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2014年11月14日

十三月の翼・51(天使のしっぽ・二次創作作品)




 こんばんは。土斑猫です。
 毎度お馴染み、「十三月の翼」更新です。
 話の展開上、今回は少し短めです。
 ちょっと、会話シーンが多くて間が短調になってるかもしれません。
 こういう所、まだまだだなぁとか思います。
 精進精進。
 ではでは。



トウハ戦闘.jpg

         

                       ―決意―


 「あいつ、何言ってやがんだ!?」
 目の前の映像を見たガイが、驚愕の声を上げる。
 他の三人も、驚きの表情でそれを見つめる。
 『―・・・ほう。そう来たか―』
 ”それ”が、感心した様に言う。
 「馬鹿な・・・。ありえない・・・。」
 レイが、呆然とした口調で呟く。
 「天使が、悪魔に添うなどと・・・。」
 その言葉に思う事は、皆同じ。
 「出来んのかよ・・・?」
 未だ驚きの色が消えない声で、ガイが問う。
 「天使と悪魔が一緒になるなんて、出来んのかよ・・・?」
 閉ざされた空間の中で、空気が揺らぐ。
 肯定か否定か。 
 それは分からない。
 けれど、
 『―効果的だ―』
 ”それ”は言う。
 『―実に、効果的な方法だ―』
 そこに、いつもの様な嗤いの気配はなく。
 本当に。
 本当に感嘆した様に、”それ”は言った。


 「・・・何を・・・言ってるの・・・?」
 温もりの中で戦慄きながら、トウハが問う。
 「言ったままだよ。」
 穏やかな声で、耳をくすぐる。
 泣く子をあやす様に。
 優しく。
 優しく。
 「わたしが、ご主人様の代わりになる。君の、心を埋める。」
 確信が、あった。
 「前に、言っただろ?」
 トウハの肩に顔を埋め、目を閉じる。
 冷たく痛い、氷(ひ)色の感触。
 この感触に組み敷かれた、かの時。
 漂う氷霧の中で、彼女は確かに言った。
 ”こっちに、おいで”と。
 その時の目。
 つい、先刻の事の様に思い出す。
 親を求める、子供の様な目。
 それを拒まれた時の、捨てられ人の様な目。
 そう。
 この娘の心は、悟郎以外を拒むのではない。
 悟郎以外に、埋める術を知らないだけ。
 ならば。
 それならば―
 「わたしには、”素質”があるって。」
 自分がそれを教えよう。
 「君は、優しい―」
 この身を変えて。
 「天使(わたし達)と形は違うけど―」
 存在を移ろえて。
 「優しい心を、持っている。」
 この娘の心に。
 「例え変わっても、その心を持っていられるのなら―」
 この娘の想いに。
 「わたしは、何も怖くない。」
 応えよう。
 「トウハ―」
 だから紡ぐ。
 「一緒に―」
 この一言を。
 「行こう。」
 わたしの、全てに代えて―


 「ユキさん・・・。」
 かけられた声に、ユキは我に返った。
 放心した様に虚空を見つめるトウハ。
 そんな彼女を抱きしめたまま、アカネはユキに語りかける。
 「わたしはもう、言えないだろうから。ご主人様や皆に、伝えて。」
 紡ぐその声音には、微塵の迷いも後悔もない。
 その事が、ユキを戦慄足らしめる。
 けれど、アカネは構わない。
 「今まで、ありがとう。幸せだったって。」
 「何を・・・」
 託される事を拒む様に、ユキは言う。
 「何を馬鹿な事を言っているのですか!?アカネさん!!」
 その声は、もはや悲鳴に近い。
 「貴女は、そんなに自分をかろんじる程に愚かだったのですか!?貴女がいなくなったら、御主人様や皆がどれほど悲しむか、分からないのですか!?」
 叱咤にも似た叫び。
 けれど、アカネは動じない。
 「・・・大丈夫。」
 静かに、けれど確信を持った声で答える。
 「わたしが抜けた穴は、皆が、そしてこれから出会う誰かが埋めてくれる。時間はかかるかもしれないけれど、必ず。だけど・・・」
 言いながら、腕の中で竦む少女に視線を落とす。
 その視線は、まるで幼子を守る母親の様に優しい。
 「トウハ(この娘)には、何もない。いつまで待っても、どこまで行っても・・・。」
 「アカネさん・・・。」
 「ごめんね、ユキさん・・・。迷惑かけて・・・。」
 彼女の意思の強さを感じ、ユキは次にかけるべき言葉を失う。
 「・・・どうして・・・」
 二人の言葉の間を埋める様に、か細い声が響く。
 アカネの腕の中で、トウハが俯いたまま呟く。
 「ん?」
 「どうして、こんな事するの・・・?」
 問う言葉に、力はない。
 「キミは・・・わたしを怖がってたじゃない・・・?忌んでいたじゃない・・・?それなのに、どうして・・・?」
 「そうだな・・・。」
 アカネは少し上を向き、そして言う。
 「それはきっと、君と心を番ったから・・・かな。」
 「!!」
 「君が、あの時全てを晒してくれたから。その痛みや悲しみを教えてくれたから。」
 ギュッ
 抱きしめる腕に、力を込める。
 「わたしは、君を理解出来た。」
 「アカネちゃん・・・」
 「だから、今度は君がわたしを理解して欲しい。受け入れて欲しい。」
 トウハの心が揺れる。
 理解?
 出来ない筈がない。
 あの時、番ったのは自分の心も同じ。
 受け入れる?
 出来ない道理がない。
 あの時、それを求めたのは自分の方。
 でも。
 でも。
 それを。
 それを。
 それを、認めてしまったら。
 認めて、しまったら。
 出る言葉は、もはやない。
 最後の力を絞る様に、アカネの身体を押しやる。
 せめてもの抵抗。
 けれど。
 それも、身を包む温もりの前では無意味。
 耳元で、優しい声が囁く。
 「大丈夫・・・。怖がらないで・・・。」
 凍てついた心に、それが染みていく。
 「もう、君を一人にはしないから・・・」
 抱きしめられる安らぎとともに。
 「この世の全ての命が絶え果てても。」
 ゆっくり。
 ゆっくりと。
 「星の礎が朽ち消えても。」
 染みていく。
 「神の御霊が薄れても。」
 温かく。
 優しく。
 そして―
 「わたしが、君を想うから・・・。」
 カラン
 胸の奥で、何かが崩れる。
 溶けたそれが、雫となって目から零れた。

