達に何かあったら、トウハにどんな目に合わされるか分かったもんじゃないからね。」
 「ああ、すっごく怖そう。」
 そして、二人は笑い合う。
 一頻り笑うと、アカネはホウと息をつく。
 薄く、染まる息。
 それを見て、呟く。
 「もう、すっかり秋だね。」
 「そうだね。ついこの間まで、セミが鳴いてたのに。」
 そう言って、悟郎も一息息を吐く。
 後ろに流れ去っていく白息。
 しばしの間。
 やがて、アカネが再び口を開く。
 「あの娘、どうしてるかな?」
 「トウハかい?」
 「うん。」
 「大丈夫。冬葉お姉ちゃんが、しっかりと守っていてくれるよ。」
 その言葉に微笑むと、アカネは空を仰ぐ。
 「いつ、会えるかな・・・。」
 呟く様なその言葉に、悟郎が言う。
 「待ってなくても、いいんじゃないかな?」
 「え?」
 不思議そうな顔をするアカネを見下ろして、悟郎が笑む。
 「暖かくなったら、桜が咲いたら・・・」
 悟郎が、想いを馳せる様に月を見る。
 「皆で、会いに行こう。トウハに。そしてお姉ちゃんに。」
 「!!」
 その意を察したアカネの顔が、華の様に綻ぶ。
 「うん!!行こう!!きっと、皆も喜ぶ!!」
 子供の様にはしゃぐアカネ。
 微笑みながら、それを見守る悟郎。
 親子の様にじゃれ合う二人の姿は、やがて夜の灯りの中へと消えていく。
 何処かで微かに、桜が香った様な気がした。


 それから、いつかの時が経った頃―
 メガミ―ユキはメイドの世界にいた。
 広場の中心に立ち、その視線は空に向けられている。
 見つめるのは、広場を囲む石柱。その一本。
 「メガミ様、どうかしたんですか?」
 背後からかけられた声に振り返ると、そこには3人の少女が立っていた。
 3人が3人、守護天使の証であるメイド服に身を包んでいる。
 「ああ、ジュン、ピピ、ネネ。気遣わせてしまいましたか?」
 そう言って微笑むユキに、3人の守護天使は頷く。
 「何か、今日は様子がおかしい様でしたから・・・。」
 亜麻色の長髪を、両サイドでまとめた少女が言う。
 「ホンマや。ボーっとしとってからに。らしくないで。」
 後に続くのは、深緑の髪にサンバイザーを被った少女。
 「なにか、こわいことでもあったでちゅか?」
 一番年下らしい、水色の髪の女の子が不安そうに見上げる。
 それを見たユキは、再び微笑む。
 「いいえ。これから起こる事は凶事ではありません。とても、喜ばしい事です。」
 「「「喜ばしい事?」」」
 3人が揃って首を傾げたその時、
 パア・・・
 眩い光が、広場に降り注いだ。
 「まぶしいでちゅ!!」
 「何や!?何事や!?」
 「あ、あれ!!」
 亜麻色の髪の少女が、宙を指指す。
 光っていたのは、広場を囲む石柱の一本。その頂上に置かれたモニュメント。
 「これは・・・”転生”!?」
 「おお、ウチらの後輩か!?」
 「おともだち、ふえるでちゅか!?」
 口々に言う天使達に向かって、ユキは言う。
 「ええ。私達の、新しい仲間。でも、後輩ではありませんよ。」
 「「「?」」」
 「彼女は、皆の先輩です。そう、私にとっても・・・。」
 訳が分からないと言った体の三人。
 そんな彼女達をよそに、ユキは視線を石柱に戻す。
 明るさを増す光。
 舞い始める、銀色の華弁。
 光の中心に、手を伸ばす。
 まるで、差し伸べる様に。
 「さあ・・・」
 ユキの口が紡ぐ。
 「今度こそ・・・」
 優しく。
 「羽ばたきなさい。」
 愛しく。
 「無き月の主・・・」
 ”彼女”を、呼ぶ。

 「気高き、”十三月の翼”よ!!」

 ―そして舞い散る銀の中、純白の翼が閃いた―



                                     終わり
この記事へのコメント
(=゚ω゚)ノ うい〜っす。完結&読破記念だべよ。完結おめ。
一気に読破してみると、終盤は二転三転の怒涛の展開だったな。
ペテロの門に始まり、ジュデッカ、レイス、ナベリウス公、屍姫(ヘル)たん、産土神等々、見所満載だw
もちろんそれだけじゃなく、アカネやミカ、トウハにも見せ場があったりしたけど。
ただ、四聖獣(の見せ場)はムカデ戦までだなwww

とりあえず、屍姫(ヘル)たん及び冬葉羽衣和服バージョンのビジュアル化をきぼんぬ。
あと、この間の年越しチャットでエマっちょんが既に最後まで読了はしていると言っていたから、ナベリウス公のビジュアルを公開してもおkではないかと。

同じく年越しチャットで話したゼクシア in 魔界(ジュデッカ)の話も構想だけは着実に詳細が決定してきている。たぶん構想だけで終わりそうだけど^^;
万が一、億が一、兆が一実現したら仮面ライダー鎧武やドライブ辺りのネタが満載の予定w
最近ではライダーベルトの電子音声がいろいろおかしなセリフをかましてくれるのが恒例になりつつある模様。
例:
ウィザード変身→「シャバドゥビタッチヘンシーン」「ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!」「スイ〜スイ〜スイ〜スイ〜〜〜♪」
ウィザード必殺技→「チョーイーネ! ○○(技名) サイコー!!!」
鎧武変身→「花道、オンステージ!」「シュシュッとスパーク!」「粉砕、デストロイ!」「大玉、ビッグバン!」

次回作があったら多分見に来る。今年もよろしく (=^ω^)ノ
Posted by G5‐R at 2015年01月02日 16:34
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