 
 『―どうやら、ここまでの様だねぇ―』
 閉ざされた空間の中に、そんな言葉が響き渡る。
 「・・・終わり?」
 「これが、終わりですか・・・?」
 事態を見ていた四聖獣が、口々に言う。
 『―トウハ(あの娘)の心は、溶けてしまった様だ。紛う事なく、終幕だよ―』
 再び響く声。 
 妙に感心している様子なのは、気のせいだろうか。
 「――っ、ざけんな!!」
 ガスっ
 怒鳴り声とともに、ガイが拳を地面に叩きつける。
 『―気に入らないかね?―』
 「あたりめぇだ!!」
 訊ねるそれに、ガイは喚き返す。
 「悪魔(てめぇら)にいいように転がされた挙句に、仲間一人差し出して手打ちだぁ!?納得出来る訳ねぇだろが!!」
 「・・・その通りです。」
 その叫びを次ぐように、シンが口を開く。
 「これでは、体のいい人身御供でしょう?いくら彼女自身の意思だとしても、犠牲が出る事に違いはありません。確かに最少の被害でしょうが、それで良しと出来る者など皆の中には一人としていません。」
 そして、彼が悔しげに唇を噛んだその時、
 『―犠牲?―』
 不思議そうな響きを持って、その声が言った。
 『―成程。汝らはそう見ていたかね?―』
 言葉に被さる様に響く、禍禍禍と言う嗤い声。
 「・・・何が可笑しい?」
 その様子に何かを察したのか、ゴウが問う。
 『―いや、私見の相違というものは、中々に面白いと思ってね―』
 「どう言う意味だ?」
 禍禍禍。
 嗤い声が、静謐の空間を揺らす。
 『―なに、心配はいらない。汝らの言う様な事態にはならんよ―』
 「何だと?」
 苦苦苦。
 酷く可笑しげに、それは嗤う。
 『―言っただろう?これは、実に効果的な方法だと―』
 皆の視界の中で、歪む紅月。
 ニタリ、ニタリと歪に歪む。
 『―全く、この上ない方法だよ―』
 ニィタリィ
 雨天の中で、紅い亀裂が嗤う。

 『―悪魔を、消し去るにはね―』

 思わぬ言葉に、皆が耳を疑う。
 真意を問う言葉も、ない。
 昏い。昏い。雨の夜。
 紅い月はただ、ニタリニタリと嗤うだけ―



                                 続く
この記事へのコメント
うーむ。

悟郎さんの一番大きな力は「受容」。
それが、いまやアカネたんにも備わりましたか。もちろん、トウハと一番接近して、心を通わせたという理由も大きいでしょうが、
1年前の転生したてのアカネちゃんには、それはきっとできなかったでしょうなぁ。当時は「拒絶」の傾向が強かったですからね。
ううっ……成長したのぅ。アカネタソ・・・(´;ω;`)ブワッ

ユキさんの方が、動揺しとるよ・・・。
まぁ、優先順位からすれば、そうだよなぁ・・・。アカネたん失うわけにはいかないもんなぁ。

しかし、なおも抗おうとするトウハをさらに抱きしめるアカネたん。
良い絵だ。
こんな感じか↓w

チコウヨレ( ´∀`)つ (;´Д`)イヤーン

で、この後はもちろん光の中でくんずほぐれつですな!←やめれ

冗談はともかく、

ガイの

「てめーらにいいように転がされた挙句、仲間一人差し出して手打ちだぁ!?」

という怒りのコメントで目が冷めました。あ、そういえばそういうことになるよね?w

バアルは、そうはならないみたいなこと言ってますが。どういうことやら・・・。

悪魔を消し去るにはこの上ない方法・・・も、もしや・・・。

アカネたん、最後の最後でトウハを裏切るつもりでわ・・・!

こんな感じか↓

ウーソーダーヨーw(゚∀゚)y= (TдT)ファーー!?

やはりそうだったのか・・・さすがはアカネたん。最後の最後でクールキャラの真髄が出たか・・・。
ウム、これでトウハ見捨てて一件落着……あれ? ヒドくね?w

まー、もちろんそんな展開にはならないでしょうが。
でも、悟郎さんや守護天使たちに、もし持ち前の底抜けの受容の心がなかったら、
これが、よその守護天使たちのケースだったら、こうして騙して見捨てて一件落着にするという苦渋の展開もあり得たかもしれません。

それだけ、自分を犠牲にするというのは覚悟がいる…。

アカネたんとトウハ、どうなってしまうのでっしゃろ。またまた先が読めんのじゃが、まぁそれはいつものことなので、また次回を楽しみにしておりますぞよw
Posted by エマ at 2014年12月07日 10:51
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